モリア、テゾーロ、センゴクの三者会談から一年が経った。
この一年が世界に齎したものは目に見えては小さかったが、世界の流れを分かる者が見れば大きく劇的な物であった。
表向きは互いの領分侵さぬように牽制しあってる二大勢力、それが実際は裏では繋がっている。
本来個々人で目指すには長過ぎる道程が、ある程度省かれて歩めると言うのは非常に大きい。
会談の1ヶ月後にテゾーロは海軍の備品供給ラインに参入した。
不安定な時代という事もあり、殆どの商人は最も利益が上がる軍艦や装備の方面で海軍に喰い込もうとしている中で世界一の大富豪が選んだのは最も利益が薄い分野。
裏を勘繰る者、才能が無いと嘲笑う者と反応は様々であった。
嗤われてなおテゾーロは利の薄いであろう分野を捨てなかった。
小さいながらも先代先々代と海軍と付き合いある商店の店主と交友を深め、一兵卒との会話にも気を抜かず、求められる物をリサーチし続けた。
その間に多少の赤字が出ようが巨万の富を持つテゾーロにとってそれが経営悪化に直々繋がる事は無い。
続けたくとも跡取り居らず、自身が高齢であることから引退を決意した店主の悩みに真摯に耳を傾ける。
「実に勿体ない! 己の提供出来る範囲を理解し、それを確実にこなす……言うは簡単ですがソレを行い続けるのは難しい。
【新世界の若き怪物】なんて呼ばれては居ますがね、新事業ということもあって正直不安で胸が押し潰れそうだったんですよ…そんな我々が今こうして貴方の悩みを聞き、意見を言えるようにまでなれたのは一重に身近で貴方方の【商い】を見てこれたからなんです。
私は貴方の培った知識、築いてきた商いへの思いを新米な我々のためにお借りしたいと思っております…返事は急ぎませんのでお気持ち決まりましたら、コチラまでご連絡下さい。」
自分達等取るに足らないであろう地位と権力を持つ若者が枯れるだけであろう存在に頭を下げて教えを請う。
資金が足りず細々とした商売しか選べなかった者達を素晴らしいと褒め称える。
引退を決めた事だって並大抵の思いではない。
早々に変わるものでもない…が、その決断へまっしぐらだった足を一歩踏みとどまらせるには十分過ぎるほどの〘ナニカ〙がテゾーロの語る言葉に、真っ直ぐな瞳にはあった。
こんなやり取りを繰り返しながら少しずつ海軍から信頼ある商店と人材を取り込み【テゾーロ商会】は直ぐには築けない信用を彼等を使って築き、彼等を使って人材の教育をし、商会の質も向上させた。
さらに、テゾーロは
小規模ないしは中規模であり、先々代や先代から続いている
海軍との付き合いが長く、存在認知されている
月々の利益が薄くても経営を成り立たせている
これらの3つを篩の条件とし、徹底的に調べたうえで引き抜きを行った。
当初は十数の商店と人材を目安に行われ、調べた数は100にも及ぶが残ったのは五つであった。
しかし、此等を満たした貴重な人材のおかげで過度な資金提供や出費を抑える事に成功し、篩落ちた中でも不正目立つ商会や店舗、それらと繋がっていた海兵をセンゴクにリークすることで競走相手と邪魔者を間引いていった。
ただ彼は手を出した分野を独占せず、必要以上に間引くことはなかった。
その理由は善悪問わず新たな芽が育ちやすくし、有用なら引き抜き、利用価値が無ければ程よく腐った頃に海軍へ売る事でより大きなステージへ上がる際の足掛かりとする。
彼が真っ当な商売をしてる者にまで彼は牙を剥くことはない。
それは彼が善人だからではなく〘新世界の若き怪物〙が持つ美学故である。
故に蹴落とされた者にも守るべき存在が居たかもしれない…なんて心を痛めることは一切無い。
バレる程度の不正しか出来ないほうが悪い。
抗えるだけの力と人材を確保出来ないほうが悪い。
対抗出来るほどのコネクションを作れないほうが悪い。
築いた物、守りたかった者、野望も欲望も愛も理想も守れなかった方が悪い。
彼の
ただソレを活かせるか活かせないかはソイツ次第というのが彼のスタンスだ。
非道で凶悪な一面をテゾーロは持ち前のエンターテイナーの顔で隠して紳士を装い、人を喜ばせ、夢を見せ、伸し上がっていく。
そんな彼はいつもの様にピンクのスーツを着こなし、黄金の装飾を身に付け、愛する女性と共に海軍本部内の廊下を歩き、お目当ての部屋へ入室する。
場に似つかわしくない格好にざわめく室内、前方の長机の真ん中に位置する席に座る共犯者であり海軍大将のセンゴクは今にも怒り出しそうなのを必死に堪えているのか米上がピクピクしている。
「Ladies and Gentlemen! 今日の