魔王と親友と紫電   作:刀好きの第六人

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どうも、お初です。ありふれの創作を書いてみたので投稿してみました。




第1話

 

 

『ワンワン!』

 

相棒は、いつもそばに居てくれた。

 

『ワフワフ!』

 

喜んだら一緒に喜んでくれて

 

『クゥン』

 

悲しかったら一緒に悲しんでくれた

 

そんな俺の大切な相棒は中学卒業と同時に、おめでとうと祝福しながらその寿命を……全うした。

 

最初に相棒の命が終わろうとしていたのを気づいた時は、思わずお疲れ様がまず出た。

 

次に来たのは大きな悲しみ。相棒の死に俺は何日も泣き続けた。

 

半身が亡くなるのはまさにこの事かと思うくらい、悲しく、辛かった。

 

そんな俺を見かねた人達が俺の為に色々してくれた。

 

俺の悲しみを受け止めてくれる人。相棒がいた証を作ってくれた人。

 

それ以外にも色んな人が俺を心配してくれた。

 

だからこそ、俺は……前に進もう。そう誓えたのだ。

 

 

_____________________

 

 

月曜日の朝。『新宮蓮二』は目覚まし時計の音で目を覚ました。

 

ムクリと起きて、体を起こす為に上半身を天へと伸ばして、体を目覚めさせる。

 

「んっ、んぁおはよう『ロウ』」

 

蓮二は起きると日課の写真立てに挨拶をする。

 

そこには蓮二と、彼の愛犬であり、今は亡き黒い柴犬の『ロウ』がじゃれあう姿が写っていた。

 

蓮二は日課を終えると、制服に着替え、刀袋と赤黒い腰蓑を巻く。

 

この二つは祖父の刀鍛冶と祖母の革職人の手によって変貌した『ロウ』の遺品だ。

刀の方が『妖刀狼牙』腰蓑の方を『狼黒』と言う。

 

 

「今日も頑張りますか」

 

 

蓮二はその二つを携え、部屋を出た。

 

_____________________

 

 

高校に着いた蓮二は自分の教室まで向かおうと歩いていると、前方から見知った人が歩いてきていた。

 

その人物は赤みがかった髪を束ねた見目麗しく、スラリとした手足とモデルと言っても過分ではないくらいスタイルのいい女性。

 

「げっ、沙羅先生……」

 

「げっ、とはなによげって」

 

久遠寺沙羅。蓮二のクラスの担任であり、親戚でもある彼女は蓮二に対して心外だと唸る。

 

「いやつい癖で」

 

「その癖直さないと社会でやっていけないわよ」

 

「気を付けます」

 

「まあいいわ。今日も昼休み空けておきなさい。愛子連れて学食行くから」

 

「またですか…なんで俺巻き込むんですか」

 

「何か言った?」

 

「いえなんでもありません!」

 

ギラリと光る沙羅の眼光に思わず脊髄反射で了承する蓮二に、彼女は満足そうな笑顔で「それじゃあまたね」と言い残して歩いて行く。

 

「はあ…」

 

蓮二はため息を吐く。それは沙羅と彼女が述べた愛子についてだ。

 

社会科の教師である畑山愛子は背が小ささと可愛らしさの塊で、沙羅がクールビューティーの化身なら、愛子はマスコットの化身である。

 

そんな二人と一緒に昼食を食べれば自然と蓮二に嫉妬や羨望、それ以外だと敵意や悪意だって向けられる。

 

それ等は無視すれば良いのだが、蓮二はそうでも狼牙と狼黒が許さない。

 

この二つの遺品は意志を持っているのか、蓮二に敵意を向ける敵にその意志を倍化させて反射するのだ。

 

そのせいで何人もの生徒が気を失う事件が相次ぐ。そのせいで蓮二はこの高校では『触れてはならぬ者』として通っている。

 

ただでさえ、狼牙と狼黒を持っている蓮二の姿は異端なのだ。これ以上余計な事にしたくはない。

 

更に言えば、正義感の塊(蓮二としては激しい思い込み)の少年によって悪評が立っている。そのせいで嫌な事も何度も有った。

 

実力でテストの満点を取ればカンニングだと騒がれたり、体育祭で活躍すれば買収か脅した等言われたり、散々だ。

 

それを鵜呑みにする生徒や先生が居るからタチが悪い。

 

(俺としては彼女作れたら作って満喫したかったのにな……)

 

溜息しか出ない今の学生生活に我慢しつつ、今日も一日が始まるのだった。

 

 

授業が終わり、昼休みに入ると、沙羅が教室に入ってくる。

 

「蓮二ー!学食行くわよ!」

 

「分かったから叫ばないで!」

 

沙羅に呼ばれた蓮二は狼牙だけを持って沙羅の元へと向かう。

 

「あら?『ロウ』ちゃんも連れて行くの?」

 

「当たり前だろ?『ロウ』を置いてったらクラスの皆倒れちゃうって」

 

「あー……確かに。『ロウ』ちゃんならやりかねない」

 

二人して物騒な話をしているが、実際蓮二がトイレの為に狼牙を置いて行った時は溢れ出る妖気でクラスメイトが倒れていた事もあり、それからは肌身離さず一緒に居る。

 

「それじゃ愛子呼びに行きましょ」

 

沙羅と共に愛子の居るであろうクラスまで行くと、蓮二は思わず苦い顔をする。

 

何故ならこのクラスには、蓮二の悪評をばら撒いた人物が居るからだ。

 

「今日畑山先生ここ担当だったんですか……」

 

「そうなのよね。どうする?蓮二は外で待ってる?」

 

「いや行く。ハジメとも少し話したいし」

 

「南雲君?」

 

「そう」

 

蓮二はこのクラスに居る高校内唯一の友達である南雲ハジメに会う為に、教室内に入る事にした。

 

南雲ハジメは父がゲーム会社の社長、母が人気少女漫画家の純粋培養で育った所謂オタク系の人間だ。

 

モットーは「趣味の合間に人生を」

 

それを叶える為に日夜両親の仕事の手伝いをしながら学生もやり、更にはイラストレーター迄やっており、ツイッラーではフォロワー数50万人を超え、ライトノベルの挿絵や父親のゲームのイラストを担当したりしている。

 

蓮二がハジメと出会ったのは、蓮二がロウを亡くし、行く宛も無く外をふらついていたついていると、子供とおばあちゃんを守る為に不良達に土下座して謝っていた姿を見た時だった。

 

不良達は必死に謝るハジメを踏み躙る様に足蹴にしていた事もあり、蓮二が通報したふりで退散させてから子供とおばあちゃんを見送り、知り合ったついでに話してみると、思いの外話が噛み合いそのまま食事を取りに行ったりした。

 

その際、もう一人ついてきたが、それはあとにしよう。

 

兎に角ハジメは蓮二にとっては親友だった。

 

ロウのイラストを描いてくれた事や、お互いに好きな漫画について語りあえたことを含めて、ハジメは蓮二にとって親友だと思っているのだ。

 

沙羅を先頭に教室に入ると、教室は沙羅の美貌に騒つくがそれを無視してハジメを探すと、

 

ハジメは机に突っ伏して寝ていた。

 

相変わらずだなと思いながら蓮二は近寄る。

 

「よ、ハジメ。相変わらず頑張ってるみたいだな?仕事終わりの徹夜だったか?」

 

「…うん。2冊分の挿絵と表紙を終わらせたくてね。つい朝まで頑張っちゃった」

 

あははと笑いながら10秒チャージのゼリー飲料を飲み干すハジメ。

 

「あれって締め切り大分後じゃなかったか?」

 

「そうなんだけどね?なんかこう、イラストの神が降りてきたんだよ。それを忘れないうちにってやってたんだ」

 

「成る程。そんじゃあまあ頑張ったハジメに、今日は俺の奢りで夕飯行かないか?いいラーメン店見つけたんだよ」

 

「良いね。行く行く」

 

ハジメが蓮二の提案に乗って、楽しみだなぁと言っていると、二人の下に一人の少女がやって来る。

 

「ハジメ君、蓮二君。何の話?」

 

彼女は白崎香織。この高校での二大女神と呼ばれる美少女の一人でハジメの恋人候補と勝手に蓮二が決められている。

 

彼女との出会いはハジメ意気投合して食事を摂りに行こうとした時

 

『私も連れていって欲しいかな!』

 

と、押しかけてきたのだ。

 

勢いのまま香織も連れて食事していたが、香織はハジメにお熱なのか、蓮二とも話すが熱量はハジメの方に向けられていた。

 

その時蓮二は気づいた。彼女はハジメに恋をしているって。

 

その証拠に、連日蓮二ともう一人を含めた『ハジメと香織をくっつけるプロジェクト』というグループで毎日話を聞かされている。

 

「よう、白崎。いやハジメに飯を奢ってやろうって話でな」

 

「そうなの?じゃあ私もついていって良いかな?かなかな?」

 

「えっ、良いけど……白崎さんラーメン大丈夫?」

 

「うん。大丈夫だよ!」

 

「それじゃあ蓮二に奢ってもらうとしよっか」

 

「おいおい……ま、いいけどさ」

 

「だってさ白崎さん」

 

「やった!」

 

ふふふと微笑む香織。その姿はいつも微笑みの絶えない彼女の中でも最上級の微笑みだった。

 

その微笑みを直視で受けたハジメは思わず照れてしまう。

 

二人を見ていた蓮二が微笑ましいなと思っていると、制服の裾を摘まれる。

 

蓮二が後ろを振り向くと、そこには沙羅が居た。

 

「蓮二!早く学食行くわよ!」

 

「分かったよ。そんじゃ二人ともまたな」

 

何処かムスッと怒りながら急かす沙羅について行こうと踵を返すと、沙羅に声が掛かる。

 

「久遠寺先生。私もご一緒して良いですか?」

 

それは一人の少女。名を八重樫雫と言い、香織と同じ二大女神の一人にしてこの高校に沢山の妹を持つというお姉様だ。

 

実家は剣術道場をしており剣道に関する雑誌にも載ることもある位の才媛だ。

 

雫との出会いは香織からの紹介だった。香織がハジメと蓮二に親友を紹介すると連れてきてくれた事が始まりで、それからは香織とハジメをくっつける為に二人で共謀する様になった。

 

 

そんな雫の提案に沙羅は嫌そうな顔をする。

 

「なんでそんなに嫌そうな顔をするんですか!?」

 

「だって貴方、私と蓮二の話に割り込むんだもの。親戚同士話したい事もあるの。」

 

「じゃあ何で愛子先生は良いんですか!?」

 

「私に振らないでください!」

 

私は部外者ですを貫きたい愛子からすればとばっちりだった。

 

「愛子は良いのよ。私達の話を黙って聞いてくれるから。貴方は出しゃばるから」

 

「だって久遠寺先生いつも新宮君にその…私の夫になれって言うから!」

 

「えっ?それってダメなの?」

 

「普通生徒と教師の恋愛はダメですから!」

 

「でも卒業したらそこは大丈夫でしょ?実際教師と生徒の結婚なんてよく聞く話よ?」

 

「だとしてもダメです!」

 

断固として譲らない雫に、思わず沙羅は尋ねる。

 

「……八重樫さんって蓮二の彼女なの?」

 

「か!?かかか彼女!?」

 

沙羅からの発言に思わず顔を真っ赤にする雫。その姿はまさに恋する乙女だなと蓮二は雫を見ている。

 

「違います!私と新宮君はその……」

 

もじもじと指と指をクロスさせている雫は、上手く言葉を紡ぐ事が出来ないでいると、蓮二に助けを求める眼差しを送る。

 

(OK。任せとけ)

 

雫が蓮二に助けを求めることはよくある。

 

それは雫が昔の、ロウを亡くした時と同じ心の支えが無い助けを求めてる自分と似ていると知った時に蓮二が彼女に言った一言が原因だ。

 

『八重樫さん。誰かを頼るのは悪く無いことだ。そのまま助けを求めなければ君は壊れてしまう。だから……俺の事を頼ってくれて良いんだ。男ってのはさ、頼られてなんぼだからさ。遠慮なく頼ってくれ』

 

『ロウ』を失った蓮二の様な雫を見てられなかった。下手すると自分よりも辛い結果になると判断したからこそ、蓮二は彼女の支えになろうとしたのだ。

 

「沙羅先生。俺と八重樫さんはただの友だちぃ!」

 

友達だと言おうとした蓮二に、思わず雫の拳が脇腹に突き刺さり、息を漏らす。

 

「ほ、本当の事を言おうとしただけなのに……」

 

「ご、ごめんなさい新宮君!つい」

 

「ついかよ!……まあいいや。とりあえず俺は行くから。またな」

 

「……うん」

 

蓮二が沙羅と共に愛子を連れて学食へと向かおうとした時、静止の声が掛かる。

 

「待て新宮蓮二」

 

「んだよ…天之河」

 

蓮二が振り向くとそこにいたのは一人の少年、天之河光輝だった。

 

彼は所謂人気者で容姿端麗、スポーツ万能、学力優秀の欠点の無いような男に見えるが…その実、正義感という名の思い込みが激しく、自分が正しいと疑わないのだ。

 

そのせいで蓮二には謂れのない罪が積み重なっている。

 

(面倒なのに捕まったな…)

 

「要件はなんだ?」

 

「何でお前みたいな不良が先生と昼を一緒にするのか、説明しろ」

 

「……はあ?」

 

思わずこいつは何言ってんだ?と言いたげな表情で光輝を見やる。

 

「お前みたいな不良で卑怯者が何故先生達とお昼に行くのかが分からない。それを説明して欲しいんだ」

 

「んな事知るかよ……こっちだって強制的に連れてかるんだからよ。要件それだけなら俺は行くぞ」

 

「ま、待て新宮!」

 

光輝が蓮二の肩を掴もうとする。が、その前に光輝の足元から光りだす。

 

それは幾何学的な文様で、まるで魔法陣の様なそれは瞬く間に教室全部に広がる。

 

「逃げなさい!」

 

「逃げて!」

 

沙羅と愛子の声虚しく、蓮二達は光に包まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今作品のハジメ君はイラストレーターをやっている事にしました。
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