いやマジで終わります。そろそろ、ほんとだよ?
カットして投稿してるだけですが若干、感慨深いですね。
それでは続きをどぞ
「この学院の生徒がこのエーテルブースターと呼ばれる薬物を使用しているという事実が問題なのだ。科学に頼る。それは一つの在り方だ。だが代償で得る力など無力な人間の逃げ道だ。私は断固として認めない。風紀委員との協力の下でエーテルブースターの撤廃をここに宣言する」
学院内の放送にてブレムーゾの演説が行われた。当の本人は第三演習場、集会の場としても使用されている演習場の舞台にて多くの生徒の前で演説をしており、その声は学内全てに響き渡っている。
「さあ、行くぞ」
ビーリスの声で生徒会、風紀委員は動き出した。
決戦の場は第二演習場、ブレムーゾとロゼットの一騎打ちという名目でキクロ同盟、ないしはエクストラポートを誘導し一気に叩く。妙な緊張感に包まれた学院を歩き出した。
それと同刻、ロゼットは一人でブレムーゾの演説に耳を貸していた。
「私は生徒達の一筋の光を灯すべく生徒会戦へ参戦する。そして一騎打ちでロゼット君を倒し、エーテルブースターなど無用な代物ということを証明して見せよう」
ブレムーゾは挑発気味にキクロ同盟を間接的に否定していく。今朝から異様な雰囲気が漂っていたが、それはざわめきに変わったようにロゼットは感じる。様々な者達が動き出している。一方向ではない。
生徒会、風紀委員、ブレムーゾ派閥、キクロ同盟。押し殺してはいるが、漏れ出ている。
ロゼットは肩部にアサルトライフルが二丁マウントしている。これからの戦いへの対策は万全だ。
静かなのに騒がしい、矛盾した空間が実現している。しかし、それは長くは続かない。
ブレムーゾの演説が終了すると一気に学院中は湧き始めた。ブレムーゾの演説聞いた生徒達がここへ集っているのだ。それに合わせて本格的に計画が動き出している。
緊張はない。
そして、その男は姿を現した。無精ひげ、その体格、眼つき、全てを取っても猛者と呼んでいい男。ブレムーゾは葉巻を片手に歩いてくる。
気が付けば、第二演習場を取り囲むように生徒が観戦に来ている。この現状では一般生徒もいるので手は出せない。しかし、確実にキクロ同盟の人間が含まれているだろう。
「ロゼット・べリウス殿、公平な一騎打ちを承認してくれたこと、感謝する。アルガード・ブレムーゾが全力で挑ませてもらう」
宣言と共にブレムーゾが腰のサーベルを引く抜いた。
ロゼットもそれに対し、アサルトライフルを二丁、両手に構えた。
周囲の生徒も息を呑んだ。声に出すことを忘れ、開戦の瞬間に期待を膨らます。静けさの中ブレムーゾがサーベルを構える。その右腕に施された刻印が彼の着る軍服越しに輝いた。
「いざ尋常に」
口火は切られる。ブレムーゾの手によって、暴動の始まりを告げる言葉が告げられた。
「勝負!」
ブレムーゾが踏み出す刹那、周囲が色とりどりに輝いた。中央の二人へ向けられた一斉攻撃。それは二人へ向かい、直撃する。巨大な砂塵と怒号が鳴り響き、僅かに空間が沈黙した。
そして、悲鳴が上がった。何が起こったのか理解でない間を置いて、生徒達が混乱状態に陥ったのだ。息を呑んで一秒先の未来に不安を覚える。
「さぁ凱旋だ」
砂塵が晴れると姿を現したのはブレムーゾとロゼットではなかった。その二人を含めた生徒会だ。シエルの魔法により地面に細工をし、シルビアの結界で攻撃から身を守っていた。
もう、火蓋は切られていたのだ。どちらかが敗北するまでっもう止まることはできない。
ビーリスが先頭に立った。両手に炎を灯すと今までの鬱憤を全て晴らすかのように、周囲に撒き散らした。
火の雨とそれは呼ばれていた。花のように煌びやかな炎は物体に触れた途端に目標を焼き尽くす。災厄の炎。
それを見た瞬間に大多数に生徒が逃げ出した。先ほどとは比べ物にならないほどに混乱しパニックに陥った生徒は第二演習場が逃げ出した。
「よし、生徒会長ビーリス・マクローンが宣言する。一分後、この場に残った生徒は敵だ。殺傷を許可する」
声が上がった。敵の声だ。包み隠すことのない圧倒的な敵意が迫り、視界を埋め尽くすほどの生徒、キクロ同盟が迫ってくる。
シルビアの結界は解かれない。それが解かれた時、一発の弾丸が放たれる。
誰もが息を呑んだ。その瞬間は来る。
「やれ」
ビーリスが前に出る。そして一瞬で前方を全て焼き払った。
動き出した。完全にここは戦場と化す、初日と同じくらいの人数だが今回は逃げ出す素振りは全くない。本気だ。
生徒会はまさしく弾丸の如く戦場を駆け。蹂躙する。
「かっかっか‼」
ビーリスは心底楽しそうだ。この戦場にてビーリスという存在は輝く、根っからの戦闘狂の望む最高のシチュエーションが揃ったのだ。彼女にとって祭典だ。楽しまずにはいられないだろう。
「楽しそうだな会長」
防衛を担当していたシルビアが呟いた。ビーリスの後方で露払いを務めているロゼットもその光景を遠目で見ていた。
「それよりあれ、大丈夫なんですか?」
しかし、ロゼットは狂喜乱舞するビーリスに付いて回るシエルの方を心配していた。おろおろ、うろうろしているのがどうにも危なっかしい。
そもそもシエルは通常の魔導士とは違う。戦闘用の魔法など皆無であり、この戦場に立っていることすら奇跡のように感じる。
「ああ、大丈夫。見てれば分かるよ」
そんな疑問にシルビアが答えた。言われるがままにロゼットはシエルに視線を移した。
「うわぁ⁉」
シエルが叫ぶ。
「ぎゃぁ‼」
シエルが泣き叫ぶ。
「うわー⁉」
シエルが逃げ惑う。
そして、ようやくその違和感にロゼットは気が付いた。攻撃が一切当たらないのだ。偶然なのか、それともちゃんと避けているのか定かではないが少なくともロゼットが頻繁に視線をやると大体攻撃が飛んできて、それは必ず逸れている。
何かがおかしい。ふと、シエルではなくシエルへ魔法を放つ生徒をロゼットは見た。
「……え?」
消えた。
「あれって」
植物だ。食虫植物のような巨大な植物が生徒を攫っている。魔力を極限まで吸い取ったうえで演習場の外へ排出している。
シエルが育てた植物は彼の魔法が宿っている。大地へ感謝と誠意、丹精込めて育てられた植物達は彼を守るべく全てを殲滅せんと動き出す。つまり、この帝国の大地は全てシエルの植物が闊歩しており、現在ここへ集結している。
ビーリス曰く、この生徒会にて最も殲滅力が高いのはシエルだそうな。そしてシルビアが大丈夫だと言った意味が理解できた。
「あいつは怒らせないようにしよう」
そう誓うロゼットだった。
「ぼーっとしてないで応戦しなさい」
「分かってるよ」
少し余所見をし過ぎた様だ。メイビスの喝にロゼットは集中し直し、迫り来る生徒を撃ち落としていく。
「にしても埒が明かないな」
演習場外部に展開したブレムーゾ派閥の援護もあるが如何せん敵の数が多く、エーテルブースターの影響で一人一人の刻印の規模は広い。ここまでは善戦と言っていいが、生徒会はともかく他は押され始めている。
「学院の生徒だけではないな」
敵が予想よりも多く、結界魔法を使う防衛陣の層が厚く、決定打を与えることができていない。広範囲への攻撃はそれだけ威力が軽減する。長期戦が想定されている以上、ペースは考えなければ瞬く間に魔力は枯渇してしまう。
「こちらの結界も時間の問題です!」
ただでさえ相手の魔力は増強され一級の魔導士と同等に近い魔法となっている。それに加えて防衛はシルビアのみだ。戦闘開始からほぼ全ての攻撃を受け続けるのは幾ら彼でも限界がある。
魔導士の戦闘において防御は重視されない。だがそれは、一騎打ちの場合のみだ。このような集団戦闘に限っては防衛陣の層の厚さこそが戦力の決定的な差となる。
しかし、そんなことは最初から考慮に入っている。勝算がなければこんな所へノコノコ現れるほどビーリスは馬鹿ではない。
「姉貴」
ロゼットがセストを見た。
この状況を打破する人物は一人しかいないだろう。何よりその人物のことを理解しているロゼットがそれを確信していた。
「私が突破します」
セストが口にした。彼女の魔法は結界魔法などの防衛に特化したものに対して非常に有効だ。
「任せた」
ビーリスが一歩退くと、代わりにセストが前進した。
セストの両手の刻印が輝いた。そして、右腕を左から右へ振るう。
一閃。敵を守っていた結界が破壊される。あらゆる抵抗が許されず、それは切断されたのだ。
無系統の魔法。切断。射程内の物体だろうと生命だろうと、強度や硬度に関係なく使用者の意のままに分断する。それは結界であろうとも例外ではない。
前方に展開された敵を守る壁は一瞬にして消し去られ、丸裸も同然となる。その隙を見逃す愚者は生徒会には存在しなかった。
「畳みかけろぉ‼」
メイビスとビーリスの二人が特攻を仕掛け、前方に天変地異を再現した。吹き荒れる獄炎と全てを凍てつかせる凍土、矛盾するこの二つが生まれ、瞬く間に敵の陣形が崩壊した。
ロゼットも追撃で出た。敵の制圧力においてこの二人の右に出る者はないだろう。片や無数の弾丸の雨は生半可な攻撃ではない。
形勢が今の攻撃で動いた。敵の陣形はセストにとって無力化され、氷と炎が襲い掛かる。左右へ逃げればロゼットの射程へ入る。後方へ逃げれば戦線を押し返され、ビーリスは原っぱを焼き払うかの如く進行を止めることはない。
「蹂躙せよ!」
ビーリスが高らかに叫んだ。
エーテルブースターで如何に魔力を上昇させようと根本的な魔法の質、その桁が違うのだ。その実力差は公平な殺し合いでこそはっきりとする。それでも一騎当千の生徒会、メルヴァ、ブレムーゾの共闘があってようやく五分五分といったところだろう。
やはり戦況を動かしているのはロゼットとメイビスだ。その他大勢の中でも抜きん出た戦闘経験と実力が戦場を支配している。
「おかしい」
ブレムーゾがそれに気が付いた。
この戦場にキクロ同盟の代表格とも言える生徒が一人もいなかった。もちろんリオールの姿もそこにはない。
その存在に警戒をしつつ戦闘を行っているとしばらくして事態は沈静化した。敵勢力の戦意は次第に失せていき、戦いは終結したのだ。
「終わったのか」
誰かが呟いた。
呆気なさ過ぎる。それは誰しもが感じてることであった。勝利の雄叫びが上がるでもなく、沈黙していた。
そして同時刻、各研究施設からの要請を受けた帝国軍はエクストラポートの拠点と思われず基地を襲撃、こちらも数十分足らずで鎮静化された。
「我々の勝利だ!」
ブレムーゾはサーベルを高く掲げ、そう告げた。
暴動を起こした生徒達は帝国軍に引き渡し、第二課の協力で検査を受けることになっているらしい。魔導士として復帰できるかは検査、または治療次第。その生徒のリストの作成、休学の申請など生徒会に残された仕事は多く、これからも多忙な日々は続くと見られた。
そうして、この戦いは幕を閉じた。
「待ちなさい」
その声にロゼットは足を止める。振り返るとそこにはメイビスの姿があった。彼女は手を組んで呆れたような表情を浮かべていた。
暴動の夜。人の気配が完全に消える深夜の道をロゼットは歩いていた。
「そんな物騒な物を着て、これから何をする気なのかしら?」
「……」
ロゼットは魔導スーツを装備していた。身体は黒鉄の鎧に覆われ、無機質な頭部がメイビスを睨む。それでもロゼットだと判断することができた。
こんな夜に武装して動く人物に一人だけ心当たりがあったから、メイビスはここに来たのだ。
「あの子を助けに行くのならやめておきなさい」
「…………」
エーテルブースターの成分検査、治療という名目で帝国軍に収容された生徒の中で複数名、行方不明者が出ていた。そして、そのリストの中にレム・クラレアの名があった。今こうしてロゼットを動駆り立てているのはそうした理由だった。
「もし、レム・クラレアがエーテルブースターを本当に所持していたとしたら、あなたはどうするの? それでも彼女を助けるのかしら?」
「分からない。それでも俺はあいつを助けないといけない」
「なぜ?」
「俺はあいつの師匠だからな」
そう、と冷たくメイビスが呟く。
「あなたが根っからのお人好しなのは知っていたけど、少し気に入り過ぎじゃない?」
「かもな」
メイビスがロゼットの正面に立つ。その視線の先には腰に下げられた黒剣があり、そっとそれに触れた。
「お前も行くのか?」
「ええ、トラブルは根本的な要因を解消しなければまた繰り返してしまうものよ」
二人は久しく並ぶと、夜の帝国を歩き出した。
ティアルナ、セストを含めた第一課に調査を依頼したところ、今回の騒動で最も不審な行動をとっていたのは第三課、その中でも巨大な原動機開発の大本である施設、第五研究所には近日中に多くの荷物が格納されたという報告が上がっていた。
第三課は今回の騒動で被害を受けたものの、表立って協力をする素振りを見せることはなかった。
調査する対象としてはこれほど好都合な場所もない。それが罠だと感じるほどに。
「静かすぎるな」
第五研究所はほぼ無人。警備の人間も見当たらず、入口には鍵も掛けられずに開放されていた。
「妙ね」
人の気配が全くしない。これだけ巨大な研究所に一人として人間が存在しない。住み込みで研究している人間も一人や二人ではない筈だ。それにも関わらず、シンと第五研究所は静まり返っていた。
妙な胸騒ぎを覚えながらも二人は前へに出た。横幅のかなりある廊下が迎えると、歩く音だけが響き渡る。ふとロゼットは付いたままの電灯に視線が吸い寄せられた。
「誰もいない訳ではなさそうだな」
ロゼットが脚部のホルスターから魔導銃を抜いた。
「この研究所は広すぎるわ。二手に分かれましょう。何もなくても一時間後には入口へ戻る。片方が戻らない場合は帝国軍へ応援を要請する。いいわね?」
静かにロゼットが頷く。左右に別れた道をロゼットは右へ、メイビスは左へ各々進んだ。
一人になったロゼットは暗がりと明かり、それらが混合した廊下を歩く。チカチカと点滅する電灯の脇を通り抜け、慎重に歩みを進めた。
いかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたら幸いです。
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