〜 稲妻街 〜
「アトミックフレアは強かったけど、究極奥義の意味を知った円堂からはこれ以上点は許さないだろうな」
プロミネンスはバーンを中心とした攻撃型だからネッパー辺りにボールを渡らせてしまうと大体バーンに繋がってしまう。 その時は士郎をぶつけてやるけど…いや、空中戦のサッカーとか中学生がやるプレイかよ。 さらに言えば誰もバーンのジャンプりょくぅ…に勝てない。
一応メテオシャワー対策のザ・タワー&あびせげり戦法でカット出来ないことはないが俺は今回攻めに転じた方が良い。 ボランチとしての役割を半分捨てたようなもんだが、バーンアウト君のゴール守備率は低い。 だからガンガン豪炎寺とアツヤにボール回させる形でラインを上げればこの試合は簡単だ。
でも理由がもう一つあるとしたら…
「『せいぎのてっけん』!!」
円堂のレベルアップのためにもわざと蹴らせる形で進めた方が良いだろう。
あと士郎も同じこと考えてるのか、何度かわざと見送ってる。 理由を聞けばこの先現れるさらに強いエイリアのシュートを慣れさせるため、失点は許すつもりで円堂とバーンの対決を運んでいるの事。 やはりそこら辺を考えてやっているようだ。 なんというか、侮れないよなこの兄は。
兄弟のアツヤが強くなることを願うように、仲間の円堂が強くなることを願っている。 そのためにはリスクを伴っても強くさせないとならないとの事だ。 まぁ、それでもこの試合は負ける要素が無いらしい。
でも…
「「「『ザ・フェニックス』!!」」」
「シュートできるキーパーってハイスペックに見えるようでアンバランス過ぎてなぁ…」
原作ゲームでも円堂のステータスを見るとキックもそこそこ成長する。 それがいまこうしてそのステータスが誠である事を証明するかのように点を決める。
そしてバーンアウト君、あんたは敵なんだけど応援したくなるからちゃんと止めて(切実)
豪炎寺やアツヤはともかく、キーパーにすら点を入れられるのは流石にヤバいぞ?
「『フレイムベール』!!」
さて、俺も傍観を続けている訳でも無い。 レアンが俺にドリブル技で勝負を仕掛けてきた。 フレイムベールによる炎の柱をバックステップで回避する。 そして炎の柱が消える瞬間を見計らってスライディングで正面からレアンをカットする。
しかし炎を遮って伸びる足に気づいたレアンはボールと共に上にジャンプする。 良い回避だ。 だが俺もこの程度で終わるわけがない。 体を捻って片手で逆立ちしながらレアンの足元に浮いてるボールを両足で挟んで掻っ攫う。
アクション映画のように片手でクルリと起き上がって仲間にパスをしようとした瞬間、後ろから熱を感じる。 ブロック技の『イグナイトスティール』が襲った訳じゃないが必死に食らいつくレアンのプレイは熱さを感じさせる。 俺よりもひと回り体が小さな彼女のショルダーチャージがヒットする。 こちらは倒れないように踏ん張るが休みない攻撃に対して軽く怯む。 その隙にレアンがまたボールを奪い取る。
「やった…!」
「いや、まだだ…」
「!?」
彼女は気が緩んだ。 実戦の中で俺に勝てた事が嬉しく思ったのだろう。 けれどそれは試合中に表す感情ではない。 心の奥で喜び飛び跳ねるのは構わないがその感情を表に出して隙を晒すのは愚策。
「『クイックドロウ』!!」
ノーアクションから放たれるクイックドローに対応できる選手はそういない。
反応に遅れた彼女の真横を通り過ぎてボールを掠め取った。
「なっ!?」
俺よりも一回り小さな彼女だが先程のショルダーチャージは良い威力だった。 怯ませるには充分なほどに。 けど俺には効かない。 心身ともに鍛えている漫遊寺の生徒なのだからただのタックル程度で奪い取ったと思わないで貰おう。
「ッ! ならばこれだ!」
「っ!?」
地上から浮き上がり、重力から解放された感覚につつまれる。 無重力空間に投げ出して身動きを封じるこの超次元必殺技の名前は確か『アステロイドベルト』だったはず。
それよりもまさかレアンがこの必殺技を使うとは思わなかった。 アストロイドベルトは原作ゲームでは覚えない技だが……いや、彼女はエイリア学園の高ランクに属するプロミネンスの一員だ。 もしかしたらメテオシャワーなど他の技を覚えてるかもしれない。
てか『技は四つまで』とかポケ○ンじゃないんだから普通に沢山覚えてる間違いない。 それを言えば円堂でさえ『熱血パンチ』系を入れれば原作ゲーム以上に技を習得してることになる。
ああ、そうとも。 ゲーム基準じゃなくて、現実味ある原作アニメ基準で考えないならない。 風丸の件もあったがこの世界の進行は比較的アニメ基準だ。 その認識が甘かった俺が浅さかだった。 反省しよう。
「くらえ!アステロイドベルト!」
レアンの周りに浮かんでいる隕石がこちらに飛んでくる。 身動きの取れない無重力空間だからこそ隕石の散弾を回避する事は不可能だろう。 しかもこちらの胴体の面積を埋めるくらいに大きな隕石が一つ紛れていた。 無抵抗なこの状態からアレの直撃を許すのは頂けない。
まったく、なんて恐ろしい技だ。
「っ、やるか!」
隕石の散弾に堪えながら俺はこの危機的状況に体を反応させると生存本能が働き、闘気がこれまで以上に溢れる。 勢いが激しくなるアステロイドベルトの攻撃だが次に迫り来る大きな隕石に呼吸を合わせる。
「…」
俺はこの光景を見て漫遊寺で行った最後の試練を思い出した。
漫遊寺の最後の試練…
それは動きが制限された足場だけで滝の上から落ちてくる丸太などを凌ぎ、落ちぬよう回避し続ける過酷な訓練。 自分よりも大きなモノが落ちてくることもある。 一歩間違えれば殺人現場に早変わり。 それで当然の如く自分よりも大きな岩が落ちてきた。 もちろん制限された足場の中で避けることは不可能なためそれをただ防いで耐える以外に方法はなかった…と、思われたが俺はその岩を凌ぎきる事が出来た"とある技"がある。
それはごく自然と編み出された超必殺技。
これができたからこそ"聖者"として君臨した。
「払う…!!」
無重力と言えども姿勢は崩さない。 そしてトドメとばかりに直撃してきた最後の大きな隕石を下から触れる。 烈風拳の様に下から上へ風を切るように払えばその隕石は目の前で静止して、無重力空間の中でぐるぐると回転した。
「!?」
レアンは驚く。
そのまま直撃すると思ったのだろう。
しかしそれを安易受けてやるほど俺も優しく無い。
「はぁぁぁぁ!!!」
一気に撃ち放った。
「"羅生門"ッッ!!!」
アストロイトベルトの隕石に両手をぶつけると溢れるばかりのエネルギーを強烈に放出する。
目の前でグルグルと回転していた大きな隕石は半壊しながら元の来た方向へ戻される。
「なっ!!? うぁぁぁあ!!」
彼女もまたこの無重力空間に投げ出されている者だ。 逃げることも避けることもできない。 そのため勢いよく押し戻された隕石を受け止めることもできずアステロイドベルトは反撃という形で失敗に終えた。
「…」
無重力から解放された俺はボールを回収。 このまま味方に繋げるプレイを続行しなければならないけど、なにを思ったのか俺は足を止め、彼女だけに聞こえるように声をかけてしまった…
「間違ってる…」
「ぇ…?」
彼女は俺の声に反応する。
「それで最強を目指すなんて認めないからな……」
「!!??」
俺はロングパスでアツヤに渡す。
エターナルブリザードはバーンアウトの炎を絶やし、再びゴールが決まった。
もう雷門イレブンがプロミネンスに負ける理由もないだろう。
わかりきったこの結果に胸を撫で下ろすのが良いだろうが俺は優れなかった。
それは間違いなく…
「アストロイトベルト打たれるまでは少し楽しかったと思ったけど、やはりこうなるか…」
俺はおひさま園の子供とサッカーする事が好きだ。 大きな思い出だ。 だからイプシロン戦の終了後に現れた蓮池杏と勝負している時間は楽しかった。 今はレアンとして勝負を仕掛けてきたけど、負けず嫌いな彼女のプレイはこのフィールドでも少なからず楽しさが感じられた。
でも侵略者としてこちらを潰そうとする相手だ。 そのためエイリア学園の必殺技を使われた瞬間から俺はその楽しさはまやかしとなり、羅生門を打ち込むことで現実を見る。 こんなふざけた出来事に楽しさを感じるのは怠惰かもしれないと、自分で嫌になる。
「…」
俺は円堂守の様に敵を許し、相手が驚異の侵略者としてもまたサッカーできることを望む……なんて事は出来ない。 俺は雷門イレブンのように優しい感情は持たない……いや、彼女達に対して持つ事が出来ないからだ。
「はぁ…」
簡単な試合なのに…
なんとも辛い戦いだろうか…
瞳子さんもこの状況はしんどいだろう。
「4-2か…」
ホイッスルまで間近。
ただその分、少しだけ長く感じられた…
♢
フィールドに横たわる私は基秀に負けたらしい…
まぁそれもそうか。
あの人は無重力空間に投げ出された程度で終わらないのは良く知っている。
その結果がこれだ。
けれど…
「……なにやってんだろう、私…」
エイリア学園の選手。
そしてチームプロミネンスのメンバー。
いまその肩書きで雷門イレブンと対立している…けど、心が優れない。
今は父さんのため、侵略者として戦っている……つもりでいるけど、基秀と激しくボール奪い合った瞬間は数年越しの勝負を行ったあの時間と同じ楽しさがまた芽生え始めていた。
またこうして私より強い彼と戦える…
ボニトナの言う通り私は彼に今までの実力を見せつけようとした。 全てをぶつけるつもりで。 でもアステロイベルトを使った時から私の中で何かがかみ合わなかった。 別にアステロイドベルトを久々に使ったから感覚を忘れたとかではない。 ただ、この『エイリア学園の必殺技』を使った瞬間私は自分が求めている熱を失ったような感覚に囚われる。
それはおそらく、侵略者として彼と戦っているからだ。 アステロイドベルトを使うまでは『負けず嫌いな蓮池杏として』の私で挑んだ。 でもエイリア学園の必殺技であるアストロイトベルトを使ってから『侵略者のレアンとして』の私で襲った。
『間違ってる』
『認めないからな』
あの口ぶりからすると基秀はレアンを名乗る私が蓮池杏と言う事は知っているのだろう。 だとしたらおそらくプロミネンス、いや……プロミネンス以外のみんなの事も知っているのだろう。
でも重要なのはそこじゃない…
基秀は言った…
私の目指す先を否定した。
「知ってるよ……そんなの知ってるよ」
既に複雑な立ち位置にいることくらい、私はわかってる。
間違いを犯していることくらい、私はわかっている。
彼と楽しい時間を求める事が間違いなくらい、私はわかってる。
わかっている…
そんなのわかっている…
見失っている事も、既に理解してる…
「……彼とのサッカーって、なんだろう」
それは間違いなく…
彼の事を考えていない私の勝手な自己満足だ。
「もとひで……」
ホイッスルが鳴り響く。
勝利に喜ぶ雷門イレブンに寄り添った彼の後ろ姿は寂しさを感じさせる。
そして敗北に打ちしがれる私たちを横目で見ていた。
その視線は『失意』と『怒り』だ。
「っ…」
ああ、そうか…
私は…
いや、私達は…
愚かなんだろう…
♢
「明後日はダイヤモンドダストか…」
「なんだか寒そうな名前っス」
「そうでヤンスね」
プロミネンスを倒した後、俺たちの目の前に現れたのは凍てつく闇(笑)の恐ろしさを教えてくれる奴らだった。 原作通りかな? とりあえずガゼルに関してはエイリア学園を辞めた後もそのままのキャラだから将来すごく心配。
「しかしプロミネンスの奴らに対して圧勝だったな!」
「バーンって奴は強かったけどそれ以外は大したこと無かったな!」
「その分こっちには豪炎寺さんとアツヤさんがいるッス! そして大先輩の破和土さんがいるっス!」
「無敵の陣でヤンス!」
それでもまだもう少しジェネシスに追いつかない。
もうひと磨き以上は欲しいものだ。
「皆さん、報告があります」
瞳子監督は鬼道と並んで注目を集める。
これはもしや?
「円堂君、あなたにはキーパーを辞めてもらい、別のポジションに就いてもらいます」
「「「!?」」」
寝耳に水な報告に雷門イレブンは様々な反応を起こす。 それよりも瞳子監督は原作と違って誤解を生まないよう発言してる辺りすごく成長したと思わない?+114514点
とりあえず俺も言葉を加える。
「それ、良いね。 円堂みたいなフィジカルお化けはキーパーをさせるよりもフィールドプレイヤーとして活躍させた方が良いこともある」
「うむ、確かにです。 これまでの活躍を見ますと円堂さんはキーパー以外のポジションに就かせたほうが今後の雷門イレブンに良い影響を及ぼします」
おっと? 目金も乗せてきたぞ?
でもベンチで雷門の奮闘を見ていた側としてそう感じた事があるのだろう。
それに中学生で「良い影響を及ぼす」と言える辺りが目金の成長を感じる。
え? 何故かって?
新たな試みを『良し』と思えるのは大変素晴らしいことだぞ? 常に変化し続ける雷門イレブンはそうして強くなった。 目金はそこをわかっている。 だから円堂守はイナイレ3で世界を相手に出来たんだよね。 あたりまえだよなぁ?
「じゃあ誰がキーパーを守るんだ?」
「そりゃ、立向居に決まっている」
「え!? 僕ですか!?」
「そうだよ(肯定)」
立向居は『ムゲン・ザ・ハンド』を覚えてもらうとエイリア編の中では円堂を超えることになる。 これに関しては原作ゲームも込めて冗談抜きな話だ。 総合的には円堂が強いけどキーパーとしてはエイリア編では立向居が上だ。
こればかりは『せいぎのてっけん』が風属性な事を恨んで、どうぞ。
「さて、この空いた三日間は次の厨二病ダスト戦に向けて調整に入るからちゃんと体を管理するようにしろよ? もし無理したやつがいたら今回見せた羅生門で昏倒させるから」
「じょ、冗談じゃないぜ…」
「あれを生身で食らうのか…」
「絶対死ぬって」
当たり前やん。
敵を伐つための技なんだから。
てか羅生門に関しては裏FFI専用の技なので簡単に出してはならない。 ただアステロイドベルトに打ち勝つための手段として今回は使った。 あまり表で引き出したいものでは無い。 だってこの技はボールに当てるのではなくて『人』に当てるつもりでやるんだぞ? ペナルティカード覚悟で敵選手を試合続行不能に叩き落とす禁じ手だ。 試合ではまだ一度も使ったないけど、あの世界ではそういった技を必要とする。
恐ろしい世界だよね?
まぁ、だからこそ大金が手に入るがな。
ありがてぇ…
「みんな! 次の試合も勝つぞ!」
「「「「おおーー!!!!」」」」
雷門向きなプレイヤーじゃない俺もそのための右手を掲げて「おー!」と言った。
さて…
シャドウはどこかな?
今の雷門イレブンに勢い付けさせるためにスカウトしよう。
♢
夜の河川敷は少し冷える。
でもこの寒さは漫遊寺で存分に堪能してるからむしろ低い気温は好きである。
練習で熱くなった体を早めにクールダウンさせるに丁度良い体。
あと冷たい空気によって身が引き締まるからリフティングの自主練などで程よく緊張感を生んでくれるからむしろやりやすい。
個人的な感想だけど。
だから少し寒いくらいが嬉しいのだ。
「998…999…1000…1001…」
ちなみに俺はあの後シャドウとコンタクトを取り試合の感想を聞いた。 すると「まだ自分はあの枠に入り切れるほど強くない」と言っていた。 謙虚と言うか、技量をわきまえてると言うか、まだ前線で活躍する雷門イレブンに入れる自信が無いらしい。
まぁ無理矢理入れるものではない。
心が定まった時に向かい入れるとしよう。
原作の終わりは近いけど、そこは関係無いな。
「……?」
今日の事を振り返りながらリフティングをしていると誰もいないこの河川敷に誰かがやってきた。 俺は四桁に突入したリフティングを止めて後ろからこちらを見る人物と向き合う。 夕日も落ち始めて暗くなり始めてるけどよく見える俺よりも一回り小さなオレンジ色がそこにいる。
「……」
その宇宙人は……いや、その人物は何も語らない。
だからこちらから言葉をかける。
「レアン……いや、蓮池だな」
「!!……やっぱり知って…」
「流石に丸わかりだ。 せめてレーゼの緑川くらいはイメチェンしろ」
「……」
彼女から言葉は無い。
静かな時間だけが流れる。
「なんで俺の目の前に現れた?」
「……」
まだ彼女から言葉は無い。
何も掴んでいないその手は強く握り、小刻みに震えている。
すると小さく声を漏らす…
「わからない…」
「…」
「わからないけど……何かが、すごく苦しくて…それで……基秀に、会わないとならない、気がして……わからないけど、ここに来てしまった…」
「…」
「わたしは……わたしは……もう、認められないの?」
どこかしら虚ろな目だ…
もうなにかを諦めてる様に見える。
「……言葉の通り、俺は"レアン"を認めない」
「!!」
「…」
「……あ、あはは…はは……」
「…」
「…そうだよね、わたし……そうだよね……だよね…」
でもその言葉が嬉しかった様に笑う。
何度も同じように言葉を繰り返し…
「ねぇ、そのボールでわたしを蹴り飛ばしてよ」
突如言葉を掛けてきた。
はっきりとした声なのに…
俺を見てるようで見てない眼差しが『罰』を求めているようだ。
「…なんで?」
「あなたに
頭に縋る。
「……ならゴールネットの前に立て」
「…」
「蹴り殺してやる」
「……わかった」
レアンはゴールネットの前まで歩き…
悲しそうに笑いながらこちらに振り向く。
「……準備は良い__」
ドゴォォンン!!!
「!?!?」
蹴り抜いたサッカーボールは彼女の顔の真横を通り過ぎる。
そしてゴールネットはそのサッカーボールの威力を受け止めきれず、そしてゴールポストはガゴンッと後方に倒れた。
彼女は倒れた音を聞いてゴールポストに振り向き、そして再びこちらに振り向く。
「あ ほ く さ」
「!」
「誰がお前にぶつけてやるか、ヴァーカ」
頭をガシガシと掻きながら俺は彼女の前に立つ。
クソデカため息を吐き、次は真剣な眼差しで彼女を見る。
「まぁ、確かに、俺は許せなかったよ? 親である吉良星二郎の指示とは言えテロ活動に加担してるのは大ッッッッ変、心が痛みました。 そして宇宙人でサッカーするお前らに失望すらも覚えた」
「っ!」
「そしてレアンで挑もうとしたお前にも失望した」
「…もと、ひで……わたしは…」
「でも、アステロイドベルトを放つ前の君は確かに蓮池杏だった。 一人のサッカー選手として挑んできた君の姿勢は認める」
「え? …いや、まって、わたしはさっき認められないって…」
「宇宙人として被るレアンは認めない。 でも一人の蓮池杏としては認めるって事だ。 天才のお前ならこの意味わかるよな?」
「ぁ……けど、でも…」
「ああ、結局のところ、それでもお前は侵略者だ。 悪だ。 敵だ。 打ちのめす対象だ。 漫遊寺を狙ってきたエイリア学園は俺が倒すべき存在でしか無い」
「…………じゃあ、嫌いになった…かな…」
「いや、別に?」
「……え…」
「君たちに対して怒りと失意は持った。 けど俺は君たちをずっと思っている。 間違ったことをしてる君たちを見て止めないとならないと思ってるから、こうしてイナズマキャラバンに参加してエイリア学園なんて馬鹿げた事を終わらせようとしてる。 もし何も思って無いのなら君たちに何もしないし、言葉すら交わさない。 でもそうじゃ無いのは、俺は君たちをどうにかしたくて、言葉も交わさないとならないから、こうして解決のために動いている」
少しだけ膝を折り曲げて目線を彼女と合わせる。 そうやって覗かれた彼女の目は青色に綺麗で、まだ幼なげが残っていた。 おおよそ侵略者とは思えないくらいに子供の色で沢山だ。
「俺は嫌いになんかにはならない。 俺は君たちとの時間を覚えていて、それは大事なもので沢山で、そんな君たちが大事なんだ」
「ぁ…ぁぁ……わたしは…」
「俺は、絶えなく、君達をずっと思ってるよ……だって」
震える彼女の頭に触れる。
太陽の様に暖かい筈の彼女だが今は夜に隠れた夕焼けのように冷えていた。
その温度をこれ以上下げない様に撫でながら…
「俺は君たちの事が大好きだからな」
「ぅぅ!…ぅ、ぅぁ…ぅぅぅ…ひっく…ぅぅ!」
「俺は侵略者としてサッカーをする杏が最強を目指すプレイヤーなんて認めれない。 でも最強を目指したい杏が見たいから、俺は侵略者として振る舞う君を止めるよ」
「っ、ぅ…ぅぅぁあ"あ"! あ"あ"ぁ!!」
彼女は悲しみの感情を露わにし始めると目元から涙が流れ落ちる。
冷たさが抜け落ちて太陽の様に暖かい彼女が戻り始めていた。
「俺が全て終わらせる。 そして元に戻す。 大好きな頃の君たちをまた見るために、俺は瞳子さんと共におひさま園を取り戻す。 だから……もうそんなに自分を責めなくて良い。 ほら、こっちに来い。 君たちの基秀お兄ちゃんがぎゅーってしてやろう」
「う"あ"あ"あ"ぁぁん!!!」
涙が止まらなくなった彼女は飛びついて来た。 彼女は顔を俺の胸元に押し付け、涙を流しながら大声を漏らす。 背中に手を回してガダガダと震えながら悲しみの感情を爆発させた。 俺はそんな彼女を撫でることで落ち着かせながら夜空を眺める。
「…」
全ての元凶は吉良星二郎。
彼女たちは意志に関係なくテロ活動をやらされている。 加害者であり、被害者でもある。 そして吉良星二郎もまた被害者であり、加害者である。 だから捻じ曲がった憎しみ連鎖の片隅で、蓮池杏はこうして泣く事になった。 でも国民は大きな痛み受けて恐怖に落とされた。 彼女達の行いによって傷跡を入れられてたのは事実である。 そのためその罪を脱ぐことは簡単では無いはず。 簡単にこの子達を許しはしないだろう。
でも、俺だけでも彼女を許すことができる。
それが正解であるのかは理解できないけど、理不尽な立場にて苦しむ子供の涙を拭うことができるのは、今この場所にいる俺にしか出来ないことだと思う。
だから、俺は…許そう。
怒りを忘れた訳じゃないが彼女を責め立てる理由にはならない。
「この出来事が全部終わったら、お前らの事を沢山沢山沢山たっっくさん、怒るからな?」
俺の言葉に彼女は抱きしめる力を強くする。 涙を流す泣き声も激しくなり、それから何度も「ごめんなさい」の言葉をぐちゃぐちゃに崩れながらもひたすら謝り続けていた。 その度に俺は「わかった、わかった」と頭を優しく撫でながらそう繰り返していた。
それから涙枯れるまで泣かせた後、だんだんと大人しくなる。
ただそこまでは良いが、彼女の体から力が抜けていく感覚に俺は少し焦る。
「…杏?」
「………すぅ…すぅ…」
「……あらあら、こりゃまた…」
泣き疲れて眠ったようだ。
「やれやれ、あんたのお家はこの近くに無いのに今日はどうするんだよ?」
俺の呆れたつぶやきに答えは帰ってこない。
安心しきった寝息だけが河川敷に広がる。
「……軽いな」
眠った彼女を背負う。 全身に力が抜けた人間は重たいと言うが、その理論が正しいのか頭を傾げたくなるほど彼女は軽かった。 でもそれは涙を沢山流した事と、重くのしかかっていた辛さが取り除かれたからかもしれない。 そんな精神論が彼女の体重に比例するとは思わないだろうけど俺はそれを否定する。 太陽のように暖かな彼女を背負っている俺が言うのだから、今はそんな常識どうとでもなるだろう。
「さて、帰るか。 瞳子監督起きてるかな?」
河川敷を照らす星座よりも、いま背負っているお日さまの方が明るいようだ。
つづく
脳内再生なんだけど蓮池杏の声に「くぎゅ」の声を当てるとしっくり来て笑ってしまった。
ではまた