少女前線 ~隻腕の傭兵~   作:蒼月 アイン

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第三話

 瓦礫を飛び越え、時には倒れ掛かってるコンクリートの柱の下をスライディングで通り抜けながら廃墟を駆け抜けていく。

 背後からは複数の男の声と銃弾が雨霰となって俺の背中を貫かんと襲い掛かってくる。

 

「なにが相手は10人だ、10人どころかその倍はいるじゃねぇか!」

 

 柱の影に隠れ、荒くなった息を整えながらそう毒づいた。

 敵からの射撃が弱くなったのを見計らって柱から半身飛び出しして3発ほど撃ち返す。

 3発の内2発が運悪く、遮蔽物から飛び出してライフルを構えようとしてた敵兵2名を撃ち抜いた。

 

「ったく、バリーの野郎。帰ったら文句言わねぇとな・・・!」

 

 そう心に決めながらこちらに向かってグレネードを投擲しようとしていた敵兵の頭を撃ち抜く。

 投擲手がバタリとその場で倒れるとその手に握られていたグレネードがコロコロとその場に転がり落ちた。

 最悪だったのはそのグレネードは投擲寸前で安全ピンが抜かれていた状態であり、その周囲にいた敵兵はグレネードの存在に気づいて一目散に逃げたとほぼ同時にそれが起爆した。

 生憎、敵兵は誰一人巻き込まれる事はなかったがグレネードの爆発は敵を混乱させ一時的とは言え俺に対する射線の数が減ったのを確認しながら俺は愛銃をリロードした。

 

 

 

 

 何故俺がこんな銃撃戦を演じてるかはつい、数十分ほど前に遡る。

 The End of Edenで酒を飲み、廃墟群に向かった俺は攻撃を開始する前に奴らの偵察から始めた。

 確かにバリーの情報通り、廃墟群には野盗風情に堕ちた元PMCオペレーター10人の姿を確認し奇襲する形で攻撃を始めた。

 最初の攻撃で油断し切っていた敵を3人仕留めたまでは良かったのだがそこからが不味かった。

 敵は攻撃を受け、蜂の巣を突いた様に騒がしくなり始め気づけば20人近くの敵兵たちと楽しく鬼ごっこを演じる羽目になったのだ。

 逃げ回りながら数を減らし続け、なんとか半分ほどまで片付けることが出来た。

 

あと、1人か2人やったら移動だな

 

 隠れてる柱へと着弾する敵からの射撃に顔を顰めつつそう思案する。

 敵がリロードに入り、射線が減った瞬間に反撃しようと柱から顔を出そうとし・・・その場で後ろに倒れる様に伏せた。

 するとさっきまで頭が有った場所に後ろから複数の銃弾が通過し、壁に穴を作った。

 

「チッ」

 

 思わず舌打ちをしながら咄嗟に振り返って銃弾を撃ち込む。

 すると小さな呻き声を上げながらアサルトライフルを構えていた敵兵が倒れた。

 

「回り込んできやがってたか」

 

 思わず冷や汗を流しながらそう呟いた。

 正面から派手に撃ってくる奴らは囮で本命は横から回り込んでからの攻撃だったのだろう。

 野盗だったら正面からの力押ししかしてこないが元とは言えPMCオペレーターが相手だとこういう事があるから余し相手をしたくない。

 今回は偶々、足音が聞こえたから瞬間的に反応することが出来たが相手が油断せず、足音を立ててなかったら倒れていたのは俺の方だろう。

 そう思いながら立ち上がって柱の裏に隠れながら敵の様子を窺う、どうやら敵の方にも挟撃が失敗したのが伝わったらしく動揺してるのが見て取れた。

 

今の内に移動するか?

 

 回り込んでる敵が一人だけとは限らない。

 もしかしたら他にも回り込んでる敵がいてこちらの隙を伺ってるかもしれない。

 だったら敵が動揺し、正面からの制圧射撃が緩慢になってる内に移動して態勢を立て直すのも手だろう。

 そう思い移動しようとしたところで、俺は先ほど倒した敵兵へと目がついた。

 

「あれは・・・」

 

 警戒しつつ傍に近づき、仰向けに倒れてる敵兵を確認する。

 敵兵はピクリとも動かない、目は虚空を見つめていた瞳孔には光がない、完全に事切れてる。

 それを確認して俺は愛銃を胸のホルスターに仕舞い、目当ての物・・・敵兵の腰に取り憑けれられている細長い缶状の物を取った。

 

「スモークグレネードか」

 

 一般的に使われるただのスモークグレネードだった。

 一通り確認したが別に凹んでたり壊れたりしてはいない、安全ピンを抜いて投げれば通常通り煙幕を展開出来る状態だ。

 丁度良い、有難く使わせて貰う事にしよう。

 すぐさま作戦を考えて行動を開始する。

 出来うる限り静かにそして素早く、移動する。

 移動先は未だに動揺を隠せずに混乱している敵兵たちのすぐ傍だ。

 奴らは壁や崩れた柱の裏に隠れた状況でお互いが怒鳴り合う様に話し合っていてこちらに気づく素振りを見せない。

 軍人時代に会得した潜入術のお陰もあるのだろう、結構あっさりと敵のすぐ近くまで近づくことが出来た。

 柱の影から細心の注意を払いつつ敵の姿を確認する。

 

4・・・5・・・6・・・8人か・・・

 

 ほぼ全員がそこに集まってると言って良い。

 怒鳴り合ってる敵兵は装備から見て隊長格の様だ。

 二人が怒鳴り合い、周囲の兵もそれに注意が取られて周囲の警戒も散漫になってる・・・チャンスだな。

 スモークグレネードを持ち、安全ピンを口で引き抜く、安全レバーが外れない様にしっかりホールドしながら敵兵に向けて・・・投げる。

 

「ん・・・なんだ?」

「グ・・・グレネード!!」

 

 落下音に気づいた敵兵が慌てて叫んだ。

 怒鳴り合っていた隊長格もそれに気づいて慌てて逃げようとするが遅い。

 空中で安全レバーが外れたスモークグレネードは内部の煙幕を噴き出しながら転がり、敵兵を中心に周辺一帯を煙幕を充満させた。

 

「ゲホっ・・・ゲホッ・・・くそっ、スモークだ!!」

「来るぞ!周囲に気をつけろ!」

 

 腐っても元PMC所属というべきか、煙幕に巻かれても奴らは想定してた程混乱せずに周囲を警戒している。

 だが、それでも敵同士の視界を遮断し、相互援護が出来ない状況になっただけでも十分だ。

 愛銃をホスルターから抜き取り、敵兵に向かって駆けだす。

 最初のターゲットは敵兵の中でも外周にいたお陰で煙幕の中でも人影が良く見える敵兵からだ。

 愛銃を構え、トリガーを引き絞って射撃・・・発砲音とやや間を置いて敵兵が崩れ落ちた。

 

まずは1人・・・

 

 そのまま別の敵兵に狙いを定める。

 2人・・・3人・・・4人・・・

 装填されていた弾が全て撃ち切った。

 愛銃をホルスターに戻し、腰のポーチからスピードローダーを取り出し、それを()()()()()()

 クルクルと周りながら落下するスピードローダーを確認しながら愛銃を素早く引き抜いてシリンダー内に残っている空薬莢を素早く排莢。

 そのまま落下してきたスピードローダーをシリンダーでキャッチする。

 普通のスピードローダーならそこで薬莢のロックを手動で外さなければならないがコイツは特注品で薬莢側の中心に小さな突起がありそれがシリンダーにぶつかって押される事で薬莢のロックが外れる仕組みになっている。

 アクロバットさながらのリロードだが隻腕の俺だとこうしないと手早くリロード出来ないのだ。

 余談だがこのリロード方法を見せた時、バリーや顔見知りの傭兵たちからお前、バカだろ?って言われたのは記憶に新しい事だ。

 

それは兎も角。

 

 装填されたシリンダーを戻し、戦闘を再開する。

 既に煙幕は霧散しかかっていて辺りの視界が晴れ始めてる。

 完全に視界が晴れる前に勝負をつけよう。

 敵の声、足音、気配、人影を頼りに敵の位置を特定し次々と屠っていく。

 

5人・・・6人・・・7人

 

 撃ち抜き倒れる敵兵を数え続ける。

 やがて煙幕が晴れ、視界がクリアになった時に残っていたのは2人の人影だ。

 1人は当然ながら俺・・・そしてもう1人は敵兵の隊長格だと思われる奴だ。

 

「お前は・・・一体・・・」

 

 頭に銃口を突き付けられた敵兵が恐怖に引き攣った顔で掠れる様な声で呟いた。

 この男からしらもはや悪夢としか思えないだろう。

 20人近くいた仲間がたった1人の傭兵に全滅させられる。

 これが悪夢じゃなかったらそれは不出来な演出だ。

 

jackpot!

 

 ただ一言、そう敵兵に告げながらトリガーを引いた。

 眉間を撃ち抜かれた敵兵は脳漿と血液を撒き散らしながら仰向けに倒れた。

 

任務完了だな・・・

 

 愛銃をクルクルと回しながらホルスターに仕舞おうとしたところで・・・

 

ガラッ・・・

 

「うん?」

 

 後ろから何かを蹴る音に気づいた。

 振り返って確認するとそこにはつい先ほど全滅させた敵兵たちと同じ装備をした兵士の姿があった。

 

9人目か・・・

 

 合流が遅れたか、偶々別の場所にいたお陰で運よく生き延びたか。

 そのどちらかによって無事だった敵兵だ。

 その敵兵と目が合った、その目に浮かぶのは動揺そして恐怖・・・

 

「ば・・・化け物!!」

 

 そう言って男は一目散に逃げ出した。

 俺はそれを見送りつつ、愛銃のシリンダーから空薬莢を排莢する。

 一度、愛銃をホルスターに戻してからポーチから一発の弾丸を取り出し、指で空中に跳ねる。

 弾丸が落ち来る前に愛銃をホルスターから取り出してシリンダーでキャッチ、装填完了。

 シリンダーを戻した後に思むろに銃を逃げていく敵兵に向けて構える。

 逃げていく敵兵に狙いをつけるもそれに気づいた敵兵が障害物の裏に隠れた。

 

これでは直接狙う事が出来ないな・・・

 

 そう思いつつ銃口を敵兵から右斜め上に構え、発砲。

 発射された弾丸は直進していき、剥き出しになってる鉄骨に命中して・・・跳弾。

 そしてその跳弾した弾丸は、障害物の裏でこちらの様子を窺っていた敵兵の胸を撃ち抜いた。

 胸を撃ち抜かれた敵兵はまるで信じられない物を見たと言わんばかりの顔をしながら倒れ、そのまま事切れた。

 今の射撃方法も隻腕というハンデを埋める為に俺が編み出した戦術の一つだ。

 名前を付けるとしたらさながら「跳弾射撃(リフレクトショット)」と言ったところか。

 こいつを習得し自在に出来るのに3年ほど掛かったぐらいだ。

 だがこいつのお陰で今まで何度も命を助けられたことがあるのも事実だ。

 

「さて、とっとと帰ってバリーに文句を報酬を貰うとするか」

 

 今度こそ愛銃をクルクルと回しながらホルスターに仕舞い、俺は街への帰路へと着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

パチッパチッパチッパチッ・・・

 

 静まり返った廃墟に拍手が響き渡る。

 廃墟の屋上、一歩踏み出せばそのまま地面に叩きつけられ地面一体に赤い花と肉塊を撒き散らすであろうギリギリの場所。

 拍手をするのは後頭部で黒髪を二つの団子に纏めたメイド服姿の女性だ。

 女性は拍手を続けるその顔には満足そうな笑みを浮かべながら・・・

 その視線の先には1人の人影が見える、マントで体全体をすっぽり包み込みフードを深く被っていて顔を知る事は出来ない。

 だが、彼女にとってそんな事は問題にならない、アレが誰だか知っている、『彼』が何者かも知っている、その実力も・・・その過去も・・・

 やがて満足したのか、彼女は拍手するのを止める。

 

「流石ですね、やはりあの程度では傷一つ負うことはありませんか・・・」

 

 先ほどまで『彼』が戦っているのを見いていた、一方的な蹂躙劇を・・・

 故に歓喜はしない、落胆もしない、あの結果は分かり切っていた、ただの確認に過ぎない。

 今回、彼をこの場におびき寄せたのは彼女の策略だった。

 無論だが依頼を彼に出したのは間違いなく、自警団の団長であるマディガン・ウォーレンだ。

 彼女がやったのは今さっき、彼の手によって全滅させられたPMCの方だ。

 裏から手を回し、PMCの業績を悪化させ経営難に陥れ、倒産に追いやった。

 そしてそのPMC所属だったオペレーター達に適当な情報を流してこの場所に誘い込み、棲み付かせる。

 それだけで後は自警団がその状況を重大視しあの街でもトップクラスの実力を誇る彼の元へと依頼が行く。

 その結果行われたのがあの一連の出来事だ。

 まさか、誘い込んだのとは別の元同じPMC所属だった野盗崩れ達が合流したのは計算外だったが・・・

 

「やはり、彼にお願いしますか・・・」

 

 女性はほくそ笑みながらそう決定する。

 実力も成功度も満足が出来るのはやはり彼だけの様だ。

 

「クスクス、期待してますよ?Mr?Mrヴァレンスキー?」

 

 立ち去っていく『彼』の後ろ姿にそう語りかけながら、女性が右手で空中に十字を切る。

 するとまるでそこに何者もいなかったの様に彼女は消え失せた。

 冷たい夜風が・・・廃墟の屋上を抜けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「バリーの奴め・・・」

 

 夜の帳がとっくに降りて、既に深夜を回った道路をアパートに向かって歩き続ける。

 The End of Edenで依頼完了の報告をしその報酬を貰い、バリーに文句を言った帰りだ。

 

「なにがそうか・・・だよ」

 

 ぶつぶつ続けるのはバリーへの文句だった。

 依頼完了の報告を終えて報酬を受け取った後、敵兵が情報の倍は居たことを伝えるとバリーは・・・

 

「そうか・・・」

 

 と、一言だけ呟いた。

 それにイラッとして更に文句を続けるとバリーは今回の情報と現場の違いについて伝えて来た。

 曰く、俺が出た後に追加の情報として彼の元に別の一派が合流したとの事らしい。

 別の一派と言っても同じPMC所属だった連中でどうやら今回の標的だった連中が呼びつけたとのこと。

 その言葉に思わず顔を引き攣らせていた俺にバリーはこう続けた。

 

「まぁ、お前の実力は知っている。10人増えようがお前ならなんなく全滅させて帰ってくると思っていた」

 

 当然と言わんばかりの顔でそう告げるバリーに毒気を抜かれ、俺はバリーにもう2度とこんな事ないようにと頼んで酒場を出たという訳だ。

 

「はぁ・・・まぁいいや、今日はとっとと寝よう」

 

 そう思いながら部屋に入り、リビングへ入ろうとドアに手を掛けた所でピタリと止まった。

 

誰かいる・・・

 

 リビングに何者かの気配を感じ取った。

 電気は消えてる、玄関の鍵も閉まっていたし窓から侵入すればすぐさま自分の携帯端末に警報が届く筈だがそれもない。

 状況的に見て誰もいない筈だ・・・だが俺の直感が・・・今まで戦場で培われてきた第6感とも言える存在が俺に警鐘を鳴らしている。

 リビングで誰かが俺を待ち伏せているということに・・・

 ホルスターから愛銃を引き抜き、シリンダー内部を確認ん・・・全弾装填済み。

 ドアノブをゆっくり静かに捻り、何時でも開ける様にする。

 深呼吸をし、精神を研ぎ澄ませる・・・トリガーに指を掛けて何時でも撃てるようにする。

 人影を見つけ、不審な動きを見せたらその頭に装填された弾丸を全てぶち込む・・・問題ない、部屋の全ての壁は防音性でガラスも防音・防弾ガラスだ。

 

3・・・2・・・1!!

 

 意を決し、ドアを開けてリビングに突入。

 リビングのど真ん中で佇む人影を見つけ、その頭部へと銃口を向ける。

 

「廃墟から街まで凡そ1時間、そこから酒場まで1時間、そして酒場から家まで30分・・・合計で2時間30分きっかりの帰宅」

 

 油断なく銃口を向ける俺を前にしてこちらに背を向ける人影はそう言いながらクルリとこちらに向き直った。

 こちらに向き、唯一の光源である月の光に照らされて見えた顔に俺は思わず怪訝な表情を浮かべた。

 なぜ、お前がここにいる?

 

 そう思う俺を他所にそのこちらに振り返った人影は()()()()の両端を持ち、軽く持ち上げながら挨拶してきた。

 

「お久しぶりですね、Mrヴァレンスキー?」

「・・・・・・エージェント?」

 

 確認する様に彼女の名前を呼ぶとメイド服の女性・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()である代理人(エージェント)は妖艶な笑みを浮かべた。

 

「はい、今回は貴方に・・・頼みたい事があって参りました」

 

 ・・・どうやら、まだまだ一波乱ありそうだ。

 そう思いつつ、俺は構えていた愛銃を下ろした。




ヴァレンスキー


主人公。
元軍人であり現在はフリーの傭兵で超人染みた身体能力と戦闘能力を兼ね備えた化け物。
跳弾使いのリボルバーが愛銃のロシア人のハーフ・・・某山猫を思わせる設定である。
因みに戦闘技術とかの元ネタはMGSは元よりDMCやBlackCatだったり・・・


エージェント


みんな、ご存じの鉄血工造産のハイエンドモデル。
ヴァレンスキーとは以前からお互い面識があり、彼の戦闘能力も左腕を失った原因の黒幕も知っている、今回はとあるお願い(と言う名の脅迫)の為に彼の元に現れた。(家の中にはご自慢のワープ術で侵入)
よそ様のとこでは鉄血抜けて喫茶店経営したり人間の中に紛れて生活してたり、主人公のヒロインやってたりと色々やってるが・・・さて、うちはどうしようか・・・
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