目指せ上場! 株式会社KIBUTUZI   作:サルスベリ

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 調子に乗って二つ目投下。

 サルスベリは経営のこととか、会社の仕組みなんてあまり詳しくないので、細かいところの間違いとかあってもどうかご容赦を。

 今回は社会人にとって、かなり大切な労働法的なお話です。










きちんと定時に帰れる、法律を順守する素晴らしい会社です

 

 

 

 

 

 KIBUTUZIは鬼舞辻無惨が設立した会社であり、彼の配下の鬼が数多く働いている。

 

「働け」

 

 日の出から日の入りまで、そんな優しいことで終わらない。

 

「働け」

 

 時計の針が一周したのですが、見間違えですか。いいえ見間違えではなく本当に一周しても終わらず、二周した頃にようやく山場が終わって、四周した頃にお疲れ様って言葉が出てくるほど、とてもホワイトな職場です。

 

「働け、働くのだ」

 

 鬼にとって生命の危機のない、書類をミスしても半身を飛ばされて終わる、そんなとても温かみのある、素晴らしくホワイトな職場がKIBUTUZIですので、売上が伸びて世間の認知度が高まると。

 

「働くのだぁぁ!!」

 

 鬼以外も就職するようになってしまったのは、この世の終わりかもしれない。

 

「ム! 定時だな。よし、脆弱な人間どもよ、速やかにタイムカードを打刻して帰るのだ」

 

 無惨社長の社内放送により、人間社員はすべて追い出されるように会社から放り出され。

 

「さあ働くのだ鬼どもよ! 明後日の朝日を見たければ死ぬ気で働けぇぇ!!」

 

 その後、徹夜の三回や四回、十回しても平気な鬼達によるデスマーチが行われるのが、KIBUTUZIです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 胡蝶カナエはKIBUTUZI入社五年目に入る中堅社員だ。営業部とか資材部とか、色々な部署を引っ張り回され、KIBUTUZIの各部署をすべて体験したことのある、人間社員としては珍しいほど優秀な人材でもある。

 

 そんなカナエには我慢できないことがあった。

 

「童磨部長!」

 

「あれ~~カナエちゃんじゃない。どうしたの? 今、企画部一課にいるんじゃないの?」

 

 にこやかに顔を上げたのは、営業部の部長である童磨。KIBUTUZIの営業を行っている部門の二代目部長であり、気配り上手、世渡り上手、仕事もできれば部下への仕事を振り分けたり、配慮したりと、スーパーエリートともいえる鬼だった。

 

「童磨部長! お話があります!」

 

 KIBUTUZIのナンバー3といわれている、部長達の中でも社長や専務に次ぐ権力を持っている童磨に対して、カナエは睨むように詰め寄った。

 

「ちょ、ちょっとカナエちゃん! 最近はね、女性社員から迫ってもセクハラになるから。世間体を考えましょう、ね、ね!!」

 

「そんなこと関係ありません!」

 

「関係あるよ! 部長が女性社員に対して、色々としたなんて世間に知られたら営業成績が落ちる!」

 

「関係ないです!」

 

「あるって! 今、アメリカの企業との商談が成立するかどうかなんだから。あっちはその手の話は敏感なんだからさ」

 

「アメリカなんて関係ないでしょう!? 今はわが社の話です、童磨部長!」

 

 必死に止める部長。これでも、KIBUTUZIの上から数えたほうが速い役職の男。

 

 一方、そんな彼に詰め寄るのは若手の中でも特に優秀な社員、でもまだやっと新人から脱して中堅になればいいかなぁ、というくらいで役職のない平社員。

 

 普通、力関係ならば傾くべき方向が、この場合はまったく逆方向に傾いているので、見ている鬼や人間の社員は、ハラハラドキドキしている。

 

「なあ、今日の童磨部長、どのくらい耐えると思う?」

 

「ええ、前の時は二時間くらいで落ちたから」

 

「今日もカナエさんは童磨部長に強気だよな。なんであんなに強気になれるんだ?」

 

「それより、カナエさんってなんで他の人には優しいのに童磨部長には口調が荒くなるんだろう」

 

 ハラハラドキドキ、してないらしい。チラリと横目で見ながら、誰もが業務を遂行していたりする。

 

 誰も知らない、並行世界での色々なことが原因で、二人が無意識にあんな力関係になったなんて。

 

「童磨部長!!」

 

「はい?!」

 

「今、何日目ですか?」

 

 ギュッと睨むような、至近距離で詰め寄って質問してくるカナエ。

 

「えっと~~~五日目」

 

 童磨は少しだけ眼を泳がせた後、小さく答えて。

 

「なんで五日間も徹夜しているんですか?! 少し休んでくださいねって伝えましたよね!?」

 

「大丈夫だって。僕は鬼だよ? 鬼は死なないし、眠らなくても大丈夫だからさ」

 

「鬼だって生物でしょうが!!」

 

 ケラケラと気楽に笑う童磨に、ついにカナエの怒りが天元突破。室内を揺らす怒鳴り声をあげましたとさ。

 

「なんでうちの会社の鬼って服務規定を護らないのかしら?」

 

 怒鳴ってすっきりしたカナエが小さくため息をついていると、童磨部長は何故か傷だらけになりながらも立ち上がり。

 

「それ、人間の服務規定だからだよ。鬼には適用されないの」

 

「え・・・・・・国家の法律ですよ!?」

 

「僕たち鬼には適応されないから、査察とか入っても大丈夫」

 

 にっこり笑う童磨に、カナエはまさかと思って周りを見回すと、誰もがサッと顔を背けた。

 

「・・・・・・・だから営業部は鬼が多いんですかぁぁぁ?!」

 

「二十四時間じゃなくて、三百六十五日、戦えますからねぇ」

 

 驚愕の事実を知り、カナエは膝をついたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 KIBUTUZIの専務。それは社長の次ぎに権力と権利を持ち、社内のあらゆる物事を進め、事業を成功させ、もめ事を速やかに解決する鬼。

 

 彼に対しての逸話は多い。

 

 曰く、『気がついたら海運業を立ち上げていた』。

 

 曰く、『災害時の対応チームに、軍より先に配備されて一人で終わらせた』。

 

 曰く、『新人を三カ月で即戦力に育て上げた』。

 

 曰く、『五十人の相手に一斉に名刺を配って、その顔を暗記した』。

 

 

 童磨が声かけや気配りで社員から支持を集めているならば、彼は揺るぎない背中と絶対の自信、それと『おまえがやれ、後の責任は俺が』というスタンスを貫く姿勢により、大勢の社員から支持を得ている。

 

 それはもちろん、童磨さえも彼が背後に控えた時は普段の気配りなどせず、自身の能力全開で突き進むこともあるほどに、彼はKIBUTUZIの全社員から絶対的な信頼を向けられていた。

 

 KIBUTUZI専務、『黒死牟』とはそういう鬼であった。

 

 時々、思い立ったように自分で営業に行って、自分で案件をまとめて、自分で予算案を組み、自分ですべてを終えて、最後のプレゼンを新人に丸投げする、なんて鬼畜なようなことをするのだが。

 

 寡黙にして絶大、彼が動けば経済が動く。なんてことを言われる黒死牟専務だったが、彼も生物であるために弱点がある。

 

 KIBUTUZIの会議室で、黒死牟は腕組みしたまま沈黙していた。

 

 考えれば考えるほど、彼の思考は深みにはまってしまう。何故、どうして、何があってこんなことになった。いやこんな状況は、配属して三日目の新人でさえしないだろう。

 

「・・・・・・・・縁壱」

 

 深いため息を共に、黒死牟は弟の名を呼んだ。

 

「は、はい、兄上」

 

 一方、テーブルの挟んだ対面に座っている弟は、その言葉にビクリと体を震わせて恐る恐ると返答していた。

 

「俺は・・・・至らない兄・・・・であった」

 

「いえいえいえ! 兄上は立派なお人です、私のようなものにはもったないほど、立派な」

 

「いや・・・・こうなる前に・・・気づかず・・・・兄として不甲斐なし」

 

「そのようなことは。これは私の不始末ですので」

 

 もう情けなくて泣きたくなる縁壱に対して、黒死牟は再び瞳を閉じて。

 

「ならば・・・・・この一件は私が・・・どうにかしよう」

 

「なにを言われますか! これは私が何とかして見せます。兄上、どうかこの愚かな弟に今一度、チャンスを!」

 

 決意を込めて拳を握り、立ち上がって宣言する縁壱。

 

 黒死牟は彼を見つめ、我が弟だからと信じたくなって。

 

「・・・・・・・もう壊すなよ」

 

 視界の隅で真っ二つになっているパソコンとデスクを、見てしまってそう告げるしかなかった。

 

「いえあれは、その・・・・・・昔から言うではないですか!!」

 

 思い出したと縁壱は最高の笑顔を浮かべ。

 

「そう! 機械は叩けば直る、と」

 

 軽く右手を振ったのでした。

 

「それは・・・・・・」

 

 黒死牟は深くため息をつき。

 

「・・・・・最後の手段・・・・・・だろう」

 

 縁壱の右手の動きそのままに、真っ二つになったテーブルを見ないようにしたのでした。

 

 戦国時代の最強の剣士であっても、会社勤めまでは最強ではないというお話でございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無惨は思う。最近、会社の備品が壊れることが多いな、と。備品を大切に扱っていないのか、それとも備品に不備があったのか。

 

「今度はこっちにでも手を伸ばすか」

 

 いくつかある脳の一つでそれを考えながら、無惨は机の上の資料を手に持った。

 

 季節は二月、そろそろ来年度の新人さんを決めないといけないのだが。

 

「何故だろう、こやつを採用しなければいけない使命感と、採用したら死ぬような予感がするのは」

 

 う~~むと悩む無惨社長の手の中には、一枚の履歴書があった。

 

 名前、『竈門炭治郎』。

 

 原作主人公がラスボスの会社に応募してきた。

 

「・・・・・・・何やら悪寒が。こう言う時は、これだな。フフフフ、この日本酒はかの有名なヤマタノオロチを」

 

 うっとりと高揚する無惨様の背後で、社長室の扉が弾け飛んだ。

 

「無惨!!!」

 

 そして降臨するは、お酒大好き鬼の女性。

 

「ヒィ!? たたたたたた珠世! 今日はウィスキーではないぞ!!」

 

「今日は日本酒の気分です。渡しなさい」

 

「ダメだ駄目だ駄目だぁぁぁ! やっと手い入れた逸品なのだぞ!」

 

「渡しなさい」

 

「貴様だって給料があるだろう! そ、それを使えばいい」

 

「他人の金で飲む美酒のなんたる美味いことか。まさに愉悦」

 

「貴様は何時から愉悦部になったぁぁぁ!!」

 

「よこしなさい無惨! 残念ムザンの分際で!」

 

「今はそれは・・・・・・」

 

「問答無用!!!」

 

 今日この日、鬼舞辻無惨は社長室で木端微塵になって発見されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、とある輸送列車の中では。

 

「おまえも鬼にならないか?」

 

 人手不足なので営業部に来てくださいね、的な意味で。

 

「断る! 俺は俺の職務を全うする!」

 

 すみません、こっちも忙しいので仕事しないといけないので、的な意味で。

 

 火花を散らす鬼と人間がいたとか、いなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 








 何時も思うのは、キレがない。もっとスパーンと飛び込むような、キレがあればいいなと感じる。

 社会人だけど、商社に勤めてないから、具体的な内容は解らないけど、こんなもんではないかと思う。

 絶対的支配者ではなく、ちょっと弄られる愛嬌のある社長である無惨様が見てみたい。

 そんな妄想から始まったお話でした。





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