ケモ耳刀使いと回復娼姫   作:奈多ナキル

8 / 10
大地人の少女

 俺とナオは、鏡の破片があった部屋から子供の泣き声がする方へと移動した。

 

 

「泣き声が少しずつ大きくなってるから……方向はあってるな」

 

 

「うん、そうだと思うよ……私も他の部屋から流れてくる物とは違う種類に視えるし」

 

 

「この部屋か……」と俺は扉の前に立って言った。

 

 

「さっさと入らないと、私が先に入るよ?」と決心がつかないでいる俺をナオが急かしてきた。

 

 

「分かったよ……開けるぞ?」とドアノブに手をかけながら言った。

 

 

「もしトラップだったら、即離脱だよね……でも、そう言うのがあるようには視えないから安心して」

 

 

「了解」と手短に答えて、扉を開けた。

 

 

 部屋の中には、7歳くらいの少女が、一人泣いていた。それを視認すると同時にカーソルを確認して大地人だろう、と思考を纏めながら、ナオにアイコンタクトをした。

 

 

 〔敵じゃないよな? 〕と俺の伝えようとしたことは、ナオは一切齟齬無く伝わった。

 

 

 〔私の方で視ても問題無かったよ〕とアイコンタクトで返事が帰ってきて、俺もそれを一切齟齬無く理解した。そしてナオが先に、その少女に話し掛けた。

 

 

「ねぇ、お嬢さん……何処かに親御さんはいるの?」と優しく少女の頭を撫でながら訊いた。

 

 

「……いない……気付いたらラミ1人だった」と少女は答えた。少女の名前はラミと判って、名前を訊く手間は省けたが、腑に落ちない点しかなかった。

 

 

「貴方のお名前はラミちゃんで合ってる?」と俺が確認のために訊くと、少女は縦にコクりと頷いた。

 

 

「ラミちゃん、貴方のお家は?」とナオが訊くと

 

 

「判らない……ラミずっとここに居た、パパでもママでも無い誰か知らない人に、ここのドアを私が出た後、最初に開けた人が君の両親だって言われた」とラミは答えた。

 

 

「ラミちゃんは待っている間どうしてたの?」と俺が訊くと、

 

 

「ラミがここにいる限り、お腹が空いたり、病気になったりしないって誰か知らない人は言ってた」と答えた。ふと思いついたようにステータスを見た。武士は再使用規制時間が長い特技が多いが、ほぼ全ての特技が使用可能だった。幸いにも再使用規制時間中だった特技が1つだけあったが、時間経過していなかった。そのことから1つの可能性に辿り着いた。

 

 

「もしかすると、この部屋は時間の流れが止まっているか、緩やかなのかもしれない」と珍しく独り言を漏らしてしまった。

 

 

「多分ナギの予想通りなんじゃない?」とナオが言った。

 

 

「二人は、ラミのパパとママなの?」とラミが本題を訊いてきた。

 

 

「ナオ、任せた」と俺はナオに投げる形になっていたが、信頼の裏返しなので問題無い。

 

 

「分かった……ラミちゃん……いえラミおいで」とナオが両腕をラミに向けて広げながら言った。ラミは拒むこと無くナオに抱き着いた。

 

 

「とりあえずアキバに帰ろう……長居はしたくないからな」と自己紹介等を終えてから俺が言うと無言でナオは頷いた。

 

 

 俺達は外に出てから、適当な場所で俺がグリフォンを喚び出してアキバに戻った。ラミをナオに任せて、俺はロデリック商会ー通称ロデ研ーに向かった。通されたロデ研の一室でロデリックを待っていた。

 

 

「ご無沙汰してます、ロデリックさん」

 

 

「こちらこそ、ナギさん」

 

 

「すいません……忙しいのに野暮用に付き合ってもらって」

 

 

「いえいえ行き詰まってたので、気分転換にはもってこいですから」と俺はロデリックと世間話をすませつつ、本題を切り出した。

 

 

「今日こんなものを拾ったんですよね……見る限り怪しいですよね?」と入れ物の中から取り出して見せながら言った。

 

 

「これは?」とロデリックは慎重に扱いながら訊いてきた。

 

 

「多分、鏡の破片なんですけど……落ちていた場所には、フレームだけなのに映る鏡があっただけで、破片はこれ1つだけでした」

 

 

「それは、眉唾物ですね……」

 

 

「ぶっちゃけると何処か不気味だったからもってきたんですし……面倒事になったらなったで、報告書は出しますけどね」と俺は苦し紛れに笑ってみせた。

 

 

「まぁ……こちらも結果が出るまでは不確かな報告は出来ませんしね」とロデリックは苦笑しながら言った。

 

 

「それに参謀には、それ以外にしなきゃならないこともありますしね……黄贄の黄金……俺も見てみたかったですよ」

 

 

「懐事情は厳しいものですからね……こちらも頑張らせてもらいますから」と破片をロデリックは持ちながら言った。

 

 

「ありがとうございます、ロデリックさん……では失礼しますね」

 

 

「とんでもない……こちらこそありがとうございます……今度はお酒でも飲みながらお話を……」

 

 

「ええ……是非」

 

 

 ロデ研を後にした俺だったが、あの遺跡にいた時からずっと何かが引っかかったままだった。それがなんなのか解らないまま、冬になっていくアキバの街を歩いていくのだった。

 

 

 ナギがロデ研でロデリックと話していた頃ナオは、連れ帰ってきたラミを視て言った。

 

 

「ラミ……ママとお風呂入ろうね」

 

 

「お風呂?」とラミは反応したので、

 

 

「体をキレイにする所だよ」と分かるように教えた。ラミは言うほど汚れていないのだが、用心にこしたことは無いし、ラミの着替えは自宅に着く前に買っているのだが、着替えるついでにお風呂に入れてしまおう、と思ったのもあったが……

 

 

「大丈夫だから安心してラミ」と私は不安がるラミをそう言ってお風呂にいれた。一緒にはいっていてわかったが、想定外にもラミはお風呂をあまり怖がらなかった。年相応の反応こそしたもの、そこまでてこずる事は無かった。

 

 

 そうこうしている内にナギがロデ研から帰ってきた。

 

 

「ただいま」

 

 

「お帰りナギ……どうだった?」

 

 

「芳しくはないかな……」

 

 

「そう……」と私が言い終わる頃、リビングから走ってくる足音がした。

 

 

「パパお帰りなさい」

 

 

「ただいまラミ」このやりとりから分かるとは思うが、私達はラミの事を娘と思っている……まだ解っていない事が多いもののアキバの結界内である事や、私やナギが90レベルなのもあるので、大したことはないとこの頃の私達は、たかをくくっていたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。