魔王と親友と紫電   作:刀好きの第六人

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出発

城下町の借家の居間に集まった九人の内の三人。蓮二、優花、雫はキッチンに立ちながら昼食の準備をしている中、ソファーテーブルが置かれた所で沙羅はデュエラと共にイシュタルに対しての愚痴りあいという名の酒飲みにミレイナを巻き込んで始め、テーブル席ではハジメはリンゴに似た果物で作った蓮二お手製のジュースを飲みながら香織、浩介と共に明日のことについて話していた。

 

「それで二人は明日からの実地訓練は誰と組むの?」

 

「俺は重吾達とかな。なんだかんだこっちでも付き合いあるし」

 

「私と雫ちゃんは多分天之河君のチームかな…不本意だけど。多分向こうでパーティー作られてると思うから」

 

「ご愁傷様…」

 

苦笑いするハジメは落ち込んでいる香織に何か出来ないかと思考していると、ハジメはいいアイデアを浮かび、提案してみる。

 

「じゃあこの実地訓練が終わったら、何か身に着けやすいアイテムを作るよ」

 

「…本当に?」

 

「うん。どんなのがいいかな?」

 

「指輪がいい」

 

「ゆ、指輪?」

 

「…ダメかな?」

 

思わずウルウルさせた瞳でハジメを見る香織。彼女の様な美少女の涙目は反則だと思いながらハジメは答える。

 

「ううん、いいよ」

 

「本当に!?やった、ハジメ君からのエンゲージリングだ」

 

「え、エンゲージリング…」

 

香織が指輪をお願いした理由が分かると、ハジメは顔を赤くする。香織の喜ぶ顔を見ては作らない訳には行かないなと思っていると、浩介が口を開く。

 

「他人の恋路って見てると微笑ましいのな…新宮と久遠寺先生はとてもお似合いだし、今は南雲と白崎さんも相性良さそうに見えるし…俺も相手欲しいよ」

 

浩介が溜息混じりに恋をしたいと言っていると、蓮二と雫と優花が料理の皿を持ってやって来る。

 

「お待ちどう。ミートソースのパスタだぞー」

 

蓮二はテーブルにミートソースのパスタを配膳していく。この世界でのトマトは見つからなかったため、デミグラス風にしているが、ソースの重厚感ある香りに、ハジメたちの食欲が刺激される。

 

本格的なパスタを見て、浩介は蓮二に問いかける。

 

「これ新宮が作ったのか?」

 

「ああ。ソースの方は昨日のうちに仕込んでおいて、今日はパスタを茹でるだけにしておいたんだ。パスタも手打ちだから、味の保証はないけどな」

 

「いやいや充分凄いって!新宮って料理得意だったんだな」

 

浩介が感心していると、雫と優花の顔が暗いのに気付き声を掛ける。

 

「どうしたの?」

 

「いやね、アタシ達よりも料理上手な新宮に負けた気がして…」

 

「なんかこう…ね」

 

「あー」

 

二人が暗かった理由が分かると浩介は納得する。異世界でも本格的な料理が出来る蓮二のスペックの高さに負けたと感じるのも無理はないだろう。

 

意気消沈する雫と優花を他所に、蓮二は沙羅達酒盛り組にも料理を配膳していく。

 

「ありがと蓮二〜」

 

「沙羅先生もデュエラさんも明日の事考えてお酒飲んでくださいね」

 

「承知しております」

 

「分かってるって〜」

 

しっかり明日のことを考えて少量しか飲んでいないデュエラと、二日酔い確定な飲みっぷりを見せている沙羅に注意をし終えた蓮二がハジメ達の元に戻ろうとすると、ミレイナが服の裾をつかむ。

 

「お願い助けて!私酔っ払いの相手苦手なの!」

 

ミレイナが助けを求めてくるが、蓮二としては一度沙羅に巻き込まれたミレイナを助ける事は出来なかった。

 

下手に飲み相手、特に女性を連れて行くと、沙羅からの嫉妬が怖いからだ。

 

「すまんミレイナ。俺の為に犠牲になってくれ」

 

「いやちょっとそれ酷くない!ねぇ!行かないでよぉぉ!」

 

「ん〜!ミレイナちゃんも飲むわよー!」

 

「いやいや!私お酒ダメなの!本当!飲むと脱ぎ癖でるから!」

 

「「「脱ぎ癖!?……はっ!」」」

 

ミレイナの脱ぎ癖発言に思わず反応してしまう蓮二達男性陣。男としては美少女の艶やかな姿を見たいと思ってしまうのは当然だった。しかし。

 

「蓮二、ちょっとお話しましょうか?」

 

「そうですね。教育しないといけませんね」

 

「先生、デュエラさん。私も手伝います」

 

「ハジメ君。正座しよっか」

 

「「……はい」」

 

男の煩悩によって蓮二は沙羅とデュエラと雫に、ハジメは香織からのお説教を受けることとなる。それを見ながら優花は一人ごちる。

 

「アタシも彼氏出来たらああやって自分好みにする為に説教するのかな…ああ遠藤とかは彼氏にしたいとかは考えてないから」

 

「告白してないのに振られた!?」

 

突然振られた浩介は思春期の男子生徒としての心が傷つくのだった。

 

______________________________

 

 

「それにしてもサラサラの白髪ねぇ」

 

昼食を終えた後ハジメと香織と優花と浩介はハジメの自室に、居間では蓮二の髪を梳く雫は女子顔負けの白色の長髪に脱帽していた。何があったらここまでの変化するのか疑問に思いながら髪を触っていると、段々むず痒くなったのか溜息を吐く蓮二はステータスを確認していた。

 

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新宮蓮二 17歳 男 半人半妖【妖状態】

レベル:5

天職:妖刀師

筋力:500

体力:440

耐性:220

敏捷:800

魔力:0

魔耐:400

妖力 : 2500

妖耐:3000

技能:抜刀術【我流】【残月】【神風】【煉獄撃】【煉獄斬】【斬撃強化】【一刀両断】・妖刀制御・神速・煉獄・妖力操作・真名解放・限界超越【成長効率上昇】・妖気覚醒【ロウ】・人化・妖化【妖刀進化】【妖具進化】【妖気強化】【妖気効率上昇】・ウォークライ・勇士の誇り・言語理解

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「…はあ?」

 

蓮二は色々と変わっているステータスプレートの表記に思わず何故とクエスチョンマークが浮かぶ。

 

「人化に限界超越の派生技能、更には妖化の派生技能五つとかなにこれ……そもそも人化も妖化も無かったのに……」

 

「どうかしたの蓮二?……うわ、なにこのステータス!?四桁あるのはそうだけど、数値おかしいって!」

 

後ろから見ていた雫が思わず驚く。その声に気づいたデュエラはお酒を片手にやってくる。

 

「蓮二さん、失礼します……これは」

 

お酒を飲んでるのにも関わらずケロッとしているデュエラもまた、蓮二のステータスを見て驚く。

 

「今の蓮二さんは妖状態という、謂わば状態変化しているんですね。となると、今日生まれた技能、人化で元に戻れそうですね。蓮二さん、元に戻るイメージをしてみてください」

 

「分かった……」

 

蓮二が目を瞑り、元の姿をイメージしていると、ナニカが内に眠っていく感覚を蓮二が覚えていると、見た目に変化が起こる。白髪だった髪は黒く染まり、長さも元に戻って行く。

 

無事に元に戻れたのを確認したデュエラは蓮二にもう良いと伝えると、彼は目を開ける。真紅のように赤かった瞳も元に戻り、デュエラと雫はホッとしてると、沙羅がやって来た。

 

「あら〜蓮二ってば元に戻ったのね。さっき迄の姿もかっこいいけどやっぱり見慣れた姿も素敵ね〜ほらデュエラさん。飲むわよ」

 

「明日辛くなりますよ」

 

「沙羅先生はある程度飲むとすぐ寝て、寝た後はケロッとしてるから大丈夫ですよ」

 

「そうそう。ほら~溜め込んだストレス吐き出しましょ~」

 

「全く…」

 

うふふと笑う沙羅は呆れているデュエラを連れて宴席に戻るのを蓮二は見送り、夕飯の準備をする為に蓮二は一人買い物に行こうと買い物カバンと生活用の共有財布を持って家を出ようとする。

 

「そんじゃあまあ俺は夕飯の買い物行くけど、雫達はどうする?そろそろ城戻らないと行けないんだろ?」

 

蓮二の問いかけに雫は残念にしながら、コクリと頷く。

 

「ええ。残念だけど……」

 

「そんじゃ、送ってくわ。悪いけど3人を連れて来てくれるか?ハジメの自室はすぐそこだから」

 

「分かったわ」

 

蓮二は雫に呼び出しを頼むと、沙羅に夕飯のメニューのリクエストを聞きに行くと、酔いが回ったのか、スヤスヤと寝ていた。それに釣られてか、ミレイナも寝ており、起こしちゃいけないなと思った蓮二はデュエラに小声で買い物に行くと伝えて、雫達を待つ事数分。漸くやってきた四人を連れて借家を出るのだった。

 

____________________

 

 

翌日の朝。蓮二、ハジメ、沙羅、ミレイナは王城前迄来ていた。ミレイナを連れてきているのは、単純に彼女を単身で置いて何か起きないかの心配だった。

 

王城の前は既に幾つかの馬車が集まっており、護衛の騎士の元それぞれのパーティに分かれて馬車に乗り込む姿が見え、更には実際に魔物を殺す訓練が始まる事に対して考えている生徒が殆どなためか此方を見る余裕はなさそうだった。

 

これには蓮二達も助かった。何故ならミレイナを見られても今なら一悶着は無さそうだからだ。

 

一安心蓮二達は自分達の護衛になる騎士のデュエラを探していると、直ぐに見つけられたので其方に向かうと、デュエラは柔和な笑みを見せて蓮二達を迎える。

 

「おはよう御座います蓮二さん、沙羅さん、ハジメさん、ミレイナさん。皆さんの馬車は最後尾になります」

 

そう言ってデュエラが蓮二達を連れて馬車へと向かい、五人が乗り込むと、一番前に乗り込んだであろうメルドが号令をかける。

 

「これより宿場町ホルアドへと向かう!」

 

その掛け声と共に全ての馬車が動き出すと、一行は『オルクス大迷宮』のある宿場町ホルアドへと向かって行く。

 

馬車の中では沙羅とデュエラがホルアドにある酒について話したり、ハジメはミレイナにゲーソンを教えていたりと中々賑やかな時間が生まれている。

 

それを見ながら蓮二は微笑ましそうに見ていると、『狼牙』と『狼黒』が自分も楽しいと言わんばかりに震えている。

 

(そうか、お前も楽しいんだな『ロウ』…俺もだよ)

 

この時間を守っていきたい。そう思っている蓮二は『オルクス大迷宮』での実地訓練後の事を考える。

 

(この訓練が終われば次は本格的に戦争への参加だろう……もしそうなら俺は、仲間を守る為にまたあの状態になってでも戦ってやる)

 

蓮二は例え自分がまた【妖】の姿になってでもこの大切な仲間を守ろうとこの場決意する。

 

しかし、その決意は悪意ある者によって守れなくなる事を、その時の蓮二は知らなかった。

 




と言うわけで明日は月下の語らいやってオルクス編に突入します。
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