本来であれば極秘で進めたいはずの商談は自由奔放、唯我独尊を地で行くガープのせいでとんでもない事になった。
何をしでかすか分からないモリア
大抵の事を成せる程の富を持つテゾーロ
ある意味懸賞金では測れない二人の
商談当初目立った要求ないモリアとテゾーロの
そこにセンゴクが介入し、舵を取った事で海軍及び政府は危険人物二人の動向を監視しやすくなり、二人おもにテゾーロが動いた際の世界への影響を少なく出来るという最高の着地点へと辿り着く形となった。
しかし、テゾーロとセンゴクの中でモリアに対するイメージは大きく変わった。
表だって動いてるわけでも無ければ、手配書に載ってるわけでもないにも関わらず有名所に広まったモリアの二つ名
《影の支配者》
ソレはカゲカゲの実と能力によって付いた二つ名ではない。
その二つ名が《能力》ではなく《モリア》自身を指していることを二人は認識した。
その理由は、2時間の話し合いで彼女がテゾーロに愚痴溢したことから始まった。
しかし、その愚痴は商才に長けた者が聞けば巨万の富を生む事は間違いないモノばかり。
『興味ねェ財宝を持ち運ぶのメンドクセェ…いちいち財宝の価値なんざ気にしねェから本当の値段なんざ分からねェ、かといって下手な店持ってきゃ買い叩かれるの間違いねェ。
当然本来の価値満額なんてのは無理だってのは分かっちゃいるが、馬鹿みてェに買い叩かれるのも気にいらねぇ……ってな訳で、テゾーロ買い取ってくれねぇーか?
テメェなら金は腐る程あるし、名が売れてる。 今更1億、2億買い叩いて出る儲けで満足するような奴じゃねェだろ? まぁ、ソレがテメェを探してた理由の一つだしな』
モリアが興味ない宝の扱いについての愚痴だった。
元々テゾーロを探していた理由の1つである財宝の買取話はテゾーロにとってはデメリットは無い。
「金の保有量が増えるのは私としても悪い話ではないので、構いませんよ。」
テゾーロ自身操れる金の保有料が増えるのは願ってもないことであり、モリアが語った信用についても概ねその通りで、【運】という不確定要素と【楽】と言う無形を取扱うのが【カジノ】という商売であり、それを成立させるのが、行き届いたサービスと信頼である。
今更それを、1億、2億買い叩いて失うような馬鹿はしない。
テゾーロが商談後に査定しましょうと言おうとしたその時……
『だけど、毎回テメェ探しすのもメンドクセェ…かと言って、たかが買取の為にテメェを呼びつけるほどアタシだった世間知らずじゃェ。 そんなことすりゃ《新世界の若き怪物》って肩書、《グラン・テゾーロ》ってカジノの格、なにより《ギルド・テゾーロ》って名に傷がつくしなぁ…いっそ、あっちこっちにテゾーロが居て、あっちこっちで商売してくれてりゃ楽だったってのによォ…』
そんなのは無理ですよ……そう言おうとしたテゾーロの脳内に何かがよぎった。
モリアの言った言葉を吟味し、1つ1つをパズルの様に繋いでは崩し、繋いでは崩しを繰り返す。
そんなテゾーロを怪しげに見つめるのは映像電伝虫に映し出されたセンゴク。
言った本人は口にしてみたが、考えなくても分かるありえないような内容に自身に呆れて溜息を吐いた。
中々ピースが合わず四苦八苦するテゾーロにバリバリ煎餅食い散らかす音と共に救いの手が現れた。
「今日、明日直ぐにってのは無理じゃが、黄金坊主が《カジノ》以外にも手を広げりゃ出来んこともないじゃろ。 お前さんの能力なら早くて2、3年ってとこか。」
ステラと楽しく話していたガープが茶と煎餅が切れた、そう言ってステラに財布を渡しておつかいを頼む。
そうしてステラが居なくなった部屋に残ったのは普段の豪快で無邪気なガープではなく、激しい闘争を勝ち残り、数多の伝説を作り上げた【海軍の英雄】と謳われた男だった。
《ガープ、余計な事を言うんじゃない!!》
久しぶりの真面目な顔する戦友の一番質が悪い所を知るセンゴクが止める。
確かに、彼は自由奔放で誰にも縛られない。
性格の豪快さに見合った豪快な戦い方と【伝説】のみが一人歩きした結果、若い海兵や新参海賊達からは力馬鹿なんてイメージを持たれているのが現状。
しかし、彼の同僚や共に戦った者は皆知っている。
その豪快さに霞んで見えてしまうが、彼は知将や大参謀の地位にだってつける程に頭が良いということを…
そんな戦友が余程の自体にでもならない限り見せない真剣な表情をしている。
普段なら説教して聞き流すセンゴクも聞く姿勢をとった。
「まぁ、聞けセンゴク。 ワシは海軍を止めたから再確認出来たものがある。」
《……なんだ……》
「1つ目はワシの、海軍の【正義】で守るには世界は広く、【正義】を貫ける人間はワシ等が思うほど多くない。 2つ目はワシ等が悪とした
海軍を辞め、今までと違った視点で見てきた世界を漠然とした内容で話すガープ。
新兵時代からの古い付き合いであるセンゴクは、漠然とした内容もガープが伝えたい通りに理解した。
《3つ目は言われずとも分かっている。 しかし、最初の話が今回の話にどう繋がるんだ?》
「【グランド・デゾーロ】…世界政府公認の中立地帯の支配者である黄金坊主の《名》で各国に支店を出せば、それだけでも充分にロジャーに触発されただけの似非海賊共には抑止力になるはずじゃ…なんせ、【新世界の若き怪物】と【世界政府】が背後にいるんじゃからな。」
《確かに、抑止力にはなるだろうが、それに気が退く者ばかりではないだろう。》
「ソコで海軍が一枚噛ませて貰えばいい。 お前とゼファーが選んだ定年退職した元海軍あたりを護衛として雇って貰い、戦力面を補う。 海軍で庇えない部分は黄金坊主の名前と元凄腕海兵に守ってもらえるじゃろ?」
今までのガープなら絶対にしない提案にセンゴクは驚く訳でもなく、【そうなった未来】を想像してメリットとデメリットを弾き出す。
《しかし、ギルド・テゾーロが承諾するのか?》
「黄金坊主としても更に規模はデカくしたいじゃろうし、飲まれずに深く世界政府に食い込めるチャンスは不意にせんじゃろ。 なにより、海軍の備品やら船の改修・造船をするさいに黄金坊主を通せば仲介料なんかで儲けられる。」
《しかし、機密情報流出の可能性は拭えないぞ》
「そんな事など放っておけば良い。 守れたはずの者を守れない悔しさに比べりゃどうってことないわい! それに各国に店が出来りゃ、少なからず国は潤う。 黄金坊主通せば各支部の不正防止にも繋がる。 違うか?」
彼が海軍を止め、それ程経って無いというのに酷く懐かしく感じるやり取りにセンゴクは顔にも口にも出さないが、戦友の掲げる【信念】と【正義】が変わって無いことに嬉しくなった。
《貴様の言うことも、もっともだ。上手く事が運べば増える海賊の被害は減らせるだろう…しかし、各国が潤えば
「そこは黄金坊主と海軍が上手くやりゃ、なんとでもなるわい!」
嬉しくなった矢先の投げやり。
こういう所も相変わらずな戦友に今度は頭を抱えたくなるのも相変わらずなセンゴクだった。
「勝手に話を進めないで頂きたい…と、言いたいところではありますが、ガープさんが仰る通りで私にとっても願ってない話ですね。 それにセンゴクさんの心配はなんとかなるかもしれません。」
《我々としても君との協力関係は喜ばしいことだが、どうやって解決するか聞いても良いかね?》
「グラン・テゾーロはカジノです。 勝つも負けるも運次第…ではありますが、今だ見習いですが我々のコンシェルジュは【運】に愛されていましてね。 目立たない程度に
「ブワッハッハッハっ!中々面白い奴じゃ、気に入ったわい! その件でもし、目を付けられそうになったらワシの名前を使え、黄金坊主!」
「遠慮なく使わせてもらいますよ♪」
《海軍としては護衛範囲が広がり、無法者共による被害が減り、更に内部の不正を防止出来る。》
「私共、グラン・テゾーロにとっては市場拡大と、海軍への強いコネクションが出来る。」
「ワシとしては
話もだいぶ纏まりつつあるが、計画には不安要素が多い。
これ程の規模となると、人員の解決が必須条件だ…各々が解決策を思案するなか、蚊帳の外だった少女が再び介入してきた。
「店員と兵の人員不足なんかはゴミクズから種族問わず奴隷買取れば万事解決ってか? しかも、後々勢力拡大約束された【怪物】と良好なコネが出来る! 万事上手く行きそうでアタシはなによりだぜ、キーシッシッシッ!」
《お前にだけ美味い汁は啜らせんぞ! 例え海賊となり、後々強大な敵になるかもしれないとしても、お前が得る物に見合った働きはしてもらうからな、ゲッコー・モリア!》
『メンドクセェ……が、全員に良い事尽くして終われる場を乱すほど腐っちゃいねェさ!アタシは、アタシが動くの含めて協力してやるさ!』
タダ馬乗せてやるほど海軍は甘くないと、センゴクがモリアに釘を刺す。
釘を刺されたモリアも新しい悪戯を思いついた子供のようにニヤニヤ笑みを浮かべて承諾したが、そんなモリアを見逃すと碌な事が無いと短い付き合いで学んだガープが口を挟んだ。
「全員に良い事じゃと? ワシにはお前が1番得してるようにみえるがどうなんだ、悪ガキ?」
《「!?」》
『けっ! ただの戦闘馬鹿じゃねェのは、この短期間でもよく分かったつもりだったんだが…アタシもまだまだテメェから見れば尻の青い小娘ってか、ガープ』
余計な事を……まさにそんな顔をしながらアタシもまだまだだなと溜息吐くモリアにテゾーロとセンゴクは
「そうそう、越されてたまるか! 此処まで決まった時点で流れは変わらん…いや、変えるには各々逃す利が大きすぎると言ったところか…さっさとお前さんの企みを話せ。」
『企みらしい企みってのはねぇーさ。 しいて言うならテゾーロが各方面で幅を利かしてくれりゃ、アタシも楽が出来るって事くらいで明確なナニカをイメージ出来てる訳じゃねェ。 むしろ今浮かんでるイメージはテメェ等が悪巧みを聞いて浮かんだヤツだな。」
「「《…………》」」
『アタシの最優先は乗組員と情報…テゾーロがのし上がりゃ、規模に伴って色んな情報が入るようになる。アタシはソイツを買って、スカウトしに行く。 宛すら無い海でチミチミ、チマチマやるよりは早ェ。
もう一つはテゾーロの店が増えりゃ、さっきも言ったが興味ねェ財宝を手っ取り早く金に変えられる。」
『それに、邪魔クセェゴミクズが減りゃ、アタシももう少し表立って動きやすくなるしな!』
『ついでに海軍にもコネが出来りゃ、クソウゼェ似非海賊の首も売っ払えるし、何より一人、難攻不落の監獄からスカウトしてえ奴がいる。 次期元帥ともあろう方がアタシの動向逐一チェック、【黄金の怪物】と【影の支配者】っつう要注意人物を監視させて貰える【この状況】をなんの配慮も融通も無しはねぇだろ?』
『それに、アタシはウチの貴重過ぎる副船長を最近出来た七武海に押すつもりだ……脳天気なゴミクズにゃ、丁度良い抑止力だろ? アイツらが下に来るには海軍が動く。
そこで目を光らせるのが、海賊になって天竜人に更に容赦なくなったコイツ…よっぽどの馬鹿じゃなきゃ今までみたいには降りてこねぇ。
まぁ、七武海だって世界政府組織の一部だからな、コイツを七武海にする際には世界政府より船長のアタシの命令第一みたいな特別な処置でもして、【気に入らねぇ奴はぶっ飛ばせ】って命令でも出してる事にすりゃ、コイツをコントロール出来ねェ責任は【海軍】や【世界政府】じゃなく、【船長】のアタシが七武海入の際に出した条件のせい、またはコイツが海賊になんかなる理由作ったゴミクズのせいになるって寸法さ♪
上としても【天竜人は守らない】なんて条件でもなけりゃ、喉から手が出る程欲しい人材…承諾には多少時間掛かるだろうが必ず飲むさ。』
『それに裏を歩くには警戒されてる方が動きやすいってのがアタシの持論でね♪ なんせコッチから出向かなくても無効か向こうから刺客、同盟話し、支配、色んな形でやって来てくれる。 メンドクセェ事が嫌いなアタシにはうってつけの状態ってヤツさ! キーシッシッシッ!』
『テゾーロ、用意してもらった部屋有り難く使わせて貰うぞ。 流石にヒヨッコのアタシにゃ、この面子と腹の探り合いは荷が重すぎるぜ…はぁ〜疲れちまった。』
ソファにふんぞり返り天上を見上げながら、不確定要素多いにも関わらず、その殆どが覆りようのなくなった漠然とした己の利を話し終わるとモリアは一足先に部屋を出ていった。
残された部屋でセンゴクがガープに問う。
《ガープ…お前から見てゲッコー・モリアの実力と危険度はどうだ?》
「ありゃ、かなり厄介じゃぞセンゴク……素の実力だけならたいしたことはない。
覇王色はなく、武装色と見聞色両方に伸びしろある珍しいタイプではあるが、才能はからっきし。 覇気を最大まで極めて100とするならアイツのはどんなに鍛えても40〜50行くか行かないかってところ…普通なら世界が警戒するような奴じゃない。」
「他の小僧どもならそうだが、あの小娘は違う! ワシがまだ海軍で【ゲッコー・モリア】と言う人間を知っておったらカイドウやリンリンを放ってでも真っ先に取っ捕まえに行く事を選ぶ……そんな奴じゃ。」
《何があった……》
「あの小娘、覇気の才能は無いと説明したら『テメェら並の覇気なんざ願い下げだっての……40、50も有りゃテメェが言う【武装色】ってのは纏えるんだろ? ならロギアは殴れる。 それで充分! 寧ろ他の奴等より覇気に掛ける時間が減るだけ儲けもんってやつさ!』なんぞとぬかしおった。」
進めば進むほどに重要視される覇気の存在
才能無い者が覇気の存在を知ってしまえば、それだけで進むことを諦めるほどに重要なソレを鼻で笑い、鍛錬が早く終わると言うモリアの存在は部屋に残った3人にとっては異常だった。
「武装色は精々拳に纏える程度で、見聞色も視野が広がる程度…まだ鍛え途中だが今以上は無理なはずだった……問題は【カゲカゲの実】とモリアの相性。
実力見極める為にも【約束】の海賊500人は、ワシの目から見てヤツより強い奴を選んだが、結果は【世界】にとっては最悪……ヤツは【能力】の相性が敵との実力差、戦力差を容易くひっくり返しおった。 ワシの人生の中でヤツ程能力使いこなす奴は見たこたない。」
「能力を使ったトレーニングらしいが、あの華奢な体で放った拳一発で懸賞金10臆『鉄壁のアイアン』が沈んだ……しかもまだ鍛えきってない覇気を自身の才能が持つ以上に引き出しおった。」
《なっ!?》
「そして、これが一番の懸念事項じゃ……奴は能力の強化を海楼石の手錠付けたり、海に体入れたりと馬鹿みたいな方法でしとる。 奴の能力も相まってか海楼石の一つや二つたいした障害にならんくなっとる…能力者相手との勝負は海楼石製の手錠使ったタイマンで始末しとる…まぁ、全力には程遠いってのと、完全な克服無理ってのが不幸中の幸いってやつじゃが、それでもそこ等の海賊になら問題なく勝てるじゃろうな。」
「一番の問題はあの頭の良さと気質……アイツには【死】や【敗北】への恐怖がない。 そんな相手にゃ覇王色での威嚇も暖簾に腕押し……水を浴びた時の能力の低下具合もイカれた鍛錬とやらで掴み掛けとる。」
「ワシは断言するぞ、センゴク……【カゲカゲの実】を食った【ゲッコー・モリア】は間違いなく新世界の【化物】どころか【ロジャー】を超える可能性を秘めとるぞ!」
ガープが一通り報告を終えた部屋は静寂に静まり帰っていた。
伸びしろ少ない覇気を能力で底上げし、それでも埋まらぬ差を能力者が避ける海を使って自身の能力練度を上げて取れる策を増やす。
今までにも居なかったわけでは無い……が、尽く消えていった。
ある者は無気力となった所を襲われ、ある者は天候変わりやすい海に攫われ、呆気ない様にも見えるが能力者に取って海や水を使ってまで鍛錬するということは常人ならなんてことないソレ等も能力者にとっては命を脅かすような危険となるのだ。
その頃【グラン・テゾーロ】が停泊している沿岸に話題の中心モリアがいた。
『だいぶ今の重さに慣れて来たな……今日から量を増やすぞ
手を二、三回握りこんでニヤリと笑う少女が身の丈程の鋏を持つと共に足元から鋏を持つ影が実体化する。
影は、ガープの攻撃で沈みゆく海賊船の残骸から影を剥がし、【自身】に取り込み始める。
『取り込んだ影に見合った力を得る
舟1隻分の影を取り込んで少し膨らんだ影がモリアの足元に戻ると、周囲に【一切影響与えず】に【モリアにだけ】1隻分の重さがのし掛かる。
『ぐっ! 中々良い重さしてんじゃねェーか!! キッ、キシシ……んっ? 昼間の残党か……今のアタシなら殺れるかも知んねェぜ?』
急激に増えた負荷に額には脂汗が浮き上がる。
カゲを操れる自身だからこそ出来る負荷トレーニング。
普段のニヤけた笑みも若干苦しさに歪むが、歩み寄ってくる一団に気づいたモリアは苦しさを奥に押し込み、掛かってこいと言わんばかりに笑みを強くした。