ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
白上フブキ
大神ミオ


エピソード・オブ・すこん部 ep.1 再会

 生徒会室の荷物を一時的に保管するために向かった空き教室。

 そこに、以前生徒会室前で出会った、白上先輩と大神先輩の2人が、何故かいた。

 キョトンとした表情を浮かべる2人。多分俺も、同じような顔をしている。

 

「とりあえず、入っていいよ。扉を開けたままだと、見栄えが良くないし」

「あ、はい」

 

 口火を切ったのは、白上先輩だった。

 見栄えが良くない、という言葉の意味は良く分からなかったが、荷物を置きに来たのは事実なので、素直に部屋に入る。

 そのまま、一度荷物を床に置いて。振り返り、扉を閉める。

 

「良かったら座って」

「いえ。片付けだけして生徒会室に戻ります」

「片付け?」

「はい」

「……そういえば、生徒会室凄かったよね」

 

 二度、生徒会室に足を踏み入れている白上先輩の言葉に、「ですね」と返す。

 

「でも、この荷物をこの教室に仕舞えば、片付け終了なんで」

「……とりあえず、座ろうか?」

「え? いや」

 

 俺の話を聞いていただろうか。

 とりあえず、もう一度同じ事を言おうとするが、遮るように鍵のかかる音。

 扉の方へ視線をやるより早く、グッっと肩を掴まれる。

 見れば、大神先輩がいつの間にかそこに立っていた。

 肩を掴まれ無理矢理に、俺は椅子に座らされる。

 椅子に座った俺の前に、お茶が置かれた。脇を見れば、水筒を持った白上先輩。

 また気が付かなかった。いつの間に水筒を出したのだろう。

 

「……えっと」

「まずは一服ね」

「…………はい」

 

 俺の対面に腰を下ろした白上先輩から、声がかかる。有無を言わせぬ様子。謎の圧。

 まあ、もう掃除も終わりだしいいかと、自分を納得させながら、一口飲む。

 正直味は分からないのだが、人肌程度に温いそれが喉を通る感覚に、無意識に一息ついた。

 自然と少しばかり緊張が解れ、周囲を見る余裕が生まれ、部屋の中を観察出来た。

 部屋の中には棚が置かれ、並んでいるのは漫画やカラフルな背表紙の小説、ゲーム機らしい電子機器や、ともすれば奇形だなんだと騒がれそうな体形の、プラスチック製らしい女の子の人形などが置かれている。

 漫画研究会の部室が、確かこんな感じだった。

 

「なんか、凄い部屋ですね」

 

 感心してしまう。書籍類が整頓されているのは当然だが、ゲーム機や人形にも塵1つ見えない。

 生徒会室と違って、きちんと清掃され、手入れされているようだった。

 

「そうでしょ。何か興味ある?」

 

 感心していた俺は、うきうきした様子の白上先輩に尋ねられる。

 

「いえ。漫画は読みませんし、ゲームはやらないので」

「そうなの? アニメとかも見ない?」

「全然見ないですね」

 

 テレビは朝食を食べながら、天気予報を確認したり、暇つぶしにバラエティやドラマを見る程度。それも、数日に一度、あるかどうか。

 漫画やゲームも買って貰った事は無く、食費として与えられているお金を使い、自ら買った事も無い。

 小さい頃は、図書室にある歴史や偉人の漫画を読んだり、家ではアニメを見ていたような気もするが。気づけばそれもしなくなった。

 漫画を読まなくなったのは、中学の図書室には置かれていなかったからが理由だが、アニメに関しては、確か空しさを覚えたから、見なくなった記憶がある。

 俺の言葉に、白上先輩が首を傾げる。

 

「全然?」

「はい」

「……本当に?」

「本当です」

 

 ちらりと、白上先輩の視線が大神先輩の方に向いた。つられて視線を向ければ、大神先輩もやや困惑した様子を見せながら、白上先輩へ頷き返していた。

 謎のアイコンタクトに疑問を覚えていると、「所で」と白上先輩が口を開いた。

 

「気になっている物とかない? この中にある漫画とかゲームで、タイトル知っているやつとか」

「……」

 

 先程嗜まないと言ったばかりなのだが。そう言われた俺は、改めて棚の方へと目をやり、左上から順繰りに確認していく。

 一通り、目を通してから。

 

「じゃあ、あの。聞きたいんですけど」

「うん! 何でも聞いてね!」

「ここは、漫画研究会が使っているんですか?」

「……そこ?」

 

 やっぱり覚えのあるタイトルが無かったから許してほしい。

 気になったことを、尋ねたのである。

 

「沢山あるので」

「えっと……、違うよ。空き教室」

「え?」

 

 大量に置かれている物を前に、てっきりそうだと思ったのだが。

 白上先輩の言葉は、いたって普通。特に嘘や誤魔化しを言っている様子は無く、事実だけを言っている様子。

 

「……なら、棚に置いてある物は一体」

「私物」

「……」

 

 改めて棚を見上げる。

 壁一面を覆う棚。恐らく、俺の私物を全てそこに入れても、まだ余るであろうその棚全てが、きっちりと埋まっている。しかも、それら全て、生活をする上では必要の無い趣味の品。

 幾つか入り混じった、複雑な感情を胸中に秘めながら、一先ず俺は、此処に来た要件を口にする。

 

「その、暫くこの部屋は生徒会名義で使う事になっていまして。とりあえず、荷物を此処に仕舞う為に来たんですけど」

「そうなの? 困るんだけど」

「そう言われましても……」

 

 とはいえ、確かにいきなり生徒会で使うから此処の荷物を全て片付けろと言われたら、困る事は明らかだ。

 とりあえず、天音先輩に相談してみるかと思い、俺はスマホを取り出す。

 そのまま電話を掛けようとするが、大神先輩が手を伸ばしてきて、不意を突かれた俺は、そのままスマホを奪われた。

 大神先輩に奪われた俺のスマホは、そのまま白上先輩の手に渡る。

 

「ちょっと待とう? いきなり通報は良くないと思う」

「通報のつもりはないですけど」

 

 俺じゃどうしようもないから、相談しようとしただけだ。

 兎に角、スマホを返して貰おうとして、ある事を思い出す。

 

「あれ? そういえば、部活の申請が通らなかったって聞きましたけど」

 

 そう言うと、白上先輩の視線が逸れた。

 視線を右側に向ければ、そこに立っていた大神先輩の視線も逸れる。どうやら記憶違いは無かったらしい。

 

「……でも、申請書に書いたし」

 

 苦し紛れに、白上先輩がそんな事を言ってきた。

 その言葉は、酷く弱弱しい。

 

「でも申請が通っていないなら、此処は空き教室ですよね?」

 

 そう言うと、白上先輩から溢れるように流れだす冷や汗。

 空き教室の私物化なども含め、どちらが不利なのか、自覚はあるようだった。

 

「……天音先輩に相談するんで、スマホを返してください」

「…………スマホを返してほしければ、これにサインして貰えるかな?」

 

 白上先輩から、何やら紙が差し出される。

 A4サイズの用紙。一番上には、創部届と書かれていた。

 その下に、部名や部室、顧問を記入する欄が続き、それらは全て埋まっている。

 唯一埋まっていないところは、所属する部員の一番下。3人目の名前。

 

「お断りします」

「スマホが帰ってこなくてもいいの? 困るんじゃない?」

「……いえ、特に」

 

 連絡取る相手も居ないし。

 

「ええ⁉ ソシャゲのデイリーこなせなかったら困るでしょ⁉」

「ソシャゲ?」

「SNSに届く推しの情報も見れないし!」

「えすえぬえす?」

「電子決算も使えないし!」

「でんしけっさん?」

「どうやって、生きて来たんだお前!」

「そこまで言います?」

 

 百歩譲って、何でスマホ持っているのか尋ねるべきでは無いだろうか。

 首を傾げる俺に、ヒートアップしている白上先輩。

 ふと、その指が俺のスマホの電源ボタンにかかった。感触の違いに気づいたらしい白上先輩の視線が、俺のスマホの方へ向く。

 その画面を見て、唖然とした様子を見せる白上先輩。

 

「画面ロックが掛かってない!」

「がめんろっく?」

「電源押したら、直ぐについちゃうでしょ! 落として知らない人が拾ったらどうするの!」

「……どうとは?」

 

 生徒会室の惨状の写真と、メモが幾つか見られる程度しか思いつかなかった。

 正直大して困らない自信はある。

 

「──ほら、これ!」

 

 俺の言葉に、少しの間絶句する白上先輩。それから、スマホが少し操作される。

 そうして見せられたら画面。そこに映っていたのは電話番号。覚えのない番号だ。

 

「これ、君の携帯番号だからね!」

「……へー」

「知らなかったの⁉」

 

 知らなかった。スマホというか、携帯電話と呼ばれる物自体を持ったのが、ホロ学入学の前日位に、ふらりと戻って来た親から、はいこれと渡された時だ。

 その時少しだけ触って、電話のかけ方と、元々入っていたカメラとメモ帳の使い方を覚えたきり。

 唯一連絡先を交換した天音先輩は、天音先輩から先に電話番号を教わって、それに掛ける事で覚えた。

 

「それに……まあ、電話帳の登録は無いけど、発着信の履歴……も2つしかないけど、ここにだって他の人の番号あるんだから!」

「確かに」

 

 見れば、通話履歴の所に、天音先輩の携帯番号と、渡された時にテストで掛けた母親の番号がある。

 

「通話履歴ってそこから見られるんですね」

「……天音さんに電話かけるつもりだったみたいだけど、どうやってかけるつもりだった?」

「普通に手打ちで。番号は覚えていますから」

「……」

 

 白上先輩の目が、信じられない物を見る物へと変わる。よく使う機能だけ使えれば十分だと思うんだけど。

 強いて言えばカメラとかメモの場所位は動かしたいかなと思う時はあるけれど、だからと言って動かさなくても問題は無いから、結局そのまま。

 

「設定画面見てもいい?」

「どうぞ」

「……アカウント設定してない」

 

 あかうんとせっていってなんだ。

 

「今さらだけど、ホーム画面も、これ買った時のままでしょ」

「良く分かりましたね」

「同じスマホ使っているからね」

 

 ほらこれと、白上先輩のスマホを見せられる。

 

「なんか、形が違くないですか?」

「え? そんなことないよ」

 

 白上先輩が、自身のスマホについたカバーを外して見せてくる。

 

「ほら。一緒でしょ?」

「……そのカバー、外せるんですね」

「え? うん。外付けのケースだからね」

「じゃあ、俺のスマホについているのもそうなんですか?」

「……そうだね」

 

 そう言いながら、白上先輩は俺のスマホについていたカバーも外して見せた。

 比べてみれば、一目瞭然。色こそ違うが、確かに同じ機種。

 

「てっきり一体な物だとばかり」

「いや、ケースも色々あるから、結構選び放題だけど。でも君のスマホにフィルムがついていいるのに、ケースは知らなかったの?」

「フィルム? 今スマホについているやつなら、全部親に渡された時から付いていましたよ」

「……因みにこのスマホに君の意思が反映されている物は?」

「メモ帳と何枚か取った写真位ですかね?」

 

 俺の言葉に、白上先輩が絶句した。

 




お久しぶりです。9月中休んですみません。


更新ですが、毎週金曜0時で週1更新でひとまずやっていきます。
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