ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
秘密結社holoX
紫咲シオン


遅れましたすみません。
戦闘中に伴い、沙花叉クロヱさんが主人公君に殴られたり蹴られたりしています、
ご容赦ください。




04

「──両方とも戦況不利だけど、どっちに合流するの?」

「うーん……シオンちゃんの方かな」

「その心は?」

「ぱっと見、あの子よりピンチ」

「なら、ウチはあの子の方に合流を──「しなくていいよ」え?」

「騒がしくなるかもしれないから、そっちを優先して」

「……はぁ。それならウチが行った方が良くない?」

「それもダメ」

「なんでよ」

「……なんでも。とにかく私が行くから」

 

 ***

 

 大事なのは躊躇わない事。現状維持で散漫に死ぬ位なら、その死の一部を今すぐ清算する。

 振られた刃を突っ込みながら躱す。躱しきれず体の一部を裂くが、それで少し差を削り、距離を詰める。

 ナイフの振り始めを見切り腕を狙う。振りを止めつつ、押し込んで体勢を崩し。そのままボディを狙うも、大きく下がって躱される。

 躱されたが、効果あり、作戦継続。地面を蹴った。

 視線の先で、沙花叉が腕を振り。袖口より取り出した投擲用小剣を放った。

 数は三。恐らくは牽制用として投げただけの、雑なそれ。躱そうと思えば、躱しきれる。

 多少無視して最短距離を進めば──差は更に削れそう。

 故に進む。胴に刺さりそうなものだけ弾き、残り二本は左腕と胴を裂く。予定通り。

 沙花叉の虚を突きながら、生きられる筈だった時間分、回避時間を削り、正面へ突っ込んだ。

 それに反応した、沙花叉の追撃。合わせて加速。

 再度腕は振られ、小剣が投擲される。こちらの狙いを察したのか、今度はしっかりと狙った小剣は、二本投げてどちらも胴狙い。

 速度も増して、俺が速度を落とさなければ、弾く間が無いだろう速度。大した問題ではない。

 ナイフの進路、胴の刺さるであろう位置に腕を置く。

 次の瞬間、腕に刺さる。だが胴までは届かない。そのまま数歩で、沙花叉の懐に入り、足を放つ。投擲後のがら空きの鳩尾へと突き蹴りを入れた。

 

「カッ」

 

 蹴られた沙花叉が、片手で鳩尾の辺りを抑えながら後退する。

 迷わず追撃。沙花叉と同じく、手数で戦う為、拳と蹴りのコンビネーションで攻め立てる。

 

 ──うまい。歩道橋でもそうだったけど、コンビネーションは対応される。

 

 ハイキックを躱される。

 足の着き際、沙花叉が反撃に動いた。顔を逸らすが、沙花叉のナイフに着いた俺の血が、宙を舞うのが見える。

 思ったより深く斬られた。良いのを入れたのに、もう立て直された。人に頑丈というが、沙花叉も相当だ。

 ナイフが振られる。腕を掲げて当て、軌道が逸らす。腕が切り裂きながらも、うまく流して致命傷を躱す。

 

「シッ」

 

 そのままつなげる。斬られた腕を発射。マスク越しに裏拳。

 ガッっという鈍い音は、ダメージを負ったのが俺の手というのを示していたが。それでも顔への衝撃に、沙花叉がひるむのを感じ、追撃。

 その場でジャンプターン、勢いを載せた追撃の裏拳。狙いは沙花叉の側頭部。

 沙花叉の判断は、腕の進路上に置かれた小剣。そのまま軌道なら、小剣の切れ味によっては腕が輪切りにされかねない位置。

 

「知るかよ」

 

 そのまま腕を振り切る。ナイフの痛みの直後、裏拳は間違いなく沙花叉の横顔へ直撃。そのまま殴り飛ばした。

 

 ***

 

「お、良いの入ったな」

「だねー」

 

 すっかり観戦モードのラプラスとルイが、炬燵に入ってずずずと緑茶を啜る

 画面の向こうでは、マスクに隠れていない顔の下半分を歪めるくろえに、少年がナイフを刺したまま、輪切りを回避した腕で追撃する光景。

 流石に、鳩尾へのダメージも回復しやらぬ中での側頭部への一撃。即回復は出来ないのだろう。くろえは放たれた拳を腕を盾にしのぎながら後退する。

 そんなくろえを、少年は容赦無く追撃していく。

 

「新人も頑丈だなー」

「だねー」

 

 沙花叉の受けた一撃はどちらも、人によってはそれだけで戦闘不能になりかねない物だ。

 それを容赦無く叩きこむ少年にも、受けてなお、戦闘継続出来るくろえにも、二人揃って感心してしまう。

 

「しかしまあ、あれだよなー」

 

 少年とくろえの戦いを眺めながら、ラプラスが言う。

 画面の向こうでは、再度距離を縮めた少年が、くろえの振るナイフを前に、掠らせ、血を流しながらを突き進み、攻撃を当てに行っている所だった。

 今は鳩尾へのダメージもあって、鋭さが激減しているだろうに。それでも一向に自傷策を継続する。

 少年の捨て身策は、二人もよく知る所。それを悪とするか良しとするかは諸説あるが、それによる成果もまた、二人の知る所でもあった。

 

「あれって実際どれだけ効果があるんだ?」

「全く無い事も無い」

「なんだそれ」

「本人は気付いていないけど、意図的に体を掠らせる事で、回避時間の減少に加えて、ナイフの速度も遅らせているから、多分本人が思っているよりも少しだけ時間を稼げてはいる。……微々たる時間をビビらず稼いでいるって事」

 

 どや顔を決めるルイを流し、「成程なー」とラプラス。

 

「その微々たる時間の積み重ねで、新人との差を埋めているってわけか」

「……まあ、そういう理屈だけって訳でも無いと思うけど」

 

 そうでなければ、避け切って尚距離詰められそうな状況で、尚避け切らない理由は無い。

 ただその策を選ぶ理由を、ついぞ少年が語る事は無かったし、ルイの方から聞く事も無かった。

 果たしてそれで良かったのか、今でも良く分かっていない。

 

「あまり気にし過ぎるなよー幹部」

 

 ラプラスが言う。

 

「あいつが選んだ事なんだからな」

「そうかもしれないけど」

 

 それでもやはり。親の様な、姉の様な立場に居た身としては、気になってしまうのだ。

 

 ***

 

「せい!」

 

 気合い一閃。チャキ丸を振り下ろし、テレビラックを両断する。

 

「いない?」

 

 ただ二つに両断され、支えを失ったテレビやソファが落ちてきても、中から這い出てくる様子は無い。

 

「いろはちゃん、キッチン!」

「了解でござる!」

 

 こよりに言われ、迷わず床を蹴り、キッチンに向かって突撃。

 迎撃するように、ダイニングテーブルが飛んでくるが、迷わず両断。

 間髪入れず、椅子も飛んでくるが、刻む。

 

「──せい!」

 

 距離を詰め、カウンター越しにチャキ丸を逆袈裟に振り上げれば、今度こそシオンが姿を見せた。

 

「見ーつけた」

「出て来てあげたの!」

 

 踵落としを放つシオン。

 迎撃にチャキ丸を振るが、切断は出来ず、シオンの張った盾とかち合う。

 

「斬れない」

「そうすぱすぱ斬られるもんじゃないのよ」

 

 体を操作。踵落としの姿勢から、バク宙を決め、カウンターと対面の、シンクに着地。

 そこを蹴りつつターンを挟んでの後ろ回し蹴りを、ためらうことなくいろはの顔へ向け放つ。

 対して、それを迷わず刃の方で防ぐいろは。存外重く、そして切断も出来ず、思わず顔がゆがむ。

 

「意外と動けるでござるな」

「これでも練習してんのよ」

 

 言いながら、シオンは指を鳴らす。先程も見た弾丸生成用の球体が四つ、蹴り姿勢のままのシオンの傍へ生成された。

 再度ぱちんと、シオンの指が鳴る。直後、球体から連続して弾丸が生成、射出される。

 

「これは流石に!」

 

 弾幕の密度に、思わず下がりながら、飛来する弾丸を切り捨てたり受け流す。

 

「いろはちゃん、こっち!」

「おじゃまするでござるー」

 

 こよりの周囲に展開されている壁は、いろはの体のみを透過し、弾丸を防ぐ。

 ガガガガと断続的な着弾。だが着弾の衝撃すらも通っていないように見えるが、かまわず連射を続ける。

 

 ──弾丸の生成と射出は半自動。これで時間は稼げる。

 

 テレビラック下で決めた作戦を実施するには、まだ時間がかかる。

 体の不調に苛立ちながら、作戦の準備を進めるシオン。

 そんなシオンをあざ笑うように、弾丸の雨のさらに上。天井ギリギリを、筒が飛ぶ。

 

「……は?」

「こよのバリアは全面独立。早い話、後ろだけ透過したりも出来るんだよねー」

 

 こよりの言葉を合図にするように、筒の面が外れ、煙があふれる。

 

「っ」

「超高濃度麻痺薬! 一吸いしようものなら、それだけで昏倒待った無し! さあ、どうするのかな、魔法使いちゃん!」

「魔法使いじゃなくて魔女よ」

 

 口元を抑えながら、球を操作。弾丸の矛先を変え、窓を粉砕。

 直後風を起こし、煙を屋外へ吹き飛ばす。

 

「この程度でどうにかできると──」

「思っていないけど、存外地味だね」

「は──?」

 

 足音に反応して、反射的に動けば。

 横からの斬撃。

 

「忍者か!」

「侍でござるよ!」

 

 そのまま数度振られたチャキ丸により、弾丸を放っていた球が切断され、消滅する。

 

「ちっ」

「再生成はさせないでござるよ」

 

 作り直そうとするが、瞬く間に距離を詰めたいろはに圧倒される。

 降りかかる斬撃をこよりのように広い盾を張る事で防ぐ。

 

「そういう盾も張れるのでござるな」

「無駄が多いから嫌いなのよ」

 

 とはいえ、麻痺薬のせいでいつもの様な精細な魔力操作が行えない。

 決めた作戦の準備にはもう一押し。だが、最後の一押しは、戦いながら出来る状態ではなかった。

 

 ──こうなったら。

 

 覚悟を決める。

 眼前、いろはの斬撃を前に、盾を解除。

 床を蹴り、残ったカウンターを乗り越えての逃走を図る。

 

「逃がさないでござる!」

 

 逃げようとするシオンを追い、チャキ丸が迫る。

 

「逃げないわよ」

 

 停止し反転。盾を展開。直後、その盾にチャキ丸が叩き込まれる。

 

「吹き飛ばされるだけだから」

 

 炸裂。指向性操作なしの単純爆破に、シオンの体は吹き飛び、いろはは追撃を断念する。

 

「体張ってるねぇ。あの子の影響?」

 

 吹き飛ばされ、床を転がり。止まったシオンの周りに、金属球がごろりと転がる。

 

「ぼーん」

 

 やや気の抜けたこよりの言葉の直後、金属球が炸裂。先程と同じ麻痺毒が辺りを包む。

 再びこの麻痺毒は風邪によって吹き飛ばされる。ただ、その時間があればいろはは体勢を立て直し、再びシオンとの距離を詰められる。

 ──その予想が崩れ去る。

 

「……あれ?」

 

 充満した麻痺毒は、何時まで経っても散らない。

 流石にこの濃度となると、耐性獲得の為に服薬しているいろはでも、近づけばただでは済まないから、いろはもキッチンにて足止めを受けた状態。

 等のシオンは、移動した様子が無い。麻痺毒の中央で、固まったまま。

 

 ──まさか思い切り吸い込んだ? 

 

 それなら制圧するだけで終わりなのだが。ただ此処まで戦って来て、彼女がそれだけとは思えない。

 想定外に、二の足を踏んでしまうこよりといろは。

 そんな二人の足元を含め、家の敷地いっぱいに魔法陣が展開される。

 

「なっ」

「なんでござる!?」

 

 戸惑うこよりといろはをあざ笑うように響く、フィンガースナップが響き──。

 こよりといろは、そしてシオンの三人は、家から姿を消した。

 




次話は9日12時になります。

文章の構成はどちらがいいですか

  • 全部詰める(全話までのやり方)
  • 地文と会話文の間に改行を入れる(今回)
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