玄界放蕩記~ゲームこそ人生~   作:粗茶Returnees

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 BBFに載ってる設定見るの楽しいですよね。柚宇さん性格よりも顔重視だし、唯我は柚宇さんに素の体力負けるし。
 今日は柚宇さんの誕生日! 更新はゆったりでいいやと思ったけど今日は更新しないとな!


玄界生活②

 

 ボーダーという組織は、4年前に起きた第一次侵攻で存在を公にした組織だ。そこからメンバーが増えていき、今の状態に至る。現在の司令、つまりボーダーのトップにいるのは城戸正宗。旧ボーダーと呼ばれる前体制の時から所属する古株の1人だ。彼は近界民(ネイバー)の排除を目的と公言しており、迅の柔らかな表現で言うと「近界民許さないマン」である。

 そんな彼がシアンと対等な関係で話をつけることにしたのも、ひとえに未来予知青年こと迅の影響だ。彼が予知している大規模侵攻。()()()()()()()()()()という予知が出ている。それはつまり、シアンが本当に敵対の気がないということ。拒めばそうはならなかっただろう。遠征組からの報告では、彼のトリガーが使い方によっては「天羽と同じ結果を生みかねない」とも言われているのだから。

 

「司令何のようですか?」

 

「来たか」

 

 部屋に入ってきた青年を見据える。顔の傷も相まって城戸の表情は一層強面だが、シアンの気配は柔らかい。一定の余裕を見せており、威圧で押されることがない。

 

「君の身分偽装の件、加えてボーダーのトリガーを持たせる件について話がある」

 

「前者はともかく後者は初耳なんですが」

 

「なに? ……太刀川の独断か」

 

「あー、ノーマルトリガーで戦ってみたいとは言われてましたが。そういう意味だったのか」

 

「……まあいい。後半の件を先に話をつけよう。現状、我々の考えではそれを許可することはできない」

 

「でしょうな」

 

 自分がその立場でもそうする。ここであっさりと許可が降りるなど微塵も思えない。城戸のように近界民を敵視する者がトップにいるのなら尚更だ。

 

「太刀川隊から日々報告は貰っている。君がどう生活を送っているのかをね」

 

 無論それは不審な動きがないかの監視でもある。その意図が含まれていることは言われなくても分かるし、シアンも監視と報告が行われていることは予想の範囲内だ。

 思い違いがあったとすれば、城戸の方だろう。なにせ報告に上がってくるシアンの行動記録の8割方が、「ゲームしてました」なのだから。特に最も彼と行動を共にしている国近からは、ゲームの種類、プレイ内容まで詳細に書かれている。仕事はきっちりこなす隊だが、学業成績がやばい隊長とオペレーターの悪い面が出てしまった形だ。

 風間隊に任せればよかったと後から思ったものである。しかし、その場合今のような友好的な状態になっていたかは断言できないため、如何ともし難い話だ。

 

「今日は大乱闘なるものをやる予定ですよ。タチカワとイズミも非番らしいんで」

 

「楽しんでいるようで結構」

 

「どれが強いとかあります?」

 

「私がそれを興じているとでも思っているのかね?」

 

「ですよね」

 

「カー○ィでハメ殺したまえ」

 

「やり込んでるじゃん」

 

 シアンが太刀川隊と親交を深めていることを日々報告に受けると、旧ボーダーの頃が過ぎってしまう。あの頃目指していたものが、今になって1つの形として現れつつあると。

 城戸はその思考を切り、話を戻した。太刀川隊からの報告があるとしても、信用に足るとは言えない。玉狛支部に入隊した空閑遊真とは事情が異なるのだ。

 

「君のトリガーの件は非現実的だと思っていたまえ」

 

「構いませんよ。タチカワが残念がりそうですけど、オレは今の目的がゲームなので」

 

「では、もう1つの件に入ろう。こちらが本命だ」

 

「身分偽装の件ですね。ユウ……くにちかが時間かかり過ぎな気がするって言ってましたけど」

 

 言いにくそうに名前を言う彼を鼻で笑いかけた。不意打ちでも耐える鉄壁の男。それが城戸司令である。

 

「私の方からもそちらの件を確認したのだが、単純にして大きな問題が1つあることが判明した」

 

「……それは?」

 

 偽装を承諾したからには技術的には問題ないはずだ。それでも時間がかかるのは制度的な何かだろうか。こちら側のことをもっと知らないといけないなと、今後国近から学ぼうとシアンは決める。

 しかし城戸の言葉は彼の予想を外させる。

 

 

「君の名字を我々はまだ知らない」

 

 

 無言の時間がきっちり5秒。予想の斜め下を行かれたことで思考が止まり、そこから回帰して理解するまでにかかった時間だ。

 それはそうだ。名前を正しく知らないのなら用意ができない。これは確認しなかったボーダーの落ち度であり、言わなかったシアンの落ち度でもある。ゲーム三昧な生活をしている場合ではなかった。ピザを注文として住所を正しく記載しないようなものである。そりゃ届かん。

 

「名字は……適当につけてもらって結構ですよ」

 

「実はその方向で話は進んでいるのだが、決める者たちが白熱していてね。どの名前にするかで軽く揉めている」

 

「えぇ……」

 

 子どもの名前を何にするかで揉める親のよう。

 

「君に名字を聞いてそれにした方が早いと判断して呼んだわけだ」

 

「ちょっと内輪揉めがありましてね。家はもう潰れてるんですよ。名乗る気もないし、まじで勝手につけてもらっていいですよ」

 

「……そうか」

 

 彼の言葉を飲み込むように、城戸は静かに目蓋を閉じた。自虐的な笑みと、悲しみを灯した目。そしてその奥のもの。

 迅の予知も確定するまでは可能性に過ぎない。話していて人柄は掴めてくるが、彼の危険性は未だに残る。一度彼と迅を会わせて先のことを視るのも1つの手か。

 

「では午後には君の身分を完成させよう。食事を太刀川隊の作戦室で取っているのなら、昼食と共に持って行かせる。正午に間に合わないかもしれないが、構わないかね?」

 

「いいですよ。それではオレはこれで」

 

 部屋から出ていった後も、彼が立っていた場所をしばらく見つめる。最初の交渉の時からそうだが、()()()()()()()()()()()()()。今生きていくための手段、場所を求めている。その先のことは一切口にしていない。そこが城戸たちを慎重にさせる。目的が見えない相手は不信感を拭えない。利用できるかも分からない。扱いづらいのだ。

 だが、そこをいくら探ろうとも見えないのは当然だ。本人が語らないのも無理はない。()()()()()()()()()()()()()()()。先のことを考えて玄界(ミデン)に来たわけじゃない。成り行きでそうなっただけ。

 その事情を話せば少しは信用性も出るかもしれないが、そこを話す気も今はないらしい。

 

 城戸は自身の中で()()()()()()()()()()()。今の会話。普段では考えられないような気さくさが出てしまっていた。まるで現ボーダーができる前のような。

 それを引き出させるような話術は感じられない。シアンという人間性がそうさせるのなら、これほど危険なものはない。敵への潜入は、溶け込むほどに成功率が上がり、成果も大きくなるのだから。

 

(使うか)

 

 端末を操作し、1人の隊員に連絡を取る。

 

「働いてもらうぞ」

 

 望もうが望むまいが、誰よりも識れる人間に。

 

 

 

□□

 

 

 

 城戸と話した部屋から太刀川隊の作戦室へと戻る。ボーダーの基地は広い上に似た道ばかりだ。単純な道が多いからこそ迷いもする。観光で京都を訪れる人のように。

 しかしシアンが迷うわけにはいかない。極力存在を伏せないといけないから。そんなわけで案内役が必要となり、行きも帰りも手が空いていた風間が行っている。

 

「タチカワもそうだけど、カザマって近界民を嫌ってるわけじゃないのな」

 

「敵として来るのなら排除する。それだけだ」

 

「おかげでこっちに来れたし、ありがとな」

 

「礼は不要だ。必要だと思ったからそうした。それに、戦闘を続けていてはこちらに被害が出るとも思ったからな」

 

「トリオン体で負けても遠征艇に行けるのに?」

 

「お前が敵対心を強く持ってしまえば、遠征艇くらい斬れただろう?」

 

「……まぁね」

 

 戦闘し、隊員が落とされてからの判断はまさに即断だった。太刀川を止め、出水の射撃と当真の狙撃も止めさせ、シアンの話に応じたのは風間だ。城戸たち上層部との橋渡し役も、中立的な立場を貫いて行っていた。太刀川の場合、シアンを気に入ったのもあってシアン寄りだったりする。

 リスクリターンを考えての行動。実際、前金としてシアンが出した情報は大きかった。今回の最大の功労者を決めるとすれば、間違いなく風間だろう。

 

「ボーダーには派閥があるらしいけど、風間はわりと考えでは中立なのな」

 

「俺は組織の司令に従って行動するだけだ。命令が下れば真っ先にお前を討つぞ」

 

「あれ、中立じゃない気がしてきたぞ」

 

 連れてきたからには、()()()()()()()がある。判断をしたのは自分なのだから、もしシアンが敵となれば自分の手で討たなければならない。それが風間の考えだった。

 

「三輪はお前を処分したがっていたがな」

 

「おっかないな。敵の言葉が信用できないってのは分かるけどさ」

 

 大切なトリガーを自ら手放した。そこを少しは汲んでほしいなとぼやきつつ、その復讐心に多少の共感をする。自分がそうなる可能性は捨て切れない。

 

「そいや身分証って持ってくるのはカザマ?」

 

「いや、その指示は受けていない。おそらく俺ではないだろう」

 

「そっか。誰でもいいけど、知ってる人間だと気持ち楽なんだよな」

 

「分からなくはないな」

 

 太刀川隊の作戦室へと到着し、風間とそこで別れてシアンは部屋の中へ。現状、彼にとってはここが仮宿である。寝る時はソファを使用させてもらっているのだ。

 

「シアンさんおかえり~」

 

「ただいまユウ」

 

 部屋で出迎えてくれたのは気の抜けるような笑顔。ひりついた空気から正に一変。国近が放つおっとりとした雰囲気に、シアンは無意識下で入っていた肩の力が抜けた。

 

「何話してきたんですか?」

 

「身分偽装の話とトリガーの話。トリガーの方は無理だと思えってさ」

 

「へ~。太刀川さんがっかりしそうですね」

 

「予想くらいしてただろうし、腑に落ちるんじゃね?」

 

「どうでしょうね~」

 

 シアンの言う通り予想くらいしてただろう。しかし国近は思う。あの隊長の試算では、半々の確率であり得ると思っていたのではと。

 

「身分の方はなんでした?」

 

「名字を決めるのに手間取ってるって。言ってなかったしな」

 

「あー。わたしも知らないですね~。教えてもらっていいですか?」

 

「教えない」

 

「えー。どうせ知られることなのにー」

 

 それぐらいいいじゃないかと文句を言う国近に、シアンは城戸に話したことを少しだけ教える。家は既に無く、その名を名乗る気もないのだと。

 

「…………ごめんなさい」

 

「別に気にしないよ。それよりユウ、こっち側のことで知りたいことがあってさ」

 

「わたしが話せることなら。あ、ボーダーの規定に引っかかるやつは無理だからね」

 

「分かってるよ。ボーダーのことを聞きたいわけでもないから」

 

 そう聞いて安心した国近は、シアンをソファへと招いて並び座る。どういうことを聞かれるのだろうと、少し楽しみな気持ちがあった。

 そうして言葉を交えていると太刀川と出水が部屋に入り、4人でゲームを開始。シアンの昼食はいずれ届くし、他の3人も弁当を用意している。備えあれば憂いなし。大乱闘大会の幕開けである。

 

「どれにすっかなー」

 

「俺はこいつだな」

 

「剣あるからですよね?」

 

「カッコイイだろ」

 

 剣バカと弾バカはそれぞれ得意なものを。

 

「うーん、どれにしようかなー。シアンさんはどれ?」

 

 どのキャラも使える国近は悩みながらシアンのことを気にかける。

 

「オレはこれでやる」

 

「すぐに決めたな」

 

「誰かにアドバイスでも貰いました?」

 

「城戸司令」

 

「「あの人これやんの!?」」

 

「あはは。ならわたしはこっちにしようっと~」

 

 まさかのアドバイザーに驚愕と笑いの声が太刀川隊に響き、和気藹々と勝負が始まる。

 ちなみに城戸司令がプレイしたことのあるカセットは初代。今から4人が行うものは3代目。見事なジェネレーションギャップが起きていることを、幸運にも誰も知らない。

 

 

 そして──

 

「ちーっす。お届け物でーす」

 

 実力派エリートがシアンの身分証と昼食を届けたのだった。

 

 

 




 旧ボーダー時代の幻覚を見ました。
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