アサルトリリィ Abnormal Transition   作:0IN

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ラスバレ1章⑩

蓮夜「・・・もう居ないか。」

 

 

蓮夜は森の中を見渡しながらつぶやく。

彼のいる場所は木々が生い茂る森の中であるはずだが彼の周りには木々は1本として生えていなかった。

彼の周囲の地面には無数の切断痕が存在し、正常な地面を探す方が大変であり、地面には生々しい傷跡を残した木々が倒れている。

木々の傷跡は多岐にわたり、切断痕、弾痕、焼け跡、そして菱形の傷跡が所狭しと残されていた。

その中で唯一無傷である彼は周りを見渡し終えるととある方向へと駆け出す。

その先は木々の生い茂る普通の森であるがその木々は何かの爪痕や虫食い状になっているなどの異常を来たしているものも点々と存在していた。

彼がしばらく走り続けると森の中に開けた場所が現れる。

そこは地面は焼きただれており木々は黒焦げた炭にとなり地面一面を灰が覆っていた。その中には未だに赤熱な状態の場所にもあり一部ではガラス化している場所も見られた。

 

そんな異様な光景の中央に1人の少女が畳んずんでいる。

 

 

蓮夜「夢結!・・・?」

 

 

その少女、白井 夢結は彼の言葉が聞こえなかったのか顔を下に向けたままその場を動かない。

彼はその様子を心配そうに近づくと、彼女は彼に気づいたのか彼の方へと身体を向けた。

 

 

蓮夜「・・・大丈、!?」

 

夢結「・・・。」

 

 

彼が再び彼女へと声をかけると彼女は彼に向かってかけ出す。

その行動に動揺した彼へと向かって来た彼女は彼にしがみつくように彼を抱き締め、自身の顔を彼の胸板で隠すように押し付ける。

冷静さを取り戻した彼は夢結へと視線を向ける。

彼女は無言のままこちらを抱き締めているが、その方は細かく震えていた。

 

 

蓮夜「・・・夢結、ごめんね。・・・辛かったでしょう。」

 

夢結「・・・。」

 

 

彼は彼女の背中へと手を回すと強く抱き締め、優しい口調で問いかけながら彼女の頭を撫でる。

しばらくすると彼女も落ち着いてきたのか震えが止まり抱き締める力も弱くなった。

 

 

夢結「・・・怖かったの。」

 

蓮夜「・・・。」

 

夢結「・・・覚悟はしてたわ。・・・だけど怖かったの。」

 

蓮夜「・・・大丈夫だよ。夢結、それが当たり前なんだ。」

 

夢結「・・・けれど、」

 

蓮夜「・・・普通なら僕みたいに、こんなこと慣れちゃ行けないんだよ。だから大丈夫、」

 

夢結「・・・いいえ、ダメよ。」

 

蓮夜「どうしてかな?」

 

夢結「貴方と一緒にいる・・・そう言ったでしょう?」

 

蓮夜「だからって無理する必要はないんだよ?」

 

夢結「・・・確かに無理はしているかもしれないわね。だけどダメなの、」

 

蓮夜「・・・。」

 

夢結「私は貴方を支え続けるって決めたから、本当は貴方も辛いのでしょう?」

 

蓮夜「・・・いいや、辛くないよ。もう、慣れてるから。」

 

夢結「いいえ、それは無いわ。確かに貴方は平然そうに見えるけど、本当は貴方も泣きたいのでしょう?」

 

蓮夜「・・・そう、なのかな?」

 

夢結「・・・きっとそうよ。今の貴方の中(心)は悲しみで溢れているもの。」

 

蓮夜「・・・。」

 

夢結「だから私が支えて投げないと、少しでも貴方の悲しみが少なくなるように、」

 

蓮夜「・・・それで夢結が無茶をするなら僕は余計悲しくなるんだけどな。」

 

夢結「貴方は優しいものね。今の私を見ていると辛いんでしょう?」

 

蓮夜「そう・・・だね。」

 

夢結「・・・ごめんなさい。けれど私はやめられないのよ。そうしないと貴方が何処かに言ってしまいそうで。」

 

蓮夜「・・・僕は何処にも行かないよ?」

 

夢結「分かっているわ。貴方は私に寄り添い続けてくれる。それは分かっているのだけど、もしもやめてしまったら心の奥のそれとは違う何かが離れてしまう。・・・そう感じてしまうの。」

 

 

彼女の願望、それは彼を支え続けること、

支えるそれだけなら簡単だろう。

しかし、彼女はそれだけでは満足出来なかったのだ。

彼の苦しみを、悲しみを共に背負う。

それが彼女が考える「支える」ということだから。

 

 

夢結「私は貴方の隣に居たいの。ただ隣にではなく、本当の意味での隣に、」

 

蓮夜「本当の意味?」

 

夢結「ええ、苦しみも、悲しみも、怒りも、そして喜びも、全てを貴方と共に感じたい。」

 

蓮夜「・・・。」

 

夢結「・・・面倒な女かもしれないけど私はそういう性格なのよ。」

 

 

夢結は少し暗い表情をしながら顔を背けた。

彼女も分かっているのだろう。

これが、ただのエゴであることを、

 

 

蓮夜「・・・面倒なんて思ったことは1度もないよ。」

 

夢結「・・・。」

 

蓮夜「確かに僕は夢結が苦しむ姿を見たくない。できることなら君をこの世界に関わらせたくなかったんだ。」

 

夢結「・・・。」

 

蓮夜「だけど君は僕を助けるためだけにこの世界へと入って来た。原因である僕が君に何かを言う資格なんてないんだよ。」

 

夢結「資格なんて・・・それをいうなら私が、」

 

 

彼の言葉を聞いた彼女は慌てた口調で言葉を紡ぐ。

資格がない・・・それは彼の言葉ではなく自身の言葉であるはずだからだ。

彼がこの世界に入った・・・彼の人生を狂わせた原因は白井 夢結、彼女自信に存在しているから。

そんな彼女の口を何が塞ぐ。

その柔らかい感触に思考を持っていかれる。

 

 

蓮夜「・・・そう、僕達はお互いにそんな資格はないんだ。だから僕は君の全てを受け入れる。だから君ももっと自由になっていいんだよ。」

 

 

彼の言葉を聞いた彼女は一瞬身体を硬直させると彼へと視線を向ける。

 

 

夢結「・・・本当にいいのかしら?」

 

蓮夜「何を言っているんだい?いいに決まってるじゃないか。君は僕で僕は君なんだ。お互いにお互いを縛れない。けど、それはお互いの全てを受け入れるってことでもあるんだよ。」

 

夢結「・・・。」

 

蓮夜「だから君は君のままでいいんだ。支えることに固執(誓いを立てた白井 夢結)しなくても(ではなく)、僕の好きないつもの君(ありのままの白井 夢結)で、」

 

 

彼の言葉を聞いた瞬間彼女の瞳から雫が零れ落ちる。

彼の真実(過去)を知った彼女はとあることに縛られていた。

 

彼のことを苦しめ続けてい(人生を狂わせ)た私は、彼を幸せにしなければ(のために生きなければ)いけない。

 

だから変わらなければいけない。

 

彼の全てを狂わせた私(今までの白井 夢結)ではなく、彼を支えることができる私(完璧な白井 夢結)に、

 

それが正解だと信じていた。

しかし、それは間違いだった。

 

彼が望んでいること、

それを分かっていながら間違えていたのだ。

彼の願望、

それはあの頃の日常を送ること、

 

それは彼を支えることができるだけの私(完璧に見える白井 夢結)ではダメなのだ。

彼が望む彼女、それは彼の日常にいる私(いつもの白井 夢結)、

それこそが彼が最も安らげる場所(時間)、白井 夢結との日常なのだから、

 

 

夢結「・・・そうよね。何か勘違いをしていたわ。」

 

蓮夜「・・・。」

 

 

彼女は1度深呼吸をすると彼へと向き直る。

その表情は晴れ晴れとしておりそれを見た彼は安心した表情で彼女の言葉を聞き入れる。

 

 

夢結「私の悪い所ね・・・でも大丈夫、もう固執することはしないわ。」

 

蓮夜「・・・うん。」

 

夢結「けれど、貴方の隣にいることはやめないわよ?」

 

蓮夜「・・・これからも、つらい思いをすることになるよ?」

 

夢結「分かっているわ。だけど、これは私の考えた(誓った)からではなく、私の自信がそう成りたいと思ったからよ。」

 

 

そういうと再び彼女は彼の胸板へ自身の頬を擦り寄せた。

 

 

夢結「絶対に話さないわよ。」

 

 

彼女はそっと呟くと自身の身体を彼へと預ける。

それを受け止めた彼は彼女へと微笑みながら彼女を抱き締め返す。

 

 

 

それは、梨璃達からの連絡が来るまで続いた。

 

 

「特型ヒュージに逃走された。」

これが彼女達から送られてきたものだった。

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