魔王と親友と紫電   作:刀好きの第六人

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王城での一悶着

ミレイナが蓮二達と一緒に行動する様になって更に数日が経過した。

 

流石に彼女を連れて城には入れないと考えた結果蓮二達はミレイナと共に城下街の借家を借りてそこに住み出した。

 

神の使徒が市井で暮らすのはどうかと、上層部は顰めっ面したりしたが、蓮二が「それじゃあ亜人の奴隷連れて来て良いのか?」と聞くと、それは困ると言われ、それならという事で蓮二達は市井で暮らしていい許可が降りた。

 

その代わり、亜人を連れ込んでいる事を知った光輝からは目の敵にされ、また面倒な事にはなっている。

 

光輝曰く、「奴隷なんてダメだ!俺が解放して彼女を自由にする!」らしい。

 

このトータスでの奴隷の扱いは亜人でもしっかり人権を守っている為、寧ろミレイナは奴隷のままの方が良い。

 

誰かの所有物にしておけばいざと言う時守れるからだ。

 

そんなミレイナの事を考えながら蓮二、沙羅、ハジメ、通いでデュエラが来る形で異世界生活をしている。

 

そして今蓮二、沙羅、ハジメはデュエラがメルドを脅……説得して手に入れてきたステータスプレートをミレイナに渡して、彼女のステータスを見ていた所だ。

 

 

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ミレイナ・アージェス 18歳 女 レベル:25

天職:歌姫

筋力:80

体力:350

耐性:400

敏捷:100

魔力:3500

魔耐:4000

技能:聖歌【全能力上昇】【指定者への効果上昇】【浄化】【自動回復】・魔歌【全能力減少】【呪い】【状態異常付与】・魔力操作【声帯強化】・魔力防壁【全耐性】・風の祝福【風魔法適正】【風魔法威力強化】【風魔法詠唱破棄】・並列発動

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ミレイナは歌による補助に特化しており、支援と妨害が出来るみたいだ。

 

特に凄まじいのは魔力と魔耐で、蓮二の妖力を超えている。

 

更には風の祝福と呼ばれる技能と並列発動で風魔法を使用しながら歌を歌う事も出来るみたいで、後衛としてはこれ以上無いくらい強い。

 

「なぁハジメ」

 

「なに蓮二?」

 

ミレイナのステータスを見た蓮二はハジメに問いかけると、テンションあげながら話す。

 

「ミレイナって俺達の世界でいうアイドルやれるんじゃね?」

 

「!確かに……歌で支援出来るのならアイドルやれるよね!ほら、聞くだけで元気になるのならそれこそピッタリだよ!」

 

「よーし!そうと決まればハジメ!俺達の世界の歌で歌詞を全部覚えてる奴書き出してミレイナに歌ってもらって、どれが使えるか試してみて貰おうぜ!」

 

「それなら僕!ゲーソンメインで教えたい!」

 

「いやアニソンも良いぞ!特に声優がアイドルユニット組んだ奴とかマジでいい!」

 

男二人で盛り上がる中、デュエラとミレイナは「アニソン?ゲーソン?」と頭上にハテナマークを出し、沙羅はそんな蓮二に近寄るとムスッとしながら話す。

 

「そんなにアイドルとか好きなのかしら蓮二?」

 

笑いながら話しかける沙羅。しかし蓮二には分かる。彼女が笑っていない事に、更に言えば女の嫉妬の様なものが垣間見えている事も。

 

これは不味いと感じた蓮二は慌てて言い訳する。

 

「いや、これはミレイナの技能が何処までの歌を反映するか知りたくて」

 

「そんなのどうでも良いから、さっさと正座」

 

「えっ?」

 

「正座」

 

「はい……」

 

有無を言わさない沙羅に負けて、蓮二は正座すると、沙羅は口を開く。

 

「いい蓮二。向こうに帰ったら女の子のアイドルとか見るの禁止だから」

 

「えっ!?それってテレビ殆ど見れないじゃん!」

 

「あ、勿論アニメを見る時は私が監修したのだけなら一緒に見る事で許してあげる」

 

「アニメくらい自由に見せてください!」

 

「ダメに決まってるでしょ。蓮二が他の女の子に目移りしないように、若いうちから教育するつもりなんだから」

 

「それって日常生活に支障きたすから!俺だって女子とたまに話してたし!」

 

「は?」

 

「あ、やべ……」

 

今の沙羅には絶対言ってはならない事を言ってしまった蓮二は顔を青くしながら、沙羅に頭をアイアンクローの形で掴まれる。

 

「何?私以外の女と話してたの?私が居ないからってビッチ達と話をしてたの?」

 

「いやいやビッチって決めつけはぎゃぁぁ!!」

 

蓮二が反論しようとすると、沙羅は指に力を込めてぎゅうっと締め付ける。

 

「あなたと同じ歳の女子は大体顔とかセックスの腕で男を乗り換えるビッチだから。私結構情報通でね。貴方のクラスにいる子の素行は調査済みなの。あんな女どもは他校の子とラブホ入ってにゃんにゃんしてるのに貴方にも色目かける子達だからビッチで良いのよ」

 

「えっ!?マジで!?色目使われてたのあいたたたたた!頭がザクロの様に潰れるぅぅ!!」

 

「今如何わしい妄想したでしょ?」

 

「すいませんでしたぁぁぁぁ!!」

 

蓮二は正直に謝るが、沙羅は力を緩めないままお仕置きしていると、それを見ていたハジメ達は傍観者になりながら感想を言い合う。

 

「愛されてますね蓮二さんは」

 

「え!?あれ愛されてるの!?ただの鬼嫁だよね!?」

 

「いえ、うちの馬鹿親父もよくやられてますから。特に女の匂いをさせた日なんて一日中寝室に籠りきりになって父を調きょ……いえ、愛を確かめ合います」

 

「今調教って言いかけたよね!?」

 

「ふーん、二人はあんな関係なのね」

 

三人は蓮二と沙羅の夫婦喧嘩(沙羅の一方的な嫉妬)を見ながら、異世界生活も悪くないと思うのだった。

 

 

_____________________

 

「あー。痛かった……」

 

「ご愁傷様蓮二」

 

場所は変わって王城内。蓮二は久しぶりにこのトータスの知識が学べる図書庫に向かおうとしていた。

 

知識を得る為にとはいえ、今の王城には来たくなかった。蓮二としては他の生徒達とはあまり会いたくないのもある。それは生徒達に蓮二が亜人の性奴隷を買って色んな事を強要させてるという噂が立っているからだ。

 

勿論これは捏造で、正義感という名の思い込みの激しい少年による確証の無い噂かつ、日本でも蓮二を好ましく思っていない者共もそれを言いふらしており、王城内はそれを鵜呑みにした連中によって蓮二にとっては針の筵になっている。

 

勿論そうじゃない者も居る。リリアーナを筆頭とした心ある貴族と使用人達だ。

 

蓮二はこの二週間全てを訓練に充てるのではなく、王城内の人間関係を滑らかにする為の交流を行っていた。

 

ある時は新料理のアイデアを、ある時は仕事の手伝い、またある時はハジメが作ったチェスなどのゲームを持っていっては色んな人と交流を深めていった。

 

そのおかげもあって、噂を信じ込んでいるのは生徒達と蓮二達を好まない連中だけに抑え込んでいる。

 

因みにだが、チェス等のハジメじゃなくても作れるゲームはリリアーナの政治的な力を増やす為に使う資金の足がかりにしてほしいと製法を譲った。

 

その為かなり纏まった金額が蓮二達に支払われ、王国に頼らなくても生活できるくらいには余裕が出来ている。

 

それ以外にもハジメの有能さを売り込む為に色んな開発品や医薬品、特にトータスでは不治の病である結核似た病気等に効く特効薬を進呈している為、非戦闘天職ではあるが、国にとって居なくなればかなりの痛手になるとまで思い込ませる事にも成功している。

 

そんなこんなで王国に利益を与えてる蓮二達はそれなりに自由を得ている為、こうして二人で歩く事も出来る。

 

 

「そんで?今日はハジメ何すんの?」

 

「今日は姫様に頼まれた薬の調薬かな?僕の作った薬でかなりの病人が治ってるらしくて、王国の各地どころか国外からも要望があるみたい」

 

「そっか。やっぱりハジメは凄えな。薬まで作れるなんてよ」

 

「これも久遠寺先生が元医学部だったお陰だよ先生の薬学知識が無かったら作れなかったものも多かったし」

 

しみじみとハジメが沙羅に感謝していると、ハジメの目的地に到着する。

 

「あ、調合室に着いたね。それじゃあ僕は仕事があるから」

 

「無茶すんなよ。親友が酷使される姿は見たくねえからな」

 

「うん。無理のない範囲で頑張るよ」

 

「じゃ、また後でな」

 

ハジメが調合室に入るのを確認した蓮二は、後ろから来ている人達の気配に対して、声を掛ける。

 

「なんか用か?」

 

蓮二が問いかけながら振り向くと、そこに居たのは光輝と、ハジメを笑い者にした檜山大介とその取り巻きであろう三人の男子生徒達だった。

 

更に光輝は怒っているのか、蓮二を目の敵にしては怒鳴り出す。

 

「どうして檜山達からお金を奪ったりなんてした!答えろ新宮!」

 

「……はぁ?」

 

(コイツは何を言ってるんだ?)

 

蓮二は光輝が何を言ってるのか理解できなかった。そもそも檜山達から金をむしり取る程余裕が無いわけではない。寧ろチェスの製法譲渡で使い切れないくらいの資金が有る。

 

にも関わらず、金を奪ったとはどういう事だと蓮二は質問を投げかける。

 

「あー……先ずはどんな状況で檜山達から金を奪ったか事細やかに教えてくれない?あ、勿論不備が無いように話は最後まで聞くから」

 

蓮二が物事を解決する為に相手の話を聞く姿勢を取ると、光輝は周囲にも聞こえるように高らかに説明する。

 

それは昨日の事。生徒達が自由に行動出来る日に城下街の屋台通りを食べ歩きの為に練り歩いていた檜山達は、突如蓮二が現れると、金を寄越せと脅してきた。勿論それは嫌だと断ると、蓮二は暴力に訴えてきて、四人を暴行した後金を奪って今に至るらしい。

 

説明を全部聞いた蓮二は、溜息を吐きながら呆れた視線を送る。

 

「お前アホか?」

 

「な!?俺はアホじゃない!」

 

「いやいやアホだろ……とりあえず被害者がここにいる事は分かった。んで?目撃者は?それに暴力事件なんて起きてれば警備の兵士さん達に話が通ってるとしたらさ、俺ここに来る前に取調べ受けてるから今いないよ?」

 

「目撃者は檜山達だ!彼等一人一人がお前の事を見ていたんだ!」

 

「いやいやいや。被害者が目撃者にならんからな。被害者なんて捏造する可能性あるし」

 

「おいおい!俺等は確かにお前に殴られたぞ!な!?」

 

「そうだ!折角の休日にあんな事されたら嫌でも覚えてるぜ!」

 

ぎゃーぎゃーと被害者ぶる四人。その騒ぎ声に気づいたのか周囲にいた城に勤める人達、主にメイド達が来てしまう。

 

その中で一人だけ貴族然とした人物が光輝に話しかける。

 

「どうしましたか勇者様に神の使徒の方々?」

 

「ウサンさん!実は新宮が仲間から金を奪いまして」

 

「ほうほう。それは一大事ですね」

 

光輝にウサンと呼ばれた貴族は、これは大変だとオーバーなリアクションを取りながら蓮二を見ながら話し始める。

 

「いくら神の使徒様と言えども犯罪は犯罪。これは檜山様たちに何か補填がいりますね」

 

下卑た笑いをしながら補填が必要だと宣うウサン。それを好機到来と見た檜山達は下種な笑みで蓮二を見る。

 

「ウサンさんがそういってんだからよ何かしら俺達に寄越してくれくれよ。お前が奴隷買えるくらい金持ってんの知ってんだよ。それともその大事そうに持っているものでもいいんだぜ」

 

優勢なのをいいことに蓮二に集る檜山は蓮二に近寄ると、『狼牙』の柄を掴む。それが命を捨てるかもしれない結果になるとも知らずに。

 

檜山が『狼牙』の柄を掴んだ瞬間、檜山へと拒絶反応の様に湧き出る妖気が襲った。

 

「ああああああああ!」

 

たった一瞬の事にも関わらず、檜山は高濃度の妖気を浴び、体に走る拒絶反応による激痛に絶叫する。それも当然だ。『狼牙』にとって嫌いな存在が触れてきたのだ。全力で拒絶もする。

 

『狼牙』に触れていいのは蓮二の事が好きな人のみ。それ以外は滅してもいい。その意思が『狼牙』にはある。

 

だからこそこうなるのは当然の結果なのだが、それを知らない者からすれば何事だと思うしかなかった。

 

「おい大介!?大介!?」

 

「あああ!やめてくれ!やめてくれよぉ!」

 

仲間が声を掛けようが今の檜山には届かない。高濃度の妖気を浴びた彼は悪夢のようなものと体に走る激痛でそれどころではない。

 

そんな檜山を見て蓮二は一言告げる。

 

「次は誰がこうなるかな?」

 

悪魔の様な一言に周囲の人達は後退りする。それを見た蓮二は更に告げる。

 

「ああ、大丈夫ですよ。こうなるのは俺の敵だけなので…まあそこの貴族はこうなるかもな」

 

蓮二がそう告げると周囲の人の殆どがほっと安堵する。今集まっている人の殆どが蓮二を好意的に見ているからだ。

 

そうじゃない人物とウサンと呼ばれた貴族は恐怖の声をあげると、そそくさと逃げるように退散する。

 

「まあ、ああいう小物はちょっとした事で逃げるよな…あ、お集りの皆さんもお仕事お疲れ様です。すいませんね。茶番劇を見せてしまって」

 

蓮二が申し訳ない気持ちで謝罪するとメイド達が蓮二に話しかける。

 

「いえ、蓮二様が大変な状況に陥りかけているのを見て助けが要るかと思い私達は集まっただけですので」

 

「そーそー。蓮二様みたいに私達の事も気にかけてくれたり、愚痴に付き合ってくれる神の使徒様なんて居ませんし」

 

「寧ろ、檜山様とそのお仲間が行う私達への態度が気に入りません。既婚者だと言ってるのにいつも使用人なんだから夜伽しろとか言ってきてもう最悪です…あ、これ内緒話でお願いします」

 

「大丈夫だと思いますよ?あいつ等檜山に夢中になってるみたいですし」

 

蓮二の言う通り、檜山の取り巻き達は今必死に檜山を見ている。その為今メイドが言ったような事は聞かれていないだろうと教えると、彼女達はホッと一息つく。

 

彼女達も彼女達でストレスは溜まってるんだろうなと思った蓮二は今度お菓子でも焼いて持ってくるかと考えていると、彼女達の内の一人にそういえばと前置きされてから話しかけられる。

 

「姫様が蓮二様を探してましたよ。異世界の政治の話を聞きたいとかで」

 

「そうなの?……政治とか俺全然分からんけど良いのかな……」

 

「大丈夫だと思いますよ。姫様が蓮二様と会う為の口実ですから」

 

「成る程。それならいいか……で?何処に行けば良いんだ?」

 

「王城の庭園です」

 

「分かった。ありが「待て新宮!」…なんだよ天乃河?」

 

面倒だと言わんばかりに蓮二は光輝を見ると、彼は行かさないという決意に溢れた目をしていた。

 

「リリィの所に行ってお前は何をするんだ!」

 

「普通に話に付き合うだけだが?」

 

「嘘だ!彼女の弱みを握っているのをいい事に悪い事をするんだろ!」

 

「んな檜山達みてえな事するわけないだろが……俺だってこの世界で生き抜く為に人間関係形成してる途中なんだからよ。そんな事したら今迄の努力が水の泡になっちまうよ」

 

「檜山達は被害者だ!なのに何故新宮は檜山に攻撃した!答えろ!」

 

「あのさ、お前言ってる事が支離滅裂だから少し冷静になれ。てかメイドさんも見てたよね?俺が何もしてないの」

 

「はい。寧ろ檜山様が蓮二様の大切なものを奪おうとしていた所を見るに、被害者と加害者は逆だと判断します」

 

「目撃者はそう言ってるが?そこんとこどうなんだ?」

 

蓮二は目撃者の証言と共に光輝へと追求する。流石に目撃者の発言は無視できなかったのか言葉が詰まる。

 

そんな光輝を見て蓮二は時間の無駄だと判断して庭園へと足を運ぼうとする。

 

「待て新宮!話は終わってない!」

 

「俺の方は終わってんの。こちとら姫様待たせてる身なんでな」

 

「待て!」

 

光輝の声を無視して蓮二はその場を立ち去る。その背中を光輝はただ、見送ることしか出来なかった。

 




今作品では檜山達小悪党共は悪党共へと悪い意味でジョブチェンジしております。

虎の威を借る狐の様に光輝の勇者としての立場、位、カリスマ性を利用して蓮二から現金をせしめようとしたり、異世界で大きな力を得た事で元々悪い人間性が更に悪くなるという風にしております。

こうしたのも理由はあります。他人より強くなる事で彼等が元々日本でやっていた弱者を攻撃する性格が増長するんじゃないかという解釈が入りました。偏見があるかもしれませんがね。

でも蓮二って強いよね?と思われる方も居ますが、蓮二の強さをしっかり分かっているのは沙羅やハジメにデュエラとミレイナ、生徒達ならまともに分かるのは交流の有る雫、香織、優花、浩介位です。後はデュエラ越しに聞いてるリリアーナと彼女を支える心ある貴族位ですかね。

殆どの生徒は別行動を取ってる蓮二とハジメは弱いんだろうなと勘違いしています。

とまあ、後書きはこの辺にして、他に知りたい事がありましたら感想やメッセージいただけたらネタバレにならない程度に回答させて戴きます。それでは皆さん。また次回でお会いしましょう!
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