気付いたら周りが百合色になってた   作:まもなう(旧ノリあき)

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おまけ


純粋茶髪さんとイケメン金メッシュさん(裏)

「……はい。私もしたい、です」

 

 

 きっと、それは一目惚れという奴だった。

 

 

 

 仕事の打ち合わせが終わった夕方。暫くパソコンに向かっていたせいで肩が酷く硬かった。

 

「はぁー……」

 

 すっかり冷めた紅茶を飲んで肩の力を抜き、一息ついた丁度その時だった。

 

 ピンポーン……ピンポーン……

 

「ん……?誰だ?何か頼んでたか……?」

 

 私の家のインターホンが鳴ることなんて、普段はまず無い。そもそも私に用がある奴は態々家に来ないし、来るときは一言連絡を入れる人達ばかりだ。

 かといって何かを頼んだ覚えはないし、謎だ。居留守を使ってもいいけど、一応顔だけでも見ておくかと壁に着けられたインターホンに近づく。

 自然とため息が出て、訝し気にカメラをつけた。

 

「……どちら様?」

 

 

 その時の感情がダイレクトに出てしまったのは、しょうがないことだったんだと弁明したい。

 カメラの向こうに彼女が居たんならそう言ってくれればよかったんだ。

 

 

『え、えっとあの!同じクラスの宮永由真といいまして!あの、その、先生に言われて書類を持ってきまして、あの』

 

 カメラに写っていた珍しい来訪者は、記憶にない少女だった。

 おどおどしてテンパっていて、見ていて可哀そうになる程緊張していた。

 

(え、誰……先生、書類……あー)

 

 なるほど、アレか。でも持ってくるなら愛美じゃないのか?

 あの学校で仲の良い奴……というか、私を知ってる奴がそもそも愛美しかいない筈なのに、何故この子が私の家を訪ねてくる?いや、まぁ偶々休んでいたって言う可能性もあるが……

 何にせよ、この子が届けてくれたことには変わりないし、ここで門前払いするのは余りに忍びない。

 

「……そんなに怯えなくてもいいって。取り敢えず入ってきな」

 

『は、はい!ありがとうございますっ!』

 

 いい子なんだろうな、というのはすぐにわかった。

 エントランスのカメラに向かって頭を下げる子はそうはいないだろう。

 

「……」

 

 怖がらせて、しまっただろうか。

 対応した時の私の声は、中々に怖かったのではなかろうか。

 

「失敗したかな……」

 

 カメラで見た感じ、誰がどう見ても怯えられている。正直此処まで来てくれるかもわからない。

 ……どうしよう。私はこういう時の対処法何てまるで知らないぞ。

 

ピンポーン。

 

「え?」

 

 もう、着いたのか。

 あまり考えこんでいないつもりだったが、自分の思った以上に時間が経っていたらしい。

 これ以上怯えられては堪らない。早く出迎えよう。

 そう思って玄関のドアを開けると、口を開くより前に頭を下げた女の子。

 

「初めまして、あの!書類を持ってきましたっ」

 

 勢いよく下げられた頭に追従して、綺麗な茶髪がふわっと翻る。

 差し出された手といい、小柄な子だ。その手に持った書類は微かに震えている。

 

「……ご苦労だったね。持てなすよ、入りな」

 

 ……いつものように喋ってしまった。

 

「えっ」

 

 彼女はがばっと背筋を伸ばして、私を見る。初めて目が合った。

 所謂「可愛い女の子」とはこういう子のことを言うんだろう。大きな透き通った目、華奢な体、弱弱しい雰囲気。まさに私とは正反対。

 勿論私の価値観から言っても、とても可愛い。一瞬で庇護欲を掻き立てられるその姿は、暴力的と言っていいだろう。

 そんな彼女が、まさに意外と言わんばかりに大きな目をさらに大きくして、私をぽかんと見ている。

 

「……ご苦労だったね。持てなすよ、入りな」

 

 さっさと書類を受け取って帰ってもらってもよかったのに、ここで私は何故か自宅に迎え入れた。

 

 

 

 ……いや、わかっている。今ならわかる。一目惚れだったって。

 自分でも無自覚に、傷つけないように怖がられないように口調が柔らかくなっていたし。

 その日初めて会ったのに隣に座るわギター持ち出すわ。完璧に気を引きたい動きしかかましていない。

 

 次の日は別に教室に行く必要はなかったし、その日の午後にスーパーで買い溜めをしたのは……いや、それは偶然だけど。

 その後の流れは我ながら攻めた行動だったと思う。私ってこんなに積極的だったんだと初めて知った。

 

 ハンバーグを作ってもらって一緒に食べた時は、由真に対して表では平静を保っていたけど、裏(と言うか心の中)では小さい私が飛び跳ねて喜んでいたし。

 解散前のマンションの下での由真は死ぬほど可愛かったし。思わず耐え切れずにおでこにキスをしてしまった。あの時は衝動を抑えきれずに、嫌われたらどうしようとか考える余裕が全くなかった。気付いたら体が勝手に動いていた。

 

 それで次の日悶々と過ごして、愛美に久々に電話したんだ。

 

 

 

『あれー、珍しいじゃんー?日向が私に電話なんてぇ』

 

「うん。まぁ、それには色々理由があってな……相談、と言うか」

 

『へー?日向が私に相談事ぉー?……ははーん、なるほどねぇ?』

 

「ん、なんだ?」

 

『ずばり、当てちゃおう!……ゆまっちだね?』

 

「ゆまっち」

 

『宮永由真さん』

 

「ぐ、ぬ……」

 

『へへーん、当たりー。まぁそんぐらいしかないだろうなーとは思ってたけどねぇ』

 

「何故わかった」

 

『あの学校来た時の場に居たみんなは初対面だけど、あたしは別だしぃ。普段のキャラと違いすぎて超びっくりしたんだけど!思わず誰!?って笑いそうになっちゃった』

 

「そんなに変わっていたか……?」

 

『え、気づいてないのぉ?それはそれで怖いんだけどー……え?この相手?日向だよ。ほら昨日のイケメン』

 

「?誰か居るのか?」

 

『え、話してみたいぃ?大丈夫?そう?じゃあ代わりまーす』

 

「あっおい」

 

『お電話代わりましたイケメンさん。私愛美の旦那の須藤と申しますけど』

 

「あっ、須藤さん。覚えてるよ。インパクトが強すぎて」

 

『そんなにパンチ浴びせたっけ?まぁいいや。さてイケメンさん。相談事はずばり、「宮永さんに恋しちゃったんだけどどうしよう?」だね?』

 

「……やっぱり、そう見えたのか」

 

『超見えた。もう宮永さんを見る目が違うもの。定年退職した後飼い始めた豆しばの世話を焼く親父並みの表情と目をしてた。他の人へは学校の池の鯉ぐらい』

 

「……これ多分言い返せないんだろうなぁ……」

 

『気づいてないのは多分宮永さん本人ぐらいだよ』

 

「それは良いんだか悪いんだか……ねぇ、恋人っていいものかい?」

 

『私たちはもう恋人通り越して婦婦みたいなもんだけど。滅茶苦茶いいよ!もう愛美無しの生活は考えられないぐらい。誰にも渡したくないし、渡さない』

 

「そっか……」

 

『……イケメンさん。正直言ってライバルはめっちゃ多いよ。宮永さん可愛いしもう男子たちの理想みたいな人だから、早くしないと奪われるかも。学校で何があるか、わからないよ?』

 

「それは……!耐えられそうに、ない……!」

 

『ならやることは一つだよ。大丈夫、自分のやりたいようにしてみなって。どうせ死にはしないんだから』

 

「随分刹那的だな……」

 

『でもそうやって目的を達成したときは滅茶苦茶すっきりするぜ?YOUやっちゃいなよ!……ごめん変なテンションになってきたから言いたいこと言ったし愛美に代わるわ』

 

「やりたい放題だね君!?」

 

『……はぁーいお電話代わりましたぁ。この子も言ってたけど、善は急げって言うし早めの方がいいかも?狙ってる子いっぱいいるから』

 

「……やけに急かすね」

 

『そりゃあ勿論。恋は争奪戦でしょ?』

 

「……こんなこと聞くのも何なんだけど、女の子同士ってどう?」

 

『んー、これは私個人の考えなんだけどぉ。性別云々より、誰とって方が重要な気がするんだぁ。好きでもない相手はあんまりだけど、好きな子とならめっちゃ気持ちいいし。女の子は特にね』

 

「ふ、ぅむ……」

 

『色々私と杏が言ったけど、伝えたいことはこれだけ。後悔するな。自分に素直になれ。好きな子同士は気持ちいい。あっ、後さっき杏がやりたいことやれって言ったけど、順番は間違えないように!まず告白して、応えてもらって、それから!』

 

「あ、ああ……肝に銘じておく」

 

『お願いねー?あたしゆまっちの悲し涙とか見たくないから』

 

「それは私も見たくない。……ありがとう、色々勇気をもらったよ。旦那さんにもよろしく言っておいてくれ」

 

『はいはぁーい!じゃあまたねー。吉報を期待する!』

 

「ああ、ありがとう。じゃあまた」

 

 

 

 愛美と須藤さんが相談に乗ってくれて、勇気を貰って、居てもたってもいられなくなって。

 結局その次の日に、由真の家に突撃したんだよ。

 私が告白した時の由真はそれはもう可愛かった。変な声が出そうになった。

 両思いだとわかった時は思わず踊りだしそうになったし、初めてのキスはもう柔らかくて感動したよ。

 後はもうこの通り。私と由真はめでたく結ばれて、こうして幸せな毎日を送っているわけだ。

 

「でも、まだ伝えたい由真とのエピソードがあるんだ。聞いてくれ」

 

「うん。あたし達もう帰っていい?」

 

「というか本人を前にする話じゃない。見なさい宮永さんを。さっきから机に蹲って奇声を上げてるぞ」

 

「ぅうぅ……!もういっそころしてぇ……!」

 

 

 

 まぁ何が言いたいかっていうと、私は幸せってことだ。

 

 




電光石火の二人でした
ごーとぅーねくすと→
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