イナイレップーケン   作:つヴぁるnet

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約束を違え進んだ女の子の世界線

 

「おいおい、どんだけやるんだよ? 休憩無しでかれこれ2時間はサッカーしてるぞ? みどりかわくん達は疲れて戻ってしまってるし、そろそろ終わりにしないか?」

 

 

「やーだ! まだまだもとひでお兄ちゃんとサッカーで遊ぶのー!」

 

 

「このパワフル少女め、あんたの体力は底なしかよ」

 

 

「ねぇ! ねぇ! もっともっと!」

 

 

「はいはい、わかったわかった。 じゃあPK戦でもしようか。 俺がキーパーやる」

 

 

「わーい! やるやる!」

 

 

PK戦ごっこならキーパーの俺はあまり動かなくて済むので助かる。

 

それに小さな女の子のシュートを受け止める程度ならそんなに疲れないだろう。

 

 

 

「よーし! かかってこーい!」

 

 

「かかってくるのは君だよ、君…」

 

 

 

あまり離れてない位置にサッカーボールを置くと、足を振り上げてシュートする。

 

 

 

 

「うぉー! すーぱーふぁいあーあたっーくっ!」

 

 

 

 

弱々しいシュートだけど、元気いっぱいが詰まった一撃だ。

 

それを難なく両手で受け止める。

 

彼女に転がしてボールをパスをする。

 

 

 

「うぉー! ぐれーとまっくすなわたしぃー!」

 

 

 

いや、その言葉どこで覚えたし?

 

それでも彼女から放たれた一撃はグレートマックスな元気が詰まったシュートとなる。 しかし軌道は上に逸れてしまい、ゴールポストの上を跨いでしまいそうになった。 俺はいち早く反応すると高くジャンプして両手で叩きつける。

 

 

 

「『まきわりチョップ』!」

 

 

「!」

 

 

 

バウンドしたボールは彼女の元にもどる。

 

それを足の裏で受け止めた彼女からキラキラとした視線を浴びる。

 

 

 

 

「すごい!すごーい!」

 

 

「ただ両手で叩きつけただけだよ、別に普通さ」

 

 

「ねぇねぇ! もっともっと必殺技見せてよ!」

 

 

「え?」

 

 

「いいでしょ!ねぇねぇ!」

 

 

「あ、うん」

 

 

 

PK戦であまり動かない楽なキーパーのポジションを選んだつもりだったが色々と必殺技を見せることになった。 別に「見せたくない」って断っても良かったけど少しだけ泣き虫なれいなちゃん相手にあまり突っぱねる対応はやり辛かった。 なので諦めて見せることにした。

 

 

 

「うぉー! れいなすーぱーはいぱーうるとらすーぱーやめろーないすすーぱーあたっくすーぱーキックー!!」

 

 

「スーパーの単語多すぎだろ」

 

 

 

俺は地面に手をつけると体を捻る。 側転しながら迫り来るボールに近寄り、さっきよりも強い彼女のシュートを足で挟むように掴む。 サッカーボールは逆立ちしてる俺の体の周りでサーカスのように動き回り、最後に両足でボールを上にぶん投げると頭にボールがストンっと乗っかる。

 

 

 

「すごいすごいすっっごーい! なにそれー!!」

 

 

「『カポエィラスナッチ』って技だ。 めちゃくちゃ難しいけど、どんなに強力なシュートも華麗に機動を変えてしまい、最後は頭の上に抑える世界クラスの技だよ。 かなり練習した」

 

 

 

うん、かなり練習して習得した。 そしてこれを簡単にやってしまう海外の中学生選手の身体能力はおかしいとおもう。 俺も中学2年生で体は鍛えたからできるけどこの必殺技本当に難しい。 身体能力だけで抑える技なんだもん、大変だよ。

 

 

「じゃあもとひでお兄ちゃんはサーカスのフレンズだね! たまのりピエロもできるし!」

 

 

「え? そういう解釈?」

 

 

 

純粋な子供の発想はやっぱりわかんないもんだね。

 

だってホモ以上に未知数だからな。

 

ある意味、期待の星…

 

 

そうだな、たしかに(エイリア)だよな。

 

そういう意味でも間違ってない。

 

 

 

 

「じゃあさ! 今度私も! もとひでお兄ちゃんのように必殺技作るからその時は相手して!」

 

 

「それは良いけど、前提として必殺技作れたらの話な」

 

 

「うん! それでね! それでね、それでね!」

 

 

「?」

 

 

「大きくなったらね! れいなと結婚して!」

 

 

「おっと? 既に逆プロポーズは習得してたか」

 

 

「ねぇ!ねぇ! いいでしょう?」

 

 

「……あー、はいはい、良いよ。 あ、でもその代わり____」

 

 

「わーい!やったやったー! れいな大きくなったらもとひでお兄ちゃんのお嫁さんだ! …あれ? そうなるとお兄ちゃんって呼べなくなるのかな? わー、どうしよう! お兄ちゃんがお兄ちゃんじゃなくなっちゃうよ! …むむ、なら!」

 

 

「____ってことだから……って、おい、聞いてたか?」

 

 

「え? う、うん! わかった! だかられいなね!もとひでお兄ちゃんよりも同じくらい(の身長)になるから待っていてね! そしたらお兄ちゃんって呼ばないで済むから!」

 

 

「よ、呼ばないで済む?? …ええと? まぁ、良いや。 とりあえず結婚に関しては俺と同じくらい(の強さ)になったら考えてやるよ」

 

 

「よーし! れいな! すぐにもとひでお兄ちゃん(の身長)を追い抜いてやるんだから!」

 

 

「おー、いつ(強さに)追い抜くか楽しみだ。 待っている」

 

 

「うん! 絶対だよ!! れいなの絶対は絶対なんだからね!」

 

 

「!……わかった。 そこまでいうなら楽しみしてるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そう小学生の頃の幼き私はそう約束したのに身長は成長しない。 その代わり女性にしかない二つの果実が急に成長する始末だ。 だけど男性は胸の大きな女性が好きという。 その点だと基秀はどうなんだろうか? 彼も胸が大きな女性が好きなのだろうか? そうならば私はこれをメリットとして受け止める事は出来る。

 

しかし問題はそこではなく身長の方だ。

 

私はお日さま園の中だと少なからず身長が高い方だとおもうが、それでも3年歳上の彼には追いついていない。 いつも牛乳を飲んで身長を伸ばそうとしていたのに平均的な伸び方だった。 むしろ身長よりも胸に成長が行く感じ…

 

嬉しいようで複雑だ…

 

そんな焦燥感を味わいながらハイソルジャー計画に参加して私はエイリア学園として活動を開始した。 だが世界を脅かそうとするこの計画に対して(基秀)は反抗的であった。 その結果イナズマキャラバンに参加すると私たちエイリア学園に立ち向かってきた。

 

それを知った時、とても辛かった。

 

まぁ、それも当たり前か。

 

彼は侵略を受けてしまった側だ。

 

そしてサッカーで解決できるなら彼はイナズマキャラバンに参加して対抗してくるに決まっている。 だから嫌でも彼と対立することになるだろう。 それが複雑で仕方なかったし、納得しなければならなかった。

 

 

でももう一つ、複雑な事がある。

 

それは彼が参加したイナズマキャラバンの道中はとても賑やかで楽しそうで、その光景は数年前のお日さま園を連想させていた。

 

これを見て私は思う。

 

物騒に表すなら憤りを覚える。

 

平和的に表すなら妬ましく感じた。

 

だって、彼に寄り添う者達はあんなにも…

 

あんなにも…っっ!

 

 

 

あああ!!!

 

もう!!!

 

なんでなの!!!

 

 

 

 

 

 

「くらえ!そして死ね!!基秀!!」

 

 

 

 

ピューン!

 

 

 

 

 

「ギャァー!メテオシャワー怖いですヤンス!!」

 

「おいおい、中の人は同じだろ? それなら栗松か止めろよな(暴論)」

 

「何のこと言ってるか良く分からないけど実力差激しくてそんなことできないでヤンス!!」

 

「はいはい、とりあえず舌噛むなよ。 焼き栗になるぞ」

 

「ギャァー! まだまだ降り注いでくるでヤンス!!」

 

 

 

 

栗頭の少年を脇に抱えながら私の放ったメテオシャワーをひょいひょいと回避する破和土基秀。 落下する流星の雨の中を軽快な身のこなしで避けてしまう彼の身体能力は流石だと感心しながらも、やはり内なる怒りを隠しきれない。

 

 

 

「何で…」

 

 

 

なんであなたはそんな楽しいところにいる…!

 

 

 

羨ましい!

 

 

 

悔しい!

 

 

 

私だって!!

 

 

 

 

「くたばれ!!基秀ェェ!!」

 

 

 

 

 

 

もっと私をっっ!

 

___玲名のことを見てよ!!

 

 

 

 

 

「だぁぁあ!もう! なんで俺ばかり狙うのかな!!?」

 

「くっ、最高戦力を削る魂胆か!」

 

「いやいや!そうかもしれなけどそんなんじゃないと思うぞ鬼道!アレはなんか私怨があっての攻撃として受け止めれるし!」

 

「今日の天気はメテオシャワーでヤンスー!」

 

「傘じゃ防げない悪天候で草も生えないよ!」

 

「やかましいわ塔子! さっさとザ・タワーで援護あくしろよ!」

 

「ギャー!またまた来てるでヤンス!!」

 

「って、脇でギャーギャーと騒がしいなぁ!」

 

「だって怖いでヤンスよ!!」

 

「おおん? なんならお前がお星様になってもええんやで!」

 

「どういうことでヤンス…ぅぅああああ!!? 投げられたでヤンスー!?!?」

 

 

 

「!!」

 

 

 

私が着地した瞬間を狙うと基秀は栗頭の少年をバリスタのように飛ばす。

 

投げ飛ばされた少年はわたしの足元を通り過ぎると、足元にあったサッカーボールを失う。

 

 

「なっ!?」

 

 

後方を見れば先ほど投げ飛ばされた栗頭の少年の頭にサッカーボールが収められており、そのまま地面にヘッドスライディングしながら前衛のFWに転がる。

 

そのままパスが繋がった。

 

 

 

「『カッ』『と』なってるウル『ビ』ダを『ディフェンス』する必殺技! その名も! "かっ飛びディフェンス"だ!」

 

 

 

「」ちーん

 

 

 

「「「栗松ぅぅう!!?」」」

 

「こんな時でも斜め上を見せ続ける基秀、ウチは嫌いじゃないないで」

 

「に、兄ちゃんぇぇ…」

 

 

 

 

「基秀らしい案だ」

「基秀だな」

「基秀ならやりそうだ」

「ズズッ」

「基秀は変わってない…と、言ってます」

 

 

 

 

前方では基秀の仲間の扱いによる驚きと批難が飛び交い、後方ではジェネシス全員が基秀の変わりない性格に呆れを示していた。

 

 

 

「くそっ! エターナルブリザードじゃ突破できないのかよ!」

 

 

 

ネロが素手で受け止めてまた私にボールが回る。

 

そして狙うは当然……基秀だ。

 

 

 

「塔子」

 

「ああ! いつものいくよ! ザ・タワー!」

 

 

 

ザ・タワーとあびせげりを合わせることでメテオシャワーを防ぐつもりだが、イプシロン戦で散々見てるためそれを知っている。

 

だからこちらも対応可能である。

 

 

いや、それよりも基秀の近くに違う女の子が…

 

ッ!

 

は、腹立たしいのは仕方ない事だろうか!

 

 

 

 

「っ、その戦法は見切っている! くらえ! メテオシ___」

 

 

 

「塔子! そのまま雷を振り下ろせ!」

 

「なっ!?」

 

「ほらほらほら!あくしろよ!」

 

「ど、どうなっても知らないからな!」

 

 

 

基秀は塔子と呼ばれる選手のタワーに乗らずにフィールドに残っていた。

 

そんな基秀は片腕を天に掲げ、雷の避雷針として役割を果たそうとする。

 

 

そして…

 

 

雷は基秀の真上に降り注いだ。

 

 

 

「『サンダーブレイク』!!」

 

 

 

基秀を中心に降り注ぐ多量の雷。

 

そして基秀はそれを空に投げる。

 

すると空は落雷の嵐と化した。

 

お陰で宙に浮いてる私はその必殺技に討ち払われて弾かれる。

 

 

 

「ぐぁあ! ぁぁ…」

 

 

 

 

力なく宙に舞う私はゆっくりとした浮遊感を味わっていた。

 

 

 

 

「なっ!?ウルビダ!?」

「ウ、ウルビダ!?」

「副キャプテン!?」

 

 

 

 

皆の呼ぶ声に反応してなんとか意識を保つ。

 

しかし視界に入ったのはガイアのチームメンバーではなく基秀の姿…

 

そんな彼の眼光は怒り染められている…

 

わたしにはそう見えた。

 

 

 

 

「ふ、ふふ……」

 

 

 

 

 

ああ…

 

 

わかってる…

 

 

わかっているよ、基秀おにいちゃん…

 

 

玲名のやってる事は基秀からしたら間違ってる事を…

 

 

でもお父様のためにわたしはエイリアで奮わなければならない…

 

 

 

 

 

だから…

 

あなたはその場にいないで欲しかった…

 

 

 

 

 

___また会えて嬉しい。

 

 

 

 

 

 

 

私たちの障害として現れないで欲しかった…

 

 

 

 

 

 

 

___またお姿が見れて嬉しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

そのため私たちを放っておいて欲しかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

___またサッカーできて嬉しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ」

 

 

こんなにも激しく矛盾を繰り返している自分に嫌気がさす。

 

だからあのまま大人しくメテオシャワーに飲まれてくれたら。

 

そのまま地面に伏せてくれていたのなら。

 

わたしどれだけ内なる痛みが和らぐだろうか。

 

それなのに幾度なく抵抗するあなたを見て、ボールに触れることが怖くなる一方だった。

 

 

 

でも…

 

もう、良いかな…

 

倒されたのはわたし…

 

 

このまま地面に落ちてしまえば、わたしはあなたと痛みを広げる必要も無くなるから…

 

 

だから、これで…

 

 

 

 

 

 

 

ポスッ

 

 

 

 

 

ぇ?

 

 

 

 

 

「…………ったく…」

 

 

「ぇ? え……」

 

 

 

 

わたしにだけしか聞こえない呆れた声が耳に入る。

 

そして腰と背中には何者かの逞しい腕を感じる。

 

 

 

 

「つくづく思うが、俺も非情になりきれないな…」

 

 

 

 

 

 

ああ…

 

 

やはり…

 

 

あなたはどこまでも…

 

 

優し___

 

 

 

 

 

 

 

ひょいっ

 

 

 

 

 

「ぇ?………ぇ!? うぇ!?」

 

 

 

「なるほど重さ的にりんご三つ分か」

 

 

 

気づいたらわたしはフィールドで一番高く掲げられていた。

 

そして急にクルリと向きが変わる。

 

その時、彼の右手に力が込められ…

 

 

 

「オラァ! 基秀特製のメテオシャワーだ!!」

 

 

 

「ズズッ!?」

 

「『何故僕に向けて!?』…と、言ってます」

 

 

 

彼がそう叫びコーマが通訳終えた瞬間だった。

 

 

 

「ぐえっ…」

 

 

不意に思いっきり投げ飛ばされる感覚。

 

どうやら片手でぶん投げられたようだ。

 

あと女性が出すものではない声が出てしまう。

 

解せぬ。

 

 

 

 

「ズズッ!?」

 

「『嘘だろ!』…と、言っています」

 

 

 

コーマの通訳と共に『グシャ!』っとゾーハンに直撃する。 巨体の彼に受け止められたことで共倒れは無かったが、わたしは意識が軽く飛びそうになった。 ぅぅ…くらくらする…

 

 

 

「基秀先輩!?」

「いま投げたのですか!?」

「人を片手で!?」

 

 

「そのための右手(UC)」

 

 

「そういう事を聞いてるのではない!」

 

 

「ああもう!うるさいなぁ! それよりアツヤ! 右サイドのゾーハンが潰れた!突破しろ!」

 

 

「わかってるぜ!」

 

 

 

そしてディフェンスの突破に利用する基秀。

 

まぁ、らしいと言えばらしいがわたしの中で別の怒りが湧き上がる。

 

だって女性を雑に扱ったからだ。

 

 

 

 

 

「ズズッ?」

 

 

「だ、大丈夫だ……試合に戻るぞ」

 

 

「ズ、ズズッ、ズズズ…ズズッ」

 

 

「??」

 

 

「『多分ウルビダは僕達以上に複雑な気持ちで溢れているけれど、いまは耐える時だと思う』……と、言っています」

 

 

 

コーマがいつも通り通訳する。

 

それよりゾーハンがそのような言葉をかけれるという事はわたしの心情を察していたのだろう。

 

 

 

 

「大丈夫だ、わたしはそんなに弱くない」

 

 

「ズズッ」

 

「『要らぬ心配でしたか』…と、言っています。 ……何気にあなたは紳士ですよね、ゾーハン」

 

「ズズ?」

 

「いえいえ、なんでもありませんよ」

 

 

 

本当はまだまだ不安と苦痛が背筋を這いずる。

 

でも、少しだけ…

 

楽になれた…

 

 

 

 

 

 

 

『つくづく思うが俺も非情になりきれないな』

 

 

 

 

 

 

 

彼はもしかしたら、私たちの事を……

 

私達の正体を理解してるのかもしれない。

 

 

だからああやって、地面に落下して直撃しそうになるわたしを助けてくれたのだ。

 

 

でもそれはそれで、また別の痛みが内側に広がる。

 

彼は私達の正体を知って立ち向かっている。

 

 

 

だが、それはつまり…

 

私達を『止めよう』と思ってくれてる…

 

侵略者を演じる私達をどうにかしようと思ってこの場にいてくれるのだ。

 

 

 

ああ…

 

数年たったも彼の愛情をまた感じられるのか…

 

そう思うと、昔のように喜びに満たされる。

 

 

 

ふふ…

 

私はなんて怠惰な人間なんだろう…

 

私達はどうしようもなく愚かなことているのに、彼はお日さま園の事をなんとかしようと思って立ち向かってくれている。

 

 

 

 

「基秀は今も変わらず、基秀か…」

 

 

 

 

少しだけよろけそうになる痛みに耐え、いまは雷門の力を試そうと前線に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肉体的な意味ではなく、精神的にとてつもなく疲れていたあの騒動から時間が経ち、ほとぼりはそれなりに落ち着きを見せていた。 いまの俺はお日さま園に集う沢山の子供達をまとめ、10代と言える若い年齢にして園長を務めている。 エイリア学園が存在してた頃の事後処理も含め、日々忙しく立ち回っていた。

 

もちろん疲れたような顔は見せず、お日さま園の皆んなが自立できるまでは良き兄貴分として。 また、子供達にとって一番の理解者として、常に、平頭に、接し続けなければならない。

 

 

 

あ、でも"平頭"にってのは少し違うかな?

 

 

とある少女一人にはちょいと特別扱いになっている。

 

 

 

 

「基秀お兄さん、終わりました」

 

 

「はいよ、見せてくれ」

 

 

 

 

慣れないメガネを掛けた彼女から紙を受け取り、目を通していく。

 

 

 

 

「……まだ予算あるのか、意外だな」

 

 

「吉良財閥の完全バックアップによって思ったよりも予算に余裕があるみたいです」

 

 

「まぁ、ふつうに考えたらそうなるか。 それなら余りを別のに割り当てるとして……あ、それならユニフォームに当てるか」

 

 

「ユニフォームですか?」

 

 

「ああ。 近々このお日さま園にサッカーチームを作り上げ、ここに寄り添う孤児達に活力を与えたい。 そして、お日さま園の存在をそれで塗りかえよう」

 

 

「サッカーですか…」

 

 

「そうだよ。 普通のサッカー」

 

 

「…」

 

 

「エイリア学園は終わった。 でも世間にはこのお日さま園はまだ周りに不信感を与えている。 へんな噂も立てられたりとな…」

 

 

「そう…ですね」

 

 

「ヒロトも玲名も、ほかのみんなもそれは察してる筈だ。 でも俺は君たちの最大の理解者としてそんなありもしない噂などに押し込まれず行動を起こさなければならない。 そのためにはサッカーと言う最高のスポーツによって、このお日さま園はあの悪夢とはもう断ち切ったことを世間に証明しよう」

 

 

「基秀…」

 

 

「大丈夫って、俺に任せろ。 だって玲名が後に結婚するはずの男だぞ? 口だけ終わるような軟弱じゃないのはお分かりだろ?」

 

 

「わ、わかってます!」

 

 

「ほんとぉかぁ? それにしては未だに俺の要望を達してないダルルォ?」

 

 

「し、身長はノルマクリアですよ!? ほ、ほら! 基秀お兄さんの身長から20センチは届いてます!」

 

彼女は慌てて近づくと目の前に立って手のひらを平らに伸ばして俺との身長を測り合う。 確かに身長は俺に近づいてきているようだ。 今でも毎日牛乳飲んでるらしいな。 それにしても…

 

 

 

「……変わらないな」

 

 

「なに!?」

 

 

あの頃と変わらず可愛らしい顔をしていてる。

 

でも彼女は高校生に突入した年齢なので美人さんって言葉が似合うだろう。

 

 

 

「あ、あの! し、身長は変わりましたよ!基秀お兄さん!!」

 

 

「え? ああ、いや、今のはそう言う意味ではないけど……まぁいいや。 ところで身長とは別に学力はどんなもんよ? あと、サッカーもだ」

 

 

「もちろん学力は問題ありません! 高卒認定試験は既に終わりました。 サッカーは……あと少しです」

 

 

「でもまた最近ハッスィに負けてるらしいな?」

 

 

「っ…杏ちゃんは冗談抜きで強いから」

 

 

「まぁそりゃ、あの子はお日さま園一の負けず嫌いであり、素質は太陽組の中で最高クラスであり、なによりも本気で最強を目指してるヤベー奴だ」

 

 

「そうですね」

 

 

「そんなわけであの子は玲名にとって大きな壁だな? 体は小さいけど」

 

 

「そ、そこら辺なら私の方が全然勝ってます。 その、例えば……お、お胸とか…?」

 

 

「そう言う問題かよ」

 

 

「で、でも、基秀は胸の大きな女性は好きですよ…ね?」

 

 

「まぁ、そうだな。 体に見合ったサイズなら好きかな。 あと無駄に大きすぎなければ俺は好きだよ」

 

 

「な、なら! 玲名の胸は丁度基秀好みだと思います!それから!それから!」

 

 

「…あのなぁ? ある意味胸を張って言うアピールの瞬間かもそれないけどそこで胸を張って言うなよなぁ?」

 

 

「___って事なので! 基秀お兄さんのお好みなサイズでしたら私は胸をこの状態で押さえます!」

 

 

「話を聞け」

 

 

 

 

あかん、玲名が少し壊れている。

 

エイリア石の後遺症か?

 

あれから一年以上は経過してるぞ?

 

それとも恋は盲目って奴か?

 

いや、なんかちがうな…

 

盲目ではなくて多少自分を見失ってる感じか。

 

てかあの元気な感じが昔の"れいなちゃん"になってるな。

 

んん?

 

そうなると彼女は興奮すると冷静沈着な玲名からパワフルなれいなちゃんに早変わりするって事?

 

なにそれ面白い。

 

 

 

 

「お胸に関してはともかく、まずその努力をサッカーに向けろよ」

 

 

「それはもちろんだ! 基秀お兄さんが望む『お嫁さん』に近づけるように。 そしてあの時の『約束』を果たして、あなたと結婚してもらえるように私はそこに届いて見せる。 ……だって…」

 

 

「…」

 

 

「玲名の絶対は『絶対』だから」

 

 

 

 

 

ウルビダから玲名に戻った彼女は、幼き頃に結んだ俺との約束を果たそうと奮闘している。

 

でも勘違いによってそれは捻じ曲がっていた事がわかった。

 

 

玲名は『基秀の身長を超える』と約束した。

しかし『基秀の実力を超える 』と俺は約束していた。

 

 

このようにいつの間にか違う約束をしていた俺たち二人。

 

だからその事について互いに話し合い、そして一からやり直しになった。

 

 

その結果…

 

 

・玲名はお日さま園で一番強いサッカープレイヤーになる事。

・16歳過ぎた辺りで基秀の身長に20センチは追いついている事。

・結婚するまでは園長(基秀)の補佐として手伝い続ける事。

・常に魅力的な女性として在る事。

 

 

この4つを条件にすると彼女は改めて、俺の嫁さんになれるように努力をしている。

 

そりゃもう本気で俺に娶ってもらいたいがため、彼女は「落ち込んで居られない!ふんす!」とエイリア学園の騒動から即座に踏ん切りをつけるとこうしてお日さま園のために働いている。

 

でもお日さま園のために奮闘してる理由は結婚のためでもあるけど、おひさま園を取り戻したいその気持ちがあるから彼女は俺の力になろうと奮闘してくれていた。 それは俺も同じで、俺と同じを目指したい彼女はその気持ちで沢山だ。 基秀の幸せが玲奈の幸せとも言っていたからどんなに大変でも今を止めない。 そんなわけで彼女を俺の補佐につけさせ、彼女の夢(基秀のお嫁さん)を成就させるためにも、彼女を近くで使っている感じだ。

 

 

色々ともどかしく、可笑しな展開に発展したけど彼女はその夢(お嫁さん)に向かって元気に生きていてくれてることが俺はうれしい。

 

 

まぁ、それに…

 

 

彼女は食い違いを起こしながらも、俺を常に想い続けてくれていた。 それはとても心が暖かくなる愛情であり、男として光栄な事でもある。 だからその気持ちを無意味にしたくなくて、このような約束事を作り上げたのだ。

 

 

 

 

「……ねぇ、基秀お兄さん」

 

 

「どうした?」

 

 

「後でサッカーで遊んでくれないか?」

 

 

「サッカーで? まぁべつに良いけど急にどうしたんだ?」

 

 

「わからないけど、基秀お兄さんとボール転がしたくなったから……かな?」

 

 

「そうかい。 なら休憩がてらにサッカーするか」

 

 

「! …ありがとう」

 

 

「で? サッカーで何がしたいんだい?」

 

 

「それならもう決まってます。 いつもお日さま園のために働いてる基秀お兄さんの事を考えて、基秀お兄さんがあまり動かなくていい遊びだ」

 

 

「ほう? それはどんな遊びなんだい?」

 

 

「その遊びは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少なからず昔みたいに戻れてきているお日さま園の一室で昔のように遊びを乞う女の子がいた。

 

そしてそんなパワフルな女の子の遊びに付き合い続けてあげた少年が一人いた。

 

そして互いに身長差がある二人は肩を並べてグラウンドに向かえば少年はゴールの前に立ち、少女はゴールから少し離れたところに立つ。

 

少女は足元にサッカーボールを置き、始まりの合図を知らせるために手を振る。

 

 

 

 

 

 

 

___じゃあ次はこれで遊ぼうね!

 

 

 

___わかったから、とっととかかってきな。

 

 

 

___よーし! いくぞー! PK戦ごっこの開始だよ! もとひでおにいちゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綺麗な夕日がお日さま園のグラウンドを照らす。

 

 

そしてそこにはひとりの青年とひとりの女性がサッカーボールを蹴って遊んでいた。

 

 

 

 

昔のように…

 

 

パワフルなあの頃を思い出しながら…

 

 

サッカーボールはグラウンドで弾む…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、ありえたかもしれない一つの物語。

 

パワフルにお嫁さん宣言した彼女の『世界線』だ。

 

 

 

 

おわり。

 




ウルビダ だった 玲奈 end

嫉妬を交え、約束を違えながらも基秀を想い続けた一途な女の子の話でした。 エイリア学園が崩壊後はメンタルやられる事なく基秀の約束を力に挫けなかった強い世界線でもありますね。 すーぱーうるとらぱわふるれいなちゃん要素増し増しで、生まれる子供もぱわふるだと思います。 良い家族になるでしょう。


これにて以上で ifルート の番外編は終わりです。
(え?風丸? 知らない女の子ですね…)
ちょっとしたアディショナルタイム(お話の延長戦)でしたが自己満足はここまでにして終了と致します。

これにてイナイレップーケンの活動は終わりにします。
ここまでありがとうございました。
これから"別の小説の復刻"を目指して行きますのでイナズマイレブンの作品から離れます。
またどこかで出会えたら幸いです。

ではまた!
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