ケモ耳刀使いと回復娼姫   作:奈多ナキル

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天秤祭とあれこれ

 アキバの街が天秤祭の準備で慌ただしくなり始めた頃、ナギの葛藤もどうにか落ち着いた様子だった。

 

 

 掃除などをブラウニーに任せれるし、自分のサブ職が料理人なのもあり、それなりに手持ちが貯まっていた。とは言っても、家を買うときの資金と維持費で俺もナオもゲームの時に稼いでいた額が、9割とんでいっているので、帳簿上は真っ赤なのだが……救いなのは、無駄な出費が抑えられていると言う所だろうか。

 

 

 真っ赤なのは円卓会議も同じく、財政が大変なのだが、シロエの案に期待するしかないが、シロエが言っていた魂魄理論(スピリットセオリー)だったり、色々とブレイクスルーは起きているので、経過観察的な状態だ。アキバの街は天秤祭の話題で持ちきりになり、表面上小健康な状態だ。外から大地人も入ってきており、円卓もレイネシアのいる水楓の館も忙しそうだったが、フリーの俺やナオに出来ることは少ないのだが、ギルドに所属する気は未だに湧かない……

 

 

 すると念話がかかってきた。

 

 

「もしもし?」

 

 

『声音的に疲れてそうだなナギ』

 

 

「KRさん何ですか?」

 

 

『アキバでは天秤祭とやらがあるらしいな』

 

 

「世間話なら切りますよ? ……人の反応を見ながらみたいですし」

 

 

『やっぱりバレてたか』とKRが笑いながら言った。

 

 

「刀使い以前に俺は弓使いですよ? これが外なら射抜いてますからね?」

 

 

『視角外からやられちゃ堪らないからね……おっと与太話をし過ぎたね本題に入ろうか』

 

 

「こっちも見てて解りますよね? 暇じゃないのは」

 

 

『そうなんだろうね……カナミがこっちに向かっている』と聞いた瞬間、息が詰まった。元茶会のリーダーであるカナミは、旦那を追って海外に行ったのだが、そのタイミングでエルダーテイルを引退したのだが、他の茶会のメンバーも諸事情により引退したのもあって、茶会は解散したのだが……カナミと言う人物は、ある意味暴走列車みたいな人だ。旧世界で自分は福岡に居たから被害は被らなかったが、シロエ辺りはもろ喰らっていた。いつも先頭に立つのが好きな人で、思い付きで行動を起こし、無差別に災いと幸運を振り撒く……盤面そのものを無意味に化すレアキャラ染みた人物だ。

 

 

「カナミさんが? ……インティクスさんが知ったらヤバくないですか?」

 

 

『まだ、言ってないよ……出来ればシロエ達にも言わないでくれ』

 

 

「KRさんが珍しくそう言うなら、黙っておきますよ……でもカナミさんと何処で?」

 

 

『中原サーバーだ……因みにカナミは武闘家になっていたよ』

 

 

「欧州サーバーから向かってきているんですか」

 

 

『ま、そう言うことだ……それじゃあな』そう言ってKRとの念話が終了した。

 

 

「まだまだ課題は山積みか……」と溜め息混じりにそう言うと、ナオが外から帰って来た。

 

 

「ナギただいま」とやけにニマニマしながらナオが言った。

 

 

「お帰りナオ……何か良いことでもあったの?」

 

 

「じゃじゃーん、これ見て」そう言って俺に1枚のチラシを見せてきた。

 

 

「ケーキバイキングぅ? 何これ……」と頭を掻きながら言うと、

 

 

「カップルは無料なんだって、更に優勝賞品は水楓の館でのレイネシア姫主催のパーティーの招待券だよ」とナオは目をキラキラさせながら言ってきた。

 

 

「説明と理由になってない」

 

 

「ほら……だから……ね?」

 

 

「ニュアンスで察せれるか」

 

 

「体型気にせずにいっぱい甘い物食べたいけど、お金かけたくないからさ」

 

 

「まぁ……恋人とのらしい思い出作りって出来てなかったからな……」

 

 

「なら決定っ」とナオ言い終わると、ナギに抱き着いた。ナギはどうしたものかと後ろ頭を掻くのだった。

 

 

 天秤祭の数日間の日程で行われる。そして待ちに待ったケーキバイキングの日。ナギは服装に困る事無く、着物を着た。ただ着物は、新しく買っていたものだったが……

 

 

 リビングで待っていたナギの所に、結局西風の仲間に半ば押し付けられた服を着たナオが来た。

 

 

「ナギ、お待たせ……私変じゃないよね?」と少しモジモジしながらナオが訊いてきたので、

 

 

「そんなに待って無いし、良いんじゃないその服装」と俺は言った。ナオの服装は、丁度良い気温なのもあって、白のロングワンピースの上から、デニム風の身丈の短い上着を羽織っていた。足元はヒールが高いブーツを履いていた。ナオはいつもハイヒールを履いているので、歩いたりするのは問題は無いもんな、と俺は結論付けた。

 

 

「じゃ、行くかナオ」

 

 

「うん」そんなやり取りをして二人は、家を出た。

 

 

 道中ナオは、ナギと談笑しながら昨日の事を思い出した。ナオは、前日から結構悩んでいた。

 

 

「着る服考えないとなぁ……私の場合悩んでいる理由が他の人とは違うけど……」と独り言を溢しながら、あーでもない、こーでもない、と私室で洋服をひっくり返していた。今更だが、寝室こそ一緒なのだが、各自の装備を置いたりする為の部屋が、それぞれある。

 

 

「こう考えると、制服って偉大だなぁ……私のあの雰囲気が、制服着て髪をまとめるだけで抑えられるんだから」とナオは愚痴を漏らしていた。旧世界では、ナオ本人はここまで雰囲気が出てなかった。大学では、多少垢抜けたファッションを身に纏っていたので、異性の目線はしばしあった。高校の頃からだっただろうか、妖しい雰囲気になったのは……とは言え私服が自分に似合っても、雰囲気に合ってなかったので問題は特に起こらなかった。

 

 

「こっちに来てから……殆ど同じ服装だったからなぁ」年頃の女性の発言にしては問題があるのだが、普段身につけている殆どの装備に、汚れなどが自動的に落ちる機能が付いているので、それを踏まえて考えると問題は無い……筈だ。

 

 

「西風に行こうかな……私が選ぶより、見立てて貰った方が良いだろうし」と決断すると、ナオは西風の旅団のギルドキャッスルへと向かった。西風の仲間に、私は着せ替え人形のように色々な服を着せられた。最初に和装にさせられたが、似合わなかったらしく、その後ずっと洋装だった。垢抜けた感じなんだけど、少しだけ堅さが残った感じの今の服装になった。清楚系に完全に振ると、雰囲気が更に醸し出していたらしく……この形に落ち着いたのだった。

 

 

 そして、ナオはナギの服装を見た。普段は緩い感じの着物で、落ち着いた色合いだったのだが、今着ている着物は、戦闘時に着ている着物と同じ赤基調だった。ただ、色合いは今着ている着物の方が、朱色なので明るかった。戦闘時は茶色がかった暗い赤なので、真逆と言える。

 

 

 しばらく歩いてケーキバイキングの会場に着いた。会場の一角から、名状しがたいオーラが出ていたのだが、その渦中に居たのは、シロエだった。シロエ挟むように、暗殺者のアカツキと神祗官のミノリが両隣に座っていた。俺は、心の内で合掌するしかなかった。もはや、阿鼻叫喚の地獄絵図なのだ。もし俺が、あの状態なら胃に穴が空きかねないし、色んな意味で胃がもたれてしまいそうだった。ここの責任者であろう人間の悪い笑みが、簡単に脳裏に浮かんだ。そんなことを考えているのが、表情に浮かんでいたらしくナオが、

 

 

「引き吊った笑みになってるけど、ナギ大丈夫?」と訊いてきた。

 

 

「おっ、おう……」と出来た返事は多少ぎこちなかった。その後店員に席に案内されて席に着き、様々な種類のケーキを食べていった。その間もシロエへ向けられる敵愾心と言う名のやっかみは止まなかったが。

 

 

「ナギはどれが気に入った?」とナオに訊かれたので

 

 

「ティラミスかな……旧世界でもショートケーキは苦手だし」と答えると

 

 

「なら、ショートケーキとかは頼まないでおこうかな……因みに私はモンブランかな」

 

 

「まぁ、けど大量には食べれないな」と飲み終わったコーヒーをソーサーに置きながら言った。

 

 

「うん、怨嗟染みたこの空間に居ると胃もたれしそう」と苦笑しながらナオは同意した。

 

 

「そう言えばアカツキさんってシロエ参謀と同年代らしいからな……あのルックスからは判らないけど」と俺が言った。

 

 

「私達とも同年代なんだもんね……でもシロエさんの現状を外から見ると、年下女子を二人も侍らせてるんだから……うーん、グレーゾーンだね」と冗談半分でナオが言ってきた。俺はそれが冗談であることを理解して、

 

 

「俺はノーコメントで」と答えた。

 

 

「程々で帰ろ? ナギ」とナオに提案され、

 

 

「そうだな」と俺は答えたのだった。

 

 

 そして時は流れて、天秤祭の中日が来た。中日の目玉は、ホールで行われる生産職プレイヤーの即売会とファッションショー、水楓の館で行われるパーティー位なのだが、まぁ外からやって来た大地人のトラブル等が生じていたので、商業ギルド連絡会などはてんてこ舞いになっていた。何故か俺とナオは、水楓の館に呼び出されていた。俺達を呼び出した犯人は、レイネシアのメイドであるエリッサさんだった。呼び出した理由は、レイネシアのサポートだ……まぁ妥当な理由だった。ナオが居れば、高慢な上位階級の大地人相手は問題は無い。それに円卓会議に俺達が近しいのもある。

 

 

「今回はお貴族様だけじゃないから楽だね」とナオが言ってきた。

 

 

「そうだな、面倒臭い奴は少ないからな」と俺は鎧の下に何時も着ている着物に、腰に打刀状態の黒牢華を差しながら答えた。ナオの方も戦闘時に着ている法衣だった。そうした理由は、大地人相手に舐められないようにするのと、郷に入ったら郷に従えと言うことわざ通り、ここはアキバなので俺達が大地人の流儀に合わせる必要が無いからだ。

 

 

 水楓の館で、頼まれた事をこなしていったのだが、面倒事が舞い込んできた。古王朝ウェストランデの貴族が来たのだ。魚顔の典型的な性格の貴族だったが、色々とケチをつけてきて、一触即発の状態に気付けばなっていた。

 

 

「……ねぇナギ、私帰って良い?」とナオが小声で訊いてきた。

 

 

「馬鹿っ、こういう場面で動いたらヤバイのはお約束だろうがっ」と俺も小声で言った。少し周囲がざわつき始めたが、すぐに静まって周囲の視線がレイネシアとお魚貴族ともう一人の人物に集まった。シロエが来たので、俺は無意識に緊張していたらしかったので解いた。

 

 

 お魚貴族の来訪による事の顛末はこうだ。円卓会議名義の倉庫がパンクしている状態で、総重量計0.5トンの品物が入る訳無かったのだが、円卓会議名義以外で同等のグレードの倉庫は、十分ある。シロエの機転によって、海洋機構の倉庫に品物を置くことを提案したり、色々な対抗策によって悉くお魚貴族は、退散していった。レイネシアは何処かに連れていかれたが、この騒動のゴタゴタでファッションショーが流れていたので、急遽屋外開催になったと聞いたので、そこに連れて行かれたんだろう、と思考をまとめる俺だった。

 

 

 その日以降から、レイネシア人気が上昇したのは、また別のお話。

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