アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
6人以外に何もない白い世界、そこから完全に音が消える。
その静寂の中、天葉はただ彼へと視線を向け続けた。
蓮夜「・・・。」
天葉「さっきのはなんだったの?・・・あの子達、本当なら動けるはずのない怪我なのに何も感じてないかのように動いていたわ。・・・あんなの普通じゃない・・・。」
蓮夜「・・・。」
天葉「それに私も依奈もおかしくなってた・・・それに、」
そう言うと彼女は視線を下へと向ける。
そこには安心した顔で眠っている樟美の姿がありその下には失ったはずの両脚が存在していた。
天葉「私の足、それに依奈の腕だってさっきので無くなっていたはずよ!それなのに戻ってる。・・・こんなことリリィだとしても不可能なのに・・・。」
蓮夜「・・・。」
彼女は叫ぶように彼に向かって問いかけるが彼は口を開かない。
天葉「貴方は何をしたの?・・・それに夢結も・・・。」
夢結「・・・それは、」
彼女の悲鳴にも似た叫びに夢結が答えそうになるがそれを蓮夜が手で制す。
蓮夜「夢結は帰っていてくれ、・・・梨璃さん達も心配するだろうから。」
夢結「・・・わかったわ。」
夢結は1度天葉を見るとその身体は不明瞭になっていきこの世界から姿を消した。
蓮夜「・・・すまない。」
そこで彼の口が開く。
彼の口から紡がれた言葉、
それは謝罪だった。
蓮夜「・・・今は言えないんだ。」
天葉「・・・どういうことよ?」
蓮夜「準備がいる。」
天葉「・・・準備?」
蓮夜「ああ、・・・だから言えない。」
彼の言葉を聞いた彼女は何かを考える素振りをすると再び彼へと視線を向ける。
天葉「言えない理由があるのね。」
蓮夜「そういう事だ。・・・言う側も言われる側もここではリスクが高い。」
天葉「ここではね。・・・つまりここでなかったら言えるってこと?」
蓮夜「ここだけってわけじゃない。話すにも場所を用意しないとまずいからな。」
天葉「わかったわ。助けて貰ったんだしそこまで無理強いは出来ないからね。・・・今は聞かないけどちゃんと説明しなさいよ。」
蓮夜「わかってる。・・・けど、」
天葉「誰にも言うな、でしょう?わかっているわよ。」
蓮夜「・・・助かる。・・・それじゃこれから森の外に送るから救援を呼んでくれ。」
天葉「そのために怪我は残したのね。」
蓮夜「そういう事だ。すまないな。」
天葉「これくらい慣れてるから平気よ。」
2人が言葉を交わし終わると視界が白い光に染まる。
そして光が収まるとそこは先程までの白い世界ではなく草木生い茂る草原だった。
天葉が辺りを見渡すと依奈達が寝息を立てており、背後にはあの森が見える。
そして彼がいないことを確認すると大きくため息を吐き、天葉は自身の端末を操作し始めた。
蓮夜「・・・。」
日も落ち暗くなった部屋で彼はただ座り込んでいた。
彼は微動だもせず何を喋らずにただ下を見続ける。
月明かりもなく数cm先すらも視認できない部屋に存在するからはただそれだけだ異様さをかもちだしていた。
彼のいる部屋・・・彼の自室にはベットがあるだけでありそれ以外には収納棚などの生活に必要なものしかない。
そんな物静かな部屋で1人彼は何かを考え続ける。
夢結「少しいいかしら?」
彼が思考の底に沈んでいると突如ドアをノックされる。
ドアの外からは夢結の声が聞こえており、それは音の無い部屋に響き渡る。
しかし彼はこれに反応を示さない。
夢結「・・・入るわよ。」
彼が反応を示さないため断りを入れながら彼女は部屋の中へと入ってきた。
彼女は真っ暗な部屋を見渡すと先の見えない中彼の元へと迷うことなく歩いていく。
そして彼の元へと辿り着くと彼女はそっと彼の横へと腰掛けた。
夢結「今日のことを気にしているの?」
蓮夜「・・・。」
彼女は再び彼に向かって声をかけるがやはり反応がない。
夢結「確かに彼女達を巻き込んではしまったけれど、貴方は最善を尽くしたわ。」
蓮夜「・・・。」
返事は帰って来ない。
けれど彼女は彼へと優しく問いかける。
彼女には彼がこうなっている原因がわかっているのだ。
彼の感じている感情・・・それは後悔だ。
夢結「それに2人とも助かったじゃない?」
彼は天葉達を巻き込んでしまったことを後悔しているのだろう。
それが彼の心を蝕んでいる。
夢結「貴方がいなかったら2人とも・・・。それに樟美さん達だって、」
だから彼女は彼へと言葉をかけ続ける。
彼の心が壊れないように、
彼が自身の意思で歩んで行けるように、
それが今まで、彼女が2年の間、彼にして貰ったことなのだから、
夢結「今日のことは仕方がなかったのよ。」
蓮夜「・・・違う。」
夢結「・・・ごめんなさい、聞き取れなかったわ。もう一度話して貰えるかしら?」
ここで初めて彼の口から言葉がこぼれる。
しかしその声は掠れており彼女には何を言っているのか聞き取れなかった。
蓮夜「違うんだ!!」
静寂が支配していた部屋に、彼の悲鳴にも似た絶叫がこだました。