ウルトラマンドーズ(打切り)   作:りゅーど

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異次元宇宙人 イカルス星人
小型宇宙有翼怪獣 ピグミーアリゲラ
叛逆ノ海賊宇宙人 バロッサ星人バルバ
人類防衛用ロボット メカゴモラ
登場


ジャンキーナイトタウンオーケストラ

「Are you ready?」

 異形の放つそんな声がして、何かが蠢く。

 追いかける異形の者共はそのなにかの行く末に熱中し、夜の街を彩る。その歓声はまるで狂っているかのようで、そしてそれは誰かを感動させる為ではなく誰かを貶めて初めて出来るオーケストラであり、いわば偽物の(Fake)オーケストラ(Orchestra)なのである。

「嫌だァー!! まだ死にたくないよォーッ」

 金髪の少女が逃げ惑う。今日の獲物は彼女らしい。

「イーカカカカカ! 逃げちゃダメでゲソ!」

 追いかけるは耳の大きな宇宙人────イカルス星人だ。

「お願いだから見逃してよぉおお!!」

「いつ()()なる理由があれど、この私は貴様を逃がしてはならないと言われた訳キューバン!」

「てかそこまでイカネタ引っ張る必要ある!?」

「キャラ付けしないと他の同族だとか他作品などに埋もれるじゃあなイカ! ほらほら逃げないとこのカラストンビですり潰すゲソ!」

 その時、銃声がした。

「……チッ。硬いぞ。まさか」

 USST宇野隊のスナイパーこと神田(かんだ)蔵安(くらやす)だった。

「チィ! 貴様からカラストンビの錆にゲソッ!?」

「黙ってろ」

 前蹴り一閃。

 イカルス星人は取り巻きの異形の者共もろとも吹っ飛ばされた。

「怪我は無いか?」

「は、はい」

「そうか、今日は遅いし早めに帰りな」

 そう言って、神田は別の現場に向かった。

「……あれが、占いで出た王子様……?」

 少女の頬は赤く染まった。

 

「こちら酒井、任務完了。これより神田隊員を回収して帰還します」

 銀髪を揺らし、隊の本部に連絡を入れるは我らが主人公、酒井(さかい)幸村(ゆきむら)

 どうやら敵性宇宙人を葬り去ることに成功したらしく、右手が緑色────────怪獣の血の色だ────────に染まっている。

 連絡を早々に終え、コンビニおにぎりをかじる。

「んぐっ。こちら酒井、神田隊員応答して下さい」

「こちら神田、オレも任務完了したぞ」

「任務完了了解、早めに帰還しましょう。副隊長にどやされちゃいます」

「おう」

 この時、二人は知らなかった。

 二人を追いかける二つの影がある事に。

 

「ただいま戻りました~」

「ご苦労だった」

 宇野は二人の帰還に満足気だ。

「ふたりとも大した怪我はなくてよかったよ。ゆっくり休むといい」

「あ、隊長。その件なんですけど、最近の神田隊員、ちょっと肩の調子悪そうなんでつい先日僕の開発した『ハイパーマッサージャー・ウルティマ』で治療(実験)させてもらっても大丈夫ですか?」

「いいぞ、神田も構わないな」

「……酒井ってほんとよく見てるよな。感心感心」

「えへへっ」

 照れくさそうに頭を搔く低身長(153cm)長髪男子、酒井。その風貌だとか声色から場の女性陣の思考回路か弾き出した答えはただ一つであった。

 かわいい。

 現に夢乃は酒井のそのかわいさに悶絶しているわけで。

 死んだ目で漆原が倒れかけている夢乃を支えているのは気の所為(せい)であろう。むしろ気の所為にしてくれ。

「……?」

 首を傾げる酒井。ふぁさ、とたなびく青みがかった銀髪の髪の毛がいい匂いを発する。

 夢乃、気絶。

「何やってんだこの変態は」

 漆原、罵倒。

 ついでにわざと倒れさせる。

「痛っ」

 夢乃は痛みで意識を取り戻したようだ。

「このショタコンが……」

「可愛いもの好きなだけですっ!!」

 ぷんすこ、と擬音がしそうな怒り方である。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ほ゛ぐ゛れ゛る゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛」

 遠くの方で神田の声がした。

 酒井のラボの中で治療中らしい。

 肩の調子が悪かったのはメカニックとして、そして銃使いとしての二重疲労と銃の反動が原因らしい。

「お、効いてそうだなアレは」

 酒井はぐっとガッツポーズした。

 

「ばろばろ……」

 

 そんな声とともに、バタン。

 なにかが倒れる音がした。

 いち早く動いたのは宇野だ。隊長として、そして一人の戦士として、危機管理能力には長けているというわけだ。

 続いて動いたのは漆原であった。

「バロッ!? (迫真)」

「何だお前!?」

 漆原は驚愕した。

「……なるほどバロッサ星人か! (超速理解)」

 そして即座に理解した。

オロナイン(動くんじゃない)! 控えろ(抑えろ)!」

 憔悴からかいつもより滑舌の悪い宇野の指示が飛ぶ。その瞬間、宇野と漆原は同時にバロッサ星人を押さえつけた。

「何するバロお前! 流行らせコラ(離せコラ)!」

「しっかりそっち押さえろ!」

 宇野の的確な指示に答える漆原。

「あ何だコイツら?! ドロヘドロ《どぉけこの》! (名作)やぁめろバロ……バーロ……」

「抵抗しても無駄だ!」

 漆原たちはしっかりと押さえつけているようだ。

「うざってぇ……」

 宇野はボヤいた。

「海 賊 野 郎 大 人 し く し ろ よ ぉ ……(ねっとり)」

 漆原に至っては殺意マシマシである。

「お前ら、お前ら二人なんかに負けるわけねぇバロ! (慢心)流行らせコラ! 流行らせコラ! ブルーヘアー野郎お前離せバロ!」

 そこに三人目登場。解剖したい、という知的欲求に駆られ満面の笑みで乱入する酒井と、やっと来たかと言わんばかりの明るい表情で見つめる宇野。なお相変わらず⌒う⌒の模様。

「何だお前!? (素)」

 バロッサ星人は驚いた。

「酒井、お前はそっち押さえろ!」

「了解です!」

 右腕、左腕、両足の三点ホールドができ上がる。

「どけバロ!」

 涙目のバロッサ星人。

「常識的に考えて三人に勝てるわけないだろ!」

 酒井の脅しに、

「馬鹿野郎私は勝つバロお前! (天下無双)」

 バロッサ星人はこう返す。

「どけバロ!! シッ……アァッ……」

フル焼きそば(ひっくり返すぞ)!」

「ゲッホゲッホ……(迫真)やめて!! あぁも! ア゛ァ……」

 咳き込むバロッサ星人。

シュバルゴ(縛るぞ)! (炎四倍)」

 対人戦の興奮からか、宇野の滑舌が怪しくなる。

「あぁもう……もう抵抗しても無駄だぞ!」

 いよいよ漆原の目が据わった。亀甲縛りになる寸前である。

「だぁーもう! 私は助けてくれた王子様に会いに来たバロッサ!!」

「はぁ?! 何言ってんだこいつ……(困惑)」

「だから離せバローッ!!」

「隊長! どうしましたっ!?」

 騒ぎに気付いた神田が走ってきた。治療が終わったようで少し髪が濡れている。

「この侵入者を外に放り出すぞ!」

 宇野は『#⌒う⌒』みたいな顔をしながら神田に指示する。その時だった。

「バァアアアロッサ!!!!」

 先程まで押さえていた三人をバロッサ星人が吹っ飛ばす。そしてそのまま勢いよく神田に抱きついた。

「うおおおおおおおおっ!! 王子様をようやく見つけられたバロ!!!!」

「……えっ」

「What the-」

「……は?」

「……ん?」

 

「「「「はぁああああああああああ!?」」」」

 

 男性陣の叫びがこだました。

 

「で、だ」

 宇野はそう切り出した。

 死んだ目の漆原に長ドスを突きつけられつつもそんな事は何処吹く風、神田に抱きつき幸せそうに笑う金髪の少女がいる。

 なお当の神田‪は死んだ目で虚空を見ている模様。

「ばろ~♡」

「オレハマネキンオレハマネキンオレハマネキンオレハマネキン……」

「このメスガキは神田に助けられて一目惚れしたと、そういう事か?」

「違うバロ、これは神様のくださった運命バロッサ♡」

 運命ね、と漆原は猜疑した。

「カミハシンダカミハシンダカミハシンダカミハシンダ……」

「神田先輩、ニーチェ先生じゃあないんですから落ち着いてください」

 モンスターエナジーをキメつつ宇野は辛辣な言葉をバロッサ星人に投げかける。

「結局のところは他力本願寺じゃねぇかバロッサ星人」

「あの時は必死だったバロ!」

「お前ほんまそういうとこやぞ」

「バロッサぁ……」

「存在自体が悪。人様のもの盗まねえと何も出来んのか貴様は」

 漆原は宇野の援護射撃をする。その口撃はバロッサ星人の心を大きく傷つけ、ついに。

「う、ぇ……うえぇえええん……」

 泣いた。

 酒井は俺知らねえと言わんばかりに虚空を見つめた。

 神田は無意識ながらハンカチを渡したようだ。止まらない涙を拭く姿が実にいじめたい同情を誘う。

「……やめてやれ」

 神田は絞り出すように呟いた。

 

 暫くして。

 神田に宥められて落ち着いたバロッサ星人。宇野と漆原は酒井謹製、神田の放った麻酔銃で昏倒中である。

「私は初めて恋をしたバロ。迷惑にはならないようにするから、傍にいてほしいバロッサ」

「……はぁ」

 神田は困惑していた。

 生まれてこの方誰かを愛した覚えがない。このチーム以外の誰かから愛された覚えもない。

 そんな自分が明確に『愛されている』と思った訳だ。しかし神田はそれ以上に恐怖している。これが偽りの愛情を向けられている可能性だ。

 故に神田は信じることを諦めた。こんなに困惑するのなら、いっそ心なんてずぅーっと閉ざしておけばよかったな、と哀しんでいる。

「……なんでそんなに黙りこくるの?」

 涙目+上目遣い。さらに金髪美少女と来たものだ、あざとい通り越して天然記念物というものである。バロッサ星人じゃなければ。

 神田は頭が痛くなってきた。その時だった。

『USST日本本部付近に敵性知的生命体出現! 宇野隊ならびにカミザワ隊に出動要請!』

「……! カミザワ隊と合同で敵性宇宙人を叩くぞ! 宇野隊出撃用意!!」

 宇野が立ち上がる。そして叫ぶ。出動の命令を受け、皆が走り出した。

 

 そこにいたのはイカルス星人。あのバロッサ星人を追いかけていた奴だ。

『ギシャァアアオ!!』

 メカゴモラ出動。それと共に叫ぶは別働隊のカミザワ隊である。

「チッ、面倒だなアイツ」

 カミザワ隊の隊長、カミザワ・サトル。

 宇野と同様、USSTに首席で入隊し、それ以来宇野とタメを張りあうエリートである。

「攻撃開始!」

 カミザワ隊は敵性宇宙人──────イカルス星人を撃つ。

 彼らはロボットをあまり……というか、ほとんど使わない。その代わり、彼らは『クロムチェスター』という戦闘機を用いて戦闘を繰り広げる。

 イカルス星人はそれに怯んだ。その背後より、何かが飛ぶ。

「……! 小型アリゲラ、厄介だな、クソッ!」

「カミザワ隊長、知ってるんすか!?」

 カミザワ隊のパワーファイター、シノノメ・シンヤがカミザワに問う。

「ああ、どっかで聞いた事がある。宇宙有翼怪獣 アリゲラ────超高速で飛ぶ怪獣だ。迂闊に近づくと斬られるぞ!」

「了解ッ!」

 正確に言えば小型宇宙有翼怪獣 ピグミーアリゲラなのだが。

 何はともあれ、一同は了解と答え、そしてアリゲラとのドッグファイトが始まった。

 その一方で、メカゴモラが起動した。

『ギシャァアアオ!!!』

「イーカカカカ! やはり来ると思ってたでゲソ!」

「もうっ、めんどくさい! さっさとくたばれっつーの!」

 江口はキレた。どうやらイカルス星人の見た目が生理的に気に入らないらしい。

「そのでっかい耳とかぜんっぶキライ! 死んじゃえ!」

 メカゴモラはチェーンナックルを放つ。そして尻尾を高速で伸ばし、槍のように刺した。

「イーカッ」

『ギシャァアアオ!!!』

「ちょ、痛いゲソッ!?」

『ギシャァアアオ!!! ギシャァアアッ!!!』

「こうなれば……!」

 イカルス星人はなんとかエスケープし、アロー光線を放つ。それはメカゴモラに満遍なく突き刺さり、クラッシャーメガというビーム兵器を破壊、そして放てなくした。

「ちょっ、卑怯よ!!」

「卑怯もラッキョウもあるものか!」

『ギシャァアアオ!!!』

「もうあったまきた! 焼け死ね!!」

 メカゴモラは口からビームバスターメガを照射した。

「あたりめよりも甘いでゲソ! 今度はこっちの番ゲソ!」

『ギシャッ!?』

 今度はイカルス星人は四次元空間を空け、棍棒を取りだした。ペダニウム鉱を精錬したペダニウムインゴット、それを寄せ集めた圧倒的硬度の棍棒だ。

「イーカカカカ!!」

 何回も叩くイカルス星人。その背中に、何かが刺された。

 チクッ。

「あ・あ・あぁ・ぁああああ↑↑アーイク……」

 バタン。

 イカルス星人の背中には注射器のようなものが刺された跡があった。

「……シュワッ」

「ウルトラマンドーズ……! 来てたんだ!」

「……」

 ドーズは何も言わずに頷いた。

「……そろそろ死んだ振りをやめて起きたらどうだ、イカルス星人」

「……チッ、バレたキューバン」

「……シュゥワッ」

 ドーズは構えた。

 江口は援護のためにメカゴモラを起動しようとしたが……。

『エンジン部大破。続行できません。脱出してください』

 そんな無機質な声がして、戦いを降りることを余儀なくされた。

 

 一方、アリゲラとのドッグファイトである。

 小型故にダメージは通りやすいのだが、驚くべきはその速度。

 マッハ2で飛行可能なクロムチェスターではあるが、それを上回る速度でアリゲラが飛ぶのだ。肉薄し、そして一撃を与える。それが精一杯。

 しかしここでシノノメは思いついた。

「……隊長、試してみます」

 シノノメの操る機体は、超音波をそこかしこから放った。

 アリゲラは超音波でものを掴む、というのを先程カミザワが呟いていた事を思い出したのだ。

 アリゲラは前後不覚に陥った。そして訳の分からぬまま、硬い地面に激突。

 マッハを越えた速度の代償はその衝撃にある。強かに頭部を打ち、その直後。

 ゴキリ、と嫌な音を響かせ、アリゲラ達は首の骨を折り即死した。

「シノノメ、よくやったぞ。あとはウルトラマンの援護だ」

 カミザワはそう言った。

 

「キィアッ」

 地上からの銃撃、空中からの砲撃、そしてドーズからの薬撃。

 何を隠そう、ドーズは左手をまるでネイルのように伸ばし、尖らせてそして毒物を流し込むというとんでもない戦法を取っているのだ。

 先程流し込んだ毒もそれだ。そして、その毒は直に効くわけで。

「イカカカカカカカカカカ!??!」

「シュウァアア!」

 ドーズの怒涛の蹴り技が放たれる。この程度に頭脳のリソースは割いてられない、とばかりに蹴りまくる。

「……シャァアア!!」

 そしてドーズはバルビウム光線を放った。

 イカルス星人は途端に安らぎ、そのまま静かに死んだ。

 

 数日後。

「あー、という訳でだ」

 宇野の話を聞く酒井。

「今日からここのラボに出入りするバロ!」

 酒井に助手が出来たようだ。そう、あのバロッサ星人だ。

「私はバロッサ星人バロバ! 旦那様と一緒に頑張るバロ!!」

 元気だけはいいんだが、と幸先を危ぶむ酒井であった。

 

 ……その夜。

 シャプレー星人が何者かによって殺された。

 その魂は悪霊へと変わり、死神の身に取り込まれる。

「……任務完了」

 その死神はそう呟くと、鎌をまた振り回す。

 辺りの霊を刈り取り、また自身の糧にする。

 彼の名は四ノ原(しのはら)真司(しんじ)。又の名を────────────

 

 ──────────────死神、シン。




突如現れた透明怪獣 ネロンガ。対抗策を講ずるために僕達はカミザワ隊と共同戦線を組む。
そんな中、カミザワ隊の隊員の一人、ニシキダ隊員が妙なことを口走り始め……。
その一方で、死神シンはある侍の魂を追う。その魂とは!
次回、ウルトラマンドーズ!
『セイデンキニンゲン』
「カミザワ・宇野合同隊、出動!」
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