気付いたら周りが百合色になってた   作:まもなう(旧ノリあき)

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あと少し、お付き合いください
(誤字報告助かります…!)


聞く橋本さん/電話 10

 

「来てくれてありがとね」

 

「任せなさい。他ならぬ橋本さんの頼みなら」

 

「任せなさーい」

 

 由真に相談をした次の日。同じカフェで約束を取り付けた須藤が来てくれた……のはいいんだけど、何故か牧原も一緒についてきた。

 

「……悔しいけど、頼もしいわ」

 

「ふふーん、経験だけならあるからね」

 

「その手の話なら一応先輩だしー?」

 

 ドヤ顔を披露してくる須藤と、「それで?」と興味津々に身を乗り出してくる牧原。こんなに見た目も対照的だというのに、一緒に居るとしっくりくるんだから不思議なものだ。

 

「それで?何があったの?まぁ大体なんとなくわかるけど」

 

「多分お風呂で何かしらあって、中庭で一旦収まったんだよね?」

 

「……大体わかってるじゃないの」

 

 前から思ってたんだけど、この二人妙に鋭い気がする。あまり外界に興味ないですよーって雰囲気を出しておきながら実は凄い見てるような……

 

「まぁね。分かりやすかったし」

 

「そうそう、あそこまであからさまならねー。それでぇ?実際何があったのー?」

 

「……実はお風呂で告白?されて」

 

「ほう」

 

「キスされたの」

 

「ほうほう!」

 

 二人して目を輝かせながら食いついてくる姿に少し気圧されながらも、話を続ける。

 

「……で、最近のあーしって彼氏欲しさに焦ってたじゃない?それで中庭で凪のこと二の次にして蔑ろにしてたって謝って。後悔しないように考えるって言って。今に至る……感じ?」

 

「ふむふむー」

 

「なるほどねー。じゃあ私たちに相談事って言うのは、女の子同士ってどうなのみたいな?」

 

「んー、それとはちょっと違うんだけど……」

 

 上手く言語化できない。

 そんな風にもごもごと宙を見るあーしを見て納得したかのように手を叩いて頷くと、単刀直入に聞いてきた。

 

「じゃあもう直球で聞いちゃうけど。橋本さん、」

 

「真奈でいいよ」

 

「じゃあ真奈ちゃん」

 

「何?」

 

「キス、どうだった?」

 

「は?」

 

 真面目な顔して何を聞いてくるんだこいつは。

 

「だから、キス。どうだった?」

 

「どう、って……」

 

「びっくりした?気持ちよかった?柔らかかった?……嫌じゃなかった?」

 

「……!」

 

 それを聞いた瞬間、凪にされたあのキスの感触が浮かび上がってきた気がして、思わず唇を抑えた。

 気持ちよかったかどうかは正直驚きでわからなかったけど、柔らかかったのは確かだった。

 嫌悪感は、なかった。

 

「第一の壁だねー。同性同士でも嫌悪感あったらどうしてもダメだしぃ。でもその様子だと……」

 

「……嫌じゃ、なかったわ。びっくりはしたけど、それだけ」

 

 それを聞いて須藤は満足そうに頷いて。

 

「なら言い方は悪いけど、素質有ってことだ」

 

「他にはあるー?告白されて気持ち悪いとか、そんな目で私を見てたなんて信じられない!とかー」

 

「そんなことあるわけない!」

 

「寧ろ?」

 

「……寧ろ、何時から好きだったんだろうとか、酷い思いさせちゃったとか、あーし凪のこと何も考えてあげてなかったとか……」

 

 茫然とテーブルを見ながら、あの日のことが頭の中から溢れてくる。

 そうだ、嫌じゃなかった。どうしようっていう思いも、どう断ろうかじゃなくて、凪を受け止めるにはどうやってあーしの意識を変えたらいいんだろうっていうポジティブな思いで。

 それに気づいた瞬間、はっ、と目の前の須藤と牧原を見た。は、笑ってた。

 

「なら、答えじゃん」

 

「うん、答えだと思うなー」

 

「こたえ」

 

「そう。ねぇまなっち。もし秋山さんがここでまなっちのことを諦めて、他に恋人作ったらどう思う?」

 

「それで、その恋人のことを何時しか嬉しそうに報告してくるようになったら」

 

 それは、嫌だ。

 

「……嫌だ」

 

「学校では恋人とべったりになって、まなっちと話す機会も段々減っていく」

 

「……嫌」

 

「休日や放課後も勿論、恋人優先だから遊ぶ機会もなくなっていく」

 

「いや……」

 

「そのうち、セック「いや!」

 

 なんなの、こいつらは。あーしを、私をいじめてるの?

 

「ごめんね。でも、これで答えがわかったんじゃないかな」

 

「答、え……」

 

「うん。ずっと一緒に居て欲しい。誰にも渡したくない。それも、立派な答えだよ」

 

 でもそれは、きっと浅ましい独占欲で。きっと友達を取られるのが嫌っていう幼稚な思いで、

 

「そう。まだ真奈ちゃんの中ではその独占欲だって恋とは呼べないのかもしれない。でも、それは真奈ちゃんがそう思いこんでるだけで、恋じゃないとは言えないと思うよ」

 

「恋だの愛だのなんて、そのカタチは人それぞれだしねー。それに、今まなっちが自覚したことで意識が変わって、秋山さんの前に立った時に想いが溢れるかもしれないし?」

 

「……そう、なのかな……」

 

「……ね。真奈ちゃんはさ、秋山さんとちゃんとキスしたいと思う?」

 

「……わかんないわ。けど、したくないわけじゃ、ないと思う」

 

 あの時は驚いてばかりで、不意打ちで、後から振り返らないと自分の感情なんて気にしている余裕もなかったから。

 

「うん、そうだねー。とりあえず、秋山さんに会ってみよう?まだ別荘行ったときから会ってないんだよね?」

 

「うん。ずっと家で考えてたから」

 

「そっか。じゃあ、取り敢えず今のまなっちがしたいこと、思ってることを伝えてみよう?」

 

「黙っていても伝わる気持ちはあるっていうけど、やっぱり人間口に出されないとわからないことは一杯あるしね」

 

「ぐ……」

 

 気づけなかったあーしには少し耳が痛い。

 

「まぁ騙されたと思って、一度秋山さんに会ってお話しすること!」

 

「そーそー!別に会話が禁止されているわけでもないんだから、話してみよーぅ!」

 

 正直、背中を押してくれる須藤たちの言葉が頼もしい。色んな事に気付かされたし、勇気も出たし。

 

「……ありがと。あーし、話してみる。今までのことも、全部」

 

「うんうん。伝えちゃえ。自分の気持ちを飲み込んだままなんて、勿体ないぜ?」

 

「大丈夫、きっと受け入れてくれるよー。ガンバレ!少女!」

 

「正直、滅茶苦茶頼りになったし、為になった。流石だわあんたたち」

 

「まぁね。先輩だから」

 

「先輩だからー」

 

 ……勝ち負けじゃないけど、こいつらには勝てないなぁと思う。

 

「……ホント、ありがとね。ここは奢らせてもらうから」

 

「フッ、若ぇ奴に出させて堪るかってんだ。ここはオレの奢りでいいぜ」

 

「どんなキャラよ。そんであんた同い年でしょ……」

 

 茶化してくれる須藤たちが、あーしよりも大きく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 ベッドに入る前、あの別荘で想いを伝えちゃった日からずっと真奈のことを考えてしまうようになった。いや、それは前からしてたっけ。

 いつからか私の後ろじゃなくて、前に立って手を引っ張ってくれるようになった真奈。「今からはあーしが凪を引っ張りたい」なんてことを言われたときは、内心「え?何?プロポーズ?」なんて馬鹿なことを考えたりもしたけど、まぁそんなことは全然なくて。そんな真奈に甘えてずっとくっついていたけど、最近の真奈を鑑みて離れてみようとして、やっぱり辛くて。自分がこんなにも真奈に依存していたなんて思っていなかった。

 私の気付かないところで段々と想いが膨らんでいて、それが爆発したのかな。

 あんなことするつもりはなかったのに、どうしても我慢できなくて、キスをして。

 

「真奈……」

 

 でも、真奈は追いかけてきてくれて。ちゃんと話を聞いてくれて。嫌いになられてもおかしくないのに、受け止めてくれて、答えを出すって言ってくれて。

 

「真奈ぁ……」

 

 いっそ、気持ち悪いって拒否してくれればよかったと考えたこともあった。キスした時も突き飛ばして、拭ってくれればよかったって。それなら、私もすっぱり諦めがついて毎日真奈を考えなくていいのかな、なんて思って。でも。

 

 真奈は優しかった。私は一番近くで見ていたから知っていたけど、やっぱり、優しかったんだ。

 

「まなぁ……!」 

 

 それが嬉しくて、でも想いを伝えたせいで真奈の負担にもなってると思うと凄く複雑で。

 

「……!はぁ……私、めんどくさいなぁ」

 

 とてとてととてん、とてとてととてん。

 

「!」

 

 もう寝ようというタイミングで、突然メッセージアプリの着信が鳴り始める。気怠い手つきでスマホをつけると、

 

「えっ……!」

 

 かけてきたのは、真奈だった。微睡んでいた頭が一気に冴え、心臓がどくどくとけたたましくなり始める。

 寝る前にちょっとお話しようと真奈と電話することはしょっちゅうあったけど、最近は先日のこともあったせいで全くできてなくて。しかも告白した後っていうタイミングでかけてきたってことは。

 震える手で通話を、繋げた。

 

「も、もしもし……」

 

『あ、もしもし凪?ちょっといい?』

 

「あ、うん。いいよ~。後はもう寝るだけだから」

 

 三日ほどしか経っていないのに、真奈の声が酷く久しぶりに感じてしまう。

 

『そう?よかった。……何か久しぶりだね、こうやって電話するの』

 

「不思議だよね~。あれからそんなに経ってないのに」

 

『そうよね、あれから……ね』

 

「……うん」

 

 やばい。思い出してしまって上手く喋られない。無理矢理口を動かして、用件を聞いた。

 

「そ、それで、どうしたの?」

 

『あーっと、その……会って、話がしたいんだ』

 

「っ……電話、じゃなくて?」

 

『電話じゃダメ。会って、凪と顔を合わせて、話がしたい』

 

 そんな真剣な声でお願いされたら、断れるわけないよ。元から断る気も、ないけど。

 

「……いいよ。いつにする?」

 

『ありがと。……明日でもいい?なるべく早い方がいいの』

 

「休みで暇だもん、全然大丈夫だよ」

 

『ホント?じゃあ駅横の……いや、そっちに行ってもいい?』

 

「そっちって……私の家?」

 

『そうそう、久しぶりにさ。周りも気にならないし、丁度いいかもって』

 

「うん、おっけ~。いつでもいいよ」

 

『マジ!ありがとね、凪』

 

「私も……会いたいし、お話、したいから」

 

『そっ……か』

 

「うん。……じゃあ、もう寝るね~。声聞けて嬉しかったよ~。おやすみ~」

 

『あ、うん!おやすみ凪。また明日』

 

「またあした~」

 

 どうしよう、どうしよう。

 これからゆっくり寝られるのかな。明日どうなるのかな。心臓が五月蠅い。手汗が凄い。

 ベッドに潜っても一緒。どうしよう、どうしよう。

 目を閉じても一緒。私は大人しく、明日を待つしかないのだ。

 電話越しに聞いた真奈の声が脳内で勝手に反復される中、なんとか眠りにつこうとした。

 

 

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