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取っ散らかってしまったので、遅れました。すみません。
次回は12時間後の予定ですが、1日お休みいただくかもしれません。
二時間目終わりの休み時間に、クラスメイトと揉めた。
貧乏人だなんだと一方的に罵られた挙句、すいせいとのクリスマスの思い出を侮辱し、どうせすいせいにも嫌われたのだとそう言ってきたクラスメイトの言葉に我慢が出来なくなり、手が出てしまった。
その上、タイミング悪く教室へ教師が戻ってきてしまい、あれよあれよと言う間に、少年は急に暴力を振るった悪人扱い。
環境の変化についていけず、思わず逃げ出してしまい。学校を飛び出して家まで戻って。
少しだけ落ち着いてきたら、次に気になったのはクラスメイトの言葉。頭を抱え、それを振り払うのに数時間。
お腹が空いて、食料を買いに行こうと家を出て。雪が降っていることに気が付いた。
道理で寒いわけだと、少年は吐息で指先を温めながら、スーパーを目指す。
その途中。家から少し行ったところにある、イルミネーションが目についた。家族連れや友人恋人同士。誰かが誰かと、一緒にいる光景が、目に入ってきた。
昨日も一昨日も見た、普段なら何とも思わぬその光景が、今日に限って胸に刺さる。
『──っ』
思わず走り出した。右も左も関係ない。兎に角まっすぐ、前へ前へ。
『はぁ……はぁ……』
どれだけ走ったか。
疲れた、足が痛い、休みたい。そんな考えが、ぐるぐると頭をめぐる。
視界がぼやける。何故か涙も嘔吐感も止まらない。
『すいちゃん』
会いたい。今すぐ。
それだけを胸に走って、走って。
突き当りの丁字路を曲がった所で、人にぶつかった。
『大丈夫かい?』
声をかけられて、顔をあげる。随分と暖かそうなダウンジャケットに身を包んでいる男。頭に乗った帽子から、警察だと分かった。
『こんな時間にどうしたんだい? おうちの人は?』
『……』
無視して立ち去ろうとするが、警察はその前に立ちはだかる。
──邪魔しないで欲しい。
そう声を出そうとして。
『──っ』
限界近い体が悲鳴を上げる。吐きそうになって、思わず塀に手をつく。
ただ、空っぽの胃からは溢れるものは何もなく。ただ不自然に力が入って、体力を削るのみ。
『大丈夫かい⁉』
驚いた警察が少年の背後に回った。
吐きそうな動作をしたから、その背中を擦ろうとしたのだろう。その隙を突く。
『あ、こら! 待ちなさい!』
全力で走る。曲がり角を適当に何度も曲がって。視線が切れたところで、適当な民家の敷地に逃げ込む。
気持ち悪い。口元を抑えて、呼吸音で悟らせないようにしながら、暫く待つ。
──幾許の時間が経っただろうか。体に積もった雪を払い落とし、恐る恐る周辺を探り、人影が無い事を確認。
ため息を漏らし、再度走る。
休んだから、少しはマシになったかと思ったがそんな事は無く。走り出して間もなく、直ぐに体力の限界が来る。
地面を蹴ることが出来ず、歩幅は小さく、走行はやがて歩行に変わった。
それでも、足だけは止めずに、前へ進む。
──給食、食べ損ねた……。
朝も食べていないから、丸一日以上、食べていない事になる。食は細い方だったが、流石にしんどい。
何処かコンビニなどによろうかと思うも、先程の事を思い出すと、抵抗がある。
自販機は──そもそもボタンに届かないから使えない。どうしようもなかった。
『……』
寒い。痛い。辛い。何で頑張っているのだろうか。
そんな事を、思ってしまったからだろうか。
足が絡まり、受け身もとれぬまま転倒する。顔から転び、起き上がろうにも、力が入らない。
それなら、このまま──。
『よっ』
体が動かされ、世界が反転する。暗雲の空。降り注ぐ雪。自身の吐く息が、瞬く間に白く染まる。
動けぬままぼんやり見上げていると、顔を覗き込まれた。真っ先に目を引く、黒と紫の巨大な角。
真っすぐ見下ろされるのが嫌で、視線を逸らす。逸らした先に見える姿は、背丈は少年より幾分高く、紫を軸にした膝下までのジャケットを着ている物。
同い年か少し上位かなと、少年はぼんやり考えた。どちらにしても、子どもだ。
『お、生きていた』
先程から聞こえていた声と、同じ物が届く。
『お前、何でこんなとこで寝てんの?』
言葉を返そうとするが、声が出ない。
そんな少年の様子を訝しげに見降ろした顔が、少年に近づく。
近づかれて、そのトパーズの瞳に映る自分の顔が、酷くボロボロである事に気が付いた。
『なんだよ、ボロボロじゃねーか。汚ねーなー』
ちょいちょいと、頬に着いた泥が落とされる感覚。その手を払いのける力は湧かない。
『お前、このままだと死んじまうんじゃねーの?』
事態の深刻さを感じさせない余りに軽いその言葉は、少年の内にすとんと落ちる。
無意識に目を逸らしていた事実に直面する。そうだ。間違いない。このままでは間違いなく終わる。
終わってもいいのかどうかは──言うまでも無かった。
『お?』
力の入らない体に鞭を打つ。
動かないなどという甘えは認める訳にはいかない。
まだ死ねない。死にたくない。
大好きなすいちゃんに会うまで、終わりたくない。
『う、うぅ、うぅぅ!』
『はっは! いいぞ! 頑張れ!』
楽しむような、小馬鹿にするような。そんな声への怒りも原動力に変え。力の限りを尽くして、寝返りを打つ。
そのまま、両腕に力を籠める。体を起こそうと力を振り絞るもそこまで。寝返りだけで限界を迎えた体は、立ち上がる事は出来なかった。
『……お?』
だが、四肢の力を使えば這いずる事は出来た。それなら、それでいい。
動けさえすれば、進める。進めるのであれば、いつか会える。
『──はは!』
笑い声。直後、浮遊感。
『気に入った。お前、私のな』
***
「──最悪」
寝起き一番。そんな言葉が漏れた。
体を起こし、首を回す。カチコチだ。見れば、暖房が点いていない。
普段なら、起きる三十分程前から点いているのだが。
手を伸ばして、スマホを手に取り、時間を見る。朝二時。起きるにはかなり早い。というか朝じゃなくて夜だ。
昨日の晩、帰ってきてから、怒られ、夕食を取り、その後昔話をシオンとわためにし終えたのが、二十二時頃。
そこから寝支度を整えて、寝たのが二十三時頃だから、殆ど寝れていない。
ただ、夢見の悪さと、寒さで目が覚めた事もあり、寝なおす気にはならなかった。
折角の土曜日。今日は休みだ。早起きしても、罰は当たらないし、特に予定も無いから昼寝をしても問題無い。
「よっ」
ベッドから降りる。暖房をつけて軽く体をほぐし。寝直す気も無いから、いつも通り、カーテンを開けた。
「……寒いわけだ」
しんしんと静かに雪が降っている。
少し悩んで、俺はパジャマから、ジャージに着替えた。
その上から更にパーカーを着て、スマホをポケットに突っ込み、玄関の戸を開けみ。
吐く息が、瞬く間に白く染まった。ぶるりと体が震える。
巻いていたマフラーを鼻の高さまで上げて、ポケットに手を入れて、俺は家を出た。
敷地を出て、特に何も考えずに左折。街灯の少ない夜道を行く。
傘は差さない。なんとなくだ。雨より濡れにくいし、問題無いだろう。
──流石に時間的にあれか……? ……まあ、いざとなったら逃げればいいか。
そんな事をふと考えて苦笑が漏れる。どうにも夢に引っ張られているらしい。
いやはやしかし。我ながらあの時はぎりぎりだった。
元々受け身な性格。転校先で自分から話しかけるような事もしなければ、すいちゃんとの約束を果たせなかった事で全て投げやりになっていて、保育園時代には、やらないとすいちゃんに怒られるから多少していた身なりに気を使う事もしていなかった。
結果的に小学一年の時に二度の転校をして、全ての学校で浮いていた。そういう意味では、寧ろ最後の学校に入るまで、他の生徒と揉めることが無かったのは寧ろ奇跡かもしれないし、存外、あの金持ち君も俺に気を使ってくれていたのかもしれないと、ぼんやり思う。
──ていうか、俺って今、どういう状態なんだろ?
正直興味が無かったのでholoXに居た時には聞かなかったが、丸々六年の不在を、両親は気にしなかったのか。記憶の限りだと、holoX在籍中に親と連絡を取った記憶は無い。それに最後に通っていた学校はどうなったのだろう。揉めて逃げて、それきりだ。後はその後の、中学への入学の手続きやその時に住んでいた部屋の事など。勝手に親がやっている物だと思っていたが、存外それも怪しい気がする。
──まあ、聞いてみればいいか。
「……寒」
落ちて来たマフラーを、再び鼻の高さへ持ち上げた。
流石にジャンパーとかダウンジャケットを着てくるべきだっただろうか。……まあ、動いていれば、その内暖かくもなるだろう。
すいちゃんに聞かれたら、違う! と怒られそうな、調子外れの口笛を吹きつつ、夜道を進む。
「お」
向かう先に、自販機があった。
小走りに近づく。夜でも煌々と輝くそこには、時期らしく温かい飲み物も売られていた。
迷わず温かい缶コーヒーを選択。スマホを決算部に当てて、購入する。じんわりと、冷えた指先が熱を取り戻すのを感じながら、もう一本、スマホを当てて購入。
落ちてきた温かいミルクティーを取り出す。
「飲むだろ?」
歩いて来た方に広がる暗闇の方へ、取り出したミルクティーを差し出す。
少しして、その闇の中から一人、俺の方へ近づいて来た。
真っ先に目を引くのは巨大な角と刺々しい尾、五か所の首につく拘束具の様な大きな金属輪。
ただ、銀の薄紫の間の様な髪色のロングヘアはしっかり整えられているし、中央には紫のメッシュまで入っていし、紫主体のロングコートから覗く足は左右非対称の見てくれ。
会った頃から、偶に着替える事はあったが有事だったりと言った時はいつもこの見た目だった。
変わらないなぁとぼんやり思いながら、トパーズの瞳を見つめ返す。
「ほれ」
「──っと」
投げ渡してやる。天音先輩と違い、長い袖からは指先すら覗けないが、それでも彼女、ラプラスは器用にそれをキャッチして見せたし、問題無くキャップを開けた。
「とりあえず、再会に乾杯」
「……乾杯」
距離を開けたまま、お互いに手持ちの飲み物だけを掲げる。
かくして、再会はなされ──最後の日の、幕は開けた。
文章の構成はどちらがいいですか
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全部詰める(全話までのやり方)
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地文と会話文の間に改行を入れる(今回)