ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
大空スバル
天音かなた
潤羽るしあ


閑話のような時間

 朝から世界は賑やかだ。

 この前はノイズ混じりであったが今は鮮明に、獣耳や角や尻尾や羽が見える。

 Halloween Nightも真っ青なお化け率である。いや、お化けではないけれど。

 とはいえ、原則見て見ぬ振りをしなければならない。仕方がないので、俯きがちに道を行く。ちょっと落ち着かない。

「おはよ」

 ドンと、背中から衝撃。

 振り替えると、笑顔を浮かべる大空がいた。

「どうしたの? 俯いてるなんて、らしくないよ? まだ体調悪い?」

「……おはよォ!」

「何そのテンション!?」

「ちょっとふざけた。おはよう、大空」

「えぇ……」

 やべぇよこいつと目で語る大空に、今度はこちらが笑顔を返す。

 通学路で会うのは地味に初めてだ。こちらには駅やバス停もないから、たぶん家がこっち方面なのだろう。寧ろ、良く今まで鉢合わせ無かったなと思う。

「今日は朝練無いのか?」

「休養日で部活は休みなんだ。だからいつもより家出るの遅くて」

「だから今まで会わなかったのか。……じゃ、ここで」

「なんで!? 一緒に学校行こうよ!?」

「いや、自分みたいなのが大空さんと一緒に登校とか役不足ッスよ」

「その役不足って正しい意味で使ってる?」

「……スゥー」

「お前ェェ!」

 掴まれてガックンガックン揺らされる。

 酔いそう。それ以上に目立ってしまう。回りの視線が、痛い。

「そこの二人ー。登校中の不純異性交遊は校則違反だよー」

「誰が不純異性交遊なんか……」

 振り向いた、スバルが固まる。

「天音先輩おはようございます」

「おはよう。最近休んでたみたいだけど、大丈夫?」

「はい。ありがとうございます」

 生徒会役員に食って掛かった事実に気がつき、わなつく大空を他所に、俺は天音先輩と話す。

 あの日見たまま、頭には手裏剣。あの時気づかなかったが、背中にあるらしい羽が、横に覗く。

 羽の感じが魔界っぽくなく、鳥類と仮定するなら何とも頼りないし、頭の手裏剣が謎だ。

「……やっぱり忍者」

「天使だからね」

 俺の呟きに反応するように、天音先輩が言う。

 キョトンとしている大空を他所に、天音先輩はクスリと笑い、流し目を使いながら、自分の口許に人差し指をやった。

「困ったことがあったら言ってね。目の事とか」

「先輩……」

 そのまま歩き去ろうとするものだから。

「クールキャラ、出来たんですね」

 思わずそんなことを言うと、天音先輩がつんのめった。転びそうになるのを、羽をぱたつかせて耐えると、振りかえり、詰め寄ってくる。

「なんでそんなこと言うかなぁ! 折角格好良く決まってたのに!」

「ぽく無かったというか」

「そんな理由!?」

 そんな理由である。

「でも、ありがとうございます。何かあったら言いますね」

「……うん。じゃあ、ボクは生徒会があるから」

 不承不承というか、納得いかない様子を表情に見せながらも、またねと手を振った天音先輩が、先を行く。羽の根本にある星の意匠が見え、成程確かに天使のようだなと思いながら、俺は胸ぐらを掴んだままの大空の手を叩いた。

「そろそろ離してもろて」

「ん、ああ。ごめんごめん」

 手が離れる。ネクタイや襟元を直す俺に、そういえばと大空。

「目の色、違うね。カラコン入れてるの?」

「ん? ああ」

 俺も今朝鏡を見て気が付いた。

 両目とも黒かった筈の瞳が、深い紫になっていた。意図せずシオンカラーである。

 正直自分でも気づかない程度の変化なら誰も気づかないかなと思っていたが、きちんと気づくあたり、流石陽キャか。

「ちょっと目が良くなりすぎる体質になったもんで、目を悪くするためのコンタクトいれてるから、そのせい」

「何その病気!?」

「病気じゃないよ」

 体質が変わっただけである。

「それより、早く行こう。折角余裕あったのに、余裕が少なくなってきてるし」

「あ、ちょっと」

 先んじて、会話を区切るべく歩き出す。そもそもなんで天音先輩はあのタイミングで言ったのか。大空に聞かれたら不味そうなものなのに。……まあクールキャラ行けるじゃん程度にしか考えていないだけだと思うが。

 追い付いた大空が並ぶ。ポケットからスマホを取りだし、何やらタプタプと操作しだした。

 誉められたものではないが、先の話題が再熱しても面倒なので特に何も言わず、寧ろサポートするように回りを警戒する。

「あ、おはよー。しばらく休んでたけど平気?」

「おはよ。大丈夫。すっかり元気」

「そっか。じゃあ、また教室でね」

 ひらりと手を振り、挨拶をしてきたクラスメイトが、走っていく。その背に、茶毛のひょろりと細い尻尾が見えた。

 続けざまに何人かに挨拶をされ、抜かされるが、何人かは何かしらが生えていた。

 それに、見れば特別生えてこそいない人間と同じ形だが、耳だけがつんと尖った笹の葉に近い形の人もいる。あれはもしかしてエルフと呼ばれる類いのお方なのだろうか。その近くに飛んでいるパンダのような不思議生物も気になる。害が無いならお近づきになりたい。

 こうしてみていると、以外と人間って少ないことが分かる。いや、もしかしたらエルフ(仮)の方は人間である可能性はあるが。それでも、人間とそうでないもの半々位だ。ついこの間までの当たり前が、覆る。

 魔法使いはファンタジーではなく、優しい保健教諭は悪魔だったし、天使な生徒会役員は本当に天使だった。隣にいる大空だって……。

「なあ、大空」

「ん? なーに?」

「なんで嘴、生えてねーの?」

「スバルのこと、なんだと思ってんだぁ!」

 大空は人間だったか。それでも、もしかしたら俺が親しくしてた人たちも人間ではない可能性もある。

「無視すんなぁ!」

 ガックンガックン揺すられる。残念ながら助けてくれる生徒会役員は此処にはいない。

「しかも、目が良くなる病気なんてやっぱり無いし!」

「あ、それ調べてたのか」

 そりゃ嘘なんだから、あるはず無い。

「カラコンカラコン。カランカランコロン」

「途中から下駄の音になってるじゃねーか」

 パッと手が離れる。襟首を直す隣で、大空はスマホをポケットに戻した。

「でも、カラコンって校則違反なんじゃないの?」

「どうなんだろ。調べたこと無いや」

 実際カラコンではないし、どうにかしろと言われればカラコンをつけて誤魔化すしかない。

「まあ、あんだけ接近した天音先輩が何事も言ってなかったし、大丈夫なんじゃないかな」

「……確かに」

 もっとも、天音先輩は前もって俺の事情を知っていた様子だから、瞳の色が違うことについても知っていた可能性が高いが。事情を知らない大空からすれば、気づいて見逃したように見えるのだろう。

 じゃあ、大丈夫なのかなぁと大空が呟く。多分と返しながら、見えてきた学校を前に、気を引き締め、校門を抜けた。

 昇降口で靴を変える。

 大空とはクラスが違うから、廊下で別れ、教室に入りながら挨拶する。すると、何人か挨拶が返ってきた。

 ついで、体調を案じる言葉や数日の休みを茶化す言葉がかけられる。休みの間は寝たきりのまま一切目覚めなかったので、日にちが経ってる感覚がなく、それをそのまま、相手によって言い方を変えながら返して、席についた。

 教室を見渡す。クラスの七割程度は既に出席していて、人間か否かの割合は半々程度。

 今、入ってきた一人は、人間っぽい。特に生えていないし、耳も普通だ。

「精神衛生的に大丈夫そうかな」

 クラス全員異種族となれば、流石に平静を装うのは厳しいかもしれないが、半分ならなんとかなる。安心しながら、時折かけられる声に答える。

 結局、残りのクラスメイトはほぼ人間のようで、一人だけエルフらしき者がいる程度であった。

 始業のベルと合わせるように入ってきた教師も人間。いつものどこか気の抜けたあいさつに始まり、朝のSHRが始まった。

 週末に野球部の試合がある話。文化祭の話。提出物の話等、連絡事項が何点か告げられる。

 野球部に知り合いもいるし応援に行くか、所属している部活で出し物をするのか。考えることと確認することを反芻しているうちにHRは終わった。

 一時間目の教材を取り出す。科目は数学。昨日の晩に多少の予習はしたが、三日分のずれが果たしてどれほどか。勘で勉強したから正直不安だ。

 

 ***

 

 特にフラグだったということも無く、六時間目までの授業を乗り切り、放課後である。

 授業の不明点と休み中の連絡やプリントを受け取り、職員室を後にする。ちょこ先の言っていた通り、三日間は公休扱いとなっていて、出席扱いだった事に安堵しながら部室に向かうも、施錠されていた。

「いないのか」

 普段であれば活動日のはずだが。まあ、部長の気まぐれで活動したりしなかったりだから、こういうこともままある。時間を確認してみても、本来なら活動している時間。それなら、やはり今日の活動は無しとあたりをつけ、宿題をするために図書館に向かうことに決めた。

 見かける生徒は部活をしている生徒程度の閑散とした校舎。普段授業を受けている校舎と違い、こちら側の校舎は特別教室の多い校舎だから生徒の姿も一層少ない。

 だからだろう。その姿はより目を引いた。

 段ボールがこちらへ向けて歩いてきていた。その下に、学校指定の制服を身に着けた下半身が見える。

 随分と大仕事だ。荷台があればいいが、さすがに常備されて居ようはずもない。

 手伝うために近づく。向こうはこちらに気が付いていないだろうから慎重に。

 近づくと、声が聞こえた。

「んしょ、んしょ」

 知った声だ。知らぬ生徒に声をかけるより、よほど気持ちが楽になる。

 俺の姿が見える場所まで移動しようとしたところで、ぴたりと段ボール。もとい、るしあが足を止めた。

「先輩?」

「……」

 思わず俺も足を止める。まだ見えていないはずなのだが。

「違いましたか?」

「ああ、いや。あってる。手伝うよ、るしあ」

「ごめんなさいなのです。上二つを持ってもらえますか?」

「分かった」

 時折超常的に物事を見透かして見せるるしあだから、まあ、いつもの事だろうと思い、近づいた。

 向かい側から、るしあの持っていた三つの段ボールの内、上二つを持ちあげる。

 まあまあ重い。三つめも同程度の重さならそれなりの重労働だ。

 よく一人で持てていたなと思いながらるしあを見て、息をのむ。

「ふぅ……。ありがとうなのです」

「あ、ああ」

 髪色がピンクだった。

 髪型もお団子ショートヘアではない。腰まで伸びるロングヘアで、普段お団子のある位置で髪を結っているのは変わらないが、お団子ではない。

 一体、俺が休んでいる間に何があったのか。ぐれてしまったのだろうか。なかなかファンキーな気がするが。校則的にどうなのだろう。

「先輩? どうかしたのですか? 早く行きますよ」

「えっと」

 歩き出したるしあを追う

 るしあの様子は以前と変わりない。何か嫌なことがあって髪色を変えた、というわけではなさそうだ。

 そもそも数日で伸びすぎである。お団子で纏めていたであろう分を加味しても、明らかに長すぎる。

 ということは、恐らく。

「かつら?」

 ウィッグというんだったか。文化祭か何かで使うやつをつけているだけだろう。なるほど、これなら説明もつく。

 ほかの可能性が無いわけでは無いが、それにしては普通だ。髪色、髪型が違うだけ。それなら、やはりかつらという方が近い気がする。

「よっと」

 少し先で、目的の部屋についたるしあが、戸を開けていた。

 中に入り、間もなく出てきて、俺を手招く。

 後を追って中に入り、るしあが持っていた段ボールの上に、自分の段ボールを置いて、振り返った。

 先に廊下に出ていたるしあが、後ろから夕日に照らされ立っている姿が、目に入る。

「るしあ」

「はい?」

「ピンクのロングヘア、似合ってるな。可愛い」

 素直な言葉が、口から出た。

 ピンクの髪色には馴染みはないが、それでもこじんまりとしたるしあの背格好と相まって、人形のような可愛さがあった。

 俺も髪の毛染めてみようかなと思いながら、るしあを見て反応を待つ

 こんなことを言えば、るしあが調子に乗るだろうか。気持ち悪がられたら、ちょっと傷つきそうだ。

 だが、るしあの反応はどれでもなかった。

 顔から表情が抜け落ちる。虚無顔というのか。

 その顔で俺を見ていたるしあは、再び教室に入ってきて、おもむろに扉を閉めた。

 照明が点灯していないこの部屋は、光源となりそうな窓も扉の反対側のため、かなり暗い。

 おどろおどろしい雰囲気の中、がちゃりと錠がかけられる音だけが、やけに響いた。

「おい、るし──」

 カッと開かれたるしあの双眸が煌々と輝く。ぞくりと、背筋が震えた。

 からりと一つ。るしあの足元から音が響いた。視線を落とす。

 からりと二つ。俺の目が、何かをとらえた。

 からりと三つ。とらえたそれはしゃれこうべ。

 からりと四つ。伽藍洞の眼窩が、俺をとらえた。

 からりと五つ。

 からりと六つ。

 からり、からり。からりからりからり──。

「ひぇ」

 るしあの足元。恐らくは影なのであろうその場所から、骸骨が一体二体と次々出てくる。

 肉の無い体をからりからりと言わせながら、しっかりとその両足で立ち上がり、るしあを守るように立ちはだかる。

「──のに」

「ん?」

「信じてたのに」

 何をと、俺が聞くより早く。

「やっちゃって」

 るしあの言葉を合図に、骸骨達は動き出した。

 

 




ホロライブ・オルタナティブのティザーPVかっこよすぎか?

ちょこ先お誕生日記念感謝の4日間投稿3日目。
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