至高の悪夢   作:巳傘ナコ

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第3話 《影と金》と《スパイ》と《染まった星》

 

 

「個々は私のプライベートルーム。 何を話そうと、誰を貶そうと全てがこの中で完結する場所ですので、聞かれる心配とそれに伴った制裁もありませんので、どうかご安心を。」

 

 

案内されたのはテゾーロの完全なプライベートルーム。

部屋に入るや否やモリアは影法師(ドッペルマン)を発動し、目に見える空間だけでなく、壁や家具の隙間から見えない場所まで探索させて安全を確認した。

 

 

『アタシはおっかなビックリひっそりと生きるのが好きな臆病者だから、念には念を入れってやつで調べさせてもらったぜ?』

 

 

「構わないさ。 今後も付き合い続く相手になるかもしれない君が不用心では私の方としても信用出来ない。 本当の《信頼》というのは長い時間掛けて互いが互いに抱いた疑惑と疑問、ソレらを互いに《納得させる》ことで築かれていくモノさ。」

 

 

テゾーロが放った言葉《納得させる》の意味は、けっして話し合っての仲良し小好しなんてモノではない。

それはテゾーロとモリア、互いに目の前にいる相手に抱く疑問も疑惑も解決しようがなく、する必要もないものとして納得しろという事である。

 

 

『キッシッシッ、そりゃそうだ! 寝首を掻こうが、掻かれようが、《相手》を理解してりゃ恨み辛みも起こらねぇ! アタシもテメェも、互いの《裏切り》の可能性を分かった上での協力関係ならソイツも立派に《信頼》だからな、キッシッシッシッシ♪』

 

 

モリア自身、清も濁も理解したうえで付き合ってるのなら問題なしとアッサリと《疑わしきは罰せず、裏切りも罰せず》と言う関係を初諾した。

テゾーロは《権力》と《金》、モリアは《策略》と《謀略》、互いにやり方違えど偉大なる航路(グランドライン)で絶対的な《ナニカ》を目指してる者同士、裏切られたからといって女々しく喚くような真似は無しと《暗黙の了解》を前提としたうえでの会談が始まった。

 

 

『とまぁ、あたかも大物ぶってはみたが生憎と今のアタシから要望だの、要求はねェな。 むしろテメェに顔覚えてもらった時点でアタシにとっては充分すぎる成果、目的は達したってやつさ…キシシ♪』

 

 

しかし、こんな大層な事をしてまで開いた会談、どんな無理難題を吹っ掛けられるのかと気が抜けないテゾーロだったがソレを表には出さず、裏では頭をフル回転させて起こりうる事態全てへの対策を考えていた。

しかし、テゾーロの事などお構いなしに、モリアはコネクションが出来ただけで充分な成果と言い放った。

 

 

「……なっ!?……」

 

 

これには流石のテゾーロも目を丸くしたが、【(ステラ)の奪還】という大きすぎる借りが後々自分を脅かす可能性を考え、あの手この手で何かないかと、モリアの望む物を尋ねるが……

 

 

『まぁ、そう身構えるなってんだ。 テメェは【星】を取り戻し、アタシはテメェとコネクションを作れた。  充分WIN―WINな取引って奴じゃねェーか♪』

 

 

「私が関係をこれっきりにするとは思わないのですか?」

 

 

『【(ステラ)】を運んだ【(アタシ)】を蔑ろにするような奴が成功出来る程甘くねェのは陸だろうと海だろうと変りゃしねェ…違うか?』

 

 

「……プッ!ハハハハッ!!確かにおっしゃる通りだ! 客商売は目先の利益が第一、それと同時に未来(さき)の利益も第一に考えなければいけない! 良いでしょう、Ms.モリア! 貴女との【商談(とりひき)】は楽しめそうだ!!」

 

 

豪快に笑ったテゾーロは【貸し借りはなし】と向こうが言うならそれで良いじゃないか、向こうが【無償】を望むならコチラとしても下手に出る必要はないと傲岸不遜な金の支配者へと戻った。

そして自身の商売相手となるモリアに手を差し出した。

 

 

『せいぜい【新世界の若き怪物】を飽きさせないように頑張らせてもらうとするさ! キッシッシッ、キーシッシッシ!』

 

 

モリアも差し出された手を握り、無事商売相手となれたことを喜ぶ。

互いに笑っては居るが、その腹の中は謀略と策略が渦巻いている。

普通なら安心出来ない様な取引相手だが、了承したうえでの関係……そん関係を結んだにも関わらず二人に不安はない。

むしろ新しい玩具に胸踊らせる子供のような気持ちが満ちていた。

 

 

 

 

プルプルプル プルプルプル ガチャ

 

「こちら煎餅、こちら煎餅。 おかき、どうぞ!」

 

《こちらおかき…緊急か?》

 

「ガープさんのお友達ですか?」

 

「元同僚のセンゴクっつう奴じゃ! それより、センゴク! 大変じゃ! 悪ガキ共が手を組んだぞ!!」

 

《っ!!! ガープッ!! なんのための合言葉だと思ってるんだ貴様っ!!》

 

「初めまして、センゴクさん。 私、一時モリアさんとガープさんの船でお世話になってたステラと言います♪」

 

「君が……此方こそ海軍でありながら、護るべき一市民だった君を護れず申し訳ない!!」

 

「そんな、頭を上げてくださいセンゴクさん!!」

 

「良くできた娘さんだろう、ステラは!」

 

《あぁ…本当に……って、そうじゃない!! 本当に貴様と言う奴はっ!!》

 

「ガッハッハッ! や、ヤバい! 悪ガキ共がこっち見てるから通信終了!」

 

《待て、ガープ!!話は終わっとら……》

 

ガチャ

 

 

ヒュ〜ヒュッヒュ〜

 

 

プライベートルームには下手な口笛がなっていた。

 

 

「……………Ms.モリア、アレはスパイ以外の何者でもないように見えるのは私だけだろうか」

 

 

『言うな……ってか、報告なら隠れてしろって言ってんだろうが、糞ジジィ!!!』

 

 

「なにを!! 海軍を辞めたワシが今更誰に、何を、誰の事を報告してるって言うんじゃ!!」

 

 

『海軍のマーク入った電伝虫で目の前で大将相手にかけてりゃガキだって分かるってんだよ!!』

 

 

「ぐっ! ワシは隠密とかスパイとか苦手なんじゃ!!」

 

 

『どこで威張ってんだよっ!!』

 

 

そんなやり取り見ながら紅茶を飲むテゾーロ

契約早まっただろうか……そんな事を考える彼に愛しのステラ満面の笑み浮かべて言った。

 

 

「賑やかで楽しいわね、テゾーロ♪」

 

 

彼女は良くも悪くもガープの影響受けていることに再び溜め息こぼす若き怪物であった。

 

 

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