〜 福岡 〜
さて、ジェネシスと試合が始まった。 残念ながら楽しいサッカーとは言えない勝負になるだろう。 雷門のマネージャーと瞳子監督、そして控えのメンバーは不安な気持ちでベンチからこの試合を見守る。
そんなジェネシスには何も不安がなく、空っぽのベンチには登場の際に演出として使われたのだろう黒いサッカーボールが一つ寂しく置いてあるだけだ。
そんで、試合の現状から言うと…
雷門はジェネシスの強さに手が出せない。
そんな俺はMFとして試合に参加して、ジェネシスの動きについていけてる。 こればかりは場数が違うからな。 ただ動きが速いだけじゃ驚きもしない。 だが中学生サッカー界でこんな動きは見たことも感じたこともないから半分初見殺しのような状態だ。
でも今回は圧倒的な負けイベントなようなものだ。 前回のイプシロン戦は原作ならば同点だけど、今回も原作通りならジェネシスは多量得点差で敗北してしまう。 例え今の雷門が原作以上に強化されてるとは言え、流石にジェネシスの力の前では程遠く勝てる見込みがない。 今のところ勝利は諦めた方が良い。 敗北主義な思考だけど現実を見てる分まだマシだ。 だから次を勝つため、今は試合後の負担を軽くするような立ち回りをしている。 そのためあまり本気は出していない。 でも油断すると怪我して離脱はあり得るから油断はしていない。
ここまで聞くと、試合で機能してるのは俺だけのように思えるがそんなことはない。 中にはなんとかジェネシスと渡り合っているメンバーがいた。
まずディフェンダーからウイングに移行した『風丸』だ。 彼は目で追いついてるのかジェネシスの動きにいち早く反応している。 あと当然彼は動きが速いのでタックルかましたりとボールを奪おうとしている。 でも残念ながら風丸には身体的な力があまり無いから競り負けていた。 でも原作よりも食らいついてるし『自分だけでも突破口を作らないと!』って気持ちで格上な敵にぶつかっている。 そのため彼からは絶望すら感じさせずむしろ諦めたくない気持ちがプレイに現れていた。
次に俺の義弟である『夕弥』だが、漫遊寺の生徒だけあって身体能力が高い。 だから何もできないで突破はされず、スライディングなり旋風陣なりでボールを捉えようとする。 あまりボールを奪えてないが、棒立ちしてしまう壁山や栗松とは違ってまだ反応して体を動かせている。 だけど夕弥は経験不足が響いてる。 それは仕方ないね。 俺と夕弥の本拠地である漫遊寺は試合あまりしないから。 そのため試合の流れを掴めずにいた。 ボールはとりあえず鬼道にパスをするが、あの鬼道すらジェネシスのプレッシャーに押し崩されたりと進展しない。 でも棒立ちはせずに怯えずなんとか動けている。
あとは『士郎兄弟』くらいだろう。 てかこの兄弟は別格だな。 まずアツヤはエースストライカーの名に恥じない強さを持っている。 突破に失敗しても『クソがぁ!』とイラつきながらも攻撃の手を緩めない。 しかしジェネシスの方が強い。 強引に攻めるプレイもジェネシスにはあまり通じずにいた。 しかもなんとか撃ち放ったエターナルブリザードもネロを演じるきみゆき君が必殺技を使わずに受け止めた。 これにはアツヤもプライドに傷が付いて怒り狂っていた。 でもジェネシスから点を奪えるのは少なからずアツヤくらいなので、皆はアツヤが決めてくれると信じて託そうとしていた。 だから諦めずに『次そこは!』と怒り狂うアツヤこの試合に置いが雷門イレブンの安定剤だな。
そして吹雪の長男の『士郎』だ。
コイツは本当に別格だ。
何せ俺が望んでいる試合運びを理解していた。
それは…
「今回はディフェンス陣を離れてまでウルフレジェンドを打たないよ」
「ほぉ? 理由は聞いても?」
「ジェネシスのキャプテンのシュートが強すぎる。 そのため円堂君が危ないからね。 僕は極力シュート数を減らさせるように立ち回るつもりだから」
「てことは士郎"も"既に勝負を捨ててる訳だな?」
「そうだね。 おそらく僕も破和土さんと同じ考え方だよ。 何せ今の雷門では勝てない。 だから怪我人を抑えるやり方じゃ無いとあまりにも危険すぎる。 みんなは根性があって丈夫だけど、予期せぬことが起きるからね」
「士郎、君は監督業に向いてるよ」
「監督…業?」
こんな感じに吹雪士郎は勝つことは不可能と割り切っていた。 そのためこの試合ではいかに相手のシュート数を減らしたり、威力を削いだりして円堂の負担を減らすことを目的として立ち回る。 彼も本当はこんなプレイングはしたく無いけど、今回の敵はあまりにも理不尽極まりないため、下手なことをして被害に逢うのは得策じゃないと理解していた。 だからこの試合は見送り、次の勝利へ繋げるためのサッカーをするようだ。
こういうプレイヤーはなかなかいないな。
何というか、よく出来てるぜ……
「鬼道、無茶するな!『クイックドロウ』!」
「なっ!?」
俺は味方である鬼道からクイックドロウでボールを奪い取る。
流石にジェネシスもそんなやり方で来るとは思わなかったのか突破を許してくれた。
そして俺はボールを真上に強く蹴り上げる。
「おおっと雷門の破和土! ボールを天高く蹴り上げたぁ! 何をする気だ!?」
角間の実況と共に俺は力強く地面を踏みつけ、この陽花戸中のフィールドを今だけ"我が戦場"として扱う。 この試合では勝利を捨てたが、次に必ず得れるだろう勝利のために、今は餓えを耐える。
「必殺タクティクス!『餓狼伝説』!!」
俺だけが、今この試合で一番強くなる。
「そこを退けぇ!」
餓狼伝説を発動するための時間稼ぎに蹴り上げたボールは重力に従って落下する。 俺はクッショントラップで受け止めるとその場で1回転、ゴールに向かってシュートした。 グランの『流星ブレード』程ではないがバリスタのような鋭いシュートはディフェンス陣を突き抜けてキーパーに飛んでいく。
「くっ、プロキ___なに??」
しかしシュートは上に軌道を変え、ネロの正面には飛んで行かなかった。
そして鋭いシュートはネロの頭上を飛び越え、ゴールポストにぶつかって弾かれてしまう。
「ふん、どこにシュートをして_」
「アツヤァァ!! よく見てろ!」
「基秀!!?」
「これが一人で完成させるという事だ!」
マークに付かれていないフリーな俺はジェネシスのディフェンスを餓狼伝説の身体強化で強引に追い抜くと、ゴールポストに当たって跳ね返ったボールに飛びついた。
「『ウルフレジェンド』!!」
「「!!??」」
鋭く何度もサッカーボールを蹴り付ける。
そして「アオーン!」と目力先輩もニッコリな咆哮と共にそのシュートはネロに向かって飛んでゆく。
しかし…
ガゴン!!
「あ」
「「「あ」」」
「「は?」」
だがあまりにも威力を求めたせいでコントロールが失われた必殺シュートは上にそれてしまい、ゴールポストにぶつかって遠くに行ってしまった。 しかもゴールネット後方の鉢植えにパリンと当たる。 くーん…
「………まぁ、そんなこともあるさ」
「いや!? そこでゴールポストに当ててしまう!!?」
「やかましいわ塔子。 初めてやったんだから外すこともあるだろ」
「いやでも……えぇ(困惑)」
ああ、陽花戸中のゴールポストが若干凹んでいるいるな。
これ後で弁償だろうか?
「おい、基秀! なんでお前が!?」
「これに関しては僕も気になるね」
そして当然のようにグルルッと噛み付いてくるアツヤ狼。 驚きと同じに怒りが混じり合っている。 士郎に怒りは感じられないがちょっとだけ不満が感じられた上に敬語が飛んでいる。
「純粋に適性が高かったんだろう」
「適性? それは前にビーストファングを見せてくれた事にも関係してる話なのかな?」
「おお、その通りだ。 よくわかったな?」
「いや、もうそうとしか思えないよ破和土さん…」
半分諦めた様に項垂れる士郎。
さて、餓狼伝説は簡単に言えば身体強化。
通常の3倍の速さとは言わないが概ね2倍の量は動けるようになる。 そしてウルフレジェンドは今のところ"二人分"の力を合わせて放てる必殺技だ。だから二人分を動く事ができる身体強化によってウルフレジェンドを使う事が出来た。 あとはやはり俺自身が備えてきた必殺技の種類と素質、そして適正。
何より…
『 餓狼 / ウルフ 』
『 伝説 / レジェンド 』
言葉遊びとは言えこのように噛み合ってしまうことが後押ししてくれる。 あとはイメージしろ。 TNM兄貴もそう言っていた。 俺はイメージした。 でもそれ以上に近くで感じていた。 吹雪兄弟が2人がかりで100回も勝負を挑んできたのだから、2人の足並みを昔からよく見てきた。
だから分かってしまう。
ウルフレジェンドがどれほどなのか、を
「規格外な破和土さんだから僕はその辺諦めている。 でも毎回毎回僕たちを突き放してくれるよね? せっかくウルフレジェンドで追いついたと思ったのにね」
「本当だよなぁ! あんなに苦労して! それで基秀に追いついたと思ったのによ!!」
「いやいや、中学生如きに追いつかれてたまるかってんだ。 こっちは数年先にサッカーボールに触れている高校生だぞ? そして漫遊寺の聖者だ。 この称号を受けてる以上は心技体共に劣ることはゆるざぁぁん!!!」
「ッ〜!! この野郎!! 次こそは絶ッッ対に追いつく…いや!! 追い抜いてやるからなぁ!!」
「無駄ァ無駄ァ無駄ァ無駄ァ!!! 俺には追いつけない!!」
「それを決めつけるのは俺だ基秀!!」
それだけを言うとアツヤは元のポジションに戻りながらジェネシス相手に「まず先にテメェらをぶっ潰してやるからなァ!!」と怒りの矛先を向けていた。
流石にジェネシスも少し戸惑っていた。
「しかし破和土さんも悪い人だね」
「どこぞのサ○ヤ人の如く、あんなプライドの塊に焚きつけるならこれしかねーだろ」
「正直に言うと、これ以上は焚きつけないで欲しいのだけどなぁ……怪我するし」
「アイツはあれくらいで良いんだよ。 自分より強い奴を見ているとそいつよりも"強くなりたい"って純粋な気持ちでどんどん弾む。 それは常に燃料を注いでおかないと突然ガス欠した時がめんどうだからな。 現に『自分よりも強い奴を許さない!』って可愛い後輩がいるくらいだし、アツヤ見てると良く分かるんだよ」
___俺は基秀よりも強くなるからな!!
___私は基秀にいちゃんを超えるから!!
「アツヤは狼、ハッスィは獅子、いや〜、どっちもかわゆすなぁ〜」
「なんか楽しそうだね、破和土さん」
「後輩が先輩を倒そうなんてシチュエーション最高じゃねーか。 あ、もちろん士郎も可愛いぞ? 動物に例えるならペンギンみたいで」
「そうなの? ペンギンか…まぁ、そうだよね。 ありがとう」
「
「くえー」
♢
「ウルビダ、どうした?」
「!……なんでもない。 羨ましくなんかない」
「いや、言葉に出てますよ」
「ポー」
「だからなんでもない。 今私達はひたすらお父様のために勝利を全うするだけ」
「ええ、それはそうです」
「ああ、その通りだ」
「基秀が……あの人が敵だとしても、俺たちは止まらねぇ」
「キポーウノハナー、ダポー」
ジェネシスはアツヤを要警戒しながらそれぞれのポジションに動き、ネロのフリーキックから始まる。
「それよりも、基秀はさっきハッスィと言ったのか…? もしそうなら最近出かけていたあの姿は……まさか基秀にいちゃんと接触したのか??」
「……」
なんか寒気がする。
そしてなにかとウルビダが怖い…
そんな彼女はドリブルで仕掛けると前に来た。
そして上に飛び上がりオーバヘッドキックの構え。
やはり来るか!
「『メテオシャワー』!!」
「栗松、焼き栗になる前に逃げるぞー」
「ギャァ! 来てるでヤンス!」
俺は栗松を脇に抱えるとメテオシャワーの着弾地点圏内から逃げる。
そして壁山に投げ渡した。
「てか栗松、お前ディフェンダーだよな? なんかブロック技ないのか?」
「え? そ、それは……ないでヤンス…」
「そうか、なら後で決めた方が良いな」
「え?」
「ディフェンダーのままでやりたいならブロック技を開発するか、ブロック技の開発が嫌なら別のポジションでやるかだ。 何か一つに特化した能力を生み出さないとこの先やっていけないぞ?」
「!!」
「だから考えろ。 栗松はどうしたいか」
「……」
そういやウルビダと栗松の中の人が同じなの知ってた?
じゃけんメテオシャワー覚えましょうね〜(無茶振り)
「って、なんで俺ばかりにメテオシャワー打つんだよ! 恨みでもあんのかよ!?」
「五月蝿い! "メテオシャワー"!!」
「マキュアよりも威力あるし怖えなオイ!?」
「うるさい!うるさい!!」
メテオシャワーの被害を広めない様に味方から離れた位置に逃げ込む。 軽くグランとウィーズが巻き込まれそうになっていた。 見境ないなこの子。 パワフルれいなちゃん爆誕!
「そう言いながら見て避けてる兄ちゃんもなんか怖いぜ」
「それが破和土さん、だからね」
ほら、格ゲーは「見て余裕でした」ができないと活躍できないだろ? ギース・ハワードの真似事する格ゲーもどきなキャラとしてそこら辺出来ないとね!
「てかあまりやり過ぎるとか頭にきますよぉ!」
「五月蝿い! 沈め! 基秀! メテオシャ___」
「『ザ・タワー』!」
「『あびせげり』!!」
イプシロン戦でもやったメテオシャワーの攻略法でウルビダからボールを掠め取り、鬼道へ蹴り落とした。 そのまま鬼道はツインブーストを撃ち放ち、シュートの要領でアツヤにパスをする。
「なに!?」
まさかこのようなカウンターを受けるとは知らずウルビダは驚きの声を出る。
「なんのために俺がエイリア対策でイナズマキャラバンに参加してるのか理解が足りてないなあんた」
同時に着地をするとウルビダは睨む。
しかし俺は無視すると思いついたことを話した。
「よし、栗松。 お前『あびせげり』覚えみるか?」
「え!? 俺がでヤンス!?」
「なんならブロック技は覚えなくて良い。 俺みたいにブロック技の支援をする必殺技を覚えてみるのもありだ。 それが多分お前向きになるかもしれない」
「!!」
「俺が塔子のザ・タワーと合わせメテオシャワーを防ぐように、栗松も同じことをすれば___」
ベゴォ!!
え?
なんだ?
今の音は?
「「「!!?」」」
「風丸さぁぁあん!!!?」
「は!?」
「ぐっ、げっほ…げっほ…」
え?
なんでこのタイミングで風丸が痛めつけられてる?
どういうことだ!?
「……はい、お父さん、了解しました」
「!?」
ヒロトが誰かと話してる。
いや、あれは父親だ。
吉良星二郎に間違いない!
しかしわからない。
でも風丸がギリギリなラフプレーで痛めつけられ、離脱させられるイベントがあるとしたら、ゲーム版の世界として"この場"に吉良星二郎がいることになる。
でもココに吉良星二郎はいない。
ならなんで風丸は攻撃を受けた?
「!?」
いや、待て、落ち着け。
そもそもこの世界をアニメやゲーム版を基準にするな。
比較的アニメ進行だけど、イレギュラーだってあるはずだ。 俺がこの世界にいるように。 士郎兄弟が生きてるように。 何かがねじ曲がってるのも当たり前の話だろ。
そしてヒロトに指示を出している。
どこかに居るはずだ。
だとしたら。
もしかしたらどこかでこの光景を吉良星二郎が"見て"る可能性がある。
お茶を飲みながら呑気に見ているはずだ。
あるとしたら……中継…
そうカメラだ!!
どこかに仕掛けられてるか!?
「っ……どこだ!?」
学校か?
もしかしたら誰かが侵入してる?
いや、そんなリスクは負わない。
なら衛星?
いや、逆探知を恐れてそれはやらないだろう。
なら既に仕掛けられたカメラとしか思えない。
だがカメラと言えども勝手に他校の有線になどにアクセスしないだろ。
それこそ逆探知されてしまう。
ならエイリア学園の私物からこの光景を無線で流してる可能性の方が高い。
浮遊するカメラ機とか?
いや、それはバレるだろ。
ならより近いところからこの試合を捉えているはず。
エイリアの道具…
エイリア学園の何か…
そうなると…
ジェネシスが持ってきたモノといえば…
「黒い……サッカーボール………?」
そういう事か!!
「そこを退けぇ!!」
「!?」
「『ダブル烈風拳』!!」
俺はクィーズから『ダブル烈風拳』でボールを奪い取った。 そして俺がボールを奪った事でチャンスと思い雷門は前線に上がるが……俺は相手方向に向かず、ジェネシス側のベンチに向き合った。
「は、破和土さん?」
「基秀先輩?」
皆の不安の中、ただ静寂が流れる。
「!」
そしてグランだけが気づいた。
でも遅い。
狙う先は…
エイリア学園の"黒いサッカーボール"
「それがお前らのやり方かァァア!!!」
大声とともにボールを蹴ると、黒いサッカーボールに直撃して…
バチーーン!
ビリリリリ!!
「「「!!?」」」
黒いサッカーボールは大打撃を受けた事で電流が走る。 それはまるで、機械が故障したような電気の音であった。
そして、丸いガラスの輪っかが割れ落ちる。
それは紛れもなく、カメラのレンズだ…
つづく
やめて! ジェネシスの圧倒的力量差で
メンタルをブレイクされたら
ウイングのポジションと繋がっている
風丸の自信が燃え尽きちゃう!
お願い、あきらめないで風丸!
あんたが今ここで倒れたら
闇落ちルート確定で黒歴史が生まれるのよ?
前半戦はまだ残ってる!
ここで耐えればエイリア石に勝てるんだから!
次回! 風丸死す!
デュエルスタンバイ!
こ れ は ひ ど い
ではまた