呪技術部門というのは、呪術の解析、呪霊の研究をし、呪具などの開発を行っている部署である。部署、と言っても活動は個々人で行われており、皆それぞれ好きなようにしている。
九十九由基も、かつては所属していたが「アイツの部下って肩書きになるのが嫌だ」と颯爽と抜けていった。
そう、この部署の統括は、何を隠そう仁木史明その人なのである。
仁木史明。『無邪気で健やかな害悪』『自称二代目加茂憲倫』『ハッピークソ外道』『仁木』。彼を語る肩書きの悪意から分かるように、彼は当然のごとく嫌われている。それはもう、誰かが今すぐにでも彼を殺してもおかしくないくらいに。
少し顔を出しただけで「燃やせ」と呟く人間もいる。
だが、彼の術式上、殺すことは困難である。
なぜなら、彼の『転禍術式』は、ありとあらゆる彼への害を他人に押し付けることが出来るからだ。押し付ける対象を選べない代わりに、その効果範囲は世界中に及ぶという。それは地球の裏側の誰かかもしれないし、隣にいる愛しい人かもしれない。
つまり、彼を傷付ければ、世界のどこかで彼の身代わりに誰かが傷付き。
彼を殺せば、世界のどこかで彼の身代わりに誰かが死ぬのである。
全くもって害悪極まりない。
……不死身という訳では無い。殺そうと思えば、彼は殺せる。やり方は簡単だ。彼の呪力が尽きるまで殺せばいい。
その度の犠牲を数えなければ、彼は殺せるのだ。
それ故に、彼のことを殺したいと思っている筆頭の五条ですらも、手を出せずにいた。彼一人を殺すために、無辜の民を犠牲にする訳にはいかない。
なので今日も仁木は、目玉焼きを作るが如くの気軽さで、のうのうと地獄を作っている。
■■■
一人の少年がいた。少年は、禪院家のものである。相伝術式を継げなかったどころか、術式すら持っておらず、虐げられて暮らしてきた。少年には2つ年の離れた妹がいて、彼女は相伝術式を持っていた。しかし、女だということで将来的に孕袋にされるのが目に見えている。
少年は、妹を救いたかった。願わくば、この家を出て幸せになって欲しかった。
ある日、給仕をしていた彼は、とある話を耳にする。
なんでも、“仁木史明”という男が『術式の抽出』というものに成功したらしい。そうすれば、現在持て余してしまっている術式を、きちんと扱える人物に託せるそうだ。
本家の爺様方のその会話を聞いて、真っ先に思ったのが自分の妹の事だった。彼女の術式を抽出してもらい、譲渡できれば……
少年は、側仕えとして身の回りの世話をしていた現当主の息子、禪院直哉にその事を話してみた。
「へぇ。そらええわ。女が持っててもしゃあないしな。ええよ、進言しておいたる。ついでにこの家を出す手伝いもしてやろな」
「ありがとうございます!! 直哉様!!」
「うんうん。感謝せえよ。君はいっつも頑張っとるから、ご褒美や。でも、多分この家を出たら、そのまま妹ちゃんには会えんよ。それでもええか?」
「はい。それが妹の幸せに繋がるなら」
そうして、直哉の口聞きもあって、妹は家を出た。しかと抱き合って、別れを告げた。それから、2ヶ月後、直哉から箱のような物を手渡された。
「これが、妹ちゃんの“術式”を閉じ込めたカートリッジや」
黒い箱である。中から時折、低い唸るようなモーター音が聞こえる。
「専用のハードを身に付けて、これを装備することで使えるようになる。お前が使いや」
「良いんですか……? だって、これは相伝術式で……」
「ええんや。大切な妹ちゃんの術式なんやから、お前が使うのが1番ええ。仁木さんもそう言ってたしな。大切にするんやで」
「は、はい! ありがとうございます!!」
「それと、来年から高専に通う許可が降りたから、精進せぇや」
「ほ、本当ですか!!! 本当にありがとうございます!!! この御恩は必ず……」
「ええってええって。これからは、『禪院家の呪術師』として、気張りや」
少年は、箱を大切に抱えて、何度も直哉に頭を下げた。直哉は、ニコニコと笑って彼に温かい言葉を掛け続けた。
少年が、パタパタと直哉の部屋から出ていく。
「……はは。なんも知らんと、幸せやな」
その呟きは、誰にも聞かれずに畳に転がった。
■■■
あれから半月経った。だが、妹から便りは一通も届いていない。寂しく思うが、禪院家を出た身として軽々しく手紙を送るなんて事は出来ないのかもしれない。便りがないのは元気な印だと言うとこにして、少年は呪術高専京都校に進学した。
本当は、仁木が研究室を構えているという東京校に行きたかったのだが、家の方針なので、こればかりは仕方がない。
入学前に、術式の使い方も頑張って覚えた。術式というのは、本能で理解するものらしいが、これは借り物の術式である。使いこなすのに苦労したが、なんとか3級の上位の呪霊程度なら倒せるようになった。
カートリッジは、定期的にメンテナンスが必要らしく、東京校に送られる。その間は任務には行けないが、仕方ない。大切な妹の術式なのだ。何かあっては困る。だけど、京都から東京に毎回運んでもらうのは気が引けた。なので、自分で東京校まで運ぶことにした。
「初めまして。五条先生」
「……ああ、君が例の」
東京校の教師である、五条悟に挨拶をする。アイマスクのせいで表情は分からないが、何やら気だるげな雰囲気を感じた。
「…………なるほどね」
重々しく呟く五条。少年は不思議に思いつつ、彼について行く。仁木の研究室に案内してもらうためだ。
「君、そのカートリッジがどうやってできてるのかって知ってる?」
道中、五条がそう問うた。答えは否である。作り方は知らない。
「中身が何か知ってる?」
否である。妹の術式ということだけは確かだ。
「仁木がどんなやつか知ってる?」
「それは知ってます! とても研究熱心で、お優しい方だと聞いています!」
「……お優しい、ねぇ……ふぅん、そっか」
五条は、しばらく黙り込んだ。そして、足を止めて、少年に向き直る。わざわざアイマスクをずり下げて、その煌めく瞳で彼を見下ろした。
「彼に会う前に、教えてあげる。
………アイツは、害悪だ。それを忘れるな」
「は? 何を……」
「アイツは君が思うようなやつじゃない。悪いことは言わないから、そのカートリッジを使うのも止めた方がいい。ここでソレを僕に渡して、早く帰りな」
「仁木さんを悪く言わないでください!!」
「君の為に言ってるんだ」
「意味わからないです!! やっぱり、五条家の人間とは話が合わないみたいですね!! 道案内はもういいです!」
蒼い目が細められる。少年は、その剣呑さに思わずたじろいだ。長い沈黙。いや、時間的には1分も経っていなかったのかもしれないが、少年には永久ように感じられた。
背に冷たいものが伝う。
「あれ、どうしたの? こんな所に立ち止まって」
その沈黙を破ったのは、呑気そうな声だった。
声のした方向を見ると、そこにはボサボサな髪で両目を覆った白衣の男が立っていた。ゴム長靴で間抜けな足音を立てながら2人に近寄っていく。
「あ、ひょっとして君が禪院の」
「は、はい……そうですが」
「いやぁ、あの子に似てるねぇ。兄妹って感じ」
「あなたは……?」
「ぼくァ、仁木史明。そのカートリッジを作った凄い人だよ☆」
少年は、目を見開いた。少しイメージとは違ったけど、憧れの人が目の前にいるのだ。先程まで感じていた寒気はなりを潜め、頬を蒸気させて握手を求める。仁木は朗らかに笑ってそれに応えた。
「あなたのおかげで、妹も僕も幸せになれました! ありがとうございました!!! 本当は、もっと早くお礼を言いに来たかったのですが……」
「わぁ! そうなのかい! 良い子だねぇ」
「……まあ、妹も、と言いましたが、別れた後は一回も会っていないし、手紙もやり取りしていないんですが……」
「? やだなぁ。ずっと一緒にいるじゃないか」
「え?」
「仁木!」
五条が突然声を荒らげる。仁木はキョトンとしたあとに、「ああ」と手を叩いた。
「立ち話もアレだね。ぼくの部屋においでよ。ケーキ焼いたんだ。食べていきなよ」
「はい!」
「五条くんも来るかい? この後、もう一人遊びに来るんだけど」
「…………遠慮するよ」
「仁木さん、行きましょう! さようなら、五条先生」
「…………」
少年は、五条に冷たい目線を向けた後に、仁木と共に研究室に向かっていった。ゴウン、ゴウンと、張り巡らされた配管から重々しい音が聞こえる。地下に潜れば潜るほど、その音は大きくなっていく。少年は、何故かそれが警告音のように思えた。何故そんなふうに思ったのかは分からない。
「ここだよ」
『Nigi's Laboratory』と書かれたドアプレート(可愛らしい花やリボンで装飾されている)が掛かった扉を開く。
「散らばってるけど、気にしないでねぇ」
少年は、思わず目を見開いた。
怪しげなホルマリン漬けや培養ポット、よく分からない機械で埋め尽くされている。その中央には場違いなティーセットが置かれた可愛らしい机。
「……えっと、」
「座って座って! 今お茶入れるから」
「は、はい……」
ホルマリン漬けは、呪霊だろうか? だけど、死んだ呪霊は消えてしまうので、こうやって死体が遺ることは無い筈だ。
不思議に思いながら、周りをマジマジと眺める。暫くすると、仁木がティーポットを持って戻ってきた。それをカップに注ぐ。レモンティーの良い香りが漂った。
「このケーキ、自信作なんだ。食べてみて」
「美味しそう……いただきます」
恐る恐る口に運ぶ。ふんわりとした食感のスポンジ生地が、優しく舌を撫でた。後に引かない甘さが、絶妙な加減でフルーツと絡み合っている。こんなに美味しいものを、少年は初めて食べた。
「美味しいです!!!」
「良かった。君の妹ちゃんも、そのケーキを美味しいって言ってくれたよ」
「妹も……?」
「うん。あの子は良い子だった」
「……そうですか」
「うん」
「…………」
「…………」
仁木もお茶を啜る。少しだけ沈黙が流れた。少年は、話題を探す。そして、自分が持っていたカートリッジが目に入った。
「そう言えば、この素晴らしいカートリッジってどうやって作ってるんですか?」
そう口に出して、「あ、こういうのって企業秘密? とかなのかな」と不安を覚えた。だが、仁木はパァっと表情を綻ばせる。どうやら、聞いても大丈夫らしい。
「それはね! 素材の子の心臓と一部の血管を、その子の呪力で作った結界で覆って、ぼくが作ったその箱に丁寧に詰めるんだよ!!」
「……………………………は?」
素材の子。脊椎。心臓。
「この箱はね、反転術式を中身に掛け続けることが出来てね。“いわいちゃん”の本体を保護するのにも使っている技術で……」
“いわいちゃん”は、知っている。前に任務で出会ったバーチャル呪術師だ。可愛らしい3Dグラフィックの女の子。いや、違う。いま気に掛けるのはそこじゃない。
今、この男はなんと言った?
「ま、待ってください。それって、生きて……」
「生きてるよ、勿論!! じゃないと術式は発動出来ないじゃないか!! 現に、君の妹ちゃんは、そこに生きているだろう?」
「…………………………は、え? なにいって……」
「? どうしたんだい。そんな不思議そうな顔して。君がその子でカートリッジを作って欲しいって言ったんでしょ?」
箱を見る。
いもうと?
妹?
脳が、情報の受け取りを拒否している。
「心臓ってね、記憶機関があるんだよ。ワイドショーとかで見たことない? 移植手術を受けたら、ドナーの好みに似てしまった、とか」
「脳でも良かったんだけど、脆い上に大きいじゃないか。だから、心臓にしてみたんだ。持ち運びに便利だろ?」
「結界内で血液を循環させて、箱の機能で生かし続ける。まあ、戦闘に持っていくものだから、どうしても定期的なメンテナンスは必要になるけど、それは仕方ないね」
「ああ、安心して。余った方の肉も、きちんと有効活用してあげたから」
少年は、ぐるぐると思考をひたすらに回した。
何を言っているんだ。
一体。
妹は、外で、幸せに…………
「禪院家の外には出てるだろ? 君と一緒に」
ぷつん。少年の何かが、そこで途切れた。
「……さかまき、さかまけ、ゆらゆらと」
カートリッジを装着して、術式を発動する。飲みかけのレモンティーが、ごぽごぽと泡立ったかと思えば、水量が一気に増え、龍の形になる。
水を触媒とした式神である。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!!
僕は信じない!!!! 信じないぞ!!!!!
本当の妹はどこに行ったんだ!! この嘘つきめ!!!!!!!」
「わぁ! 使いこなしてるねぇ! やっぱり、兄妹や近しい人だと、上手く使えるのかな?」
水龍が咆哮する。そして、びゅ、と勢いよく水の槍を伸ばしてきた。
その槍が、仁木の心臓を的確に貫く。貫通したソレは、後ろにあったホルマリン漬けの容器を割った。大きな音を立てて、ヒビが走っていく。しまいにはバリン、と耳障りな音が響いて中身が溢れた。
ホルマリンの匂いが辺りに満ちる。
「はぁ、……はぁ……」
「凄いね!! 実に素晴らしいよ!!」
「……は? なんで、」
「ごめんね。ぼくの“転禍術式”は、ありとあらゆる害を他人に代わってもらえるんだ。今頃、七十億分の一の確率を引き当てたハッピーな誰かが、世界のどこかにいるんだろうね 」
仁木は、濡れてしまった白衣をハンカチで拭う。血の一滴も流れていない。ただ、服に小さな穴が空いているだけである。
「うーん。後でアップリケでも付けてもらおうかなぁ」
「…………」
「君、酷いことするなぁ。これも君の妹ちゃんなのに」
彼はそう言って、地面に落ちている呪霊の死骸を指した。
……………………………は?
「ね? 余った方の肉も、有効活用してあげたんだよ。呪物を受肉させたらどうなるのかが知りたくてさ。ちゃんと役に立ってくれたよ」
少年は、横たわった死骸を見た。歪んだ目元に、3つに連なった特徴的なホクロがある。それは、奇しくも妹と同じものだった。
「殺してやる」
「えー? それは辞めた方がいいと思うけどなぁ。ぼくだって、関係ない人を消費したくないんだ。勿体ないからね」
「知らない。知ったことか」
きっと、直哉もこのことを知っていた。知っていて、このカートリッジを少年に手渡した。
ならば、ならば。
「禪院も、赤の他人も、どうでもいい」
「実に短絡的だね」
水の槍を放つ。ノーダメージ。水の槍を放つ。ノーダメージ。水の槍を放つ。ノーダメージ。
水の刃で首を飛ばす。ノーダメージ。水の刃で首を飛ばす。ノーダメージ。水の刃で首を飛ばす。ノーダメージ。
水の。水の。水の。
ノーダメージ。ノーダメージ。ノーダメージ。
「……ああ、わかった。こうすればいいんだ」
水龍が、仁木の顔にまとわりつく。仁木は、ごぽっと空気の束を吐いた。
「死ぬまで殺す。1番苦しい方法で」
■■■
それから、何時間が経過しただろうか。痙攣していた仁木の身体から、力が抜けた。もう、彼の呪力は感じられない。
終わった。終わったのだ。
これで何人死んだのかは分からないが、仁木を殺すことが出来た。
「はは、あははは、あはははははは!!!!
やった、やったよ!!! 嘘つきをぶっ殺してやった!!!!」
少年は、カートリッジを取り外して、床においた。そして、水龍を使ってこじ開ける。中には、精密そうな機械と、黒い膜で包まれた心臓があった。小さな心臓である。トクトクと鼓動している。
「…………嗚呼、嗚呼……いま、楽にしてやるからな」
結界に手を触れる。焼けるような痛みがあったが、気に求めずに手を押し込んだ。ずるり、と中に指が入る。そのまま一気に差し入れると、小さな心臓を掴んだ。そのまま力を込める。
呪力操作で強化した握力は、簡単に心臓を握りつぶした。覆っていた結界が震えて、宙に溶ける。
『おにぃ、ちゃん』
不意に、声が聞こえた。確かに、妹の声だった。
脱力して、蹲る。
さて、これからどうしたものか。
仁木の術式のせいで、多くの人が死んだかもしれない。呪術規定に基づけば、少年はきっと死刑である。でも、全てがどうでもよかった。
「ハワイとか、行ってみたかったんだよな……」
戯言を口に出す。
乾いた笑みを貼り付けながら、ゆっくりと立ち上がった。
「【仁木さん……?】」
声がして、見てみると、ぬいぐるみを抱えた女が立っていた。ミルクティー色の髪が可愛らしい。
女は、覚束無い足取りで部屋の中に入ってきた。そして、だらんと横たわった仁木に近付いていく。
「【うそ、だよね……?】」
彼女が抱き抱えたぬいぐるみが、声を出している。そういう呪具らしい。
「【起きてよ……ねぇ、おねがい……】」
少年は、ぼうっとその光景を眺めていた。
女が、仁木を揺すっている。仁木の口から、肺を満たしていたレモンティーが溢れ出た。
「【仁木さん、仁木さん……】」
仁木は答えない。答えられない。
女の目から、涙が溢れ出した。白衣に縋りついて、泣いている。
「そいつは、死んだ方が良かった。だから殺した」
少年は、冷たい口調でそう伝える。女は、ぴくりと肩を震わせて、ゆっくりと少年の方を見た。
「【お前がやったのか】」
「うん、そうだ……え、」
次の瞬間、少年の身体が炎に包まれた。轟轟と激しい炎が立ち上る。それは一瞬で喉を焼いて、悲鳴さえ出せなかった。
(術式、術式 使わなきゃ)
(あ、カートリッジ、)
(ああ……)
ぼとり、と一瞬で黒焦げた身体が床に落ちる。
それはあっという間にサラサラと崩れて、黒いチリだけが残った。
「【仁木さん、私もそっちに行くね】」
■■■
報告書
××月××日 午後××時××秒
各地で、原因不明の水死が多発。何れも水場から遠く離れた場所であった。
死体に残された残穢を禪院××のものと断定。
しかし、下手人は行方不明。
最後の目撃情報は、東京校内であり、目撃者は五条悟。
仁木史明の研究室に行ったと証言。
高専地下の仁木史明の研究室にて、同人の死体と××××の遺体を発見。
仁木史明は水死。
××××は焼死(自殺と判断する)。
以上の点から、禪院××は、仁木史明を殺害したさい、彼の『転禍術式』が発動し、巻き添えを産んだものと断定。
被害者は海外にも及び、正確な全体数は確認中。
なお、日本国内だけで現在856人確認済み。
内、高専所属の呪術師は3名。
呪術規定に基づき、禪院××を呪詛師とし、捕縛次第死刑執行するものとする。
■■■
仁木史明が死んだというニュースは、瞬く間に広まった。
彼一人死ぬのに、夥しい数の人間が犠牲になったのだ。死ぬのなら、一人で死んでくれと五条は思う。
いわいちゃんの運用や、仁木が行っていた実験の一部のは、他の呪技術部門の人間が引き継ぐようである。だが、今彼らが気にしているのは、空いた統括の席をどうするかである。
ぶっちゃけ、自分の研究に集中していたいので、無駄な肩書きはいらない。
自分勝手な技術者達による押し付け合いが始まっているらしい。
しかし、その押し付け合いは、思ったより早く収束した。なんでも、彗星の如く現れた新人が、仁木に連なるほどの天才だったらしい。
スピード出世にも程があるが、まあ、仕方ない。皆やりたくなかったことを新人に押し付けたのだ。
そして今、伊地知の目の前にいる“子供”こそ、新たな呪技術部門 統括である。
「初めまして。“岩永 仁郎(いわなが じろう)”と申します」
「…………………………え、」
その子供は、伊地知の親友と同じ苗字で、似た顔で……
「仁木さんのバックアップとして、彼の思考回路を脳にインストールしています。つまり、三代目加茂憲倫ということですね」
かの害悪を彷彿させるような笑みで笑った。
仁木史明
私のフォロワーにも嫌われてる。TLで彼のことを呟く度に「許さない」とか「燃やせ」とか「ぎぃぃぃぃ!!」とか言われる。解せぬ。
死ぬまで殺せば死ぬ。
少年
禪院××。
妹の幸せを願っていた。
少年の妹
箱入り娘。
「お兄ちゃんのためになるなら」と望んでそうなっていた。魂も箱の中に閉じ込められており、少年が術式を使う度に苦しんでいる。
××××
フォロワーさんが仁木の夢主として作った女の子。通称名無しちゃん。今回勝手に出演させてしまった。ごめんなさいね。
炎系の術式持ち。
失言症のため、仁木からプレゼントされたぬいぐるみ(原材料不明)に代弁してもらっている。
かわいい。
いわいちゃん
バーチャル呪術師。
本名 岩永壱朗
岩永仁郎
岩永壱朗の正真正銘血の繋がった子供。試験管ベイビー。
仁木史明がいわいちゃんを作る時に残った身体からDNAを採取して作った。自身の思考回路を脳にインストールさせたため、仁木譲りの天才的な頭脳を持っている。
自称三代目加茂憲倫。
二代目無邪気で健やかな害悪。