それでは第10話どうぞ。
「う~ん、いい天気」
浦の星に転校して早何日、こっちに来てからの初めての週末だ。今日はそれを利用して愛車を整備することにした。外に出てガレージからロードバイクを取り出す。
「あとは…メンテナンス道具持ってこなきゃ」
ガレージに戻り、メンテナンスに必要なスタンドやオイル、工具諸々を取り出す。
「さてやるか」
まずロードをスタンドに立てる。これでタイヤが空中に浮いている状態になるので、チェーンメンテナンスとかが楽になる。
まずはフレームを軽く拭く。土の上を走ってるわけではないからそこまで目立った汚れはないけど、それでも細かい汚れがついてしまっている。
次はチェーンの注油と洗浄だ。まずチェーンクリーナーを噴きかけて汚れを飛ばす。その後オイルをチェーンの1コマずつ塗り、余分なオイルを布でふき取り、チェーンは終わり。
「次は…」
「ただいま~」
声をした方を振り返ると、買い物袋を抱えた母さんがいた。
「あ、母さんおかえり」
「カズくんお客さんよ。こっちいらっしゃい」
誰だ?と思いつつ母さんのいるところに向かう。
「和人くんおはよ!」
「和人くんヨーソロー!」
「和人くんおはよう」
そこには千歌、曜、梨子の3人がいた。
「おはよう。3人とも揃ってどうしたの?」
「一緒にダイビングに行こうと思って」
梨子が俺の疑問に答える。
「ダイビング?」
「うん!和人君くんも一緒にどう?」
ダイビングをやってみたい気持ちもあるが、俺は今水着を持っていない。
「俺水着持ってないんだけど…」
「レンタルがあるから大丈夫だよ!」
レンタルがあるのか、それなら安心だ。
「それなら俺も行きたいな。いい?母さん」
「ええ、いいわよ」
母さんの許可も下りた。けどその前にロードの整備を終わらせないと。
「ごめん、ちょっと待ってて」
「?何か用があるの?」
「うん。ロードバイクのメンテナンスしてて」
「へえー。見ててもいい?」
「いいけど…別に面白くもないぞ?」
そう言って、ロードのあるところまで戻る。
「これが和人くんの?」
「そうだよ。イタリアにあるメーカーのやつなんだけど、このチェレステっていう名前の色が気に入ってさ」
「確かに綺麗な色だね」
ロードを買う当初はあまり分からなかったから、色との見た目で最終的には決めていたけど、今ではすごく気に入っている。
「あ、六角レンチ取ってくれない?」
「え〜と、これかな?はい!」
「サンキュー、曜」
曜から六角レンチを受け取り、ハンドルやシート周り、ブレーキなどの各部分のボルトの締め付けをチェックしていく。
「特にガタはなしと。最後はバーテープ変えるか」
ガレージからバーテープが入っている箱を取り出す。
「何色が良いと思う?」
3人に聞く。
「う〜ん。いろんな色があるね」
箱の中には黒や白、赤、青、黄色などいろんな色がある。
「あ!これとか良いんじゃない?」
千歌が取り出したのは黄色よりも少し淡い、所謂レモン色と形容される色のバーテープだ。
「確かに。これ付けるね」
バーテープを巻く前に、ハンドル末端にあるエンドキャップを取る。そしてハンドル中央から古いバーテープを剝がしていく。ハンドルに付いているケーブルはバーテープと一緒に巻くのでビニールテープで固定し、ハンドル末端からバーテープを巻いていく。ハンドル中央まで巻ききったらテープを切り、フィニッシュテープを巻いて、最後にエンドキャップをまた取り付け完成だ。
「よし、OK」
「おー!」
「いいじゃん!」
「色がいいわね」
フレームの淡い青緑の色とレモン色のバーテープが意外と良い組み合わせになった。
「少し時間使っちゃったな。ダイビングって何時からなんだ?」
「えっと、1時からだよ」
「1時か、微妙だな」
移動の時間を考えても少し微妙な時間だ。
「どうする?」
「う~ん…和人くんの部屋見てみたい!」
「え?俺の部屋?」
俺の部屋は特に何もないけど…ただ、女子を部屋に入れるのは若干の抵抗感というか恥ずかしさというかがある。
「うん!ダメ…かな?」
「うっ…」
3人とも揃って、上目遣いはやめてください。男はそれに弱いんです!しかも3人ともかわいいからなおさら!
「…まあいいよ」
流石に勝てませんよ。あのやり方には。3人を連れ玄関に行き、ドアを開ける。
「上がって」
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔します!」
「お邪魔します」
「階段を上がって、右に曲がったところに俺の部屋あるから先行ってて」
俺はロードのメンテナンスで汚れた手を洗いに洗面台に向かった。
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side 梨子
「ここかな?」
私たちの目の前にはkazutoと書かれたプレートの掛かってる部屋がある。
「じゃあお邪魔しまーす!」
「遠慮がないね…」
千歌ちゃんに続き入っていく。
「おー…案外普通」
「あんまり物もないね」
中は必要最低限のものがあるだけで、そこまで物があるわけじゃない。その上バレーの物は1つもない。
「さて、やろうか!あれを!」
曜ちゃんが声を上げる。
「あれ?」
「トレジャーだよ!」
「ト、トレジャー?」
トレジャーつまり探検。和人くんの物を漁るということだろうけど、流石にダメだろう。
「流石に怒られるよ」
いくら優しい和人くんでも知らずのうちに部屋を漁られたら流石に怒ると思う。
「でも梨子ちゃんも気にならない?」
「え?何が?」
「梨子ちゃんが会わなくなった時の和人くんのこと」
「え…?」
私が和人くんに会わなくなった間の和人くんのこと…それは約3年間のこと。
「確かに気になるけど…」
「でしょ?それになんでバレーをやらなくなったことも気にならない?」
私が持っていた1つの疑問を言い当てられる。私はバレーをやっている和人くんの姿が好きだった。だから高校でもバレーをやっていてほしかった、けど現実はそうはいかなった。和人くんの前の学校、大岐高校で何かがありそれが原因でバレーから離れてしまった。その原因を突き止めたいと前から思ってはいたが、不用意にこの話を出して和人くんを傷つけてしまったらと思うと怖くて出来なかった。
ただ今の本人がいない状況ならその原因を探せるかもしれない。
「…うん。探してみよう」
「よし、きた!」
そこから私たちは机や棚、クローゼットなどいろんなところを探した。
「意外とないねー」
「楽しんでるわね…」
探してみてもそこまで物があるわけじゃなく、バレー関連の物も、もちろん男の子が好きそうな、あ…あっち系のやつも無かった。
「あとはここだけ?」
「だね」
最後に残ったのは、部屋の中でも1番大きな押し入れ。ここにあるのかな…
「よし。オープン!」
千歌ちゃんが勢いよく開ける。
「これは…?」
開けた先には大きめの段ボールが2つ。
「こっちから見てみようか」
2つのうちの1つを曜ちゃんが開ける。中には靴やテーピングなどいろんな物があった。そしてその下に黒い何かとボールがあった。その2つを取り出す。
「ねえ、これって…」
「ユニフォームとボール…?」
胸に大きく大岐、背中には大岐高等学校と書かれていて、黒色をベースに赤色が横やパンツの周囲にあしらわれているユニフォームと寄せ書きが書かれているボールを見る。
「たくさん書いてあるね」
「20人くらいかな」
ボールの至る所に文字が書かれている。『向こうでもがんばれ!』とか『決勝で戦おうぜ!』など全体的に好意的に書かれている。これは彼の人徳のなせる技だろう。ただ私は1つ引っかかることがあった。
「ユニフォームはともかく、なんでボールは飾ってないのかな?」
「あ…確かに」
「2人はこういうのもらったとき部屋に飾る?」
千歌ちゃんにそう聞かれる。
「私は飾るよ」
「私も。思い出みたいな物だからね」
私も曜ちゃんも同じ答えだ。思い出や友達からの言葉が載っている物をダンボールの奥に眠らせておく訳がない。それを飾らないでしまっておくということは…
「もしかして…」
「チームメイトとの関係…?」
「なのかな?」
3人の答えが一致する。それはあくまで可能性の1つに過ぎないが、ある程度の予想はついた。
「どうする…?聞く?」
「でも何かあったらどうするの?」
「それを考えると下手には聞けないね」
和人くんの心を抉ってしまうような、そんな可能性がないわけじゃない。
「じゃあいったん保留かな?」
「うん、そうしよう」
「じゃあ出しちゃったものを戻さないと」
元に戻そうと立ち上がった時に
「3人とも、お茶持ってきた…よ…」
和人くんが来てしまった。
ゴリゴリに専門用語を出しましたが、分からない人は調べてみてください。
梨子が和人のことを好きと言っていますが、現段階ではあくまで'バレーをやってる和人が好き'なだけなのでヒロイン確定まではいきません。
というか現時点でヒロインは絞っていますが完全には決まってません。書きながら考えていきます。
大岐高校のユニフォームは洛南のユニフォームデザインと同じだと思っておいてください。
感想、評価お気軽にお願いします。
次回もよければどうぞ!