ウルトラマンドーズ(打切り)   作:りゅーど

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Stay in your coma

 今日も今日とで平和な地球、日本である。寒さが和らぎ、暖かい日が増えてきた。

「……zzZ」

「隊長ー! 霊華が寝てる!」

 今日も今日とでここ、USSTも今の所平和である。

「見逃してあげなよ……霊華は2つの職についているから身体が大変なんだよ」

「そうですよ。仕事中に寝るのは問題ありますが……」

「でも、どうして霊華は巫女の仕事をしながらここで仕事をしているの?」

 美琴はそう問いかけ、その言葉に反応したのか霊華はパチリッと目を覚まし、ウトウトとしながら顔を起こした。

「くぁぁ……強いて言うなら……巫女は一応本職ですが、この地球を守りたいからここに来た……ということですかね」

 霊華はあくびをしながらそう言った。メンバーの中で1番怠惰な性格をしているせいか、ほぼ全員、叩き起こすことを諦めていた。いや、諦めるしかないのだった。

「……ったく」

 漆原は悲しげな顔で見ていたのだった。

「……なんですか? 漆原さん?」

 なんにもなかったかのように霊華は問いかけた。原因の源でもあるが……

「もうええわ、じゃあオレ友人の鎮守府に顔出してくるから……」

 漆原は抜け出そうとした。

「? 分かりました」

 霊華は空気が読めないようだ。

「ダメだこりゃ」

 美琴は苦笑を浮かばせながらそう言った。

 神田はそれを見て呆れたような顔をしていた。

「ィアッハハハハハハハハ!!!」

 ラボからそんな声がした。

「な、なに!? 敵!?」

 全員一斉にその場に置いてあった武器を手にした。

 霊華は不審人物かと思い、各基地内にある防犯カメラを確認した。

「できた!!! できましたぞ!!!!!!!!」

 三徹と顔に書いてある。

 一斉に武器を落として呆気な空気になった。

「何を……ですか?」

 霊華は気にせずに問いかけた。

「新兵装! その名も『ハイパーナパームガン』!!」

「ハイパーナパームガン?」

 美琴は近づいてどんな兵装なのかを見てみた。

「隊長……彼、最後に寝たのいつですか?」

 流石に心配しているのか、朱莉はそう言った。

「三日前だな」

 宇野の顔が単純化され、⌒う⌒へと変わった。

「隊長、お顔がまた……」

「その兵装は何に使えるの?」

「怪獣共の土手っ腹に風穴開けられます!!」

「エグいね!?」

 真子は驚きながらそう言った。

「で、でも、これで怪獣を討伐が出来る兵器が増えたね!?」

 美琴は焦り声を上げて笑いながらそう言った。

 霊華に至っては興味ないのか椅子に座って再び眠りについた。

 朱莉は何も言わずにただ驚いているだけだった。

 このような自由な時間が続けば良いのに、と思うだろう。

「つか寒いっすね!!!」

「お前は寝ろ」

「アウタッ」

 ばたん。

「あ、寝ちゃった」

「ここで寝たら風邪引きますよ……?」

「それ、霊華にも言うことじゃない?」

 霊華は静かに眠りについていたままであった。

 ふと、霊華がいつも使う端末に通知音が鳴った。それでもなお寝ている霊華か。気づけよ。

「……」

 はぁ、と溜息をつき、神田は確認の許可を撮る。

「……あ、その通知だとおそらくどこかで怪獣が現れたのかと思いますよ」

 ムクリと起きてそう言った瞬間、即眠りについた。睡眠する力が色々と問題ありである。

「起きてすぐに寝た……」

「霊華の睡眠って凄いね……」

 不覚にも感心してしまった真子と美琴であった。

「……ああ、南極付近から冷気を帯びた海老らしきものが来てるらしいな」

「海老……?」

「…………もしや、それ……」

 霊華は心当たりがあるのか、即座に起き上がり端末で調べ出した。

「……レイキュバスではありませんか……?」

 端末に載っている容姿などモニターに送り、全員に見せた。

「これが今、南極付近にいるってこと……?」

「海老……確かに似てる」

「……皆さん……画面から近すぎます。目を悪くしますよ?」

「……嫌な予感がする」

「隊長……出動要請は出ていませんが……どうします?」

 朱莉は宇野を見て問いかけた。

「……要請が出るまで待機だ!」

「ッ……了解です」

 一瞬、声を詰めたが即返事をした。

「…………被害が悪化しなきゃ良いですがね……」

 霊華は小声で呟いた。

「……だな」

 

「……」

「要請……来たっけ?」

「来てないよ……」

 かれこれ数分は経ったが、未だに何も連絡が来なかった。

「……ここって……範囲外では……ありませんよね?」

「オーストラリア支部が何とかしてくれるだろーよ」

「そこから応援がくれば、出動は可能ってことですね……」

 霊華は端末で状況を確認出来るか探り続けていた。

 ただ目が『寝たい』という目つきであった。

「…………霊華、そのまま寝ないでね?」

「仕事するときはしますから……」

「まあオーストラリア支部は強えしええやろ、あそこにはインぺライザーおるからな」

「まぁ……それもそうですが。あ、オーストリア支部が設置している防犯カメラがありました……」

「それってハッキn」

「ちゃんと許可を得て確認とれるようにしましたよ……」

 言いかけている時に霊華は早口で返答した。

「キシュイーッ!」

 レイキュバスが冷気を放つ。

 そして冷温両方をはなつのだ。

「……え? モニターに送ります……」

 霊華は驚いて目を見開きながらモニターに送った。

「……これ、ヤバくない?」

「……インぺライザー、小破か」

「……ねぇ……あの道に倒れているのって……」

 霊華はすぐに画面を拡大して見せた。

「……凍死、してない?」

「……だな。死んでるなこれ」

「ッ……もうこれ以上待ってられないよ! 要請でなくても助けに行こうよ隊長!」

 我慢の限界で美琴がついに怒鳴りながら問い詰めた。

「み、美琴……ッ」

 真子が慌てて美琴を抑えた。

「勝手に動いたことで除隊されてもいいのならば勝手にしろ」

「ッ……!」

 美琴はそれ以上何も言えなかった。

「……隊長、私は美琴さんの意見に賛成です」

 霊華はそう言った。眠い眼差しとは引き換えに、勇気ある眼差しにも見えた。

「霊華さん……隊長命令です。ダメです……」

 朱莉がなんとか説得し、霊華を抑えつけた。

「……で、酒井は」

 全員が一斉に顔を向けた。空気がさらに重くなるのを感じる。

「……」

 既に起きて上との交渉中であった。

「…………せめて……あそこに……ウルトラマンがいれば……」

 霊華はモニターを見つめながらボソッと呟いた。

 だがその声は全員の耳に通った。

「でもオーストリアにもウルトラマンっているの?」

 美琴が首を傾げて問いかけた。

「分かりません……ですが、ウルトラマンはこの地球を守ってくださる光の巨人です。だから……私はウルトラマンを信じているんです」

 霊華は真剣な眼差しで答えた。

「……上の許可が降りました。出動していいとの事。マキシマムワープ機構の使用も許可されました」

「本当!?」

 美琴は目を輝かせながらそう言った。

 霊華は少し笑いながらふぅ……と溜息を吐いた。

「私、搭乗してくる!」

「美琴、早い早い早い早いッ!」

 真子が慌てて美琴を止めていたが、出動許可が出たのなら、やるしかないのだった。

「メカゴモラに乗っていけ。我々はこれより空中母艦【蒼龍】にのって向かう」

「了解!!」

 全員の返事が基地内に響いた。

 美琴は一足先にメカゴモラにヘルメットを被りながら操縦席に座った。

「蒼龍起動確認」「メカゴモラ異常なし」「マキシマムワープ機構異常なし」「システムオールグリーン」「超振動波システム異常なし」

『フォースゲートオープン。フォースゲートオープン』

「メカゴモラ!」

「航空母艦【蒼龍】」

「「発進!」」

 かくして、二つの機体がオーストラリアへとワープした。

「寒っ!?」

 美琴はメカゴモラの操縦機にいても分かるくらい寒かった。

「レイキュバスのせいでしょうね……」

 霊華は冷静にそう言った。

「これよりオーストラリア支部の援護を行う」

 インぺライザーは、見事に中破していた。自己修復システムにバグが起きたのか、回復できていない箇所がある。

「アレがインペライザーですね……損傷レベルが高いままなのがよく分かります……」

「そ、それより……アイツはどこにいるの?!」

「……ここからだとなんの音もしないような……」

「キシュイーッ!」

 大きなハサミがメカゴモラを襲った。

「うわぁ!?」

 美琴は慌てて操作し、なんとか回避をした直後に尾でハサミを攻撃した。

「ビ、ビックリした……」

「なるほど……もう、目をつけられましたね……」

「霊華……それってどういう意味?」

「そのまんまの意味です……真子さん」

「喰らえぇぇぇぇ!!!」

 美琴がハサミをメカゴモラの両手で掴み、投げ飛ばした。

 しかしそこはレイキュバス、即座に地面に降り立つ。

「おおぉ……綺麗な着地」

「感心してる場合ではありませんよ美琴さん」

 即ツッコミを入れた霊華。どんな事でも冷静かつ慎重な態度であった。

 美琴はメカゴモラを操作し、レイキュバスへの攻撃を続けた。

「け、結構重い……!」

「キュシュイ────ッ」

 レイキュバスはメカゴモラを殴り飛ばした。

「クゥ……まだまだぁ!!」

 機械内が揺れて体制を乱れそうになりながらも諦めずに攻撃を続けた。

 その時である。

 メカゴモラの左腕に異変が起こる。

「……! 左チェーンナックル用部品凍結!」

 叫んだのは幸村であった。

「……やべ、ヤツまで来たか」

「冷たッ」

「え? 操縦席までも冷たいの……!?」

「キィアアアアア!!」

「ラゴラスエヴォ……マジかよ」

「……ラゴラス……」

 霊華は瞳を輝かせながら見つめていた。何かを思っているのだろうか……

「れ、霊華……?」

「……な、なんか寒い……」

「どうしたの美琴……!?」

「チクショー! 辺りは零下にまで下がってやがらァ!」

 万事休すだ、と歯噛みする漆原。その時だった。

「せっかくのダチとの旅行台無しにしやがって! 行け、ガンダー! 殺せぇー!!」

「プルルルァアアアアアア!!」

 そんな声がした。

 

「プルルルァアアアアアア!!」

「キィアアア!」

「キュシュイ────ッ」

 大怪獣バトルが始まる気がする。

「え!? なんの状況!?」

 真子が叫びながら状況を驚いていた。だが霊華は驚きながらも、どこからか聞こえた叫び声に聞き覚えがあるのか、それとも目の前にいる怪獣を知っているのか目を大きくしながら見つめていた。

「ガンダー……何故、ここに?」

「ガ、ガンダー……とは、何ですか?」

「凍結怪獣です。副隊長……」

「……どうして、霊華は怪獣やウルトラマンのことが分かるの? まるで……《昔》から知ってるような……」

「……私の秘密です。副隊長……」

 そんなやりとりをしながらも外は暴れに暴れ回っていた。

「プルルルァアアアアアア!!」

 クールブレスがラゴラスにぶち当たる。

「ッ……私も、ご、後衛、す、する……!」

 口元が寒さで震え、声も震えていたが美琴が前に出て援護に向かった。

「美琴さん……! 無茶はしないでください……!」

 朱莉が叫び止めようとした。

「(あまり喋らない副隊長が珍しいですね……)」

 霊華は朱莉を不思議そうに見つめていただけだった。

「下がってな、ガキ。ここはガンダーに任せとけ……」

 そこに居たのは、紫色のパーカーを着た、右目を隠した青年であった。

「……酒井は?」

 

「ド──────ズ!!!!」

 巨大な青い光が、そして絶叫が大地を裂いた。

「…………え、え?」

 美琴はメカゴモラの操作を止めてそのまま直立不動になった。指先が真っ青になっていた。

「ん……? 美琴さん……?」

「この絶叫……誰かに似てるような……」

 何人か困惑していたが、霊華だけは冷静に美琴の応答と待っていた。そして外をチラ見すると、霊華の瞳は再び輝き出した。

「……シャッ」

 ウルトラマンドーズのお出ましだ。

「あ、あの時のウルトラマン……!?」

「助けに来てくれたんですよ。地球を守るために……」

 霊華はクスッと笑いながらそう言った。

「デェリャァ!」

 ドーズは指パッチンをする。

 神田はその意を受け取り、ハイパーナパームガンでラゴラスを撃つ。ラゴラスの左腕が爆発四散した。

「あ、あの……先ほどから美琴さんからの応答が来ないのですが……」

 霊華は残ってるメンバーにそう言った。よく見ればメカゴモラはその場に立ち止まっているままだった。

「あ……もしやこれ……」

「……嫌な予感がする」

「美琴さん……返事をしてください……」

 何度も応答を願うが、美琴からの返事は無かった。気がつけば、メカゴモラの足元が凍っていた。

「美琴……もしかして操縦席にいるまま凍え死にかけているんじゃ……!?」

 真子がそう言った瞬間、一部のメンツの顔が真っ青になった。

「俺行ってくる」

 神田は即座に動く。

「うおおおおおおおお!」

 神田は寒さに耐えつつ走る。ただひた走るのだ。そしてなんと驚くべき事に、神田はメカゴモラの体を肉体ひとつで駆け上がったのだ。

「美琴ォ!」

『ダメージレベル80%、機能強制停止』

 そんな表記を見て舌打ちをする神田。温度計を見れば-60℃である。

 神田は中に乗り込み美琴を救出。

 そして高空から飛び降り、着地した。

「ッ…………ッ……」

 顔色は悪く、身体中霜焼けになっていた美琴だがなんとか一命を取り保っていた。

 全員は安心し、怪獣との戦闘をウルトラマンに託した。

「……頼んだぞ、ウルトラマン」

 

「シュウワッ!」

 膝蹴りを放つドーズ。

「ニシュイー!!」

 レイキュバスは叫びながらドーズに向かって冷気を放った。

 ドーズはバリアを展開した。バリアが凍り付く。

 放つのやめ、ご自慢のハサミでバリアを破壊しようとした。

 そのまま、頭目掛けて凍ったバリアをぶちかました。

「キシュイ!!?」

 レイキュバスは驚いて顔を抑えつけてた。それとも攻撃はやめず、冷気を放ち続けた。

 刹那、ドーズが消えた。

 レイキュバスは驚き、辺りを見渡しながらウロウロしていた。

 ドーズはレイキュバスを蹴り飛ばし、その関節に剣を刺した。

「キ、キシュイ──ーッ!!」

 レイキュバスは大きな叫び声を上げた。ツボを刺されたことによってもう戦うことは不可能だ。

 簡単に分解されるレイキュバス。その強固な殻が外れた途端、紫色のパーカーを着た青年はこう呟いた。

「殻はあげるからレイキュバスの肉ちょうだい、これならたっちゃんやシンも喜ぶやろ……」

 それを聞き、がくっとずっこける神田であった。

 

「プルルルァアアアアアア!!」

 ガンダーが吠えた。

「キィアアアッ!!」

 ラゴラスは全体を凍らすように冷気を放った。

 同時にガンダーはクールブレスを吐く。

 両者の冷気により、周りの空気が冷たくなっていく。生身だったら凍死してしまいそうな程の寒さになっていく。

 そこで青年はある力を用いた。

「っしゃあ!」

 フレイムドーム。

 暖かな空気が隊員たちを包んだ。

「キィアア!?」

 ラゴラスは温かいのが苦手なのか、多少驚いていたが即ガンダーに近づき、頭突きを放った。

 ガンダーはそれをぬるりと回避し、ドロップキックをかました。

「キィアッ!! キィアアアアアアアアアッ!!!」

 ラゴラスは怒りながらガンダーに向かって連続でパンチをした。

 しかし避ける。

 ガンダーは避ける。

「キィアアアッ!!」

 ラゴラスは隙を見て頭突きを放とうとするが、それすら避けられてしまう。

 それが【彼】の使役するガンダー。

 ガンダーはラゴラスに噛み付くや否や、ゼロ距離でクールブレスをぶちかます。

 それは頭部へといき、ラゴラスの頭を凍らせる。

「キィア!? キィアアアアアアアアアッ!!!??」

 ラゴラスは呻き声を上げた。今にも頭が氷のように凍ってしまいそうな、そんな冷たさを感じた。

 そして、ラゴラスは全身を凍らさせられた。

 ガンダーはトドメの蹴りを放つ。その時に、一瞬()()()が砕く手伝いをした気がした。

 そしてその魂は、()()()()()()に回収された。

 寒さと冷たさが多少残るこの場で戦いは終わったのだった。

 

 回収された美琴は毛布で包まれてまだ眠っていた。

「……お疲れさん」

 そう言い残し、青年は消えた。

「あ…………」

 霊華は何かに気づいたような感じで声を上げた。

「……どした?」

 神田はただ聞いた。

「……いいえ……なんでもありません。(まさかあの人が……ねぇ……)」

 霊華は先程の青年を見かけた瞬間、いつもの霊華とは違う……謎めいた笑みをこぼした。少し笑みが怖いが……

「ん、んんっ……」

「美琴……!」

 凍え死にそうになっていた美琴がようやく目を覚ました。

「ほい、これでいけるか」

「まだ寒いけど……大丈夫だよ」

 いつもの美琴が戻り、無事任務を達成することが出来たので、一同は帰還するのであった。

 ふと、霊華が振り返り戦いの場をぼんやりと見つめ始めた。

「霊華、どうしたのー? 行くよー!?」

 真子がそう叫ぼうにも、聞こえてないのか霊華はずっと見つめたままだった。

 

「うーす」

「お、帰ってきたのか」

「おかえりー」

 テントと言うにはかなり立派な……そう、簡易的な家に三人の男たちがいた。

「今日はレイキュバスのフルコースやお、いっぱい食べやぁ」

「おー! やったぜ!」

「ありがとう」

「いいってことよ」

 彼らの旅は終わらない。辿り着けるか、桃源郷────────!




 USSTに助けを求めに来た少女、バルバ。彼女は自らをバロッサ星人だという。混乱する僕達の前に現れたのは、大きな耳の宇宙人!?
 守るために響け、正義のオーケストラよ!
 次回、ウルトラマンドーズ!
『ジャンキーナイトタウンオーケストラ』
「たっ、助けて欲しいバロー!」

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