気付いたら周りが百合色になってた 作:まもなう(旧ノリあき)
みーんみーんじじじじ。
「あつい」
「ねーほんとあつい……」
夏真っ盛りの今日この頃、皆さん如何お過ごしですか。須藤杏です。
何だこの暑さは。
「アイスが……アイスが一瞬で溶ける……」
「アイスバー系はダメだねぇー……」
ほら隣の愛美も雨に打たれすぎたナメクジみたいにでろんでろんに溶けてる。
例えが可愛くなかった。
「扇風機なかったっけー……?」
「このタイミングでエアコンの調子悪いとか考慮してないわ……」
「だよねー」
そう、考慮してない。朝からリモコン押してもうんともすんとも言わないなんて!
しかも今日日曜だし!よくわかんないけどどうせ会社?とかも休みでしょ……
「図書館とか行く?」
「動きたくないぃー……」
「だよねぇ」
こんなカンカン照りの中外で歩くのはもう自殺行為でしかないと思う。動いてたら死んじゃう。
「……あ!」
「どしたのー?」
もしかしたらあれを起動すれば多少は涼しいんじゃないか?と以前気の迷いで買ったブツを思い出す。
動くのは億劫だけど、以前押し込んだはずの押し入れの奥を目指した。
「確かこの奥にねじ込んだようなー……?」
「何探してるのー?」
「この状況を打破してくれる気がする……あった!」
にしても箱がものすごく大きい。いやホント大きい。何故買ったんだ当時の私。
無理矢理引きずり出して、久しぶりに外の空気をそれに吸わせてやった。
「なにこれー……?」
「そうめんスライダー」
「いやなんでー……?」
「ほら、これ稼働させてやれば多少涼しそうじゃない?買ったのは……なんでだろうね?」
しかもこのそうめんスライダー、箱にも書いてある通り全長7m越えである。
滝みたいなシステムもあるし、打ち水めいた効果を期待するのは間違いではない筈だ。
この茹でった頭で導き出したアンサーとしては中々じゃないだろうか?暑さへの。
「こいつで室内温度を図書館にする」
「そんぐらい下げてくれたら言うことないなぁ」
「でしょ?氷と水取ってくる」
「組み立てていいー?なんか楽しそう!」
「寧ろありがたい。これパーツ数凄いから」
「マジ?そうめんスライダー組み立てたことなかったから楽しみ!」
「多分相当レアだよ、組み立てたことある人超少ないと思う」
箱から分解されたスライダーを取り出して、「ホントに数凄いー……」と若干気負いながら組み立てに臨む愛美を微笑ましく眺めて、冷蔵庫に氷、水道に水を汲みに行く。製氷室ある奴で良かった。
「どう?出来そう?」
「一緒にやろ!」
「いいよ」
ギブアップが早い。けど二人でやった方が楽しいもんね。へへ。
「とりあえずこの終点に水入れるね。場所はもう真ん中でいっか」
「てか真ん中じゃないと置く場所なさそうー?」
「確かに」
二人でカチャカチャと汗をかきながら、わいわいスライダーを組み立てる。
賢眼だったな当時の私。お陰で今謎に楽しいぞ。先ずこの状況を予想してなかったろうけど。
「すご、これ恐竜の頭ついてる」
「頂上からししおどしみたいに水かっこんかっこんするんだって」
「へー!小っちゃい子いたら喜びそうだね」
「うん、私の周りにそんな子いないんだけどね」
「何で買ったんだろうねー」
「ほんとにね……」
なんて会話をしながら作業終了!ベッドとテレビの間を占領するスライダーが出来上がった。
「でかい……」
「おっきいねー」
早速電源を入れてみよう。心なしかワクワクしている顔を隠しきれない愛美が可愛いし。もったいぶるのも楽しそうだけど。
ではスイッチオン。
「おおー……」
「流れたねー!」
頂上の恐竜の顎が動き出し、モーターの音とともに水が流れ始めた。かっこん、かっこん。
「どうかなー?」
「どうだろね。でも若干涼しい……かも?」
気持ちの問題かもしれないけど、冷気を感じる気がする。
いや絶対涼しくなっている。この調子で我が家に涼しさを取り戻してくれ。
「これでくっついても暑くなんないかな?」
「試してみる?」
達成感もあってお互いに抱き合ってみる。汗の匂いとか今更気にしないし、なんならスパイス。特に愛美のなら。
「氷ここに入れてみるとか?」
「ここ?っひゃあ!」
愛美の見事な谷間に氷を落としてみる。ふおお。
「もー急に冷たいよ!」
「いやちょっとやってみたくなって」
「あーでもこれ結構いいかも?ブラの下とかに入れてみよっかな」
「マジで」
かっこん、かっこん。
「これさ……」
「えー?んむっ」
おもむろに氷を口で啄んで、愛美の口に押し付ける。
「ほけふはへはへあうお(溶けるまで舐めあうの)」
「いーよ?」
かっこん、かっこん。
かっこん、かっこん。
かっこん、かっこん。
「いや気が散るなこれ」
「あははっ」
大人しく涼むことにした。