アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
どうして彼女は悲しんでいるのだろうか?
それが彼の中で最初に思い浮かんだ疑問だった。
彼には彼女が悲しんでいる理由が分からない。
だった自分が遅れてしまったから起きた事実を述べただけなのに、
自分はいつもギリギリで間に合わない。
それは彼が自身に対して思っていることであった。
大事な時に限って彼はいつも間に合わなかったり足りなかったりする。
美鈴の時だって、
両親の時だって、
今回だってそうだ。
もしも自身が気づくことができていれば天葉達は苦しまずに済んだはずだ。
そもそも彼が初めて接敵した時に仕留められていればそんな可能性すら存在しなかった。
なのになぜ今回の事態が発生したか、
それは自身の力が足りなかったからだ。
もしも自身の捜索能力が高ければ被害を出す前に駆けつけることができただろう。
もしも自身の殲滅力が高ければ初の接敵時に仕留め切れていたはずだ。
彼自身多くの力を生み出しそれを制御する訓練を積んできた。
だが、まだ足りない。
能力の幅も、制御能力も、練度も、
身体能力も、知覚能力も、知力も、
判断力も、思考力も、何もかもが足りない。
これではダメだ。
今日は上手くいったがまた同じく上手くいくとは限らない。
それに今日だって彼は迷ってしまった。
彼女達と親しかったとはいえ即座にその刃を振り下ろせず躊躇ってしまったから、
今回はそれが好機となったが次はどうなるか、最悪の場合彼女達は人でなくなる可能性すらあったのだ。
そうなってしまえば後戻り出来ない。
だから躊躇っては行けないのだ。
彼はこの2年間そうやってきた。
今まではなんの躊躇いもなくできていた行為、
しかし今日の彼には出来なかったのだ。
これは致命的だ、
このままでは、本当に大切な時にまた間に合わなくなってしまう。
そうなってしまえば後戻り出来ない。
どうして躊躇ってしまったか、
それは分かっている。
その原因・・・それは心だ。
この2年間失っていたものを取り戻しそしてそれが躊躇いを生んでしまった。
だから彼は戻らなくては行けないのだ。
しかしそれを見た彼女は悲しそうな表情で彼を見ていた。
どうしてそんな表情をするのだろうか?
それが彼には分からない。
自身の行動は正しいはずなのに、
何がいけないのだろうか?
何が足りないのか?
やはり彼には分からなかった。
自身の
そのために彼は自身の全てをかけた。
彼女へと危険が及ぶ可能性を全てを排除し、危害を加える可能性のあるものを全てを壊した。
この2年間徹底的に・・・、
その過程で彼の手は紅く染まってしまったが、彼はそれに対して何も感じることはなかった。
それこそが最適であるのだから、
だってそのはずだ、
そして危害を加える可能性のある
だから彼は違法施設へと侵入し可能性を
全ては
そして躊躇わないことはその時に最初に学んだことだった。
躊躇っては望んだ結果は手に入れられない。
そんな当たり前のことすら出来ないでいる自分自身に、彼は落胆していた。
どうしてそんなことすら出来ないのかと、
だからこそ彼はもう一度捨てようとしているのに、それを彼女は認めない。
なんで止めるのだろうか?
なんで泣いているのだろうか?
蓮夜(だってこれは
そこで彼は違和感を感じた。
なんで彼女を幸せにしようとしているのか?
あの時、力を得たのに彼女を助けることが出来なかったからか?
いいや、それは違うはずだ。
だって彼女は今自分の隣にいる。
確かに彼女の心臓は彼が新たに生み出したものであり彼女は1度死んでいるが、それを負い目に感じているのなら幸せにするではおかしい筈だ。
普通なら守るが適切であり、幸せにするではない。
では、姐さんを失った彼女を見たからだろうか?
それも違う、
その時には自分はほとんどの感情を失っていた。
そんな中で幸せにするという単語が思い浮かぶだろうか?
それに自身がそう考え始めたのはあの時より前だ。
だからこれも違う。
それではなぜ自分は
彼は自身の記憶を遡る。
この違和感の原因を見つけるために自身の記憶を紐解く。
2年前の惨劇を、姐さんと出会った日を、
次々と記憶を遡り続ける彼はついに
さらに記憶を遡り続け諦めかけたその時、
・・・ゆゆはつらくないの?
・・・つらいよ。だけどわたしはなりたいの、
・・・どうして?
・・・わたしは、みんなをしあわせにしたいから!
・・・ならぼくは、ゆゆをしあわせにするよ。ぼくにはみんななんてできるないから、だからがんばるゆゆをしあわせにする。
蓮夜(・・・そうだ。)
彼は答えへとたどり着いた。
それは彼女の願いを聞いた自身が彼女へとした約束、
蓮夜(なんで、忘れてたんだろう。)
これが本当の始まりだった。
彼女の夢を聞いて、彼は彼女を支えると決意した。
蓮夜(・・・大事なことまで忘れてたのか、)
その時は深く考えていなかったが、今の彼にはその会話はより鮮明により輝かしく感じられた。
この道は険しく苦難な道であることは明確だ。
だからこそそんな苦難の道を行く彼女だけを幸せにすることの出来る人間になりたかった。
それこそが彼の原点、
たとえ記憶を失っても、感情を失っても、
心すら失っても、残り続けていた
本当の意味すら忘れさり、それでも消えなかったその思いが彼の
それは彼の中で閉じ込められていた
その感覚に意識の遠のく彼を何かが優しく受け止めた。
彼が目には夢結がおり彼女は彼へと微笑みかけていた。
それを見た彼は安心したように彼女へと身を任せ、そのまま彼の視界は黒く染まった。