アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
ヘルヴォルがヒュージを倒すと同時に勢い良く降り続けていた雨が止み、雲の隙間から晴れ間が見える。
梅「んん〜っ。雨もすっかりやんだな。」
ミリアム「ヒュージの方も、あいつらが倒したのが最後だったようじゃ。この付近からはもう反応がない。」
梅は背筋を伸ばしながら周りを見渡す。
その意図を察したのかミリアムが周囲にヒュージの反応がないことを伝えると彼女達は警戒を緩くし始めた。
梨璃はヘルヴォルのメンバーが警戒を解いたことに気づくと一葉へと声をかける。
梨璃「一葉さん!またお会い出来ましたね!嬉しいです!」
一葉「私もです。先日は簡単な挨拶だけでしたからね。」
一葉もこちらの事に気が付き近づきながら挨拶をしてきた。
一葉「夢結様も来て頂き、ありがとうございます。」
夢結「ええ、随分と早い再開になってしまったけど。」
一葉が2人と話している事に気づいたのか、ヘルヴォルのメンバーもこちらへと駆け寄る。
恋花「なになに、一葉ってば百合ケ丘の子たちと仲良しだったんだ。」
一葉「いえ、仲良しというかーー」
梨璃「はいっ!お友達です!」
一葉「・・・ふふっ、そうみたいです。」
恋花の言葉に一葉は戸惑いながらも否定しようとするが、彼女の言葉に梨璃が言葉を重ねてしまい、少し惚けながらも微笑しながら自身の言葉を訂正した。
一葉が梨璃達から一柳隊の方へと目線をずらすとそこには負傷をした少女達がおり、それに気づいた彼女はそちらへと近寄った。
一葉「あなたたちも無事でよかったです。」
???「いえ・・・。まさかヘルヴォルに来ていただけるとは思いませんでした。」
一葉は彼女達の無事を確認すると改めてこちらへと振り返った。
一葉「あっ、まずは御礼を申し上げます。」
彼女は自身の姿勢を正すとこちらへと真剣な視線を向ける。
一葉「この度は救援要請に快諾いただき、我がエレンスゲ女学園に所属するリリィを保護していただいたこと誠にありがとうございます。正式な感謝状は後日、学園を通して送られると思いますがーー」
彼女は一柳隊へと感謝の言葉を述べていると、横から恋花が割り込んで来て話を遮る。
恋花「かたい!かたい、かたい、かたい!買ったのを忘れて3日後に冷蔵庫から発掘されたドーナツくらいカチカチでパッサパッサだよ、一葉!」
一葉「そんなこと言われても・・・。」
堅苦しい一葉の言葉に我慢出来なくなった恋花は彼女に文句を言い始め、言われた一葉もどうすればいいのか分からなくなってしまい固まってしまう。
そんな2人に対して一柳隊のメンバーはどう声をかければいいか悩んでいると、二水が躊躇いながらも前に出る。
二水「あの、あなたは・・・。」
彼女の疑問の声を聞いた恋花は待っていたと言わんばかりに勢いよく飛び出す。
恋花「おっと、自己紹介が遅れたね♪ヘルヴォルのおしゃれ番長、飯島 恋花とはあたしのことよ!」
梨璃「ばんちょう・・・?」
夢結「エレンスゲには変わった役所があるのね。」
一葉「気にしないでください、夢結様。」
美鈴(・・・ただの自称だと思うよ。)
夢結達は彼女の言葉が理解出来ず困惑していると、一葉も困惑しながら彼女達へと気にしないようにと言う。
彼女達へとフォローを入れた一葉は嬉しそうに喜んでいる恋花へと振り向くと、
一葉「恋花様もあんまりふざけないように。」
恋花「だって、一葉がかたいからさ〜。」
一葉「恋花様が柔らかすぎるんですよ・・・。」
一葉は恋花のことを叱ろうとするが、その言葉を彼女は受け流し態度を変えずに話し続ける。
それを見た一葉は情けない声を出しながら軽く頭を抑える。
ミリアム「ふむ、あれがエレンスゲのトップレギオンか。思ったよりも愉快な連中のようじゃの。」
一柳隊が、そのやり取りを見て雰囲気を緩めお互いに会話を始めていると、先程までミリアムと会話をしていた梅が千香瑠へと向かって歩み寄る。
梅「なかなか面白いレギオンに入ったみたいだな、千香瑠。」
千香瑠「ふふふ・・・梅さんこそ。」
梅の言葉を受けて千香瑠は微笑みながら返事をすると視線を夢結へと向けた。
千香瑠「それにまた夢結さんと同じレギオンに所属しているなんて、私まで嬉しくなってます。」
梅「あー、あれはまぁ、うちのリーダーのお陰というか・・・うん。」
2人が会話の花を咲かせているとミリアムがそちらに気づき近づいてくる。
ミリアム「なんじゃ、お主ら顔見知りじゃったのか。夢結様のことも知っておるとはな。」
千香瑠「ええ、何度か戦場でご一緒する栄誉にあずかりました。」
梅「ははは、謙遜はよせよせ。大人しそうなナリをしてるけど、千香瑠は相当の使い手だからな。」
ミリアム「ふむ・・・まぁ、そのCHARMを見ればわかる。百由様から話は聞いていたが直接見るのは初めてじゃな。」
ミリアムが千香瑠の持つCHARM、ゲイボルグに興味を示していると後ろから瑤がやってきた。
瑤「あの・・・千香瑠。携帯食、余ってないかな?藍がお腹減ったって騒いでて・・・。」
瑤の言葉に千香瑠は藍のいる方向を向く、そこにはウロウロと何かを探すように周りを見渡たす藍の姿がおり、それを見た千香瑠は微笑みながらしかし困ったような表情をする。
千香瑠「あぁ、いっぱい動きましたもんね。でも急な出勤だったから藍ちゃんの好きなお菓子はないかも・・・。」
藍「甘くないの、やだな。もそもそしたクラッカーとドロみたいなスープはいらなーい。」
ボソボソと力の抜けた声を出す彼女はこちらへと近づいてくる。
梅「おっ、さっきのルナティックトランサーの子か。それと、そちらは初めましてかな?」
藍「らんだよ、ささきらん。」
瑤「あ、ご挨拶が遅れました・・・。初鹿野 瑤です・・・よろしくお願いします。」
梅「私は吉村・Thi・梅。さっきも話していたけど、千香瑠とは何度か戦場で会った仲だ。」
ミリアム「わしはミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス。リリィじゃが、アーセナルとしてCHARMの開発調整も請け負っておる。」
藍「ミリ村・・・昼で、マイ?・・・わかんない。」
ミリアム「いやいや、混ざっとる混ざっとる。」
藍は2人の自己紹介を続けて聞いたせいか分からなくなってしまい2人の名前が混ざってしまう。
梅「ははは、難しい名前だもんな。こっちはぜひ、ぐろっぴと呼んでやってくれ。」
瑤「ぐろっぴ・・・ですか?」
ミリアム「やめい、梅様。変なあだ名で呼ばれるのは百由様だけで十分じゃ。」
梅が揶揄うようにミリアムのあだ名を言うと瑤は困惑しミリアムは梅の発言にツッコミを入れる。
藍「ぐろっぴ・・・覚えやすくて、いい。」
ミリアム「むむ・・・まぁ、どうしてもというならよかろう。あまり人前で連呼されたくはないが・・・。」
藍があだ名を気に入ってしまったせいでミリアムは苦笑いをしながら何も言えなくなってしまう。
藍「むふー、ぐろっぴー。」
ミリアムの言葉を聞くと藍は喜びながら嬉しそうにそのあだ名を言い続ける。
瑤「なんだか、すいません・・・。」
ミリアム「わははは、面白い娘じゃの。さっきまであんな戦い方していたリリィとは思えん。」
瑤「・・・でも、藍は藍・・・です。」
梅「ああ、そうだな。見事な戦いだったゾ。」
梅が藍のことを褒めると彼女は満面の笑みを浮かべながらはしゃぎ出す。
結梨「藍って言うの?」
はしゃいでいる藍の前に結梨がやってきた。
結梨は不思議そうな顔をしながら、藍の周りを回りながら彼女を見る。
それに気づいた藍も不思議そうな顔をして、結梨の動きを追うように身体の向きを変えながら彼女のことを見始めた。
藍「うん、らんだよ。」
結梨「わたしは結梨、よろしくね。」
藍「うん、よろしくねー。」
2人は何かを感じたのかすぐに打ち解け楽しそうに会話を始めた。
その後一通りの自己紹介が終わり各々の帰還地点に戻ろうとした時、
一葉「あれ?そういえば・・・。」
梨璃「一葉さん・・・?どうしたんですか?」
一葉「梨璃さん、そういえば黒鉄さんが居ないと思いまして、」
梨璃「黒鉄さんですか・・・?そこにいますけど?」
梨璃は一葉の言葉に不思議そうな表情をするとある場所に向かって指を向ける。
一葉は彼女の指を指す方を見るとそこには夢結の姿があり、そこには彼の姿がなかった。
一葉「・・・えっ?夢結様しかいないような気がしますが・・・。」
夢結「私の隣にいるわよ・・・。蓮夜、」
蓮夜「・・・ん?どうかしたか?」
夢結は自身の隣へと視線を向けた。
するとそこの空間が歪み、その歪みから彼が姿を現す。
その光景を見たヘルヴォルのメンバーは驚愕するが一柳隊のメンバーは苦笑し夢結は頭を抑えてため息を吐いた。
夢結「蓮夜、貴方・・・レアスキル解いてないでしょう。」
蓮夜「・・・すまん、考え事してて解くの忘れてた。」
夢結「いいわ、とにかく自己紹介をしなさい。してないのは貴方だけよ。」
蓮夜「ああ、そうだな。」
夢結との会話を終えると彼はヘルヴォルのメンバーの方へと向き直る。
蓮夜「遅くなったけど、俺は黒鉄 蓮夜、一柳隊所属で2年です。そちらの隊に所属している茜とは知り合いで、この隊ではミリアムさんと同じくここの隊のCHARMの整備や調整をしています。これから、よろしくお願いします。」
そこからは彼の自己紹介がしばらく続き、話終わると彼は周りを見渡しながら一葉へと1つの疑問を投げかけた。
蓮夜「そういえば、一葉さん?・・・ここに茜が居ないような気がするのですけど、」
一葉「茜ですか?彼女はCHARMの調整が終わらずにここには来ていません。」
蓮夜「そうですか、何かあったのかと心配になって、それなら安心です。」
一葉「ええ、大丈夫ですよ。彼女もCHARM持たずに来ようとしているくらいには元気でした。」
蓮夜「あはは、・・・そうなってたら説教だな。」
彼は軽く笑うと表情が一変し、平坦な口調で言葉を紡ぐ。
一葉「そ、そうですよね。・・・良かった、止めることができて、」
挨拶も終わった彼女達は各々で会話の花を咲かせ始める。
その影で彼だけが森の奥を睨むように見つめていた。