イナイレップーケン   作:つヴぁるnet

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第28話 〜 静岡その5

イナイレ28

 

〜 富士 〜

 

 

 

さて、警備マシーンズだったか?

 

アイツらを試合で倒さないとならない。

 

しかし俺一人で出場する訳にもいかない。

 

まず身体に何事も無く完全に動けるメンバー……と、言うよりかはエイリア石10回目に巻き込まれてない蓮池杏ただ1人が100%の力で動けるだろう。 彼女もそれが分かってるのか俺が声をかける前に上着を脱いで靴紐を閉める。 とりあえずこれで1人目。

 

そしてエイリア石10回目の投与に巻き込まれた後でも心身共にまだ安定を保ち、なんとか動けるのがボニトナを演じる穂香ちゃんと、ネッパーを演じる夏彦くんと、クララを演じるクララちゃんだけ…って、名前ややこしいなクララ。 ともかくこの3人を頼りにできる。 4人分を確保。

 

そして試合に支障は起こしそうだが、それでも気力を保ってで試合を行えるメンバーがバクレー演じる幸太郎くんただ1人だけ。 これで5人分を確保。

 

あとの残りのメンバーはまともに動けず、サッカーボールを見ただけで震えが治らなかったり、立ち上がって動くことが困難なほど疲弊してる子供がほとんどだ。

 

特にアイシーを演じる愛ちゃんの精神状態がお日さま園児の中で一番ひどい状態だ。 彼女は元々そこまで精神面が強い訳ではなく、アイキューを演じる兄の修児くんが支えてくれる事で彼女は安定する。 試合でも愛ちゃんは兄の指示があるから強い力を発揮するする。 でも1人だと弱い。 けれど愛ちゃんは今一人で何かと戦っている。

 

そして心配で気が気でない兄の修児くんは愛ちゃんに声をかけ続けていた。 恐らく蓮池杏に"レアン"が居るように愛ちゃんにも"アイシー"が備わっていて、それと苦闘を続けているのだろう。 その苦闘は誰かが近くにいることで克服できる。 杏がそうだった様に今の愛ちゃんは兄の修児くんが必要だ。 どうか乗り越えてくれ…

 

 

 

「あと二人は必要か? いや、警備マシンズがそこまで公式ルールに縛られてるわけが…」

 

 

「キャプテンの僕が皆を救う!!」

 

「そうだ! 俺たちが出る!」

 

 

南雲くんと涼風くんが体の痛みに耐えながら俺の目の前に立つ。

 

 

「いや、お前ら体が…」

 

 

「「頼む!基秀にいちゃん!」」

 

 

「!」

 

 

 

晴也と涼風は体の痛みに耐えながら頭を下げる。 普通なら「だめだ」と言って気絶させるなりしたいが二人の体にダメージを加えるわけにも行かない。 そもそもそんな事せずとも後ろで控えているのが普通なのはこの二人も理解してる筈だ。 けど皆を救いたいは俺と同じなんだろう。 だからどこか拒むことが出来なかった。 でもお陰で8人揃った。

 

ちなみに良くあるサッカーの公式戦では8人以上を保たないと試合続行が認められない。

 

それを警備マシンズが気にするかは知らないがこの人数的編成で相手することになった。

 

少しだけ、心配だ。

 

 

 

「さて、即席ミニカオスチームの完成だけど基本的に俺を主軸に動かす。 それでもしボール受け取ったらトップ下の俺かトップ上の杏に渡す形でゲームメイクを行う。 左右のトップに付いた晴也と涼風は杏を主体に得点が決めれる様に動け。 穂香ちゃんと夏彦くんはバックのラインを大きく上げろ。 人数が少ないからオフサイドトラップが活かしやすい。 それからクララは_」

 

 

「その前にキーパーはどうするの?」

 

 

「キーパー? あー、そうか。 まぁ、最悪無しでも良いけどここは俺がトップ件キーパーとして動くかな」

 

 

「私がやるわ、基秀兄さん」

 

 

「クララ?」

 

 

「私はキーパーもできる」

 

 

 

あ、そういやこの子って確か世界編だとキーパーも出来たよな? エイリア編の時の彼女は分からないけどその先に向けての素質はある。 あと口ぶりからしてこれは経験者だ。 ならば頼らざるを得ない。

 

 

 

「じゃあ頼んだよクララ」

 

 

「うん、分かった。 ……あと基秀兄さん」

 

 

「なんだクララ?」

 

 

「前日にね、ダイヤモンドダストと雷門イレブンが試合した。 あなたは不在だったけど、基秀もその試合に出てくれたら嬉しかった……なんて思うのは間違いかな?」

 

 

「そうだな。 クララがクララ(侵略者)じゃなければ少しくらいは嬉しかったかもな」

 

 

「そうなんだ。 なら今はわたし(クララ)である事を喜んでくれる?」

 

 

「どうだがな。 でもこんな場所じゃなければ俺は君たちとサッカーボールを転がせる事に喜びでいっぱいだったろう。 それは確かな話だと思ってる」

 

 

「そうなんだ。 ねぇ……帰ったら、怒る?」

 

 

「怒る」

 

 

「ん…わかった」

 

 

 

少し嬉しそうに笑う。

 

S気ある子だと思ったがM気もある…って訳でもなさそう。

 

あまり表情に出ないけど彼女だけど今は頬を緩ませれるくらいに感情が躍っていあ。

 

こんな場面でも俺とサッカーしたかったのだろう。

 

 

 

「さて、唐突な試合で困ったな杏」

 

 

「そうだね。 ユニフォームじゃなくて私服だから少しだけしんどいかも」

 

 

「あとスニーカーだから本気で動くのは大変かもな?」

 

 

「そんな基秀もスニーカーでしょ?」

 

 

「お、そこに気づくとは天才か?」

 

 

「はいはい」

 

 

 

あの夜の河川敷で現れた彼女はエイリア学園をどうにかしようとこの場所までついてきた。 エイリア学園の在り方は疑問を思い、大好きなサッカーは苦痛となり、侵略者である事に息苦しく、俺に罰を下されたいと彼女は贖罪を求める。 最後は涙を枯らして蓮池杏を取り戻すと、レアンの人格を押さえつけながら今を踏みしめる。

 

 

「基秀が来てくれたんだ。 私と共に来てくれたんだ。 だから終わらせる…」

 

 

これまでの罪と誤ちを背負いながらもこの場所を終わらすため、俺と肩を並べてポジションについた。 だから警備マシンズと対立する隣の彼女は頼もしいの一言に尽きるだろう。

 

 

 

「トップとバックで簡単に分けた戦いだ。 バランス良く中央で戦うなんて考えるな」

 

「FWとDFの言い方じゃ無いんだね?」

 

「少人数だから実のところ大したポジショニングは無い。 守る役(バック)攻め役(トップ)の二つのみ」

「!……ふふ、なんだか懐かしいね、その感じ」

 

「そうだな。 今よりもまだ小さい君たちとサッカーする時はバックとトップ、あとはキーパーくらいの用語だったからな。 ただ今回は人数の少なさ故の仕分けだから気にすんな」

 

「うん、そうだね。 やることは変わらない!」

 

 

 

「ピピビ、間モナク試合ヲ始メル」

 

 

 

俺たちの準備が終えたことを察したのかマシーンが動き出す。

 

 

「まて、ルールはこちらが提案する」

 

 

「ピピビ?」

 

 

「30分と30分ではなく、前半の45分一本だけだ。 それで片付けてやる。 そのかわりキックオフはお前らにやるよ」

 

 

「…ピピビ、了解シマシタ。 ソノ、ルールヲ採用シテ試合ヲ開始、デス」

 

 

 

どうやら融通は効くようだ。

 

ありがてぇ…

 

これで…

 

存分に"スクラップ"する事ができる…

 

そして電子的な笛の音が鳴り響く。

 

警備マシンズの攻撃から始まる……が。

 

 

 

「『烈風拳』と!」

「『イグナイトスティール』!」

 

 

杏のイグナイトスティールに烈風拳を重ねると炎がいつもよりもけたたましく燃え上がる。 元ある状況以上の動きを分析できなかったのか、固まっていたFWのロボットは杏のボールカットに巻き込まれて吹き飛ばされた。

 

 

 

「基秀!」

 

 

ボールを回収した杏のバックパスを受け止める。

 

俺は力強く真上に蹴り飛ばした。

 

 

「「!?」」

 

 

すると大音を響かせて天井の備えられた機材にボールがめり込み、ボールは落ちずにそこで静止した。

 

 

 

「必殺タクティクス『餓狼伝説』」

 

 

闘気を巡らせる。 昂らせたその心はこのフィールドを戦場と化す。 勝利に餓えた狼の如く、闘気を尖らせると身体強化は完了した。 普通なら時間がかかる身体強化だが、前日の夜に門岡の家で精神統一を行っていたから即座に備えることができた。 頭にボールを乗せての精神統一だからそりゃもうイメージしやすい限り。

 

 

まぁ、そんなことはどうでもいい。

 

 

天井にめり込ませたお陰で余裕持って発動できた。

 

 

 

 

 

「機械仕掛けの癖に人を処分するなど戯言もいいところだ」

 

 

 

 

俺は後方に退がり、目を閉ざす。

 

そして"とある人"に声をかける。

 

 

 

「修児! 天井にめり込んでいるボールがそのまま落下する場合その着弾地点の細かな位置はわかるか? 早めに頼むぞ…」

 

 

「え、え!?? ……ええと、そうですね。 丁度いまのレアンの位置から右に1.5歩だ。 この部屋の空調は効いてないが建物構造からして誤差で左右に0.3歩を考慮することになるが……あ、兄貴、一体何をする気ですか?」

 

 

フィールドの外で妹の愛の面倒を見ていた兄の修児は素早く計算してくれた。 咄嗟に計算を頼んだけど、誤差も含めて答えを出してくれた辺りさすがI.Qが200だったか2000だったか、また114514超えてる疑惑があるだけのことはあるな。

 

 

 

さて、俺も超えるか…

 

 

「行くぞ…」

 

 

 

天井にめり込んでいたサッカーボールは重力に従って落ち始める。

 

 

 

「今だけ……今だけは、殺すつもりで…」

 

 

 

雑念を拭い去るように心が冷たくなる。

 

 

横にいた穂香は何かを感じたのか俺から離れた。

 

 

 

 

「すぅぅ…………ッッ!!!」

 

 

 

 

その場に風圧と音だけを残して姿を消す。

 

 

 

 

 

「一歩音越え…」

 

 

 

 

餓狼伝説の闘気だけを残して消える…

 

 

 

 

 

「二歩無間…」

 

 

 

 

影を残すようなその速さで夏彦とすれ違い…

 

 

 

 

 

 

「三歩絶刀…!!」

 

 

 

 

杏は俺が何をやるのか理解したらしく、既にその場から退くと耳を抑えて衝撃に備える。

 

 

ああ!

 

完璧な状況だ……!!

 

 

 

「ッッ!!!!」

 

 

力一杯込められた最強クラスのシュートとして放たれるならばゴールが約束される必殺技。 しかしそれは放つ事ができたらの話だ。 基本的に実戦では使うことが不可能に近い必殺技。 常に動く試合の中だと使える状況すら訪れないからだ。 それに身体能力が高ければ打てるなんて"甘い技"ではない。 ほかにも細かな制度を必要とし、乱れなき呼吸と姿勢、それこそ剣技に優れた『沖田総司』のような一筋を必要とする。 余裕を持って放つ事ができる状況、そこに何一つ乱れることが許されない技術。 扱うにも困難極まりない必殺技な故に別の必殺技に行き着く始末。 それはやはり実戦で使う事ができないのがなによりも原因だ。 実用性も無く、これを使える出番がないからこそ俺はこれを『未完成な必殺技』として考えていた。 完成させても、振るえなければ意味はない。 それこそとあるサイヤ人が使うロマン技(元気玉)のような存在と変わりない。

 

 

 

だが、俺は巡り会えた。

 

ここが屋内であること。

 

無事に餓狼伝説を発動出来たこと。

 

近くに計算を得意とする者がいたこと。

 

初手でボールを奪ってくれた杏がいたからこそ、このように完璧な状況を作る事ができた。

 

また拷問を受けていた涼風を助けるときに"ノーザンインパクト"を試した事で、今から使う必殺技のイメージに繋がった事も大きいだろう。 涼風の惨状を見て心が冷え切った感覚に襲われたけど、いまから使う必殺技も煩悩を鎮めて一振りだ。 少しのズレも許されないソレを餓狼伝説で倍にしてより完成に近づける。

 

ああ、これほど理にかなった完璧な状態からこの必殺技を打てるなんて恐らくもう二度と出来ないと思う。

 

俺はこの一瞬の時間だけ『完成した必殺技』として使う事ができる喜びに溢れながら、至高のひと時をその蹴りに表した。

 

 

その名は…

 

 

 

「『無明三段突き』!!」

 

 

 

 

足に触れたそのボールは瞬きする間もなく消え去る。

 

 

 

 

_何かが通り過ぎた。

 

 

気づけばディフェンダーの位置にいたロボットの肩は抉られている。

 

 

 

 

 

_何かが葬った。

 

 

その後方でゴールを守っているロボットの胴体に穴が空いている。

 

 

 

 

 

 

_何かが覆した。

 

 

この世で恐らく一番強いとされてるゴールネットはサッカーボールに集約されたその一撃を受け止める事が出来ず無残に破られてしまう。

 

 

 

 

「機械如きに言ってもわからないだろう…」

 

 

 

「ピピピ…ガガッ……ジ…ジ…」

 

 

 

「なぜならこれは超次元のぶつかり合いを否定した…」

 

 

 

「ジジ…ガガッ……ピ………」

 

 

 

「ただの【技】だと言うことを」

 

 

 

「ケイ…サ……ン…ガ……ィ……ビビ…」

 

 

 

 

言葉に偽りはない。

 

これはただの【技】だ。

 

"超次元"必殺なんかではない。

 

 

元ネタもそうであるように…

 

これはただの【技術】として完成させた。

 

それに俺は『超次元必殺技』なんて一言も述べていない。

 

ただ単に…

 

"必"ず…

"殺"す…

"技"と…書いてただそれを【必殺技】と読むに過ぎず、そこに嘘偽りない表現体として俺はその瞬間に「殺すつもりで」と技に込めた。

 

 

 

だからもう一度言おう。

 

今だけこの世界のロマン(超次元)を否定しよう。

 

 

次元ではない現実と共に刻むだろう。

 

これは、ただの【技】である。

 

 

 

 

 

「AIに従って動いてるだけの心のない機械仕掛け如きが、漫遊寺の聖者を相手に務まるなんて笑わせるなよ?」

 

 

 

 

 

杏が1回、俺が1回…

 

ほんの2回だけのボールタッチでカオスは先制点を奪い取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「あれ? (私)俺たち要らなくね?」」」」

 

 

「元よりそのつもりだるぉぉ? ほらほらほら! ボール取ったら胸にかけてよ胸に!」

 

 

 

 

一瞬で煩悩と雑念が元に戻る。

 

でも殺意なんてのは裏のFFIだけで充分だ。

 

今の俺はここに居るみんなの兄貴である事。

 

ここの誰よりも強い選手として立つ義務。

 

それを忘れずに頼もしさを背中で感じさせる。

 

 

 

 

「さぁ何体でも514! AIに心は泣くとも悪夢のように怯えてゆけぇ!!」

 

 

 

 

 

この後、杏と一緒に無茶苦茶点を取った。

 

 

 

_試合結果_

 

即席ミニカオス 37-0 警備マシンズ。

 

0分 基秀

2分 基秀

2分 基秀

3分 基秀

4分 基秀

5分 蓮池

5分 基秀

7分 基秀

8分 基秀

11分 蓮池

 

 

 

 

 

アニメでもすぐ倒されるクソザコは大したなかった。

 

簡単にスクラップになってくれた。

 

あとこの試合は誰も育てる必要ない消化試合だなので、今回は俺らしく帝国学園と同じような威力攻撃で潰してやる事にしたまで。 だからこんなどうでもいい事に長い時間も戦う必要ない事を考えて45分の前半のみでルールを変えた。

 

 

 

そしてそこにカオスなんてチームに意味はない。

 

だってこの子達はもう侵略者としてエイリアのチーム名に囚われる必要かなんてないのだから俺1人でやるに決まってる。

 

 

あとは雷門イレブンの勝利を待つだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそぉ! 私は! 私はエイリア石で! やめろ! 離せ! うおお! HA☆NA☆SE!」

 

 

 

 

エイリア石が大好きなアホの剣崎は鬼瓦さんの活躍で捕まった。 これにて黒歴史エンペラーズは結成されず、雷門が黒歴史に溺れる必要もなかった。 あと原作では「ポチッとな」でエイリア学園は爆発する筈だったけど…そこで再び鬼瓦さんである。 怒涛の活躍にて阻止したので爆発は起きなかった。 この人有能すぎません?

 

 

 

「鬼瓦さん、これで全員です」

 

 

「おお基秀! よくやった!!」

 

 

「鬼瓦さんも、双子座組と天王星組の子供たちの確保と避難、ありがとうございます」

 

 

「いやいや、こうも上手く行ったのは君のお陰だ。 ありがとう。 ……ああ、またこうして理不尽な出来事に巻き込まれた人を救えた…」

 

 

「……」

 

 

 

これまで追いかけていた影山の件もあって、鬼瓦さんは誰よりもこのような出来事に敏感のようだ。 本当にお疲れ様です。 ゆっくり休んでください。

 

 

 

「……??」

 

 

そして俺は鬼瓦さんと別れを告げて雷門イレブンと一旦合流しようと思い足を進めていると騒動の元凶を見つける。

 

 

そう、吉良星二郎だ。

 

 

 

「お前、吉良星二郎…」

 

 

「…君は……」

 

 

 

俺の呟きをたまたま拾ったのか、吉良財閥は歩みを止め、こちらに振り向く。

 

この時、俺はどんな顔をしていただろうか?

 

それともどんな視線を向けているのか?

 

 

間違いなく怒りの分類だと思う。

 

だからその感情をぶつけたくてたまらない。

 

 

 

「君は確か破和土基秀君だったね。 君も私の娘と同じようにこの事件のために奮闘したみたいだね。 すまないことをした…」

 

 

「そうかい……なら謝礼金でも貰おうかな」

 

 

 

本当は金なんて別に要らない。

 

ただ俺は星二郎から礼を言われる立場になりたくない。

 

俺は俺の意思にて今回の件は働いたから吉良星二郎から頭など下げられたくない。

 

だから「金」を建前に言葉で濁した。

 

 

 

「それなら私の全財産を君に渡しましょう」

 

 

「そんなことしても俺はお日さまに使うだけだぞ?」

 

 

「だからこそ君に渡すのですよ」

 

 

「ッッ!! ……それだけ……あなたは! それだけ人を見る目を持ちながら! あなたは! 何故復讐の行先を見極めれなかったんだよ! あなたは奪われた側の気持ちがわかる筈の人間だ。 なのに何故こんなことになってしまうのですか…?」

 

 

「エイリア石に魅入られたとしか言い訳ができないですね…」

 

 

「……本当にただの言い訳だよ、そんなの」

 

 

「分かっています。 だからアレを早く破壊してもらいたい。 私のような愚か者が現れる前に…」

 

 

 

それだけ言うと彼は連行されて俺の前から去って行った。

 

本当はもっともっと多く語りたくて、それで怒りをぶつけたくて堪らなかった。 だが吉良星二郎の顔を見れば…何も言いだすことができなかった。 吉良星二郎は被害者で加害者だ。 心身共にあんなにも疲弊していたにもかかわらず、まだ息子や娘に心配されていることで心に希望が小さく灯されていた。 その灯し火を俺の感情で消してしまうことを恐れたから、ただそれを見送る…

 

 

 

「……エイリア石が落ちてこない世界線ならば、どれだけ良かったのかな…」

 

 

それとも吉良星二郎の息子が事故死しない世界ならば良かったのだろうか?

 

でもそれならヒロトや蓮池杏はどうなっていた?

 

だめだ、考えがまとまらない…

 

現実主義にも関わらずいまこの瞬間だけ無い物ねだりを行う俺の弱さ。 それは漫遊寺の聖者としてあまりにも怠惰だろう。 けど誰も責めることはないと思う。 この騒動に立ち会い、とてもとても疲れる一カ月間だったから、少しくらいはこんな風に緩んでしまうのだろう。

 

そう錯覚させて俺は雷門イレブンの元に歩みを進めた。

 

 

 

「兄ちゃーん!!」

 

 

「よぉ、夕弥。 よく頑張ったな」

 

 

 

走り迫る可愛い弟は勢いよく飛びつき、俺はグッと抱きしめてあげる。 ユニフォームも少しボロボロで、どれだけ激戦を繰り広げていたのかよくわかる。 ああ…それとすこし背が伸びてるな。

 

 

 

「ああ、オイラすごく頑張ったんだぜ!」

 

 

「そうか。 だとしたら夕弥は兄ちゃんの自慢だな」

 

 

「えへへ」

 

 

 

夕弥を降ろし、俺は仲間を見渡す。

 

 

原作と捻じ曲がった形でも、最後はエイリア学園を倒す形で収まっていた。

 

これが原作の修復力と言うものか?

 

どうあがいても決まったゴール地点に戻るらしい。

 

それでも変化を大きくもたらしながら進んだこのストーリーに対して、参加したメンバーも変わっていた。 まず離脱していなかったはずの染岡がメンバーに再加入しており、シャドウもそこにいた。 風丸も栗松も離脱せずそこにいた。

 

何よりアフロディがいたことに驚いた。

 

まぁカオス戦が無いからこれもありえた世界線なんだろう。

 

 

 

「瞳子監督、基秀戻りました」

 

 

「ええ、お疲れ様です。 よく頑張りました」

 

 

「はい」

 

 

「……本当に、よく戻ってくれたわ」

 

 

「俺は強いから特に問題なかったですよ」

 

 

「全く…っ、そう言う問題じゃ無いのだけれどね」

 

 

 

流石に呆れ顔を食らったが、俺の帰還に喜んでくれていた。

 

その様子に雷門イレブンのメンバーは笑っていた。

 

 

 

「まぁこれで全て終わったんだ。 円堂をはじめとしてみんなよく頑張った。 ありがとう」

 

 

「「「破和土さんもありがとうございます!」」」

 

 

お礼はこちらのセリフだ。

 

お日さま園がこれ以上誤ちを増やす前に止めてくれたのは紛れもなく彼らの存在があったからこそだ。 例え、俺が原作知識を持っていたとして、一人頑張っても全部終わらなかった。

 

何せこの世界線は雷門イレブンの活動によって救われるシナリオになっている。 だからその場に俺がいようがいなかろうが関係ない話。 そもそも俺が加入したことでお日さま園は原作以上に危ない目にあったとも言える。 もしかしたら俺のいるこの世界はそう言った原作にない形で進んでしまうから俺が手を施さずとも、エイリア石の投与10回目なんて不気味な展開は見知らぬところで始まった可能性もあり得る。 まぁこれらは結果論に過ぎないから、どうこっち言おうが結局は神様にしか分からないストーリーだ。

 

だがそれでも雷門イレブンなら全て救ったかもしれない。

 

前にも言ったけど、ココはオリキャラなんて不要な世界だ。 完成されてるイナイレのストーリーに俺みたいな非原作キャラをぶち込むなんて、そんな奴は相当自己満足を得たくてやってるのだろう。 気持ち悪い所業だ。 自己満足も良いところ。 その気持ちはわからないことないが随分と大変な世界に投げ込まれたものだ。 いや、まぁストーリーに加入した俺も俺だけだ、責任を取る必要があったから仕方ないとしか言えない。

 

それこそエイリア石に魅入られた吉良星二郎のように…

 

俺も雷門イレブンとこの原作に魅入られた愚か者なんだろう。

 

まぁ、こんなことに考えてるとキリがないからココまでにしとくが…

 

なんとも難しくて危ない世界だ。

 

 

 

「…」

 

 

 

どうしてこの世に転生したのかはまったくもって理解できないけど、この地に命を得たなら生きるだけ。 そのため俺は俺なりに好きってやってきた。 超次元に倒れぬよう、恵まれた環境で鍛えてきた。 それに良き出会いに巡り会いがあったからそれほど不満ではない。

 

ただもっと優しい世界にならなかったのかと、俺は思ったりしてる。

 

不満はこれだけだ。

 

 

 

 

「エイリア石……お前は一体なんなんだ?」

 

 

 

 

突拍子も無いところから現れた宇宙の産物。

 

 

これに振り回されただけのストーリーはここだけやっと終わるようだ。

 

 

あとは……お日さま園の子供たちだ。

 

 

 

 

「響木監督、円堂くんたちの事、頼みます」

 

 

「ああ」

 

 

 

瞳子監督はみんなに頭を下げる。

 

 

 

「ありがとう、みんな。 ここまで力を貸してくれて、ありがとう。 本当に、本当に感謝してるわ」

 

 

「「瞳子監督!」」

 

 

「また、一緒にカレー食べましょうね」

 

 

 

それだけ言うと瞳子さんは俺と視線を合わせ『私は行くから』と"わざわざ"強く訴えるとお日さま園の子供の元まだ歩く。

 

 

 

 

「……基秀くん」

 

 

「…え? あ、はい。 どうしました? 古株さん?」

 

 

「夕弥くんは、ワシがしっかりと漫遊寺に送る」

 

 

「!」

 

 

 

それだけ言われたあと俺は夕弥の方を見る。

 

 

 

「気にするなって。 この旅で何度も居なくなってんだから、今更また居なくなろうが構わないよオイラは」

 

 

「!」

 

 

「オイラは優しい兄ちゃんが好きだ。 だからアイツの側にいてあげてよ」

 

 

「いや、しかしな? この騒動が終わったら___」

 

 

「オイラもさ、親を失った一人なんだ。 失い方は酷くて、そこに愛は無くて、でも心は冷たく苦しく、どうにかなりそうだった。 でもよりそう誰かが居るってそれはなによりも暖かいんだ。 だからさ、孤児として苦しんだアイツの気持ちがよくわかるんだ…」

 

 

「!」

 

「夕弥くん…」

 

 

「音無、お前オイラに聞いたよな? 離れて寂しく無いのかって? さみしいさ。 だからわかるんだよ。 孤独の中で暖かく寄り添ってくれる人がいるってすごく優しい気持ちになれる。 大きな力だ。 オイラはそれをよく知っている。 だからアイツらも特別な存在になってる兄ちゃんに対してどうして欲しいとか、オイラはよくわかるんだよ。 だからさ……行ってあげてよ、兄ちゃん」

 

 

 

コイツは…

 

この弟は…

 

本当にッッ…

 

 

 

「わかった! ありがとうな夕弥! お前は…お前本当ッッに、俺の自慢だよ!」

 

 

「えへへ」

 

 

 

俺は夕弥を抱きしめると古株さんに「お願いします」と言って頭を下げる。

 

 

 

「じゃあな、お前ら。 なんだかんだで楽しかったよ」

 

 

「ああ! またな! 基秀!」

 

 

「おお? やっとここで敬語を外せたか円堂。 リベロになって柔軟になったな?」

 

 

「え??…ああ! いや! 違います! 違うって! 今のはべつにそんなんじゃないからな? 基秀……ああ! また呼び捨てにしてしまった!」

 

 

「「「「あははは」」」」

 

 

 

 

笑顔が絶えない雷門イレブンに背を向け、俺は瞳子さんを追いかける。

 

そして俺がお日さま園の方に同行することを遠くから察した子供達は嬉しそうにしていた。

 

 

 

 

 

「……やはり俺向きじゃないな、ココは」

 

 

 

 

 

目の前も、その後ろも、暖かくなお日さまに包まれている。

 

 

暖かいお味噌汁のような子供達。

 

 

この騒動の終わりを感じられた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一旦騒動は落ち着きに進む。

 

 

お日さま園の子供達は"まとも"な日常生活を送るために今後色々と準備に取り掛からなければならない。 そんな中、エイリア石によって精神状態を崩していた子供が多数いた……と、思いきや、エイリア学園から離れると嘘のように精神状態が良くなり、子供達のカウンセリングも重苦しさ無く捗った。

 

それから俺と瞳子さんは約束通りに沢山沢山怒って、それで沢山沢山愛情を込めた。 子供達は涙を枯らしながら何度も何度も謝っていた。 それから昔みたいに一人一人お話を聞いてあげた。 特に精神的にまだ幼い子は幼児退行したかのように俺や瞳子さんを必要とした。 食べる時も寝る時もだ。

 

その状態は多分今だけだと思うけど今日は可能な限り側で語りかけ続けた。

 

 

 

 

そして深夜。

 

 

 

軽く軟禁されたような建物の寝室でみんな寝静まると、俺は一息つこうと屋上まで歩く。

 

大阪にいた時以来の綺麗なお月様を見上げた。

 

そしてそこには夜風に髪を靡かせながら月明かりの下でより一層美しき女性を移す元雷門イレブンの監督が立っていた。

 

 

 

「こんばんは瞳子さん」

 

 

「? 基秀くん…」

 

 

「月が綺麗ですね(ド直球)」

 

 

「10年早いわ(即答)」

 

 

「こんなにも月が歓迎してるのに即答されて草も生えねぇ…」

 

 

 

それから俺は瞳子さんの隣に立ち、一緒に夜風に当たる。 本格手に夏に差し掛かる季節にも関わらず、夜風は冷たい。 でも彼女と隣にいることでホッと温まるのはおそらく子供好きな彼女の不思議な力なんだと思う。 そのため彼女は幼児から好かれる体質だ。 雷門イレブンの時はそうはいかなかったけど、今はただ優しいお姉さんをこれから取り戻し始めることを表していた。

 

 

 

「基秀くんには弟さんがいたわよね? 何でまた来たのかしら?」

 

 

「説明したじゃないですか。 弟が『優しい兄が好きだから』と言ってくれたので俺はそれに応えているんですよ」

 

 

「まったく……あなたの行動には参ったわ」

 

 

「そんなの昔からだってそれよく言われてるから」

 

 

「本当にね…」

 

 

「でも本来こちらに来たのにはもう一つ理由があるんですよ。 それはお日さま園の子供達とは関係ない事です」

 

 

「?」

 

 

「瞳子さんを労ってあげようと思って、こうして来たんですよ」

 

 

「!! ……こ、子供に慰められるほど、私はそこまで落ちぶれてなんか…」

 

 

「瞳子さん」

 

 

「!」

 

 

 

俺はグッと近寄り、彼女の手のひらを優しく掴み取ってフワリと引き寄せる。 驚き目を見開いた彼女の綺麗な眼が見えるくらい、お互いに一歩踏み込むこともできないほど急接近していた。

 

 

 

「ぁ…ぃゃ……は、離し…て…」

 

 

「嫌ですよ。 まだあなたエイリアと戦ってるような目をしてる」

 

 

「!!!」

 

 

「もう終わったんだよ? 全て終わったんですよ? だからさ、もうあなたは『監督』を演じるようために『優しさ』を殺さなくて良い。 もう大丈夫なんだから、厳しいあなたは落ち着いて良いんだよ?」

 

 

「っ!」

 

 

「もう終わったんだから頑張り過ぎるのはもうココまでにして。 苦しさも、辛さも、焦燥感も、何も気にしなくてよくなった。 もう戻って良いよ……瞳子さん」

 

 

「……ほ、ほんと…に? もう、良いのかな?」

 

 

「良いよ。 ありがとう、瞳子さん」

 

 

「ぁ……」

 

 

 

揺れだす彼女の瞳を見て柔らかく笑みながら、ギュッと抱き寄せる。

 

それはまるでエイリアの子供達をあやすように抱きしめる…

 

 

 

「監督として甘さを捨て、大好きな子供の自分を抑え込み、そうして姿を作り続けていたけど俺はあなたの事を覚えている。 一人頑張り続けていたこともわかる」

 

 

 

どんなに辛かったか。

 

一人で立ち向かおうと覚悟を決めた事は。

 

 

 

「だから俺もあなたの事を一人で背負わせたくなくてイナズマキャラバンに参加した。 お日さま園の子供達を助けようとするあなたを助け合いから。 だから何度もあなたと話し合い、衝突して、雷門イレブンの監督になろうとするあなたを支えた。 けど、もう良いんだよ。 短くて長い奔走はもう終わった。 だから無理して頑張るのはここでおしまいにしよう?」

 

 

 

どんなにしんどかったか。

 

一人で考えなければならない苦闘は。

 

 

 

「ありがとう。 俺の大好きな子供達を救ってくれて。 ありがとう。 雷門イレブンを率いてくれて。 ありがとう。 お日さま園を取り戻してくれて。 本当にありがとう。 そして……お疲れ様でした」

 

 

「っ、もう……いい、のね……?」

 

 

「はい、俺が良いと言います」

 

 

「もう……むりは…しなくていいのね…?」

 

 

「はい」

 

 

「…ぅ、ぅぅ…ぅぅ……うう…ああ」

 

 

「…」

 

 

 

彼女は氷のように張り詰めていた壁は、涙となって溶け落ち、だんだんと彼女は弱くなっていく。

 

 

 

「つらかったた……たいへんだった……らいもんのこどもたちから、はんかんをかわれて…こわかった…ふあんだった…!」

 

 

 

「うん」

 

 

 

「おとうさまも…おとうとも……わたしのまわりには…なかまもいなくて……だからつぶされそうで……いたかった…くるしかった……しんどかった…!」

 

 

 

「うん」

 

 

 

「でも…あなたが…もとひでが……いたから…いっしょについていくといったときは…! どれだけうれしくて! どれだけあんしんしたか! そんなふうにあんしんしてしまった、なさけないじぶんのよわさが、くるしかったけど……わたしは…わたしは…!」

 

 

 

「うん」

 

 

 

「こどものあなたにもたよらなければならないほどわたしは、それほどに、よわかった……でも…でも…でも! あなたがわるいのよ! あなたがたよれるひとだから! あなたがわたしよりもつよいからわるいのよ…!」

 

 

 

「…」

 

 

 

「わたしはおとななのに…あなたがそこにあるからぁ…! そこにいてくれたからぁ…! であってくれたからぁぁ…ぁぁ!」

 

 

「…」

 

 

 

「だいっきらいよ…! だいっきらいよぉ…! もとひでなんかだいっっきらいよぉぉ…!! あなたのせいよ…! やさしいから…! こんなふうに泣いてしまうのは…あなたのせいよもとひで…!!」

 

 

 

「…そっか」

 

 

 

「ぅっっ……! だいっっっきらいよ…ばか!!!

 

 

 

 

 

彼女は不安を抱えていたその心を押し付けるかのように強く強くこちら抱きしめる。 爪を立てて食い込ませる程に与えてくれるその痛みは、彼女の悲痛に比例しているのかまたはそれ以外なのか本人じゃないためそれはわからない。 でも震えていた。 ここまでの歩みにやっと解放され、喜んでいるようにも思えた。

 

 

 

 

「…ありがとう……ありがとう…ありがとう…ぅぅ…ありがとう…ぅぅっ…ありがどう"…ありがどう…もとひで…」

 

 

 

 

 

彼女は大人だけど…

 

涙を流せるか弱い女性。

 

でもそれは優しい心の持ち主だからこそだ。

 

軽蔑なんてしない。

 

おかしいなんてことはない。

 

 

涙を流す女性を変だなんて思わない。

 

 

むしろ美しいと…思えるか…

 

抱きしめる彼女からそう感じられるほどに…

 

 

 

 

 

 

「本当…綺麗なお月さまだ…」

 

 

 

 

 

 

宇宙からの侵略者の事件は終わった。

 

 

でもその宇宙で綺麗に光るお月様は幻想的であり…

 

 

彼女と同じように魅入られそうで…

 

 

それほどに危うい世界だと言うことも…

 

 

今は小さな彼女を抱きしめて今日の夜風を感じた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_ 次回

 

_ 最終話

 

 

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