アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
その記念として本日は特別編として短編を投稿させていただきます。
これは本来ありえないがありえた「可能性の物語」
???「・・・君に出会えて本当に幸せだった。・・・夢結、さようなら。」
木々の生い茂る森の中、全てを包み込むような緑色の世界に紅い飛沫が舞い上がる。
その紅はその主を伝い地面を染めた。
それにより紅く染められた空間はそこだけが異様さをかもちだす。
地面を紅が染め上げた時、それと同時に世界が壊れた。
まるで映し出される映像が画面のひび割れによって歪むかのように、
ひび割れが大きくなりそれが辺り全体に広がると、世界は崩れ落ちそこには黒が生まれた。
黒に染められた世界、そこは重油のような重く纒わり付くような黒に覆われておりその底に何が沈んでいるのか見ることができない。
そんな世界の中央に一つだけ何かの影があった。
その影は片膝を立てて座っており顔は下を向いていた。
それ見た目から人であることがわかる影だが、その影からは異様さが滲み出ている。
人影はボロボロの、既にその役割を果たしているのかすら分からないほどに損傷した黒いロングコートを来ておりそこから伸びる手足もまるでなにかに抉られたかのような傷で埋め尽くされていた。
これだけでも生きているのか不思議な程の状態の人影だが、最大の異様さはその背中と首にあった。
その背中には十字架のようなものが生えておりそれは人影の背中を貫通し地面に深々と突き刺さっている。その傷口からは止めどなく紅がたれ流されておりそれは人影の身体を染めながら地面へと流れている。しかしその紅も地面へと辿り着くと黒に飲み込まれて消えてしまった。
そして首、そこには一筋の線が入っておりそこからも紅が流れている。
しかし、このような確実に死んでいるであろう状態でこの人影はその生命を終えていなかった。
人影の左瞳は常に下のある場所だけに向けられており、その瞳からは一筋の光となって涙が流れていた。
人影の視線の先には己の右手がありそこには黒い何かが溜まっている。
その黒い何かは今でも上から流れておりその流れてきた分だけその掌からこぼれ落ちていた。
黒い何かが流れ出しているのは彼の右瞳であり、本来右瞳があるはずのそこには何も無くただ黒い空洞だけが顔を覗かしていた。
人影が流す涙が一滴下へと落ちる。
落ちた先には右手がありそこへと波紋を上げながら雫が入り込んだ。
波紋が収まり再び黒い何かが動きが無くなると液面に何かが映し出された。
映し出された先には数名の少女が映し出されており、彼女達は明るい姿が映し出されるそれはこの場所とは相反する光景であった。
人影はその光景を見ていると再び瞳から雫がこぼれ波紋を立てる。
波紋により映し出されていた光景は歪み消えるが波紋が収まると今度は違う映像が映し出された。
そこには、晴れ着を見せ合いながら笑う少女達がいた。
それからも雫が落ちる事に様々な映像が映し出され続けた。
その映像に統一性はなく写し出せれるが、その中に2つの共通点が存在している。
1つ目は、必ず黒髪の少女が映し出されていること、
2つ目は、映し出されている人物が年齢を重ねて行っていること、
この2つから、この映像は黒髪の少女の年齢順に映し出されていることが分かった。
黒髪の少女はやがて、大人になっていきどんどんとその人生を歩んで行った。
そして長い時間が流れ少女は年老いその人生に幕を下ろす。
すると映し出されていた映像は突如消える。
そこからはいくら雫が落ちても映像が映し出されなくなりついにその世界に静寂が訪れた。
静寂の支配された黒い世界、
全てが黒で染るこの場所に白い何が現れた。
それは人の形をしており覚束無い足取りで黒の中を進む。
白い影はただ前へと進み続けた。
その先には黒い何かが座っており、白い影はそこを目掛けて歩く。
白い影は目的の場所に辿り着くと黒い人影の前に立ち手を伸ばした。
白い影の手が人影に触れる寸前で、何故か白い影は手を引っ込めた。
そして自身の手を見ると再び人影へと手を伸ばす。
それからしばらく伸ばしては引っ込めてを続けついに人影に触れることができた白い影はその手を人影の頬へとそっと撫でる。
白い影は人影の顔へと自身の顔を近づけ額同士を合わせると人影の頭に手を回し抱きしめた。
強く抱き締めた人影は微動だにしないがその右瞳から流れていた黒い何かが止まりそこには先程までなかった右瞳が存在していた。
抱き締めていた白い影が離れると人影の頭に両手を添え持ち上げた。
人影の頭は首から離れ身体が崩れた。
自身の手の中にある頭部を胸に抱えた白い影は振り返り元の道を戻っていく。
白い影は覚束無い足取りで歩く。
その足には黒い何かが絡みつき歩みを止めようとするが止まらない。
白い影は歩き続けると目の前に大きな建造物のようなものが姿を現す。
その建造物は一軒家ほどの大きさで外装は黒い何かに覆われており全貌は分からず、一つだけ人が通れそうな大きさの穴が空いていた。
その穴の中は外と同じく真っ暗であり中は見えないが白い影は躊躇いなくその中を進んでいく。
穴の中を進んでいく行くと白い影に変化が起きた。
白い影の覚束無い足取りはしっかりとした物に変わり、身長が高くなる。
さらに進むと、体の線が細くなり少し身長が低くなった。
しばらく進み続けると、道の脇から光が盛れており白い影はその中へと入っていく。
その中には、一般家庭にあるようなリビングが広がっており、そこには大きめのテーブルと向かい合うように置かれた椅子が2つ、そしてテーブルの上にはポットやカップ、お菓子などが並んでいた。
白い影は椅子近づくと腰を下ろし膝の上に人影の頭部を置いた。
そして白い影が人影の頭を撫でていると2人を覆う何かが溶けていく。
そこには先程まで人影の見ていた黒髪の少女と少女と同年代の少年が存在していた。
ここは2人の思い出の場所、
2人が他愛のない会話をした平和な世界、
彼が安らぎを得られた唯一の居場所、
2人でお茶会をした黒鉄 蓮夜の家だった。
黒髪の少女・・・白井 夢結は彼の顔を撫で続ける。
その瞳からは涙が流れており、どれだけ流しても止まらない。
・・・遅くなって、ごめんなさい。
声にならない声が辺りに響く、
・・・どれだけ謝っても、謝りきれないことは分かっているわ。
彼女の中にあるもの、それは後悔だった。
彼女は彼の言葉を信じて彼の世界から出ていった。
それにより記憶を失った彼女は彼のことを忘れてしまったのだ。
彼女だけではない。
一柳隊のみんなが・・・いいや、世界そのものから彼の存在が抹消された。
1人にしないと、支え続けると誓ったのに、
彼女は忘れてしまった。
彼を1人にしてしまった。
彼を孤独にしてしまった。
触れ合う事を怖がっていた彼に無理を言って、繋がりを持つことを諦めていた彼の手を無理やり掴んで、
彼の意志を無視して自身の思いを伝えた。
自身の我儘なのに彼は受け入れてくれた。
それなのに、彼女は彼を裏切ってしまった。
彼に希望を見せるだけ見せて、ただ絶望だけを与える結果となった。
これが彼女が犯してしまった彼女の罪、
そして今の彼が彼女の罰、
死したことで思い出したがもう遅かった。
思い出した彼女が探し続けた先に見つけた彼は既に彼女の知る彼ではなくなっていた。
もう元には戻せない。
・・・貴方はきっと、私のことを恨んでいるわよね。
彼は恨んでいるだろう。
拒否をしていた彼を無理やり引っ張ったの彼女自身なのだから、
彼女は彼に謝罪をするために彼を探し続けた。
しかしもう彼女の声は彼には届かない。
・・・私がいたから、
彼女の心に罪の重みがのしかかる。
その押し潰されそうな重圧に必死に耐えて彼の顔を撫で続ける。
これを彼が望んでいるとは思えなかった。
しかし、彼女にはもうこうすることしか出来なかった。
・・・ごめんね、ごめんね、夢結。
夢結「・・・えっ?」
彼女しかいないこの部屋で彼女以外の声が響く、
・・・約束を守れなくてごめんね。帰れなくって、守れなくてごめんね。
夢結「・・・なんで、なんで貴方が謝るのよ・・・。」
・・・置いて行っちゃってごめんね。約束したのに、約束したのに、
聞こえないはずの彼の声が聞こえる。
彼女はこれが幻聴かと考えるが彼の口が動いていることからこれが真実であると確信する。
・・・君を幸せにするって言ったのに、悲しませてごめんね。
これは彼に唯一残っていた感情、
それは彼女への罪の意識だった。
彼はずっと後悔していたのだ。
彼女を幸せにする、それが彼が彼であるための存在意義であり、彼の願いだったから、
夢結「・・・貴方が謝る必要なんてないのに、謝らないでよ。・・・バカ、」
彼女は彼を強く抱き締めた。
決して離さないように、決して離れないように強く。
すると彼は開いていた瞳を閉じる。
蓮夜「・・・あたたかい、」
彼の口から言葉が漏れる。
蓮夜「・・・ねむい、」
夢結「・・・そうね、疲れたでしょうね。・・・もう眠ってもいいのよ?」
蓮夜「・・・おやすみ、」
夢結「ええ、おやすみなさい。もう悪夢なんて見ないで幸せな夢を見るのよ。・・・貴方は頑張ったのだから、」
彼は幸せそうな表情をすると安らかな寝息を立てた。
その寝息を聞きながら彼女は彼を抱き締めながら撫で続ける。
彼が苦しみ続けないように彼を
彼女は彼に触れた時あることに気づいていた。
彼の呪いである寿命の喪失がなくなっていることに、
彼が獣になってまで失わなかった
それらの要素が重なり合ったことで生まれた
しかし、これはただ無限が有限になったに過ぎない。
彼の鼓動が止まるまであとどれくらいの年月があるか彼女には分からない。
数年?・・・数十年?・・・・数百年?
それ以上かもしれない。
しかし彼女はただ彼の頭を撫で続ける。
彼が目を覚まさないように、
彼がこれ以上
それが彼女が彼にできる唯一の償いだと信じているから、
本話の投稿の都合上今週のラスバレ編の投稿はお休みさせていただきます。
ご理解の程よろしくお願い致します。
本話は次回の投稿からFallen Eyes編の最後尾に移動させていただきます。