佐渡で狸の頭領をしていた彼女は部下のことを思い、みなを引連れて本国へ渡り、誰も手をつけていない妖の森を目指す。その道中で出会い、刃を混じえた狐の頭領から頼まれることとは....
あえてここで切ってます。
まぁ、いきなり本題に入ってもつまらなかろう。少しばかり成り行きくらいは付けさせておくれ。なぁに。ほんの少しだけじゃ。それに、ことの他大切なことだったりするぞ?聞いて損は無いんじゃないかえ?瞳の色がキラキラとしておるのぉ。なるべく手短に話すから落ち着けぃ。
さて...あれはどれくらい前の事じゃったかの。日ノ本は確か、ちょうど江戸とかいう東の街に将軍様がまだおった頃じゃったか。そんときはわしは佐渡で今と同じく狸どもの頭領をやっておった。
わしが頭領になるよりも随分前から人間はあんまり化かしても驚かなくなってのぉ。化かしても報復に狩られてしもうて、仲間たちも減ってきておった。昔からの馴染みの訃報を耳にするのはあまり心地よいものじゃない。部下にも聞かせとうないし、自分の身も惜しかった。じゃからわしは新しい住処を探しておった。まぁ今ほどではないじゃろうが、情報の伝達も早くなっておったし、狐やら兎やらが人を化かしておったから、化け狸風情がどこに住処を移してもあまり結果は変わらんとわかっていたがの。今よりはマシと思うてたわけじゃ。
その年の夏頃じゃったの。使いとして送っていた仲間から人間の立ち入らない広い森があると聞いたのは。
ん?そうじゃそうじゃ。幻想郷─この場所はまさにここなんじゃよ。元々は名前なんてない、ただの妖の森だったようじゃが。何?妖のいる時点で「ただの」とは言えん?わしに言われてもなぁ。とにかく、阿求の先代どもが名称を知らんのも無理はない。名前なきものに名前はつけられんからの。
使いを送って探っていても、人間はおろかそこを根城にする妖怪どももおらんようでの、わしらはそこを新たな住処とすることを決めたんじゃ。
何匹かは反対しておったが、いつまでも佐渡にこだわって狩られるよりかはよかろうて、すぐに頷いてくれたわ。
わしも幼い頃からずっと佐渡におったからの。離れるのはなかなかに心苦しかった。金もその頃はまだ多少は取れたからの、人間の村で酒を買うことも容易じゃった。
冬の頃、雪解けもまだ始まらない頃じゃったなあ。人間が眠りについた丑三つ時にわしらは佐渡を発った。あれから何百年と経った今でも、本土へ渡るために入った海の凍えるような寒さは今でも思い出すわい。
ん?あぁ。幻想郷には海がなかったな。内陸の土地だから無理もない。まぁなんだ、とてつもなく大きい塩味のする湖ってことで今は理解しとくれ。
そして夜が明けるすんでのところでやっとどこかの国の浜辺に着いた。百数十いた仲間らも、海の寒さで凍えてしもうたり、溺れたりして八十を切っておったな。かく言うわしもあまりの寒さで人の姿を保つことが出来んかったな。日が昇る前だったゆえ、人の姿が見えなかったことは幸いじゃったが、如何せん寒いんじゃ。とりあえず浜辺の先の洞穴で休みながら周辺の様子を観察しておった。
日も昇って、、酉の刻の頃にやっと人の姿に化けられたからわしも自ら洞の外に出て調査をしておった。歩いていて目につくのは茅葺き屋根の家が海岸に沿うように並んでおって、その様は佐渡とあまり変わらん印象じゃったな。確か...村の名前は玉紫(ぎょくし)の村と言ったかのぉ...何せ村人の訛りが強くて、確実には聞き取れなかったんじゃ。いろいろと話を聞いて回ったが、村人の話はみなまちまちでな。誰が正しいことを言っておるのか全く分からんかった。
「甲斐国へはどっちえ向かえばよかろうか?」と聞けば、青に染めた麻の服を着た老人は海を背に左にいけと言うし、漁から戻ってきたであろう筋骨隆々の若いのは右にいけと言う。幼子は海を背に真っ直ぐと言うしものだからどこに何があるか検討がつかんかった。城の位置を聞いた時もバラバラの方向を指さされたが、とても遠いというのはみな口を揃えておったな。
本国の話は佐渡にいた時からたまに走らせていた部下から聞いておったから、それなりに楽しみにしていたが、その時は肩透かしをくらったの。佐渡は小さい故海岸が目と鼻の先じゃし、その町も海岸がある故当然といえば当然じゃがの。
城の一つ位は目に収めて目的地に向かいたかったが、そこからまた遠いと村の者から聞いてしまってはもう叶わんものと思っておった。結果的に途中で見ることになるんだがまぁそれはあとの話じゃ。
まぁそんな漁師町は三晩ほどで直ぐに離れることにしたんじゃ。せっかくバレないように手に入れた食料じゃたらず、部下のもんが人間を化かそうとした時変化の姿を見られてしもうたようでの、もう一晩休みたいのが本音じゃったが、皆新たな住処を心待ちにしてての、出発の令を出したら反対をされなかったわ。
...そういえば、出発の直前に戻ってきた部下が、村人か護っている蔵のようなものがあると言っておったな。聞いてもはぐらかされてしもうたようじゃし、忍び込もうにも日夜その蔵を囲うように守人がいたしの。今となっては何が入っているかはわからんが、あのような辺鄙な場所じゃ、大方米や金須じゃろう。たまにある話じゃと、伝説として語られるような未知の生き物や刀剣だったりもするがの。
洞穴を出る時は月がわしらを照らして影ができるくらい明るくて、海沿いは陸からの風が寒くてのぉ、街道の脇をなるべく見つからないように震えながら走っていったんじゃが、目的地へ着くのにはどうやっても、大きな山脈を超えねばならんかったんじゃ。しかも、あとから聞くところによるとその山脈は日ノ本随一の険しい山脈だったらしくての。まるまる一晩かけても山の中腹にも及ばず、それどころか猛吹雪やら、天狗の襲撃やらで追い返されたり狩られてしもうたりで散々じゃったの。特に雪山の狐どもは本当に厄介じゃった。どうやらわしらと同じく人を化かして生きてるもの達で、頭領はどうやら九尾の狐の力の一部を引き継いでいたようじゃ。わしも少し本気を出してやり合ったが、少し相手を見限る悪い癖がでての。危うくしっぽをちぎられるところじゃった。今思い出しても、あれが生きてるうちで1番の修羅場じゃったな。その狐どもも降して山を何とか超えた訳だが、例の森を見つけるのに随分苦労したわい。何せ森じゃからの、減ってしもうた仲間を更に散らして探すのも心苦しゅうて、みなでまとまって少しずつ開拓しながら探したんじゃ。
そしたらの、山越えの時に一戦交えた狐どもの頭領が直接こちらにやってきおって、こんなことを申し出たんじゃ...
まぁあんまり面白くないですね。外伝で戦闘所や部下との会話はかけたらいいな