花騎士二次創作 小さくなったお姉ちゃん   作:ykkz

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第五話 王室専属薬師

 ……実験台の裏にいたのは、その場に不釣り合いな女の子だった。

 今のお姉ちゃんよりも小さい女の子。

 白衣を纏っているが袖は大きくまくられており、裾は地面についてしまっている。

 白衣の下はあられもない姿だ。 胸にはサラシがまかれているだけ、ミニスカートは大人用とみえてぶかぶかで、それを何とかピンでとめている。

 左手には試験管を手にし、右手はスポイトを扱っている。なるほど、これでは手が離せないだろう。

 

 察しはついた。これは……。

「ねぇおねえちゃ……」

「あっ!ここで遊んでちゃ危ないよ!お姉ちゃんにそれ貸して!」

 お姉ちゃんの行動はいつも素早い。

 たしかに小さい手で試験管を持っているのは危なっかしかったが、止める間もなく動いてしまっていた。そして避けようとする女の子。

 女の子は白衣の裾に足を取られ……。

 『あっ!!』

 「危ないっ!!」

 

 二人はもつれあうように転び、そして……。

 

 カシャーン!!

 

 試験管は手の中からすり抜けてしまった。

 私はなんとか、転ぶ二人を守るために床へ滑り込んで二人を受け止めることに成功したものの、ガラス製の試験管はそのまま床へ叩きつけられ、割れてしまったのだった……。

…………

……

 

 とりあえずガラスが危険なので片付けをし、自己紹介をすることになったのだが。

「ごべんなざい~~~~!!私はダメなお姉ちゃんですぅ~~~!!」

 ぺこぺこと謝るお姉ちゃん。私も一緒に頭を下げる。

「ごめんなさい。先ほど大丈夫と仰いましたが、お怪我はないですか?」

(うぅ、コナギちゃんに謝らせちゃってる。ダメダメお姉ちゃんですぅ……)という呟き声が聞こえてくるので慰めてあげたくなるが、お姉ちゃんの立場を考えて今回は我慢だ。

 

「ミズアオイさん、先ほどの件は大丈夫ですからお顔を上げてください。こちらの方はコナギさん、ですよね。お姉さんによく似ていらっしゃいます。お噂はかねがね。そのお年でもう司聖官目前だとか。

 コナギさんが受け止めてくださったので怪我もないようです。転んでしまったのは丈の合わない白衣を着ていた私の落ち度ですし、気にしないでください」

そう言われてお姉ちゃんも何とか涙をこらえて顔を上げることが出来たようだ。

「うぅ……今すぐ雲隠れしてしまいたいです。でも、今日はトゥルシーさんに聞きたいことがあってきたんです。

 察しが悪い私でももうわかりました。貴女がトゥルシーさんなんですよね?」

 女の子、もといトゥルシーさんが答える。

「はい、そうです。申し遅れました。私がトゥルシーで間違いありません。若輩ながら王室薬師を務めさせていただいています。

 そしてそのお姿、やはりあの薬を飲んでしまわれたのですね」

…………

……

 

 それからお互いに情報交換したところ、今回のトラブルの原因が判明した。

 トゥルシーさんが調剤した若返り薬の試作品。それがいくつかの偶然が重なってお姉ちゃんのための痛み止めと入れ替わってしまったらしい。

 発覚したのは今朝で、今頃騎士団宿舎に使いの人がいっているとのことだった。どうやら入れ違いだったらしい。

 

「……なので謝るのはこちらなんです。申し訳ありませんでした」

 そう言って今度はトゥルシーさんが頭を下げた。

「そういうことだったんですね、私なら大丈夫です!……ちゃんと戻れれば。戻れるんですよね?」

「はい。すぐにげど……元に戻す薬を用意できるはずだったのですが……」

「あの……今解毒って?」

「コホン、気のせいです。……ともかく、材料が先ほど割れてしまった分ですべてなんです」

「えぇ~!?それじゃあもうずっとコナギちゃんより小さいままなんですか?」

 お姉ちゃんが涙目だ。とりあえず安心させてあげないと。

「大丈夫だよお姉ちゃん。あくまで試作品なんだし、材料だってまた用意すればいいはずだよ」

 と言いつつトゥルシーさんに視線を向ける。トゥルシーさんはうなずき、続けて話し出した。

「コナギさんが仰る通りです。あの薬はリリィウッドのとあるフラワーナイトに協力して頂いて作成したのですが、完成には程遠く、おそらく一週間程度で効果が切れてしまうと思われます。

 騎士団には私からご説明させて頂きますので、大変申し訳ないのですが、経過観察も含めて治療院の方でお休みいただけませんでしょうか?」

 それを聞いてほっとした。トゥルシーさん自身も体が小さくなってしまっていたことから、大事には至らないとは思っていたが、お姉ちゃんの体のこと、私が心配でない訳はなかったのだら。

 それで気を抜いてしまったので、次の言葉で驚くことになってしまったのだ。

 

「じゃあ私が材料採ってきます!

 大丈夫!なぜなら、お姉ちゃんだからです!」

 そう、私のお姉ちゃんはいつでもまっすぐ全力で飛び込んでいく人なのだった。

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