ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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再三申し訳ございません


08

 フブキの名乗りに対して、いの一番に反応したのはいろはだった。

 先程開けた距離を瞬く間に詰めた直後の連撃。三方向からの斬撃をフブキは全て弾く。

 その事に驚きながらも、いろはの動きは止まらない。速さで駄目なら力で勝負と言わんばかりに、チャキ丸を全力で薙ぐ。

 それに合わせるフブキ。手に持つ刀でチャキ丸を受けた。刀越しに感じる圧に、フブキは少し表情を歪め、弾かれるように後退する。

 

 ──成程。かなり出来るね。

 

 そして余裕も感じられた。速さも重さも、ここからもう数段、上がるだろう印象を受けるフブキ。

 いろはは前傾姿勢。チャキ丸を構えるその姿に気を取られる。そのせいで、反応が微かに遅れた。鼻をつく臭い。

 

「上よ!」

 

 シオンの声にフブキが顔を上げる。降ってくる、テニスボール大の球が幾つか。臭いの元はそこだった。フブキは動く。

 離れた直後、球が地面に落ちた。炸裂し、煙が上がった。

 思わず顔をしかめるフブキ。口元を抑えながら、更に後退。シオンの元まで下がる。

 

「ありがとう、シオンちゃん」

「それはいいけど……これは何?」

 

 後ろに居る、シオンを見上げ、礼を言うフブキ。シオンはシオンで、見下ろしていたフブキから、更に自分の下を見る。

 二メートルくらいの身長の、デフォルメしたした狐のような……白い何か。

 フブキが援軍に来た直後、地面から湧いてきて、シオンを頭に載せたまま移動、安全地帯まで下がったから、多分味方。

 

「フブラだよー」

「……」

 

 だよー、と言われてもシオン的に納得しかねるところはあるが。

 そんなシオンを置き去りに、フブキは刃先をいろはとこよりの方へ向けた。

 

「フブラ、構え──撃てぇ!」

 

 顔を上げたフブラ。その口元に青い光が集まり──光線が放たれる。

 

「えぇ」

 

 戸惑うシオンを他所に、放たれた光線を、いろはは躱す。直線コースには、仁王立ちして不動の姿勢を保つこより。

 直後、こよりの周囲に貼られている壁に、光線が直撃。拮抗することなく拡散され、後ろへ流される。

 流された光線が背後に着弾。地面をえぐり、体育倉庫を破壊する。

 

「あ、やば」

「それどころじゃなくない?」

 

 いろはが肉薄する。狙いは──フブラ。

 

「何でござるか、この生物!」

 

 逆袈裟の斬撃。それを見て、フブキが反応。跳んで、シオンを回収しながら下がり。

 両断されたフブラは、ポンッっと軽い音と共に煙を上げ、その姿を紙へと変えた。

 

「折り紙?」

「式神って言うの。幾らでも作れはするけど、あの二人には通用しそうにないかぁ」

 

 シオンを抱えたまま、着地。一先ず時間稼ぎのために、フブキは再度フブラを三体作成。いろはへ突撃させる。

 

「体はどう?」

「耳は回復しているけど、体は重いままね。時間稼いで貰えているから、手は打ててるけど」

「そっか。でも、そろそろそれもしんどそうだね」

 

 フブラの一体が両断され、別の一体は弾け飛ぶ。残りの一体も、間もなくやられそうだ。

 

「様子見は終わりみたい。ここからは本気で来そう。どうする?」

「……フブキちゃん、今からでもアイツの方に──」

「行かない。状況は分かっている。天秤にかけて、こっちに来ている」

「なんで」

「シオンちゃんの方が危ないでしょ!」

 

 フブラ再作成。シオンをフブラへ投げ渡し、フブキは地面を蹴る。

 そのまま、最後のフブラを処理したいろはへ、今度はフブキから攻め入った。

 フブキの刀とチャキ丸がぶつかり、火花が散る。間を置かず、2度、3度と、刃がかち合い、甲高い金属音が周囲に響く。

 

 ──強いでござる。中々切り崩せない。

 ──強い。切り返しても、直ぐに返される。

 

 お互いの感覚として、剣術の腕は互角。正攻法での決着は厳しい。

 ならばこそ、その決着をつけるだろう要素は二つ。

 その内の一つは──外部支援。

 

「っ」

 

 先程と同じ鼻につく臭いに、強めにチャキ丸を弾きながらフブキは下がる。

 その直後、球体が地面に着弾。爆発を──起こす前に、いろはがそれを、フブキへ向かって弾き飛ばす。

 

「器用だこと!」

 

 負けじと弾き返そうとするが、直前に炸裂。煙が周囲を覆う。

 すかさず、口元を覆いながら、後退。煙を抜けるた直後。フブキが刀を持つ逆側より、いろはが迫り。

 それを妨害するように、魔力の弾丸が、二人の間を抜けた。

 足を止めるいろは。すかさず、フブキは順手から逆手に刀を持ち替え、いろはへ斬りかかる。

 

「流石に不利でござる」

 

 受けつつ後退。煙の中へと姿を消すいろは。

 

「忍者みたいなことするじゃん」

「のっと! ニンニン!! いえす! ジャキンジャキン!! でござる!」

 

 煙の中からのツッコミを聞きながら、フブキもまたシオンの元まで下がる。

 

「勝手に初めないで」

「ごめんごめん。それで、どうする? シオンちゃんだけ、先に逃げる?」

「……あいつらの仲間、他にもいるかもしれないって考えたら、そういう訳にもいかないでしょ」

「──それもそうだね。なら2vs2で……」

「いや。フブキちゃんはいろはって侍にだけ集中したらいい。私はもう一人やるわ」

「その心は? こう言うとあれだけど、さっき見たとおりだよ」

 

 剣の腕は互角。いつ決着がつくか、分からない。

 

「あの侍がフブキちゃんから私に狙いを切り替えたら、フブキちゃんが自由に動けないでしょ」

「あのバリアーは?」

「今は何ともならないけど、策はある。それにアイツの壁はすり抜けることも出来るけど、守るのと同時には出来ない」

「常に攻撃し続けとけば、援護は出来ないと」

「一先ずね」

「了解。じゃあ、それでいこう」

 

 一歩引いたシオンが、細く息を吐き、汗を拭う。

 

「大丈夫?」

「平気よ」

 

 やり取りの最中、煙を裂いて、飛んでくるのは──ミサイル。

 

「「……は?」」

 

 想定外の飛来物に虚をつかれ、直後、慌ててシオンが弾丸を斉射。

 飛んできたミサイルに何発かの弾丸が突き刺さり、ミサイルが爆ぜる。普通の爆炎。毒ガスの様には見えない。

 

「あんなの飛んでくるなんて聞いてないんだけど!?」

「私だってそうですー!」

 

 言い合う二人の頭上より、いろは。

 すかさずフブキが反応、チャキ丸を受け、弾く。

 

「作戦は!?」

「──継続!」

「了解!」

 

 弾いた直後のフブキが、そのままハイキックでいろはを蹴飛ばす。それを見ながら、シオンは動いた。

 動きながら、千里眼でこよりの位置を確認。その光景に再度、「は?」と声を漏らしながらも、大体の位置目掛けて弾丸を発射。

 黒煙の向こうから「うわ! びっくりした!」とこよりの声が聞こえてくる。

 

「フゥ」

 

 魔力操作。体を操り、地面を蹴って高く跳ねる。

 全てを跳び越え、その先の眼下。白衣の下からマジックアームを生やしたこよりの姿を見つける。

 

「なんで腕増えてんのよ」

 

 呆れ声を上げながら、力を籠め、一発だけ発射。威力重視に放ったそれは、こよりの周囲に展開されている壁へと刺さるが、貫けない。

 その音に一瞬怯みながらも、こよりは見上げた。こちらを見下ろす、シオンと目が合う。

 

「やっぱダメか」

「撃ち合い希望って事?」

「いいえ」

 

 弾幕に切り替え。三発の球からの斉射。壁に当たり、拡散するも、攻撃は辞めない。

 

「我慢比べよ」

「そう言う事なら」

 

 マジックアームが一度引っ込み、再度展開。

 その手には複数の銃身が環状に配置された斉射砲。ガトリングガン。

 どうやら背面の壁をすかせたようで、ガトリングガンを携えたマジックアームが頭上に掲げられる。

 こよりの手に、ボタンが握られる。それが何かは、火を見るよりも明らかだった。

 

「どういう原理よそれ!」

「いくよー!」

 

 かちりと、押下。

 直後、ガトリングガンは火を噴いた。

 

「あんた、後で覚えておきなさいよ!」

 

 着地直後に、シオンは地面を蹴った。

 球からの斉射は継続。ただ、動きながらと体の痺れのせいで、狙いは雑。

 こよりの方へは飛ばしているが、ガトリングガンを狙って破壊が、中々出来ない。

 

 ──私が狙われている分には問題無い。フブキちゃんが狙われる事だけは何が何でも防ぐ。

 

 よもや、させる筈だった我慢比べをさせられる事となり。

 こんな破天荒なのと一緒にいたら、そりゃバグるかと、家主の事をぼんやりシオンは思い出した。

 

 

 ***

 

 刃が走る。打ちあい、金属音だけでない、ガトリングガンの喧しさにも顔をしかめながらも、フブキは動きを止めない。いろはの攻撃を前に、止めている余裕も無いのだが。

 

 ──完全に分断すれば、多少隙が出来るかと思ったけど。

 

 その逆。フブキへの集中力が増し、動きの冴えが上がった。

 寧ろ、正直フブキの方が隙を晒しそうである。実際、ガトリングガンの発射直後に一瞬晒してしまい、一張羅のリボンが少し斬られてしまった。

 しかしミサイルを撃ってきた時にもしやと思ったが、まさかガトリングガンまで携えているとは。

 

 ──シオンちゃん、大丈夫かなぁ! 

 

 チャキ丸を弾く。視線は敢えて真っすぐいろはを見据える。

 周辺を見ていたら、視界の隅にシオンを捉えてしまいそうだ。

 フブラを召喚、援護に向かわせるのも考えたが、フブラ処理のために、更なる火力が出てくるとも限らない。

 

「もうちょっと、集中した方がいいでござるよ!」

「分かっているんだけどね! 寧ろ、君は気にならない訳!?」

「こよちゃんはいつもああでござる。それに──」

「それに?」

「ここまでかざまとチャンバラ出来る相手もいないから、楽しくなってきたでござる!」

「君もそっち側なわけね!」

 

 思い切り振られた二刀がかち合い、一際の音と火花を散らしながら弾き合い、フブキといろはの間に、僅かに距離が開く。

 間髪入れずに前進してきたいろはの一撃に合わせる。

 

 ──頑張ってね、シオンちゃん! 

 

 互角状況かから、決着をつけるための二つ目の要素。相手を出し抜く、その為に。

 ミオを追いてきた事を若干後悔しながら、フブキは頭を巡らせ始めた。




次回14日0時更新予定です。
足は止めずに行きます。

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