魔王と親友と紫電   作:刀好きの第六人

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評価バーに色が付きました!まさかの赤でビックリしております。

ここからはオレンジくらいには保ちながらこれからも書けていけたら良いなと思います。

これからもよろしくお願いします!


衝突

「なんで檜山達はデュエラさんに殺されそうになっていたんだ!それと新宮、その姿はなんだ!答えろ!」

 

 

練兵場で光輝の声が喧しく響く。特に近くに居た蓮二、ハジメは耳を塞いで

鼓膜を守ろうとするが、寧ろそれによってハウリングしたため、頭がグワングワンと揺れて気持ち悪くなっている。

 

しかし光輝にそれは通じなく、更に追求される。

 

「答えろ新宮!」

 

光輝が我慢の限界と言わんばかりに蓮二の胸倉をつかみに行こうとするが、それは沙羅とデュエラに止められる。

 

「天之河君、止めなさい!」

 

「これ以上蓮二さんに近付くなら、こちらもそれなりの手段に出ますよ」

 

「久遠寺先生!デュエラさん!止めないでくれ!俺は新宮を」

 

「だからやめなさい!」

 

「いい加減にしろ!」

 

頑なに蓮二に近づこうとする光輝に、我慢できなくなったのかデュエラは荒い口調と共に『アズール』を振り下ろして地面に叩きつける。

 

威力が高い振り下ろしのせいか、砂煙を上げながら『アズール』の剣先は地面に陥没し、口の中に砂が入ったのか、ゲホゲホと咽ている光輝にデュエラは殺気を向けながら視線を光輝に移すと話し始める。

 

「幾ら勇者様と言えど、これ以上の行いは処罰の対象として私は動きます」

 

「な!?それは新宮にじゃないのか!?アイツは!」

 

「仲間を殺そうとした」

 

「そうです!だから」

 

「だからと言えど、檜山一行の罪は見逃して、蓮二さんの罪だけを裁くおつもりですか?」

 

ギロリとした目線で光輝を見るデュエラ。彼女は光輝がどう考えているかよく理解していた。檜山達は被害者で、蓮二が加害者。つまり蓮二が檜山達をなんの理由もなく殺そうとしていたと思い込んでいる。

 

デュエラがそう判断したのは彼女の人間関係に起因する。彼女の交友関係に光輝の様な人物と生き写しのように見える者が居たのだ。

 

今はその人物の恋人の努力あってまともになったが、それはもう酷かった。

 

毎日のように苦情が騎士団に来ては友人という事でそれの後始末なんてザラだった事もあり、光輝の思い込みの激しさは見抜いている。

 

だからこそデュエラは蓮二を守る。彼女の道を照らす大きな光とその光に集う強く輝く星達を奪う闇などいらないのだ。

 

「今回の事件は元々そこの畜生どもがハジメさんを死んでもおかしくない状態まで追い込んだのが原因です。勇者様だって自分の大切な人を傷つけられて、黙っていられますか?」

 

「でも!南雲は生きてるしケガだって」

 

「2億ルタと2500人」

 

「え?」

 

「今、ハジメさんのお陰で王国が稼いでいる金額と、彼が作った薬で救われた人の数です。人数は王国以外も含んでおりますが、これだけの人間を救っているのですよハジメさんは。勇者様よりも立派に救世主をしているのですよ」

 

「でも、俺達はこの世界を救う為に訓練を」

 

「そんなの魔物だって出来ますよ。私が言いたいのは異世界の知識という大きな力を人間族に齎し、救っているんです。そんな彼が死ねば、大きな損失になるのが分からないのですか?」

 

「うぐっ…なら新宮は何をしているんですか!アイツは奴隷なんてもので人の自由を奪うような悪なんですよ!」 

 

2億ルタ。日本円で2億円稼いでいて2500人もの人を助けているハジメの有用性は分かった光輝は苦し紛れに蓮二を睨みながら大きな声でそう告げると、檜山達もそうだと言い始める。

 

確かに日本人の感覚からすれば奴隷なんてものは忌避するものだろう。現に集まっていた生徒達や愛子、事情を聞いていない雫、香織、優花、浩介もいい顔はしない。蓮二を非難する雰囲気をたった一言で作った光輝の溢れるカリスマ性にデュエラは忌々しげに歯嚙みする。

 

だが、そんな雰囲気を物ともせず、蓮二は話しだす。

 

「確かに日本人の俺達からすれば奴隷なんてダメだろうな。だがそれは日本の様に基本的人権が備わっていればの話なんだよ……。あの、畑山先生」

 

突如話を振られた愛子は驚きながらも受け答えする。

 

「な、何でしょうか新宮君!?」

 

「先進国の様に政治が整ってない国ではまだ奴隷制度は無くなっても人身売買とかはありますよね?」

 

蓮二が愛子に問いかけたのは彼女が社会科目の教師だからだ。愛子なら世界情勢に詳しいと踏んで問い掛けると、彼女は昏い表情を見せながら答える。

 

「はい…残念ながらまだそういうものは残ってます」

 

「ここで先生からの返事を貰ってからが肝で、この世界の亜人族は差別されてはいるが、奴隷としての需要は非常に高い事を調べた人はいるか?」

 

蓮二が問い掛けるとハジメ、沙羅、雫、香織、優花、浩介以外は首を傾げている。

 

「おいおい元々は学生なんだから勉強しようぜ…俺だって無知は罪だから勉強してるのに……まいいや、亜人族は数が少ないからこそ、奴隷にしたら人権を守られんだよ。人権が守られるって事は表向きでも差別とかされなくなる。つまり俺が言いたいのは、今俺のもとにいる奴隷は人間社会で暮らすには最も安全が保障されてるって事だ」

 

蓮二が細かく説明説明して漸く生徒達にも理解してもらえたのか、ざわざわとしながらも理解者が増えている感覚を覚えていると、光輝はそれでもと食らいつく。

 

「新宮の言いたい事は分かった。でも、彼女の意思を奪っているのは事実だろ?俺なら彼女の意思を尊重して、解放するな。その人だって解放を望んでいるだろうし」

 

「お前さぁ……今のままのが一番安全だって説明しただろ?なんで分からないんだよ……」

 

「蓮二さん。勇者様のような人は固定観念が大きすぎるので、理解は中々してくれませんよ」

 

呆れて物が言えなくなる蓮二を慰めるようにデュエラが肩に手を置いていると、沙羅も空いてる肩に手を乗せてくる。

 

「まあでも、他の生徒達には伝わったんだしいいでしょ?それよりも……」

 

「彼等の処遇ですね」

 

沙羅が本題に戻し、デュエラと共に檜山達を睨むと、彼等は蛇に睨まれた蛙のように身動き取れなくなる。

 

「それで?この世界での殺人未遂ってどれだけ重いのかしら」

 

「そうですね……今回の場合、国の要人とも言えるハジメさんが被害者ですので、少なくとも鉱山送りかと。犯罪奴隷は人権無視した労働をさせますからね」

 

沙羅とデュエラが檜山達の罪の重さを話し合っていると、練兵場に新たな人物がやってきた。

 

それはイシュタルだった。

 

「何事ですかな?先程強い力を感じ取りましたが……」

 

「ランゴバルド様。実は…」

 

メルドが今回の事件の詳細をイシュタルに説明すると、イシュタルは顎髭を触りながら告げる。

 

「成る程。では、檜山殿達には厳重注意という事で今回の事はお終いにしましょう」

 

「「「「はぁ!?」」」」

 

イシュタルの発言に思わず口を揃えてどうしてと言う蓮二、ハジメ、沙羅、愛子。更には雫、香織、優花、浩介も唖然とする。

 

「神の使徒である檜山殿達が犯罪者として裁かれるのは外聞が悪いですし。これから名誉挽回のチャンスを与えるために厳重注意で終わらせます。宜しいですね」

 

「いいわけ「蓮二さん!」なんだよデュエラさ…っ!」

 

蓮二が食ってかかろうとした所をデュエラが肩を掴んで止める。彼女の手は怒りで震えており、今は耐えるしかないと言葉にするまでも無いほど伝わってきた。

 

彼女の想いを無駄にしない為に、蓮二も口を閉じて耐えているとイシュタルは満場一致に喜ぶ。

 

「それでは」

 

言いたいことだけ言ったイシュタルは踵を返して帰っていくと、檜山達は立ち上がり、下卑た笑いをしながら蓮二を挑発する。

 

「残念だったな」

 

「流石イシュタルさん。分かってるぅ」

 

「そうそうイシュタルさんに感謝感謝。行こうぜ」

 

「じゃあな。何も言い返せない負け犬さんよ」

 

檜山達はそう言い残して去ろうとする。その際『狼牙』からはかなりの妖気が漏れていたが、それは蓮二の技能で彼等に向かないように抑えていた。

 

彼等に関わらないように、生徒達もそれぞれ元の場所に帰っていく姿を見ながら、蓮二はデュエラとメルドに問いかける

 

「この国って国王よりも教皇の方が偉いんですか?」

 

蓮二が問いかけると、嫌々ながらもそうだと言わんばかりに頷く二人。

 

「すまない。本当なら国の法律が裁くんだが、神の使徒の扱いだけは教会が握っているんだ」

 

「つまり、アイツらがどれだけこの国で悪事を働こうが教会が無罪と言えば無罪になるんですね」

 

「……ああ」

 

「チッ……つまり治外法権があんのかよ。んで?そんな事実を知った勇者様はどうするよ?教会は間違っているとでも言うのか?」

 

蓮二は真の正義感が有ると思い、最後の希望として光輝に聞くが、彼の答えは蓮二を失望させるには充分だった

 

「……俺は、イシュタルさんが正しいと思う」

 

「はあ?お前正気か?」

 

「たかがこんな事で仲間割れなんてしてたら、世界なんて救えないし、皆を守れない。だから俺は、イシュタルさんの選択は正しいと思ってる」

 

その一言を聞いた蓮二は、怒りが湧き出し、思わず光輝の胸ぐらを掴んで怒鳴る。

 

「たかがだと!テメェ!ハジメが仲間に殺されかけたのをこんな事で済ませていいのか!皆を守るって言っておいて、ハジメは見捨てんのか!あぁ!?」

 

「俺は見捨てるなんて言ってない!ただ俺は仲間を守るためなら」

 

「だからテメェの中ではハジメは仲間として認識してねえって事だろ!」

 

「そんなわけないだろ!南雲だって仲間だ!」

 

「ならなんで守ろうとしねぇ!ステータスプレート渡された時に能力値が一般人と同じだって分かってただろ!一般人がお前らみたいな高ステータスの奴等から攻撃を受けてみろ!一撃で死ぬんだぞ!この世界はゲームみたいに蘇生魔法の無いコンテニュー出来ない現実で俺達は人を殺せる武器と魔法をもってんだぞ!お前はリーダーとしての自覚を持て!本当に仲間を守りたいのなら仲間を裏切ったり殺そうとしたりする奴等を罰しろ!」

 

「俺は檜山達を信じる!檜山達だって反省してるはずだ!」

 

「それなら俺を挑発したりあんな笑いするわけ無いだろ!アイツ等は反省なんてしてねぇよ!お前去り際の言葉を聞いてなかったのか!?断言してやる!アイツらは近い内にまた同じことをやる!それも今度はハジメよりも立場の弱い一般人に仕掛けるぞ!それも女子供にだ!王国の法律では裁けない、教会が許せば何をしても良いと思ってやがるアイツ等は女の尊厳を踏み躙りながら殺し、何も悪い事をしていない非力な子供は玩具の様に殺されるんだよ!それも誰も気づかれない様に、孤児院の子達なんか格好の獲物だろうよ!」

 

「檜山達はそんな事しない!絶対にだ!お前みたいな卑怯者で奴隷を手に入れるような屑と檜山達は違う!」

 

「っ!ふざけんな!」

 

蓮二はミレイナの事を何にも知らない光輝に対して怒りに身を任せ顔をブン殴る。

 

高いステータスを持つ蓮二の拳は、光輝の頬に痣をつくり、口の中は切れ、光輝の口内には鉄の味が広がる。

 

「光輝!新宮ァァ!」

 

幼馴染を殴られた龍太郎は蓮二に対する怒りで殴りかかろうとするが、沙羅が間に入って邪魔をする。

 

「退いてください久遠寺先生!アイツは光輝を!」

 

「坂上君に彼を殴る権利は無いわ。それとも、私を倒してでも殴りに行くかしら?」

 

沙羅は『ヴァイオレント』と『エクレール』を構え、雷迅功を発動させる。全身から紫電を撒き散らせながら、武器を構える沙羅は冷徹に、人を殺す覚悟を持った瞳で龍太郎を見る。

 

「やるのなら私も本気で行くわよ。殺す気でね」

 

「……っ」

 

沙羅から放たれる紫電とオーラから、勝ち目がない事が分かると、龍太郎は大人しくする。

 

その間にも蓮二と光輝の問答は続いていた。

 

「檜山達は真面目な奴等だ!だから」

 

「元々真面目なら、金目的でハジメを殺そうとするわけねぇだろ!いい加減現実みろよ!アイツ等がお前の言う守るべき者を攻撃して人を不幸にさせる卑怯者の屑だってよ!」

 

「卑怯者の屑はお前だ!先生やリリィの弱みを握ったりする様なお前の方がよっぽど屑だ!」

 

蓮二と光輝の問答は平行線だった。

 

現実を理解し、未来に確実に起こると冷静に判断して伝える蓮二の言葉は、蓮二を自分にとって、世界にとっての悪だと認識している光輝には何も響かない。それどころか、光輝には蓮二の言っていることは世迷言だと思われていた。

 

埒があかない。そう感じた蓮二は、『狼牙』を抜いてでも教え込んでやろうと柄を掴み、抜刀しようとするが、どれだけ力を入れても抜けなかった。

 

「『ロウ』?」

 

蓮二が『狼牙』に問いかけると、『狼牙』から妖気が漏れ、蓮二を包む。それは敵意や害意に対する拒絶の妖気では無く、彼の心を癒す妖気だった。

 

 

『狼牙』は蓮二に、檜山等と同じ外道に堕ちないように、その刃を抜けないようにしていた。蓮二はその『狼牙』の想いを妖気越しに伝わると、半身の相棒に感謝する。

 

「ありがとよ『ロウ』。お前のお陰で俺は檜山達と同じところに堕ちなくて済んだよ…」

 

蓮二は『狼牙』に窘められ、ヒートアップしていた心を冷まし、光輝を掴んでいた手を離してから告げる。

 

「天乃河。お前の正義感有るところは好ましいし悪を許さない気持ちはよく分かる。でも自分の考えだけが正義じゃないんだ。本当の正義を語るのなら他者の正義を認め、真の悪とはなんなのかを探さないといけない。だから天乃河、檜山達の行動には注意しろ。アイツ等はこれから確実にお前の嫌う悪を行うはずだ。…もし、そうなったら俺は……問答無用で殺す」

 

そう言い残すと、蓮二は沙羅とハジメとデュエラに話しを切り出す。

 

「行こう」

 

「ええ」

 

「……うん」

 

「分かりました」

 

蓮二達四人は練兵場から立ち去ろうと動き出す。その前に雫が蓮二について行こうと話し掛ける

 

「私達も行くわ。今は城に居たくないの」

 

「……好きにしてくれ」

 

蓮二が自分たちの意思に任せると言うと、雫、香織、優花、浩介はついて行く。

 

蓮二達が歩き出すと同時に、メルドは蓮二達に告げる。

 

「明日から実地訓練で全員『オルクス大迷宮』に行く事になってる!明日の朝には城に来てくれ!」

 

メルドの伝言を聞いた蓮二達はそれぞれ頷き、再度歩き始めると、光輝が呼び止める。

 

「新宮!」

 

「ん?」

 

「俺は……俺は最後まで檜山達を信じる!お前がなんと言おうとも!」

 

「そうかい……」

 

蓮二は最後まで変わろうとしない光輝を見て、失望に似た何かを感じながら、この場を立ち去るのだった。

 

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