3台ほどのピックアップトラックが列を成して走っていく。
その内の先頭を走るトラックの荷台から周囲の光景を見やる。
戦火に晒された荒野は敵味方双方の迫撃砲で大小のクレーターを数多に作り、
それらの傍を走り抜けた車列が唐突と急ブレーキを掛けて止まった。
思わず倒れそうになるがなんとか踏み止まり、運転席の男にどうしたと問うと男は黙って前方を顎で示した。
それに釣られて前方を確認すると、こちらに向かって砂煙が向かってくるのが見えた。
「敵か・・・」
懐から単眼鏡を取り出してその砂塵を確認する。
こちらと同じピックアップトラックが4台でその荷台に数人の武装した男を乗せてこちらへ向かって来ている。
「賊だな」
不揃いのライフルと装備からそれが正規軍やPMCの類ではなく、ここらに屯す山賊紛いだと判断し、手を上げて後続のピックアップトラックに指示を出す。
するとピックアップトラックから数人の武装した男たちが荷台から飛び降り、迎撃準備を整える。
スナイパーライフルを携えた兵士が二人にアサルトライフルを携えた兵士が3人、サブマシンガンを携えた兵士が3人。
こちらも武器・装備もバラバラだが彼らは山賊ではなく
彼らが配置に着くのを見つつ自分もトラックの荷台から飛び降りて適当な遮蔽物の裏に隠れる。
遮蔽物の裏に隠れ味方の状況を確認しつつ単眼鏡を覗いて敵を再度、偵察する。
向かってくる敵に変わった様子はなく、こちらに向かってくる姿が見えた。
サッと後ろに振り返り、二人の狙撃兵にハンドサインで指示を出すと二人が頷き、狙撃体勢に入った。
俺も単眼鏡を仕舞うと
5分、10分、15分と過ぎて行き、もうじき20分に差し掛かろうとした時、遠方から複数のエンジン音が聞こえ始めそして・・・
タァァァン・・・タァァァァン・・・
狙撃体勢を取っていた味方兵士が敵に向かって狙撃を始た。
一発目はピックアップトラックの機銃席に着いてる男の頭を撃ち抜き、二発目は他のピックアップトラックの運転手を撃ち抜き別のピックアップトラックを巻き添えながら横転した。
それを合図に俺たちも障害物から乗り出し、攻撃を始めた。
戦闘は呆気なく終了した。
所詮は碌な訓練を受けてない山賊紛いの連中だ。
幾度もの鉄火場を乗り越え、経験を持ち、事前に準備を整えた傭兵達が負ける事はあり得ない。
大半をやられた野盗たちは散り散りとなって撤退していった。
本来なら追撃を掛ける所だが今回受けた依頼は護衛だ、追う必要はない。
輸送先の自警団に報告を入れるだけで十分だろう。
野盗を撃退した俺たちは素早く撤収し、ピックアップトラックへの搭乗を完了し輸送先の街へと向かった。
「依頼完了だな、報酬を口座に送っておいたぞ」
「・・・確認した」
手元の携帯端末で自分の口座に今回の報酬が振り込まれてるの確認して外に出た。
空はどんよりとした曇り空だ、雨が降ることはないだろうが良い天気ではない。
さて、どうしたものかな
懐から取り出した煙草に火を点けながらそう思案する。
先ほど完了した依頼以外で仕事は引き受けていない。
緊急の用もないし、現在は完全なフリーの状態と言って良い。
「とりあえず、歩くか」
4~5分思案したが特にに思いつく事もなく、とりあえず適当に歩くかと思い煙草を携帯灰皿にねじ込んで歩き始めた。
街を適当に歩き回り、小腹が空いたと感じて馴染みの店へと向かった。
チリンチリン、とドアベルを鳴らしながら中に入る。
カウンター席と4つほどのテーブル席がある小洒落た店内だ。
昼前という事もあり店内に俺以外の客の姿はなかった。
何となく、店内を見回しているとドアベルの音に気づいたのだろう、店の奥からエプロン姿の女性が姿を現した。
「いらっしゃい」
俺の姿を確認した女性・・・このカフェの店長であり唯一の店員であるスプリングフィールドが笑みを浮かべつつそう言った。
「何にしますか?」
「サンドイッチとコーヒー」
カウンター席に着くとほぼ同時聞かれそう返すと彼女は苦笑を浮かべた。
いつも通りですね、と言いつつ彼女は手馴れた動作でサンドイッチとコーヒーを用意する。
なにかすることもなく、それを眺めてると5分ほどで注文したサンドイッチとコーヒーが目の前に出された。
「どこに行かれてたんですか?」
「ん?」
唐突に彼女がそう聞いてきたのはサンドイッチを食べ終え、食後のコーヒーを楽しんでる時だった。
チラリと彼女を見ればサンドイッチを乗せてた皿を洗い終えそれを拭きながらこちらを見ていた。
「1~2週間ほど姿を見ませんでしたがどちらに行かれてたんですか?」
そう言われてフム、と記憶の糸を手繰り寄せる。
確かに彼女が言う通り、俺が最後にここを訪れたの1~2週間ほど前でそれからは仕事で街を出ていた。
毎日という訳ではないが週に1~2回程、来店してた俺が唐突に店に顔を出さなくなったのは不思議だったのだろう。
「仕事でな、少し遠方に出てた」
「仕事、ですか・・・」
そう言う彼女の顔は先ほどまで笑みと違って曇っていた。
彼女は俺がなんの仕事に就いてるか知ってる、命懸けの仕事というのもあるので余し良い顔をしない。
「まだ続けてるんですか?」
「これしか取り柄がないもんでな」
「しかし・・・」
そう言う彼女の目線は俺の左腕に向けられている。
俺は苦笑しつつも、本来左腕がある筈の空間を掴んだ。
「・・・左腕を失ってもまだ続けるんですか」
「・・・まぁな」
スプリングフィールドが沈痛な表情を浮かべた。
俺はそれを苦笑浮かべながら見ることしか出来ない。
この問答は今まで何度もしてきた、その度に彼女は沈痛な顔をし俺が苦笑を浮かべるを繰り返してる。
彼女は左腕を失った経緯を知っている、話すつもりはなかったのだが問い詰められ最終的に俺が折れる形で彼女に話した。
もう、5年ぐらい前になるか。
その日は大豪雨と言って良いほど雨が降ってる日だった。
二の腕から先を失う程の重症を負って路肩に倒れていた俺を助けてくれたのがスプリングフィールドだった。
彼女は身元も知れない俺を助け自分のカフェに連れてくると甲斐甲斐しく看病をしてくれた。
最初は病院にと言っていたのだが俺が拒否すると訳アリと察してくれたのか、病院の代わりに一人の医者を呼んでくれた。
スプリングフィールドの知己の一人で所謂、ヤミ医者と呼ばれる職業だが腕は確かな人物だった。
それから暫くの間、全快になるまでの間は彼女には色々と世話になった。
その間、俺は彼女とその医者に色々と問い詰められた。
俺が何者か、なぜあんな重症を負ってあんなところで倒れてたのか。
最初は話すつもりはなく、頑な拒否を続けたのだが最終的に話すことになった。
それ以来、この二人とは付き合いが続いてる、俺が未だにこのカフェに訪れてるのもそれ理由の一つだ。
「はぁ・・・分かりました」
思考に耽っているとため息をつきながら彼女がそう言った。
顔を上げれば、皿を胸に抱えたスプリングフィールドが諦めたと言わんばかりの顔をしていた。
「貴方が融通利かない人だというのは分かってます」
「悪いな」
「正し、分かってると思いますが決して「無茶をするな、だろ?」・・・はい」
仕方ないと言わんばかりの顔で頷く彼女に苦笑しつつも頷く。
コーヒカップに残ったコーヒーくぉ一気に呷ってからカウンター席から立ち上がる。
席にサンドイッチとコーヒーを代金を置いてから出入口へと向かった。
「ご馳走さん、また来る」
「・・・またのお越しを」
そう言って会釈する彼女に頷き、俺はカフェを出た。
主人公
黒髪に蒼い瞳が特徴的な傭兵。
過去にとある事情で左腕を失う程の重傷を負う。
隻腕でありながら傭兵として生活をしている。
スプリングフィールド
グリフィン社のRFタイプの戦術人形。
個人的な趣味でカフェを経営してる。
主人公の命の恩人でそれ以来、いろいろと世話を焼いている。
主人公の過去を知る数少ない人物で彼の身を案じている。
その様子を周囲から旦那を心配する妻だと揶揄され、本人は否定しているが満更でもない様子をしている。