日本一幼女に厳しいゲームから妹を救いたい 作::-)
実は昨日の時点で投稿する予定でしたが、どうしても内容に納得ができずに半分ほど書き直しました。
どうもスランプ気味のようです…そもそもスランプに陥るほどの文才はありませんが…
神様とは元来、人の子との共存により成り立っていた。
力を持たない人間が自身の窮地に瀕した時、最後に頼ってしまうのがその人物が信仰する神様。神様も時には気まぐれながらも、人の子の願いを聞き入れてその力を振るう事がある。
お供えという対価を頂きながら。
やがて窮地より救われた人間はさらに信仰を深め、周りの者たちにもその信仰を広めようと布教する。そして信者が増えた神様はより多くの人間から対価を頂き、自身の力を高めていく。
これが神と人間の関係。
神無くしては人間は不安に苛まれ、人間無くしては神も信仰を広める事ができない。
この共存関係こそが古代より続く神と人間の生存戦略の象徴である。
「……あの山の神とは大違いね」
そんな情報がまとめられた一冊の本を読み進めながら、私は呆れたように呟く。
「あの神様は私たちから奪うだけで全然願いなんて叶えてくれそうにないじゃない。共存どころか一方通行よ」
なおもページを捲りながらも、その本に記載された情報に毒づかずにはいられない。そもそもあの神に今でも信仰があるとはとても思えない。あんなに山奥にひっそりと佇む神社に押し込まれて、信者も参拝者も随分と長くお参りに行っていないように見えた。
ならなぜ、あの神は存在を保てるのか。
答えはこの本を読み進めるとすぐに分かった。
「信仰が減り存亡の危機に瀕した神は自身の存在を保つために祟り神となる……そういう事ね」
祟り神となった神は自身の欲望に赴くがままに災厄を撒き散らし、『信仰』ではなく『恐怖』によって存在を保つようになる。
たとえ神の存在が認識されていなくても、
しかし『信仰』という真っ当な力の源を失った祟り神は大抵その姿を醜く変貌させ、その神格までもが悪霊のように穢れて堕ちてしまう。
「その結果があの姿……」
脳裏に浮かぶ山の神のおぞましい全貌。
つまり山の神のあの恐ろしい姿は、かつて得ていた信仰が無くなり祟り神となった結果という事なんだろうか。
神様が生きるために足掻けば足掻くほど醜くなってしまう。そう考えると、あの山の神もかつての神格ある姿を夢見てるのかもしれない。
「ダメ、同情したらあいつの思う壺」
首を振ってその思考を頭から追い出す。
憐れんではいけない。あの山の神は私たち家族の幸せを奪おうとする敵だ。
「ふへぇ……それにしても詳しく書いてあるなぁ。よっぽど熱心な研究者なのかな?」
まだ半分も読み終わっていない本の表紙を見つめながら、私は『神様』という題目にここまで取り組んでいる作者に関心した。
「お姉ちゃん、何か見つかった?」
「ううん、まだ読んでる途中。こともも無理しちゃダメだからね?」
「全然大丈夫! 読書も好きだから」
「小学生のこともにはまだ早いと思うけど……」
私と妹は今、隣町の図書館に来ている。
目的は当然、山の神に関する情報。前の世界で妹に助けられた後も山の神について調べたけれど、あの神様は本当の意味で人々から忘れられていたのか、山の神自身について書かれた本はほとんど無かった。ただ分かったのは昔、自分の左目と引き換えに願いを叶えてくれる神がいた事だけ。
だから今回は視点を変えて『神様』という存在そのものについて勉強している。
神様という存在がどういうものなのか分かれば、あの山の神についても何か仮説を立てられるかもしれない。
視線を落とし、私たちが座っているテーブルの上に置かれたメモ用紙に書かれた文字を復習する。
・山の神は信仰を失って祟り神になっている
・信仰を失えば本来なら消えているはず
・今は恐怖を糧に存在を保っている(?)
しかし、ここまで書いて頭を抱える。
そもそも一介の中学生でしかない私がどうにかできる相手なのだろうか。ムカデの神様もいなくなり、お守りの力が枯渇するのも時間の問題。残された時間はわずかなのにまだ解決の糸口すら見えていない。
「でも調べないと始まらないよね」
気合を入れ直し、再び本のページを捲る。
しかし、隣で一心不乱に目を凝らしながら分厚い本を読んでいることもを眺めながら、思わず深いため息を吐いてしまう。
「先が見えないトンネルの中を進んでいる気分……」
気晴らしに作者について紹介しているページを覗いてみる。研究者と思わしき眼鏡をかけた優しそうな男性に、その隣には奥さんなのか綺麗な女性が立っている。そして女性の腕の中にはおそらく今のこともと同じぐらいの少女。
自分の本の写真に家族全員を写すなんて、よほど家族想いの良いお父さんなんだろう。
「この人に会って神様についてもっと詳しく聞けたらなぁ……でもそんなに都合良く会えるわけ──」
「あ、お父さんの本」
「ひうっ!?」
突然、背後から声をかけられた。
まさか図書館で妹以外の人から声をかけられるとは思っていなくて、口から変な声を出してしまう。
慌てて振り向くと、小さな女の子が私が手に持っている本を指差していた。
「その本、私のお父さんが書いたんだよ」
「え?」
言うが否や女の子は私の隣の椅子に座り込むと、開きっぱなしだった本の作者紹介ページを再び指差した。
「わたしのお父さん」
「お父さんって……」
改めてこの女の子を見てみる。
焦茶色の髪を妹のような赤いリボンで結んでいて、どこか快活な印象を与える。知らない人にもこうして物怖じせず話しかけているし、きっと人見知りもしないのだろう。
何より、読んでいた本に写っている女の子と瓜二つ──というより同一人物。
「この本ってあなたのお父さんが書いたの?」
「うん、わたしのお父さんのお仕事なの。たまにこうして本を出したりしてるけど、あまり面白くないなぁ。お父さん、全然遊んでくれないもん」
「あはは……まだあなたには早いかもしれないね」
父親の研究を「つまらない」の一言で切り捨てるこの女の子に苦笑いを浮かべるも、女の子はお構いなしに頬を膨らませて腕を組んでいる。きっと彼女のお父さんが研究に忙しくてあまり娘に構ってあげれていないのだろう。
でも、
前回の時代――お母さんを助けられなかった時代では、私たち姉妹にとって『父親』とは都市伝説みたいなものだった。いると言えばいるのに、その存在を認識できない。
でもこの子の場合、逆に家にいるのに構って貰えない。ある意味で父親の愛情を受けられない。
この子もこともも似た者同士……なのかもしれない。
「……お姉さん?」
「あぁ、ごめんなさい。少し考え事をしてて」
いけない、こんな見ず知らずの女の子の家庭の事情を詮索するなんて失礼にも程がある。
この子はこの子でこともはことも。重ねて考えてはダメだ。
思考を振り払うように頭を振る私を見て、女の子は首を傾げた。
「もしかしてお父さんのお仕事に興味があるの?」
「う、うん。あなたのお父さんが勉強している事がちょうど私も勉強してる事と同じで。だからわざわざ隣町からこの図書館に来たの」
「わぁ……わたし、お父さんのお仕事に興味を持ってる人なんて初めて見た。お姉さん、変わってるね」
「あはは……そうかな?」
事実とはいえ、面と向かって言われると少し悲しいなぁ……確かに女子中学生が調べるような内容の本ではないけど。
私だって女の子らしく買い物に行ったり遊びに行ったり……買い物に行っても見るのは洋服の値段じゃなくてお魚の値段だし遊びに行く時はこともとポロも一緒だけど。
私はいいんだ。山の神をどうにかしないと安心して遊びになんて行けない。
「じゃあわたしが案内してあげるよ! わたしずっとこの町に住んでるから神社の場所とか色々知ってるよ?」
「え、それは……」
正直に言うと、私が知りたいのはこの町の神社ではなくてあの山の神について。この子の申し出は嬉しいけれど、私がここに来た目的とは少し違う。
しかし。
「ねぇ、いいでしょ!?」
「うぅ……」
こんなにキラキラした目で見つめられると断ろうにも断れない……。
この子は多分、お父さんに構ってもらえなくて寂しいんだと思う。私自身がそうだったように、この子からも同じ雰囲気を感じる。
でも私の場合は妹がいたし、ポロという心強い味方もいた。
そんな私が寂しそうにしている子供を放っておく事なんて……できない。
「……こともー、今日はもうこれぐらいにして遊びに行こっか」
「やったー!」
隣で一心不乱に本を漁っていたこともにそう告げると、女の子は心底嬉しそうにピョンピョンと跳ねる。
これで良かったんだと思いたい。それに遊ぶだけじゃなくて、もしかしたらこの町にある神社に何か手がかりがあるのかもしれない。
それにお父さんから話を聞く限り、この町も夜になるとお化けの巣窟になる、ある意味では私たちの町とよく似ている。
なら、山の神についても何か分かるかもしれないし、もしかしたらムカデ神社のようなこちらを護って下さる神様とも会えるかもしれない。
うん、そうだ。だから別に遊びにいくわけではない。
「……お姉ちゃん、その子誰?」
こともは本の山から顔を上げると、自分と似た赤色のリボンを揺らしながら喜ぶ女の子を見て、ジトッとした表情で私を見つめる。
なんだか妹の視線が痛い。
女の子もこともの存在にようやく気づいたのか、首を傾げながらこともを見つめている。
とりあえず、私は先に妹を紹介した。
「この子は私の妹。お姉ちゃん離れができなくて着いてきたんだけど、一緒に案内してもらっていいかな?」
「えぇ……」
私の雑な紹介に妹は呆れたように抗議の視線を送ってくる。
でもこれは紛れもない事実だ。放課後に荷物を置いてから図書館に行こうとしたら、妹がすでに背中にいつものポシェットを背負いながらスタンバイしていた。
しかしそんな妹を他所に、女の子は同行者がもう一人増えて嬉しいのか、満面の笑みを浮かべながら手を差し出した。
「わたしはユイ! よろしくね、こともちゃん!」
⭐︎
その少女──ユイはとても上機嫌だった。
親友のハルが放課後の用事で出かけてしまったため、遊び相手がいなくなったユイは気まぐれに町の図書館を訪れた。
適当に面白そうな本でも見つけて過ごそうと思った矢先に、通りかかった机の上に父親の本が置いてあるのを見つけた。
読んでいたのはこの町のものとは違うセーラー服を着た少女。肩まで届くどこか自分と似た茶色の髪を弄りながら父親の本を読んでいた少女に、ユイは声をかけてみた。
その結果が自分の後ろで物珍しそうに町並みを眺めている幼い姉妹──こともとともこだ。
「ここがこの町の神社。ただ奥にある林は危ないから近づかないでってお母さんが言ってた」
「わぁ……わたしたちの田んぼにも神社作って貰えないかなぁ」
「田んぼの真ん中に神社があるなんてなんだか神秘的ね。でもそんな無理を言っちゃダメよ? 神様だって住みたい場所があるんだから」
広大な田んぼに取り囲まれるように聳え立つその神社を見上げ、姉妹は感心したように深く息を吐いた。
その反応にユイも満足げに頷く。なんだか自分の町が褒められておるみたいで誇らしい気がした。
「あの林の中には何があるの? ここからじゃゴミしか見えないけど」
「知らない。でも誰かがあそこで悪い人に殺されちゃったってお母さんがお父さんに言ってたから、あまり行かない方がいいと思う」
「……なんだかうちの町みたいに物騒ね」
あまり理解していない様子の少女二人を他所に、唯一殺人犯と対峙した事があるともこは一筋の冷や汗を流しながらその林を見つめていた。
やはり怖いのはお化けだけではないのだ。
「……これならこともを連れてきたのは間違いだったかなぁ」
実際のところ、ともこは一人で隣町に行くつもりだった。
しかし、いざ学校から帰宅し荷物を置いていこうとすると、玄関先で待ち構えていたかのように佇む妹から逃れる術はなかった。
最近妹に行動が読まれている気がしたともこだが、気のせいだと首を振る。
「さぁ、参拝しよっか。はい10円玉」
ともこが財布の中から三つの10円玉を出し、それぞれユイとこともに渡す。三人は一斉に賽銭箱に小銭を投げ入れると、手を合わせてお祈りした。
──どうか家族が安全でいられますように。
申し訳程度にお願いを頭の中で告げるともこだが、その表情は優れない。
彼女はこの神社の境内に入った時、ここに神様の気配が無いことに気づいてしまった。夜中になれば変わる可能性もあるが、少なくともかつてのムカデ神社のような力の強さは感じない。図書館で読んだ本のように、もうすでに信仰を失い存在を保てなくなったのかもしれない。
つまり、彼女が求める『護り』とは違う。
「あの……」
どこか表情が暗いともこを見て、ユイは人知れず焦っていた。
自分が案内すると言ったのに、どうやら彼女は不満に感じているようだった。これではせっかくこの町に来た姉妹を落胆させたまま帰してしまう。
ユイ自身、初めて隣町の友達ができたのだ。このまま気まずい雰囲気で帰したくはない。
「えっと……」
彼女は考えた。
ともこは父親の研究について興味を持っているようだった。
ユイ自身は父親の仕事についてはまだ幼すぎる故か詳しくは理解していないが、少なくとも『神様』について調べていることだけは分かっている。だからユイはともこをこの神社に案内しようとしたのだが、ここ以外の神社なんて彼女は知らない。
──他に神社……あったっけ……あっ!
そこでユイは思い出した。
ユイが通う学校の怪談の一つとして語られている、
「お姉さん、もう一つ神社があるんだけどそっちも行く?」
「え? この町の神社ってここだけじゃないの?」
「うん! えへへ、実はもう一つ秘密の神社があるんだよ」
以前ハルに話した時は怯えさせたせいでしばらく口を利いてくれなかったが、確かにこの町には存在するのだ。
かつてはダムの底に沈み、今は枯れた土地の奥にひっそりと佇む神社。
その神社の中に存在する、
そこに行けば、もしかしたらともこが探しているものが見つかるかもしれない。
「ここからちょっと遠いから、早く行こうよ!」
「しょうがないねー。お姉ちゃん、早く行こ?」
不安げな表情から再び花が咲いたような笑みを浮かべると、ユイは神社から駆け出す。そのユイをやれやれと肩を竦めながらも追うことも。
ともこはただ一人、困惑を隠せず境内を佇んでいた。
秘密の神社。
その一言が彼女の中で異様な胸騒ぎを引き起こしていた。
しかし、戸惑う自分を無理やり動かし、彼女も二人の後を追うように神社を出る。
空はすでに夕焼けに染まっていた。
原作では出会うことはなかったユイとこともがここで対面
最近キャラの口調の把握が難しくなってきました