「あ゛あ゛あ゛あ゛、ぁぁぁ ぅあ゛」
何処からかこんな悲鳴が聞こえてくる。
ぴしゃしゃしゃしゃ、とぷん…………
しゃーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
こんな音が何処からともなく近づいてくる。
その音は後ろからこっそり近づいて来ているような気もするし、大胆不敵に正面からやって来ているような気もした。でも前を見ても後ろを見ても、右と左を見てみても、近づくものは何もなく、「それ」が上からやって来たと、気づいたときにはもう手遅れで
頭が割れる痛みとともに
「あ゛あ゛あ゛あ゛、ぁぁぁ ぅあ゛」
こんな悲鳴をあげていた。
空から見る「それ」の姿は、とても……とても楽しそうだった。
こんにちわ!今最高に生死の境を楽しんでいるパブロ使いのルイス・パウラです!今しがた二人撲殺しました!あはは
誰が言ったか「死が急速に迫ってくる瞬間が一番生を実感する」!素晴らしい言葉だと思いませんか?思いますよね?だって僕が思うんだもの。僕たちなら誰もがそう思って然るべきだ、だって僕たちは生まれながらにしてそう在る。
僕たちは享楽的だ!単細胞だ!!ファッションとナワバリのことしか考えていない!!!
殺し合いが大好きだぁ!!!!ホコバリアと壁で身体が絨毯みたいになっても、ダイナモで身長が数cmになっても、ハイドラで
だって!だってだってだって!!インクリングは!!!
「イッカれってるぅぅぅううう!!!」
「試合中に不必要な大声を出すなと何度言ったら分かるんだ、敵に位置を知らせるだけだ」
「ごめんなさい」
先程から数分後、試合会場に備え付けられてあるアップ用の練習場で、パブロを横に置き正座している少年と練習場の壁にダイナモを立て掛け腕を組み、少年に向きあっている少女の姿があった。現在のインクカラーは紫らしい、ふたりともゲソ色が紫である。
「一人で2枚持っていって一旦オール入れられたんだからあとは黙って潜伏なり、スパジャンで戻るなりできるよな?」
「もちろんですとも!」
「じゃあなぜしない?そうしないからクラブラに爆殺させられるんだろう、もうそろそろクラブラの復帰タイミングだと理解していたはずだ」
「いやぁ……ちょっと連キル入れてテンション上がっちゃって……味方もみんな死んじゃってたし……リスキルチャンス!と思ってしまいまして。…………チッ、クラブラめ短射程イジメて何が楽しいんだ?あんなブキ持ってるヤツは性根がウロボロスしてるに違いないよ」
「人の持つブキに文句をつけるな!マナー違反だぞ!それに私から言わせればパブロもよっぽどだ!」
「ああん!?なんてこと言うんですか!このダイナモメスゴリラ!貴女なんて腹筋バキバキに割れてしまえばいいんだ!」
「お前ぇぇ!最近私が気にしていることを!じゃあダイナモメスゴリラにそんなこと言うんだ!何されても文句いうんじゃないぞぉ!」
そう言い放つと、彼女は横に立て掛けてあったダイナモローラーを何度も何度もルイスに向けて振り下ろし続ける。
「え?いや待、あ゛あ!、ぶぅぐ、べ、がが、ぁぉ…… ぎも゛ぢぃぃ……♡」
「今日と言う今日は許さないからな……お前はいつもいつも……ほら、痛いだろぉ……もっと叫べぇ♡ほら死ぬな死ぬな♡」
その場に紫色のインク痕だけが残るようになった頃、少女はようやくローラーを振るのを止める。息は荒いがその顔は何やら恍惚としており、ひどく満足気だ。
「ふぅ……♡ふぅ……♡はぁぁぁーー。ともかく!今度から気をつけるように!お前と敵二人だけが生き残って不利状況にも関わらずエリアのカウントを維持したのは間違いなくお前の手柄なんだからもっとチームのエースとしての自覚を持って……あれ、あいつどこ行った?…………あ!」
インク痕と自らの手にあるドス黒い紫に染まったダイナモを見て事情を察っした少女は最寄りのリス地へとひた走る。
まともそうに見えてもインクリングなんぞこんなものである。
殺すのが、殺されるのが、痛いのが、痛めつけるのが、戦うのが、楽しいからこそ殺し合う。インクリングはイカれている。イカれているから面白い。
これは、そんなイカれたイカ達のイカした物語である。