早坂愛への演技指導+α 作:早坂すき
早坂可愛い。
私立秀知院学園! かつて貴族や士族を教育する機関として創立された由緒正しい名門校である!
貴族制が廃止されたまでなお富豪名家に生まれ、将来国を背負うであろう人物が多く就学している。
そんな学校に彼は入学していた。
早瀬 創一。彼の父親は日本で一番とも言われている名脇役、母親はハリウッド女優という、俳優一家に生まれた子供なのである。小さい頃は天才子役として名を馳せた彼ではあるが、中学からは学業に専念するために休業中である。
そんな彼は現在、空き教室でクラスメイトの早坂愛と二人きりになっていた。なぜこんなことになっているのか。その理由は一週間前に遡る。
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一週間前、創一は教師の手伝いをしていたために珍しく放課後に学校にいた。手伝いも終わり、さあ帰ろうと廊下を歩いていたら空き教室から声が聞こえた。聞き耳する趣味もないため、無視して帰ろうかと思ったが……
「今日危うく書記ちゃんに演技がバレるところでした」
「あの子変なところで鋭いものね」
「ええ。なんとかごまかしはしましたが」
きっと、別の会話なら足を止めることはなかっただろう。聞こえないふりをして、通り過ぎただろう。
だがしかし、「演技」という言葉を聞き、彼は足を止めた、止めてしまった。そして、その拍子にポケットからスマホが落ちた。あたりに音が響いた。
当然、中の人にも聞こえていたようで、少し慌てたような声がする。そして、空き教室から人が出てきた。
その人物は四宮グループの令嬢、四宮かぐやとあまり接点がなさそうな少女、早坂愛であった。
しかし……と創一は違和感を覚える。創一の知る早坂愛という人物はよくいるJKのような少女である。さっきの堅苦しい話し方と想像もし難い。
確かに彼女は
「かぐや様、どういたしますか?」
「……彼が誰かに言わないと言う保障はないわ。しらを切りましょう。
あら、創一君。こんな時間までどうしたのかしら?」
「こんにちは四宮さん。実は先程まで先生の手伝いをしておりまして」
「あら、そうですか。それはお疲れ様でした。ところで、先程の会話は聞こえておりましたか? ちょっとした女子トークをしていまして」
「いえ、何か話していたのは聞こえましたが内容までは聞き取れませんでした。ご安心ください」
そこまで話すと四宮と早坂は何かを話している。こちらに届かない声量で、口も動かさずに、しかし微かに動く空気の波が何かを話していると伝える。
「早坂、どう思う?」
「抑揚、表情などを見ても嘘はついていないかと思います。……ですが私の感としては、聞こえていたかと」
「私もそう思うわ。だって彼の演技は、恐らく私より、早坂よりも上だもの」
それは四宮かぐやの敗北宣言。天才である四宮かぐやは、あらゆるジャンルを難なくこなす。それどころか、すべてがプロ級にできる。
また、早坂愛も演技という点では四宮かぐやと張り合う。クラスメイトの前、対象Fの前、本家の人間の前と態度を変える彼女は、常に演技をしていると言っても過言ではない。
そんな彼女らが敗北を認める。それほどの才。しかし創一は中学に入ってからは演技をしていない。では何を見てそう判断したのか。
簡単だ。
その時点で彼は現在の天才たちと、最低でも並んでいた。それがどれほど異常なことか。
まさに神童。こと演技に関しては天才では表しきれぬ才を持っていたのだ。
そう判断した彼女らはすべてを打ち明けることにした。
「正直に言いなさい、創一君。あなた、聞こえていたのでしょう?」
「さて、本当に聞こえていなかったのですが……。聞こえていなかった証明とはどのようにすればいいのでしょうか……」
「そう、まあいいわ。あなたには協力して欲しいことがあるの」
「さて、なんでしょうか」
「それはね……」
次の言葉を言おうとした瞬間、かぐやの思考が止まる。羞恥心!!
自身の目的である白銀御行に告白させたいと言うことを言ってもいいのか。もしそのことが広まれば、私が会長を振り向かせたいと思っている恋する乙女のよう思われるのではないか。*1
そうなって仕舞えば、周囲からの無言の圧によって告白しなければいけない雰囲気になり『なんだ四宮、俺のことが好きだったのか。なんともお可愛いことだな』となる。それだけは避けなければならない!
ここでかぐやはどう言葉を繋げばいいのかを思考する。その間約1秒。1秒とはいえ、天才であるかぐやにとってそれは常人にとっての塾考に値する。そして、誤解を与えない伝え方を考え*2、それを口に出そうとした瞬間──
「かぐや様は白銀会長に告白されたいようです」
第三者!!
ここに存在していたのがかぐやと創一だけであったら、かぐやが今から言おうとしていたことで上手く誤魔化せただろう。*3
しかしこの場には、かぐやの近侍である早坂がいた。早坂にはその思考を読むことができず、目的をそのまま伝えてしまったのである。……わかった上で無視した可能性もあるが。
「ちょ、早坂ああああああ!!!???」
「なる……ほど? 確かにお二人はお似合いですしいいと思いますよ」
「えっほんと!? ……じゃなくて。違うのよ? 早坂の言ってた事はあってるけど、違うっていうか……」
「違いませんよね。かぐや様白銀会長のこと大好きですもんね」
「大好kっ……ちがっ……これは! ギリギリ、ギリッギリ付き合ってあげてもいい基準に達してる会長が私に告白できないからこの私が気を使って告白させてあげようっていうことなのよ!」
「こんな感じです。……なので、演技をといていただいても」
その言葉をきき、創一は演技をといた。それと同時に、完璧な演技を見破られ警戒していた。一般人、いや一流の俳優でも気付くのがほぼ不可能なそれを、どうやって気づいたのかをこれからのために知りたかった。
もう俳優になるつもりも、なんならTVに出るつもりもないくせに。
「ふむ……。構いませんが、どうして私が演技していたとわかったのですか?」
「いえ、演技には気づけませんでした。ですが、天才子役と言われた、子供の時から大人顔負けの演技をしていたあなたなら、このくらいはやってのけるかと」
「なるほど。それで、協力とは? 何をすればよろしいのですか?」
「その敬語も取っていただいて構いませんよ。協力とは、かぐや様が白銀会長に告白されるようにお手伝いを願いたいのです。というか、拒否権はないです。漏らした瞬間に四宮家があなたを潰します。事故を故意に起こす事も可能なので、ね?」
「ははは……いやまあ元から漏らすつもりはないけれども」
ちなみにこの会話の最中、かぐやは一切話を聞いておらず一人でぶつぶつ言い訳していた。誰も聞いていないのに。
ここでかぐやは誰も聞いていないことに気づき、咳払いをして意識を変える。そして話を始める。
「とりあえず! 貴方は私に会長が告白するように上手く早坂と協力していただきたいの」
「かぐや様、その事はもう話しています」
「もし漏らしたら、四宮の総力をあげてでも──」
「それも話しています」
「もうっ! 私の出る幕がないじゃない!」
「ははは、なんか姉妹みたいですね」
「敬語」
「アッハイ」
早坂からの無言の圧力をくらい棒読み気味に、そして反射的にそんな声がでた。その圧力は身体測定が終わった時に女子に身長を聞く流れで体重も聞き出そうとする男子の受ける圧力とほぼ等しかった。決して聞いた事はないが。……ホントだよ?
そういえば、と四宮が何かを思い出したかのように呟いた。
「貴方、演技指導は出来るかしら?」
「出来ま……出来るけど、それが何か?」
「いえ、ちょうど良い機会だし早坂、貴方演技指導してもらえば良いじゃない。藤原さんに演技バレそうになったんでしょう?」
「「え?」」
二人の声が初めて被った瞬間だった。
続くかはわかんない