アサルトリリィ Abnormal Transition   作:0IN

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過去㉝

蓮夜「夢結・・・大丈夫?」

 

夢結「ええ、大丈夫よ。」

 

 

2人は手を繋ぎお互いの存在を確認する。

光に塗りつぶされた視界が次第と晴れていく。

戻った視界に写り出されたものは、何もない世界だった。

 

黒い床に白い空、

この2色だけが彩る世界、その中に2人だけが存在する。

その異様な空間はどこまでも続いており果ては見えない。

 

 

蓮夜「・・・身体には異常はなさそうだね。」

 

夢結「そうね、これ以外は、」

 

 

彼女はそう言うと自身の胸に突き刺さっている鎖を持ち上げた。

その鎖の端は彼の胸に突き刺さっておりそこからお互いの存在を感じることが出来る。

 

 

蓮夜「これがあるってことは成功したみたいだけど・・・何処なんだろう?」

 

夢結「貴方でも分からないの?・・・そうなると私だと分からないわね。」

 

 

確かに彼女の・・・2人の試みは成功した。

しかし、成功したのならば現実世界に戻るはずだったのだが、

 

 

蓮夜「・・・現実に戻って無いってことは何か問題があった?」

 

夢結「嘘でしょう。・・・そうだとしたら、」

 

 

彼女は頭を抱えて蹲る。

もしや、自身が失敗してしまったのでは無いか?

そもそも、成功する可能性などなく彼に叶わぬ希望を与えただけでは無いのか?

 

可能性はいくらでも存在する。

しかし、現実へと戻れていないということはこの試みは失敗したということだ。

 

 

夢結「・・・ごめんなさい。」

 

蓮夜「・・・夢結、」

 

 

彼女は涙を流す。

あのような事を言いながら失敗してしまった事が悔しくて、

絶対に成功させなくては行けなかった場面で失敗した自身が情けなくて、

誓ったのに彼を救うことが出来なくって、

 

彼女の中で気持ちが混ざり合い心の中で感情が荒れ狂う。

荒れ狂った感情を抑えられずそれが溢れて涙となって流れ出す。

 

 

夢結「・・・ごめんなさい。貴方のこと、」

 

蓮夜「・・・。」

 

夢結「・・・やはり、私ではダメだったのよ。・・・そうよ、いつも失敗をし続ける私なんかでは無理だったのよ、」

 

蓮夜「夢結!!」

 

 

自身()罵る(攻撃)する彼女を彼は握っている手を強く引き強引に自身の目の前に立たせた。

 

 

夢結「!?・・・蓮夜、」

 

蓮夜「僕は君がいたから生きる事を選んだんだ。それなのに君が諦めたらどうすればいいんだよ!」

 

夢結「・・・だけど、」

 

蓮夜「だけどじゃない!僕はまっすぐな君が好きなんだよ。・・・今の卑屈な君なんか大っ嫌いだ!」

 

夢結「・・・!?」

 

 

彼女の心に彼の言葉が響く。

大っ嫌い・・・この言葉が脳内を反響する。

 

 

蓮夜「・・・どうして君はそうなるんだ!昔の君はそんなんじゃなかっただろう!」

 

夢結「・・・昔の私?」

 

蓮夜「そうだよ!僕が守りたいと思った君はいつも僕手を引っ張って行ってくれた君はどうしたんだよ!」

 

夢結「・・・。」

 

蓮夜「やっとあの頃に戻れると思ったのに・・・。」

 

夢結「・・・あっ!」

 

 

彼の瞳からも涙が溢れ出した。

悲しみ・・・感情によって溢れ出たその涙、それは今の彼では流れることがないものだった。

そこで彼女は気づく・・・彼の本当の願いを、

 

彼の願い・・・それは彼女と生きること、

これが彼の純粋な願いでありそれは紛れもない事実だ。

しかし彼の願いはそれだけではなかったのだ。

 

彼の本当の願い・・・それはあの頃日常へと戻ること、

 

あの頃の心のまま止まってしまった彼の心が真に願ったものそれが彼の本当の願いだったのだ。

 

 

夢結「・・・馬鹿ね私は・・・本当に馬鹿。」

 

 

彼女の心に変化が生まれる。

いいや、これは変化ですらない・・・ただ止まっていた心が動き出しただけだ。

 

彼の心の時が止まっていたように彼女の心もまた時を止まっていたのだ。

閉ざしていた彼女の心・・・それが彼の心に触れることで解き放たれる。

 

 

・・・やっと、始まる(歩ける)ね。

 

・・・うん、やっと進むことが(あの続きが)出来るね。

 

 

空間内に声が響く。

その声は優しさとともに温もりを感じさせるものであり2人の心に浸透するように広がり包み込む。

 

 

蓮夜「・・・この声って、」

 

夢結「・・・もしかして、」

 

蓮夜・夢結「「夢結?(蓮夜?)」」

 

 

その声は幼い時の2人の声であった。

 

 

夢結「・・・もしかして貴方は、」

 

・・・また会えたね。

 

蓮夜「これはどういうことだ?」

 

・・・僕は初めましてかな?

 

夢結「貴方達は・・・。」

 

・・・いきなりだし分からないかな?

 

・・・そうだね。ちゃんと説明しないと、

 

蓮夜「・・・夢結、君は知っているの?」

 

夢結「・・・えっ、ええ、彼女がいたから今の私はここにいるから、」

 

・・・そっちの話は終わったかな?それじゃあ僕達も説明しようか、

 

・・・まず私達は、貴方達なの、

 

蓮夜「・・・僕達?」

 

・・・ええ、そうよ。私達は貴方で、貴方達は私達・・・貴方達にわかりやすく言うならあの頃の私達と言えばいいかしらね?

 

蓮夜「・・・あの頃?」

 

夢結「あの頃・・・もしかして!」

 

・・・夢結は分かった見たいだね。そう僕達は運命(物語)から踏み出した日、僕が異能者になった日までの僕達だよ。

 

蓮夜「なっ!」

 

夢結「・・・。」

 

・・・これから話すことは僕達が異能を持つことになった理由でありこの苦難の道を歩むこととなった理由だよ。

 

蓮夜「・・・異能を持つ理由、」

 

・・・僕に異能が宿った理由・・・それは僕という存在がこの世界におけるイレギュラーであったことなんだ。

 

蓮夜「・・・イレギュラー、つまり僕は元々この世界に存在することが無いはずの人間だったわけか、」

 

・・・そう、僕はこの世界に存在するはずがなかった命であり世界が想定していなかった存在(物語)だったんだよ。

 

夢結「・・・そんな事、」

 

・・・辛いと思うけどこれは事実なんだよ。・・・この世界に生まれる人間はどのような人物でも必ずその人生の道筋・・・運命(物語)を持っているんだ。それはその人間に訪れる未来が記されていてそれを変えることは決してできない。

 

蓮夜「だけど元々生まれるはずのなかった僕にはそれがなく、それを補うために世界の修正力が働いた結果が異能ってことかな?」

 

・・・うん、そうだよ。その修正力(異能)によって僕はこの世界での存在を得たんだ。

 

蓮夜「つまり異能者は存在するはずのなかった存在または本来の道筋とは異なる結果を生み出す存在に異能が宿るってことか・・・。」

 

・・・そしてこれには大きなデメリットがある。この世界は等価交換の法則で成り立っているからね。強大な力にはそれ相応の代償がなくてはいけない。

 

蓮夜「・・・それがこの苦難の道、」

 

・・・そういうこと、僕は異能者になった時にこのことに気づいた。それと同時にこれから訪れる絶望を知ってしまった僕自身を守るために自身を切り離しんたんだ。

 

蓮夜「・・・だから異能者になった時の記憶が無いのか・・・それは分かったけどどうして夢結までいるの?」

 

・・・それは、私が原因ね。

 

夢結「・・・私が原因?」

 

・・・ええ、あの時蓮夜が私を蘇生した時に今の貴方達みたいに私と彼の存在が繋がったの、それでこの事を知った私は彼を1人にしたくなくて異能者として目覚めた私だけを切り離して彼と一緒に蓮夜の中で眠りにつくことにしたの。

 

夢結「・・・そうなのね。」

 

・・・ごめんなさい。貴方にも辛いと思いをさせてしまって、

 

夢結「・・・いいのよ。それは蓮夜を守るためだったのでしょう?」

 

・・・ええ、そうよ。

 

夢結「それなら謝らなくていいわ・・・蓮夜を守りたいのは私も同じ気持ちだから、」

 

蓮夜「・・・夢結、」

 

・・・話を戻すけど僕達が君達の前に現れた理由は他でもない。君たちの中に戻るためなんだよ。

 

蓮夜「僕の中に戻る?」

 

・・・そう、そのために君達をここに呼ばして貰ったんだ。

 

・・・貴方達が失敗したと思っていた試みは成功しているの、ごめんなさいね。こうしないと貴方達は本当の気持ちを思い出せなかったから、

 

蓮夜「・・・戻るって言ったけど僕は・・・夢結はどうなるの?」

 

・・・心配することはないよ。ただ一つに戻るだけだから、君達は君達のままだ。

 

夢結「・・・そうすると貴方達は?」

 

・・・私は大丈夫よ。だって貴方達は私達なのだから。消える訳では無いわ。

 

夢結「・・・良かったわ。だけれど本当にいいのかしら?」

 

・・・これでいいの、これで私達の役目は終わったのだから私達を貴方達の中に戻させて?

 

 

彼女の言葉を聞き2人はお互いの顔を見て頷き合う。

 

 

蓮夜「・・・分かった。」

 

夢結「・・・今までありがとうね。」

 

・・・うん!

 

・・・2人とも本当にお疲れ様。よく頑張ったね。

 

 

幼い時の2人は光になってそれぞれが2人の中へと入っていく。

それにより2人はあの時の最後の言葉を思い出した。

 

 

・・・たとえ僕が僕じゃなくても君を絶対に守るから、

 

 

これが彼の最後に紡いだ言葉だった。

 

 

蓮夜「・・・この言葉はもういらないかな?」

 

夢結「・・・そうね、だって私達は2人で生きて行くのだから。」

 

 

この言葉を最後に世界は崩れた。

それにより薄れゆく世界の中でも2人は手を決して離すことはなかった。

 

 

 

 

 

蓮夜「うっ・・・。」

 

 

暗くなった視界が晴れ、彼は重たい瞼を開いた。

 

 

蓮夜「・・・ここは僕の部屋?」

 

 

彼が周りを確認するとそこは彼の部屋でありベットの上であることがわかる。

このことから彼は現実へと戻って来れたことに安堵すると不意に自身目の前にある布団が膨らんでいることに気づく。

彼はそれを不思議がりながら布団の端を持ち上げ中を確認すると、そこには丸まりながら眠っている彼女の姿があった。

穏やかに眠っている彼女を見た彼は彼女の頭を撫でながら微笑む。

 

 

蓮夜「ただいま、夢結。」

 

夢結「おかえりなさい、蓮夜。」

 

 

目覚めた彼女は彼に微笑み返した。

その2人の手は強く握られており、そんな2人を照らすように朝日が部屋へと差し込んだ。

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