アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
樟美「天葉姉様?」
壱「依奈様?」
2人は何が起きたのか理解出来なかった。
どうして天葉と依奈が苦しんでいるのか?
どうして彼女達の倒れてる地面が紅く染まっているのか?
どうして彼女達の手足がないのか?
樟美「いや・・・。」
天葉「樟・・・美。」
木々の後ろから人影が姿を現す。
その身体は青白い光を発しており上手く視認出来ないが、その手にはCHARMが握られていることだけが確認できた。
CHARMには紅い何かが付いておりそこから雫が零れ落ちる。
樟美「嫌ァァアアア!!」
壱「よくも!!」
現状を理解できた樟美は悲鳴を上げ、壱は激怒し人影に向かって襲いかかった。
壱「はぁあ!」
壱ら目の前の人影に己のCHARMを振り下ろす。
その速度は凄まじく構えていない人影では対応出来ずにそのまま切り裂かれてしまうであろう威力を持ち合わせていた。
これが当たってしまえば人影を殺傷してしまうかもしれないが今の壱にはそのような考えは思いつかず、ただ怒りのままに目の前に存在する何かを斬ることのみを考えていた。
彼女の刃が人影に当たる瞬間、
壱「なんですって!?」
彼女のCHARMは人影の持つCHARMに防がれてしまう。
その事実に彼女は驚愕した。
この一撃は対処不可能であると考えていたからだ。
それと同時に彼女の頭に登った血は下がり冷静さを取り戻すと共に自身の顔を青くさせた。
それもそのはずだ。
彼女は自らの手で人を殺めようとしてしまったのだから、そのようなこと戦闘慣れをしているとはいえ1人の少女には重い現実であった。
その事実に気づいた彼女はその思考を停止させる。
真っ白になったその視界で、
私は何をしようとしていたのか?
自身に対して問いかける。
しかしその答えは、帰ってくることがなく彼女の身体は硬直した。
どうして、私は躊躇いもなく・・・
これでは私は・・・
樟美「天葉姉様!!しっかりしてください!」
思考の底に沈んでいた彼女の意識が1人の少女の悲痛な叫びによって引き戻される。
壱が慌てて樟美の方を確認すると、蹲り自身の傷口を抑える2人と、それを悲痛な表情のまま固まった樟美の姿があった。
今の樟美は現状が余りにも理解出来ず正常な思考ができなくなっていた。
それを見た壱は自身の目の前にいるはずの人影へと視線を戻す。
今の樟美では人影には対処できない。
そして、その原因を作り出した張本人が目の前にいるのだ。
これを抑えていなければ余計な被害を受ける。
そう理解した彼女だが、
壱「・・・えっ?」
再び彼女の思考が停止する。
彼女の視界に映し出されたもの、それは・・・
壱「・・・なによ?・・・これ?」
吸い込んでしまいそうな、濁り切った眼だった。
壱「ひっ!?」
相手と視線が会った瞬間彼女は強烈な寒気と恐怖感に襲われる。
彼女はその恐怖から少しでも遠ざかれるようにと己のCHARMを力いっぱい振るい人影から距離を取った。
壱「はぁ、・・・はぁ、・・・なんだったの?今のは?」
壱は深呼吸をしてひとたび気を落ち着かせると再び人影へと視線を向けた。
彼女は人影が先程とは違い光が薄れその輪郭をしっかりと視認できるようになっていることに気づきその姿を確認する。
その正体は自身とそう年齢が違わない少女であり、その手にCHARMを持つことからリリィであることがわかる。
エレンスゲ女学院の制服を来ていることからエレンスゲ所属であることがわかるが、その姿は異様であった。
まずその少女の左腕は肘から下が存在していない。
左袖はまるで千切られたかのような切れ方をしておりそこから覗きだす肉体はノコギリで切られたかのような荒々しい傷跡が残っていた。
その異様な姿に壱は自身の身体を震わせる。
口は開いたまま塞がらずその視線はなぜが少女から話せない。
壱はまるで意識が少女の瞳に吸い込まれるような感覚に襲われながらその身体を動かすことができない。
動けない彼女へと少女がゆっくりと歩み寄る。
その足取りは思おもしく、左足を引きずっていた。
よく見ると左足首が酷く腫れており骨が俺であることがわかる。
そして少女の後ろにそびえる木の影からは何体もの青白い人影が姿を表していた。
壱「・・・あっ、」
少女は壱が先程開いた距離を少しずつ縮めて行く。
1歩、1歩と着実に近ずいてくる足音を聞きながら彼女は動けない。
壱「・・・いや、」
彼女も今の現状に気づき必死に身体を動かそうとするが動かない。
その間も少女は1歩ずつ確実に壱へと近ずいてくる。
少女は彼女の目の前に近寄ると力無く下げていたCHARMを頭上に上げた。
依奈「壱!」
依奈の叫びを聞いた壱の身体が無意識に後ろへと動く。
それにより壱の命を狙っていた凶刃は彼女の鼻先を通り過ぎた。
壱はその凶刃の行き先を確認する前にすぐさま身体を翻し依奈達の元へと駆け寄った。
壱「依奈様!」
依奈「壱・・・聞きなさい。」
壱が依奈の元に駆け寄るとそれに気づいた彼女は顔を上げた。
依奈「・・・壱、樟美を連れて逃げなさい。」
壱「何を言ってるのですか!?依奈様も一緒に!」
依奈「・・・無理よ。私は大丈夫かもしれないけれど、」
依奈は1度言葉を止めると視線をある方向に向けた。
壱がその視線を追うとそこには無いはずの足を押させる天葉とそれを見て泣いている樟美の姿があった。
依奈「重傷者を2人も連れて、多数の敵を相手するのは無理よ。・・・だから樟美を連れて逃げなさい。」
壱「・・・救援を要請しましょう!救助が来るまでならどうにか、」
依奈「それも無理よ。・・・ここは何故か電波が繋がらないみたいなの。」
依奈はそう言いながら自身の端末を見せた。
するとそこには圏外と表示されておりそれは救助の要請が不可能なことを指している。
依奈「だから電波の送信が可能な場所まで行って救助を呼んでちょうだい。」
壱「・・・依奈。」
依奈「私達は大丈夫よ。・・・私達が強いのは知っているでしょう。」
壱「・・・はい、」
依奈「だからお願い、」
彼女の言葉に壱は1度顔を俯かせる。
そして1度深く深呼吸をすると彼女は依奈へと視線を向けた。
壱「分かり・・・ました。」
その言葉と共に壱は樟美の元へと駆け出す。
壱「樟美!行くわよ!」
樟美「いや!天葉姉様が!」
壱は樟美の腕を掴むとその場を離れようとするが樟美はそれに抵抗する。
壱「助けるために行くのよ!」
樟美「・・・だけど、」
樟美も壱の意図は分かっていた。
しかし彼女はそれを拒む。
天葉「樟美・・・行きなさい。」
樟美「天葉・・・姉様?」
天葉「大丈夫よ。絶対に帰るから、・・・樟美を置いて何処かに行くなんて絶対しないから、樟美のシュッツエンゲルとして・・・ね。」
天葉は樟美に言い聞かせながら彼女の背中を押す。
それを見た壱は天葉を見ると会釈する。
それを見た天葉は壱へと微笑みながら、
天葉「樟美を、お願いね。」
壱「はい!・・・必ず救援を読んできます!」
そして2人は森の奥へと消えていった。