大災害当日ナオと恋人となり、俺達は円卓会議が設立される日まで、現実世界で東北地方辺りを旅した。
元放蕩者の茶会のメンバーだった俺はグリフォンを持っていたので色々な所を回った。ナオは俺の後ろに乗ったが、それを理由にして必要以上に密着してきたので、何度小突いたか覚えていない。
アキバに戻った理由は、シロエ達に会うのもあったが、アキバに拠点を据える覚悟が俺に出来たのもあった。
アキバに戻って、まず最初にシロエのギルドー記録の地平線ーへと向かった。
「お久し振りです、シロエ参謀、直継さん、班長」と、挨拶をすると
「久し振りナギ」とまじ、シロエが挨拶を返して
「久し振りだな、ナギ」と直継がその次に挨拶を返して
「ナギっち久し振りですにゃ」と最後ににゃん太が挨拶を返してきた。
そして自分は、ナオに目配せで自己紹介をさせて、一段落ついて俺はこう言った。
「シロエ参謀、良い所ですね……このギルド」
「ありがとう、ナギ……そう言われると嬉しいよ」
「話に聞いてましたけど、円卓会議の顔ぶれ凄いですね」と当たり障りの無い話を話した。
円卓会議は、アキバの12のギルドによって構成される自治組織だ。目の前にいるシロエが呼び掛けて、西風のソウジロウ、DDDのクラスティ、黒剣騎士団のアイザック、シルバーソードのウィリアム、ホネスティのアインスら等が招待され、シルバーソードを除く11のギルドで構成された……と脳内で整理しながら、にゃん太に話しかけた。
「班長も料理人でしたよね?」
「そうですにゃ」
「なら、味のある料理の作り方を見つけたのも班長ですよね?」
「ナギっちも見つけたのですかにゃ?」
「えぇ、ただ俺は公表せずにアキバから離れましたから……離れた理由だって、この世界がゲームじゃ無いってことを実感するためにですけど」
「なら聞きたいんだけど、大地人を見てどう思った?」
「とても人らしく暮らしてましたよ……ただ、味のある食事は物珍しかったようでしたね……後は人口量も多かったです……だからこそ自分達は、大地人達と共存共栄するべきですよね」とシロエの腹の内を探るように言うと
「それも目的の1つで、円卓会議を開いたからね」
「願わくばアーサー王伝説の円卓にならないように、ですね」とそんな事を話して、その日を終えた。
アキバの街に活気が戻り始めたが、未だにナカスが、自分にとって気がかりだった。ナカスに居たフレンドは幸か不幸か大災害当日ログインしていなかったので、情報の得ようが無かった。そんな事を思っていると念話が掛かってきた。
「もしもし、久し振りです、KRさん」
『久し振り、ナギ』
念話の相手はKRだった。現実でも会う仲だったが、未だに敬語が抜けきらない俺だったが、思っても見ないタイミングだな、と心の内で思った。
「で、何の用なんですか」
『ミナミの事を教えようと思ってね……後ナカスも』
「丁度良かったですよ、ナカスにいる俺のフレンド、巻き込まれなかったんで……」
『ミナミはプラントフロウデンによる統治になった……まぁ、細かいのは自分て調べな……そしてナカスはプラントフロウデンが統治しようとしてる』
「……っ……教えてくれてありがとうございます、KRさん」と感情的なるのを圧し殺しながら答えた。
『ま、インティクスにバレたらこっちが怒られるけどな……善意もあるが、友人だからな……それじゃ切るわ』
念話が切れてから一呼吸置いて周囲を見渡した。周囲に召喚術師の使い魔がいないことを確認した。
(……元々嫌な予感はしてたけど、まさかな……口振り的にもKRもプラントフロウデンに所属しているのだろう……どのみち俺は覚悟をしなきゃならないもんな……ナカスを捨てる覚悟を……)そうお面の下で歯噛みをしながら、ただただ感情を圧し殺そうとしていると、
「ナギ?」とナオが近寄ってきて、こう続けた
「お面を正面につけてるし……何かあったの? 話聞くよ?」
「……」と無言で返したが、尻尾が動いていたので説得力もなく
「正直に答えてよ……」とナオが言いながら俺のお面を横にずらした。そして、魅了に近い状態に俺がなってしまった。娼姫と言うサブ職は、異性に対してめっぽう強い。まともに抵抗出来ずに、正直に答えた。
「ナカスが、ミナミのプラントフロウデンに干渉されて……危うい状態なんだよ……」
「私のせいだよね……嫌なら戻っても良いんだよ……」とナオの悲しげな表情をしながら言った。
「いや……いいよ。好きな人を悲しませてまで古巣に戻るつもり無いし、ミナミは統治って言ってたからさ……性に合わないよ」
「けど、娼姫って便利だなー、こうやってナギの本音聞けるんだし」と笑みを浮かべながらナオが言った。
「うるさいなぁ……」と文句を溢すと
「えいっ」とナオに尻尾を捕まれた。
「ふぎゃっ……」
「後、ナギには分かりやすい弱点あるし……」と子悪魔的な笑みを浮かべながら言われが、やはりまともに抵抗出来無かった。
「はい、とりあえず寒いし中に入ろ?」
「わかったよ……」どうにか、自分の気持ちに整理がついたが、もしこれがナカスに居たフレンドが巻き込まれていたら、多分ナオに止められてもナカスに戻っただろうと思うと、何とも複雑な状態になった。俺は恋愛感情よりも友情を選んでしまう人間なんだろう、結局俺は塞ぎ込んだまま、次の日を迎えるのだった。
私はナギの苦悩を完全に解消させられなかった。それが、ただ悔しかった。私はサブ職を使わないと、ナギに本音を言わせられない、ナギのお面の位置でしか悩んでいると結論に至れない。何かに本気になることが少なかった私は、西風に入った理由は仲が良かったフレンドに誘われたからだったし、局長を見ても、熱中しなかった。逆に言えば、ナギに対して想いを抱くだけの魅力を感じている。
「ナギも私も変わって無いのは、お互い様だよね」と宿屋の部屋のベットに寝そべり、ぽつりと呟いたが、隣の部屋にいるナギに聞かれることも無いのでただの独り言になった。ナギは、そこそこ顔の知れたプレイヤーだった。茶会が解散してからも、ログイン率は変わらずに誰かに誘われれば、参加したりする……ある意味便利屋だった。私がナギと初めて会った時も、たまたまパーティーが一緒になっただけで、その後フレンド登録してもらえただけの関係だった。何度かパーティーを組んだりした多少仲が良いだけで、大災害当日に連絡してもとってくれるか不安だった。
「ナオ元気無いの?」と山猫の珠が、私の枕元に現れた。ドゥンの琥珀と言う山猫をペットに出来るアイテムなのだが、気紛れ過ぎる性格の珠は猫らしいと言えば猫らしいが、こういう時に限って聡い猫だ。
「何でも無いよ珠」と珠の頭を撫でてやりながら言った。現実世界では、猫アレルギーだったので、猫と接すると物凄い鼻炎に悩まされてが、猫が好きだったので、わざわざ移動に一時間もかけて、マテル島と言う現実世界で小笠原諸島の島に取りに向かった。
「なら良かった。僕の主様を悲しませる奴が居たら僕が懲らしめなきゃ」と珠が言ったが、これは下手したらナギが危ないと内心で思いつつも
「そんな奴が居ても、ナギまず許さないから大丈夫だよ」と言うと
「僕あの狐尾族、好きじゃないな」と言いやがったので
「珠でも、ナギを悪く言うなら許さないよ?」と厳しく言った。
「はぁい、ごめんなさい」と反省した様子だった。私は少ししょげた珠を胸元に寄せて眠りにつくのだった。