ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
星街すいせい
白上フブキ
大神ミオ


Eve、部室

 違う。違うのだ。

 すいちゃんとの約束もあったし、連れて行ったらフブキ先輩、喜ぶかなーって思ったから連れてきただけで。

 こんな状況にする為に、連れてきたわけではないのだ。

 

「……いいんですか?」

「まあ、あまり行き過ぎたら流石に止めるけど、今回はフブキの自業自得な所もあるしねぇ」

「自業自得って。俺の部屋にフィギュア置いたり、一緒に遊んだだけですよ?」

「本気で言ってる?」

 

 信じられないという表情を浮かべられて、今度は俺が戸惑う。しっかり本気なのだが。

 視線を向ければ、部屋の隅へ追いつめられて、三角耳を抑えてプルプルしているフブキ先輩。

 すいちゃんに見えているのは顔の側面に着いた人耳のはずなので、それを手首の辺りで抑えつつ、しっかり頭の上にある三角耳も抑える高等テクである。

 そういえば、俺が色々見えるようになる前に、ミオ先輩に怒られている時に同じポーズを取っていた。

 あの時はなんであんな窮屈な姿勢を取っているのだろうと思っていたが、存外合理的だったらしい。

 

「……」

 

 フブキ先輩の視線が俺を捉える。

 助けを求められているのは分かったから、一応助け舟を出してみる。

 

「あの、すいちゃん?」

「なに?」

「その、あまりフブキ先輩を虐めないで貰って。ね?」

「別に虐めてないわよ」

 

 いじめっ子は皆そう言う。

 とりあえず、俺には救え無さそうだったから、俺は静かに視線を逸らした。

 

「食べないの?」

「食べましょうか」

 

 昼休みは有限だ。

 普通に食事を続けるミオ先輩と一緒に、俺もお弁当へお箸を伸ばす。

 

「たすけてー!」

 

 あー、あー、聞こえなーい。

 

 ***

 

 重箱を広げると、視線が集まる。「「おー」」と声を上げたのは、フブキ先輩とミオ先輩。

 

「相変わらず美味しそうだね。お腹空かせておいたかいがあったよ」

「本当だねー。昔はちょいちょい焦がしていたのに」

「ミオ先輩には沢山教えていただきましたから。まあ、今でも焦がしますけど」

 

 俺の言葉に、二人が笑う。

 

「お弁当が先の急なお誘いだったので、お二人の好きな物とか入れられなくてすみません」

「いいっていいって。早く食べよ」

「紙皿と割り箸は用意してきたので、使ってください」

「流石、準備いいねー」

「誘った側ですから、これくらいはしますよ」

 

 フブキ先輩とミオ先輩へそれぞれ紙皿と割り箸を渡して。

 それからすいちゃんへ、同じく紙皿と割り箸を渡す。

 

「はいこれ、すいちゃんの分」

「ありがと。ところでさ」

 

 紙皿と割り箸を受け取ったすいちゃんが、俺を見ていたずらに笑う。

 

「お二人の事、ちゃんと紹介してくれない?」

「──あ、ごめん、すいちゃん」

 

 そういえば、漏れていた。

 こうして仲介するのは何度やっても慣れない。お互いに言葉の通じなかった、シオンとわための時よりは、マシなのだけど。

 

「改めてこちら。部活の先輩で、白髪の方が部長の白上フブキさん。黒髪の方が副部長の大神ミオさん。フブキ先輩は大体さっき話した通りで、ミオ先輩は俺の料理の先生でもある」

「よ、よろしくね! ていうか、私の事って何を話したの!?」

「よろしくー」

「フブキ先輩、ミオ先輩。幼馴染の星街すいせいさんです。保育園時代の付き合いで、最近再会しました」

「よろしくお願いします」

「ちょっとぉ!」

 

 すいちゃんが小さく会釈する。外行きって感じだ。

 

「お二人とも、凄くお綺麗で吃驚しました」

「そんなー、すいちゃん程じゃないよ。それにしても、噂に流れていたすいちゃんの幼馴染って君だったんだ」

「まあ、一応」

「一応?」

「ちゃんと幼馴染です」

 

 俺の言葉に、すいちゃんが頷く。一週間前と大違いだ。俺の言葉に「ふーん」とフブキ先輩。ちょっと面白くなさそうなのは、気のせいだろうか。

「それにしても」とすいちゃんが口を開きながら、割り箸を割る。ばきっっという音が、やけに大きく響いた。

 

「皆さん、仲がいいんですね」

「え?」

「あんたには聞いていない」

「ごめんなさい」

 

 すいちゃんの視線が、フブキ先輩の方へ向く。「えっと」とちょっと戸惑った様子を見せながらも答える。

 

「そうだね。ミオとは幼馴染だし、彼とは去年の夏休み前からだから、かれこれ一年半位の付き合いになるのかな?」

「そうですね」

 

 転校ばかりだった俺の感覚だと、かなり長い付き合いだ。

 

「正直こんなに仲良くなれるなんて思わなかったよ。初めて会った時は全然話し合わなかったし」

「そうだねぇ。フブキのスマホ見て、ドン引きしていたからね」

「今では俺のスマホも、しっかり画面ロックとアカウント設定がされました」

「それが普通なんだけどねー」

 

 懐かしさから、つい笑いが漏れる。

 それは、フブキ先輩も例外ではなく。その笑いで緊張がほぐれたのだろう、「改めて」と、フブキ先輩はすいちゃんへ声をかけた。

 

「来てくれてありがとうね。こういうと良くないかもしれないけど、大ファンだから、やっぱり会えて嬉しいよ」

 

 その言葉に、食べていた卵焼きを飲み込みながら、すいちゃんが頷く。

 

「ええ。そうみたいですね」

 

 すいちゃんの視線が、ホワイトボードの方を向く。

 もはやいつも通りというか、ホワイトボードにはすいちゃんやらそらちゃんについて書かれていた。

 最近新曲発表などがあったので、それについての話題が多い。

 すいちゃんの視線に気が付き、慌てた様子のフブキ先輩が立ち上がって、ホワイトボードを背にする。

 

「あ、あはは。来るって分かっていれば、消しといたんだけどね」

「大丈夫ですよ。それにしても──」

 

 ぐるりと、すいちゃんは部室内を見渡した。

 

「フィギュアや漫画にゲーム機まであるみたいですけど、ここは何部なんですか?」

「えっと……ここはー」

 

 すいちゃんの言葉に、フブキ先輩が言い淀む。

 よもや物置用のペーパー部とは答えられそうにないらしい。

 

「フブキの欲望詰め合わせ部でしょ」

「ミオー!」

 

 そんなフブキ先輩の葛藤をミオ先輩がバッサリ切り捨てた。

 

「欲望?」

「ここにあるもの、殆どフブキ先輩の私物なんだよ。だから欲望詰め合わせ」

「君まで!」

「成程ねー」

「いや、違うの、すいちゃん! 確かに崇高な活動目的があるとかでは無いけど……兎に角違うの!」

 

 何が違うのだろうか。

 

「私はいいと思いますよ。素敵だと思います」

「すいちゃん……神……」

 

 崇め始めた。この人が神みたいなものだったはずだが。

 

「ところで──」

「うん?」

「フィギュアが一部穴抜けになっているのって何でですか?」

 

 すいちゃんのその言葉に、俺は内心首を傾げる。それについては、この前説明したばかりだ。

 ただ、俺が答えるより早く、フブキ先輩が口を開く。

 

「ああ。実は今期で部活を閉じる予定だから、少しずつ荷物を移動させているんだよねー」

 

 その言葉は、少し寂しそうだった。

 物置として始まったこの場所も、二年も居れば思い入れも出来るのかもしれない。

 

「へぇ……なら」

 

 ただ、そんなことすいちゃんにはお構いなしだった。

 

「なーに?」

「それらのフィギュアが、全部白髪だったりケモミミが付いていている物で、移動先が彼の部屋なのはどうしてなんですか?」

「──ごほっごほっ」

 

 ぴしゃりと、フブキ先輩が笑顔で固まり、ミオ先輩がむせた。

 

「ミオ先輩、お茶どうぞ」

「あ、うん。ありがとう」

 

 ミオ先輩がお茶を飲んでいる間に、再びすいちゃんが口を開いた。

 

「どうしてですか?」

「い、いやー。そんなに深い理由は無いよ? しいて言うなら、私も白髪だから同じ要素のある子を部屋に飾っていたら、私の部屋が真っ白になっちゃうかなーって」

「元々白いでしょうが」

「ミオさん!?」

 

 まさかの裏切りである。

 

「大神先輩は知らなかったんですか?」

「……ごめんなさい、知っていました。ただ部屋主が問題無いと言っている以上、止める理由も無かったので」

 

 なんか俺の責任のお鉢が回ってきた気がする。すいちゃんもめちゃくちゃ怖い目でこっちを見ているし。

 

「いや、フブキ先輩の部屋にグッズ類が溢れているのは知っていたし、そもそも片付けを始める前から俺の部屋にフブキ先輩の私物は置かれていたから、別にいいかなーって」

 

 ……あ、やべ。

 

「え? そうなの? 借り物だったわけじゃなくて?」

 

 俺の言葉に反応したのは、ミオ先輩だった。

 

「フブキ?」

「あ、いやぁ……」

 

 フブキ先輩の視線が逸れる。ミオ先輩の視線が、そのまま俺へ向いた。

 

「ミオ先輩に買いすぎだと怒られたからちょっと置かせてって、購入品の一部を避難させるようになったのが、そもそもの始まりでした」

「内緒って言ったのにー!」

「すみません」

「それで? 見た目については?」

「特に意識してなかったよ。これ置かせてーに二つ返事でいいですよーって返していただけで、これを置かせてくださいって、こっちからお願いしたことは無いよ」

「それだけ?」

「たまに、入れ替えてたよ。部屋の飾りつけ変えたいからって、代わりにこれ置かせてーって感じで」

「……」

 

 すいちゃんの視線が、フブキ先輩に戻る。

 

「ほ、本当に深い理由は無いよ?」

 

 フブキ先輩はぷるぷると首を横に振りながら、すいちゃんへそう返す。

 その反応だと、深い理由は無くとも、何かしらの企みはあったように見えてしまうから、やめた方がいいと思う。

 

「何の理由も無く、自分と同じ白い髪のフィギュアを、わざわざ彼の目が届く場所に飾らせていたと?」

 

 ほら、すいちゃんも誤解する。

 ただそうなると……ケモミミに関しても同じ事が言えるなぁと、ぼんやり思う。

 すいちゃんには見えていないが、フブキ先輩の頭には可愛らしい三角耳があるのだ。

 もっとも、現在その三角耳はすいちゃんの圧に押され、ぺたりと畳まれているのだけど。立っているのが可愛いのだが。

 

「う、うん……」

 

 こくこくと、壊れた機械のようにかくかくとした動きで、フブキ先輩は首を縦に振った。

 

「──分かりました」

「……ほっ」

 

 すいちゃんの言葉に、フブキ先輩が胸を撫で下ろす。

 これで話が終わる──訳も無く。

 

「ならお泊りの件についてなんですけど」

「……」

 

 フブキ先輩の顔が絶望に染まった。お昼休み終了まで、後45分。昼食は取れるのだろうか。

 




これ終わるか……?

文章の構成はどちらがいいですか

  • 全部詰める(全話までのやり方)
  • 地文と会話文の間に改行を入れる(今回)
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