最初数話はラブライブ要素が薄いです
第1話 終盤
「さあ、ついにマッチポイント!大岐高校、後が無くなってきました!」
会場の熱気は最高潮に包まれている。選手、もちろん自分も含めて全員限界寸前だ。
ただあと1点を取る、取られない、勝利をもぎ取るために最後の一搾りまで使い果たす。
「まだまだ!すぐ追いつくぞ!」
主将が声を上げる
「(そうだ。まだ1点すぐ追いつける)」
しかしバレーはラリーポイント制というシステムを採用している。それゆえサーブは相手側だ。
ここでレシーブミス、トスミス、スパイクミス、どれをしても待っているのは敗北だ。
ここは絶対に決めるしかない。
ホイッスルが鳴りボールが向かってくる。きっちり正面に入りレシーブ。ボールは綺麗にセッターに返る。そしてスパイカーが動く。トスはライトへと振られるが、相手ブロックは揃わず1枚。
1枚であれば障害にはなりにくい。スパイクは強烈に床に叩きつけられる。
「ナイスキー!」
これで同点に追いつきデュースにもつれ込む。そして俺は前衛に上がる。
「ナイッサー!」
サーブは3年の先輩だ。球種はジャンプフローター。ジャンプフローターはその特性上伸びたり、落ちたり、その変化はギリギリまで分からない。故に魔球と呼ばれる。
ホイッスルが鳴る。少し時間を使い、助走を開始。
そして打つ。綺麗に無回転になり、相手レシーバーを揺さぶる。レシーブは乱れ、エースへのオープントスとなる。
レシーブが乱れればブロックは読みやすい。三枚揃い…
「せー…の!」
と同時にジャンプ。
「ワンチ!」
打たれたボールが手に当たり、威力は弱まる。
「チャンスボール!」
ブロックからの着地と同時にすぐに助走距離確保。
「レフトー!」
「頼む!」
セッターからボールが供給される。それは1番打ちやすい高さ、ネットからの位置に来る。
「シッ!」
短く息を吐き、放つ。ボールはブロックとアンテナの間、ボール1個分空いた隙間を通り、相手コートに向かっていく。
が、そのボールは僅か数センチの差でコート外に落ちる。
「ッ!?すいません!」
「ドンマイ、ドンマイ。狙いはいいぞ!」
「はい!(くそっ!今のは決めれるボールだろ…)」
サーブ権が移り次はこちらのレシーブ。相手はスパイクサーブ。強烈なサーブが向かって来る。
「…アウトー!」
しかしそれは惜しくもアウトになる。首の皮1枚つながった。
一進一退の攻防を繰り返す。
「はあ…はあ…あー…キッツ…」
周りも肩で息をしてる人が多い。
「(そろそろ決めないとな…)」
サーブはこちらから。俺は今後衛にいる。サーブが放たれる。
そのボールは相手のリベロの元に向かってしまい、綺麗に返される。
このパターンが1番厄介だ。綺麗に返ったことでセッターの選択肢は増えてしまう。
「(どこだ、どこでくる。情報を吸い取れ、コート、相手の視線、重心。味方ブロッカー。全てから情報を手に入れろ)」
セッターの選択は
「(ライトか!)」
読み通りライトだった。味方ブロッカーと相手スパイカーに合わせ位置を調整する。ブロックはストレート側を締めていたためクロスにスパイクは放たれ、ちょうど正面でレシーブする。
「うし!」
「ナイスレシーブ!」
体全体を使い威力を受け流す。ボールはふわりと上がり、セッターの頭上に返る。すぐに立ち上がり攻撃に備える。
「和人!」
助走をし、アタックラインぎりぎりで踏み切る。そして打つ。そのボールはブロッカーを越えて相手コートに向かっていくが、そのボールはアウトになる。
「くそっ!!(なんでだ…いつもなら決められるのに)」
いつも決められるボールが決まらない。動揺が走る。これが県大会や全国初戦などの序盤であればここまで動揺しないだろう。ただこれは全国決勝も終盤。これで動揺しない方がおかしいだろう。
「(落ち着け、落ち着け…)」
頭ではわかっていても動揺は止まらない。その動揺はやがて焦りへと変わっていく。焦りは呼吸を浅くし、視野を狭めプレーを雑にする。
「(相手のサーブか…ここ丁寧にしないと)」
ただここで焦りが邪魔をする。サーブをレシーブしようとしたとき、何回も何回も繰り返した動作が僅かに狂い、ボールがやや手首側にずれて当たってしまいレシーブが乱れる。
レベルの高い試合であればあるほど些細な綻びでも致命傷になり得る。セッターがフォローするも速攻は使えない距離。つまりライトかレフトの単純な攻撃になる。選択はエースのいるレフト。
放たれたボールはブロックに阻まれ、そのままの威力で自陣コートに落ちた。
大岐高校 全国高等学校バレーボール選抜優勝大会 通称春高バレー 決勝敗退
お読みいただきありがとうございました。次回もよければどうぞ