魔王と親友と紫電   作:刀好きの第六人

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庭園にて

王城内にある庭園は、非常に綺麗なスポットだ。

 

季節によって花の色が変わっては庭園の景色すら一新される庭園は王族や貴族達にはとても好まれがちで、プロポーズの為に庭園の使用を予約する者も居るくらいには素敵なんだそうで、今の季節はライラックに似た紫の花と緑色の生垣のコントラストが楽しめる庭園の中心にあるテーブルに、蓮二とリリアーナは居た。

 

「それでですね、弟のランデルが『カオリと結婚する為にはどうしたらいい』と聞いてくるんですよ。カオリにはハジメさんと言う素敵な男性しか眼中に無いのに…」

 

「男なんてそんなもんだ。好きな人が振り向いてくれないと知っていてもやらずにいられないんだよ」

 

「そうなんですか。やはり男性からの意見はかなり貴重ですね。勉強になります」

 

蓮二がリリアーナと話しているのは日常会話で、家族の事や仲間の事、最近あった出来事を中心に話している。

 

実はこうした会話をするのは今日だけではなく、仕事のない日とかはこうして蓮二が遊びに来ては二人で話す事をしていた。

 

最初はぎこちなく、難しいかつ理解しにくい話ばかりだったが、そんなつまらない事を話しても楽しくないと二人して同時に告げた時からこうして何気ない話をする様になっていた。

 

リリアーナは弟であるランデルの話を終えると紅茶を一口飲み、ティーカップを置いてからまた話始める。

 

「そういえば今日、図書庫に行く予定だったんですよね?何が知りたかったんですか?」

 

「んー……まあ色々とな。小説とか有ればそれを読んでみたかったかな?」

 

「小説ですか?」

 

「ああ。小説って結構奥深くてな。読めばこのトータスの事が大雑把に分かるっていうか、そう、ノンフィクションの小説とかが有ると知識と同時に歴史が学べるんだよ」

 

「成る程。私が読んだのでそう言ったものは……すいません。直ぐには出ないです」

 

「大丈夫大丈夫。そういうのは自分で探すのも醍醐味だから。姫様も小説ってか物語は読むのか?」

 

「私は……えっと、え、絵本、とかですね……」

 

「へぇ。絵本か」

 

「あ、今幼稚だと思いました?どうせ私は幼稚ですよ」

 

ムスーと頬を膨らませるリリアーナに蓮二は苦笑しながら話す。

 

「そんな事は無いぞ。俺達の世界にもマンガっていう絵本があるしな」

 

「マンガ?」

 

「ああ。絵本の様な文字数は無いが、あらゆる技法で絵を書いてはハラハラドキドキ感を味わえるものをマンガっていうんだ」

 

「それは凄いですね。因みにそれってこの世界でも作れますか?」

 

「ハジメなら多分作れるかも。アイツ元々イラストレーターって言う絵を描く仕事してたし」

 

「ハジメさんって既にお仕事をされていたんですか!?」

 

「そうそう。アイツ人気があるイラストレーターでな。ちょっと待ってくれ。確かスマホに…お、ギリギリ電池が残ってた。ほらこれ」

 

蓮二はハジメに描いてもらった愛犬の『ロウ』のイラストを見せる。少しだけデフォルメされた飼い主の蓮二に抱きついて甘えてくる可愛らしい『ロウ』にリリアーナは釘付けになると、一人の少女として目をキラキラさせて『ロウ』のイラストを見る。

 

「わぁ!可愛いですね!この子ってどんな生き物なんですか!?」

 

「柴犬って言う犬種で、元にしたのは俺の相棒だった『ロウ』って言うんだ」

 

「だった……?」

 

過去形で話す彼に思わず聞き返すリリアーナを見ながら蓮二は答える。

 

「『ロウ』は俺が十五の時に寿命でな……ああそんな悲しい顔をしないでくれ。『ロウ』はいつも俺の側にいるから。この『狼牙』と『狼黒』が遺品でな。じいちゃんとばあちゃんに作って貰ったんだよ。お陰で寂しく無い……ってのは嘘になるが、今はこうして前に進めている。だからそんな顔しないでくれ」

 

イラストでしか見たことのない『ロウ』の死に泣いてくれているリリアーナに蓮二は優しく声をかけると、彼女は涙を拭って笑顔を見せてくれる。

 

「レンジさんは『ロウ』ちゃんが好きだったんですね」

 

「相棒…だからな」

 

蓮二が『狼牙』を見ながら懐かしそうな顔を見せている中、リリアーナは蓮二にそういえばと前置きして話題を変えて話だす。

 

「レンジさん、先程カティさんから聞いたのですが、コウキさんと揉めてた話は本当ですか?」

 

カティと言うのはリリアーナ専属のメイドで、そんじょそこらのメイドよりも仕事が早くて丁寧な人だ。

 

彼女から話を聞いていると言う事は最後まで内容は知ってると見ている蓮二は頷く。

 

「ん?ああ。捏造された話で揉めていたのは事実だな。ま、姫様が気にする様な事じゃねえよ」

 

「リリィと呼んでくれないのですね……」

 

姫様と呼ぶ蓮二に対してリリアーナはしょんぼりとした表情で落ち込む。

 

「いや身分差とか大きいし」

 

「寧ろ神の使徒様であるレンジさんの方が身分上ですよ」

 

「……まあそれは確かにそうかもしれないな」

 

「ですのでリリィと呼んでください」

 

「いや、でも」

 

「ダメですか?」

 

「…分かったよ、リリィ」

 

根負けした蓮二が愛称でリリアーナの事を呼ぶと、彼女は満面の笑みを見せる。

 

こういうところが年頃の少女としてあるべき姿だよなと思っていると、彼女は首を傾げる。

 

「私の顔に何かついてますか?」

 

「いや?可愛いなと思っただけだよ」

 

「か、可愛い……そ、そうですか」

 

蓮二の不意打ちにも近いその言葉の弾丸を直撃を受けたリリアーナは蓮二に対して狡いと思っていると、蓮二から問いかけられる。

 

「そんで?俺を探してた理由って何だったの?」

 

蓮二の言葉に、先程まで忘れていたリリアーナの頭に本題が浮かび上がり、それを蓮二へと説明しだす

 

「レンジさん達勇者様一行は明日から王城を出て、ホルアドと呼ばれる宿場町に有る『オルクス大迷宮』での実践訓練が始まるそうです『オルクス大迷宮』はご存知ですか?」

 

「知識としては頭に入れている。魔物の素材と魔石が安定供給出来る新米冒険者にとっての最高の環境だろ」

 

「はい。明日から其方に向かって本格的な魔物との戦闘が始まります。……その、命のやりとりは慣れましたか?」

 

恐る恐る尋ねるリリアーナ。彼女の心中は心配だらけで、デュエラ経由で蓮二と沙羅とハジメが人型の魔物を殺す訓練に入ったとはいえ、嫌悪感等はあるか、嫌になっていないかと心配だった。

 

その気持ちが蓮二にも伝わったのか、彼は心の内を話す。

 

「正直言ってまだ慣れない。まだ魔物だから殺せているが、これがもし盗賊の様な人間になったらどうなるんだと不安もある。けどさ、俺には沙羅先生にハジメ、デュエラやミレイナだって居る。仲間が居れば、俺は戦える。仲間を守る為に敵は殺す覚悟は決めている。あ、ミレイナってのは長耳族の女の子でな。リリィが亜人族を差別してなかったら紹介するぞ?」

 

 

蓮二は決意溢れる表情を見せてリリアーナに告げる。最後の方は少し話が逸れていたが、蓮二の言葉は口だけの言葉では無く、一人の勇士としての覚悟が決まったものだった。

 

そんな蓮二を見ていたリリアーナは思わず、ここに居ない沙羅が羨ましいと思ってしまうと同時に、雫が蓮二に御執心なのかもわかってしまう。

 

蓮二という男はリリアーナが会ってきた男の中でも超優良物件で、気配り上手で人当たりもよく、誰かのために動き、更には守る為にその手を血で汚す覚悟すら出来る様な男はあまり見た事が無い。

 

仕事の為にやる者も知っているが、リリアーナとしては守ってくれるというのがポイントだ。

 

自分も守ってくれるのか。それが気になった彼女は蓮二に思わず問いかける。

 

「…もし、もしですよ?もし私が一般人だとして、守ってくださいと言ったら……守ってくれますか?」

 

それは乙女として、自分の事も蓮二の大切になれるかの問いかけだった。

 

リリアーナは今、王族の一人では無く、一人の女として蓮二に問いかけている。

 

それを証拠に、リリアーナの表情は真剣そのものだった。

 

そんな彼女に蓮二は曖昧で半端な答えではなく、ハッキリとした答えを突きつける。

 

「守るよ。例え一般人だろうがリリィはリリィだ。肩書きとか身分なんて関係ない。俺は一人の人間として、リリィを守る」

 

「……!」

 

リリアーナは蓮二からの返答、それも軽薄なものでは無く、流されてもいない確かな決意による肯定の言葉に、彼女は思わず涙が流れる。

 

「り、リリィ?大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫です…その、私の事をお姫様の私では無く、一人の私としてしっかり見てくれる男性が居てくれるのが嬉しくて……」

 

リリアーナの言葉は、彼女が相当辛い人生を送ってきた事を蓮二に痛感させる事は容易かった。

 

リリアーナは幼少期から仮面を被っていた。自分を一人の少女であるリリアーナでは無く、王族の一人にして、貴族と民を統べる施政者として自分を殺し続けていた。

 

何故ならそれは周囲の人間が彼女を一人の女の子として見ず、王族としての彼女としか見なかったからだ。

 

十四歳になる頃には周囲からは才媛と呼ばれ、貴族や民からも慕われてはいたが、同年代の友人はたった一人しかおらず、その友人にすら情けないところは見せられまいと、彼等にとっての理想のお姫様として在り続けた。

 

それはいずれ壊れる物だと分かっていて被り続けた仮面だが、それはそれは一人の男によって壊された。

 

それが異世界から勇者と共に現れた新宮蓮二だ。

 

最初の出会いは最悪だった。蓮二からは嫌われていそうな声音で悪態を突かれ、リリアーナが謝罪するなんていう始まりだが、リリアーナの為人を見抜いた蓮二はその出会いから良い関係を作ろうと歩み寄っていくために自分の素直な気持ちを伝えてくれた。

 

 

その時からリリアーナは蓮二という男に興味を持ち、彼が用事の無い時を狙ってはこうして会話の機会を設けて彼の事を知ろうとした。

 

最初は何を話せば良いのか分からなかったが、お互いに特別でもなんでもない自分の身に起きた話をしだしてからは、リリアーナは楽しそうに話す蓮二の生活に混ざりたいと思い始めていた。

 

沙羅の様に蓮二と暮らしたい。そんな気持ちが芽生え始めていた時に嘘偽りない蓮二の守る発言に、リリアーナは思ってしまった。

 

運命だと。

 

そう思ったリリアーナは、心の奥から湧き出るものを抑えきれなくなり、立ち上がるとスタスタ蓮二の側まで歩き出す。

 

そして、リリアーナは蓮二の顔に近づくと、唇を重ねてキスした。

 

「っ!」

 

リリアーナの突然な行動に蓮二は意味不明だと頭を混乱させる。訳が分からないまま唇が離れると、リリアーナはクスリと笑いながら蓮二に宣言する。

 

「私、レンジさんの事が好きみたいです。キスした時、とても幸せな気分で、ずっとしていたい……って思うくらい貴方の事が好きになってしまいました。こんな気持ちにした以上、責任…とってくださいね?正妻は譲りますけどお妾にはしてくださいね」

 

最後に耳元で責任を取ってください発言とお妾発言をしたリリアーナは公務の時間だと告げにきたメイドのカティと共に庭園を後にする。その際彼女は「今度サラさんとシズクに宣戦布告して、貴方の争奪戦に加わりますので、これから宜しくお願いします」と言い残して去っていった。

 

リリアーナの背中を見ながら蓮二は思わず。

 

「俺、もしかして告白でもしたのか!?」

 

と自分の発言を思い出し、守る発言に思わず顔を真っ赤にして、悶えるのだった。

 

 

 




はい。補足入りますと、この話でタグにある四角関係が始まりました。流石に展開早いかなーと思いながらもこの後奈落とかに落ちるかもしれないので、リリアーナとの接点とかを作っておかなければならないという考えでこの話は生まれました。

原作のスピンオフ見てもリリアーナは可愛いのにスポットがあまり当たらないままってのはねぇ……

えー、現在の原作速度では最弱とイジメという時系列になっております。これも作者が時間を掛けているからですね。キャラの登場や強化含めるとこれくらい時間がかかるんですよ。一次創作とか特に顕著ですね。

この作品はオリジナル展開がかなり多くなる予定なので、スピーディーには出来ませんが、これからもよろしくお願いします

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