ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
不知火フレア
白銀ノエル

*両名の名前がひらがな表記になっていますが、演出なので誤字ではないです。


異世界との遭遇(4度目)

 名を、きんつば。自称妖精。パンダのような外見だが、本来の姿は別にあるらしい。思ったより声が低くてびっくりした。

 曰く、ふれあという人と一緒に探し物をしていたが、人波に流され、あれよあれよと言う間にはぐれたらしい。

 どこではぐれたのかも不明。連絡方法もなく、目的地として定めた場所もなければ、いざというときの待ち合わせ場所も特に決めていないそう。

 だったら家に送ろうかと思ったが、この辺の土地勘がなく、家の場所もあやふやらしい。

 普通、迷子の時は動き回らない方がいいらしいが、どこではぐれたかも分からないのに探しに来れるのか不安だ。

 とはいえ交番は多分論外だし、魔界とか幽世という単語も知らないようだから、頼れる先達に任せることも出来ない。……いや、ミオ先輩ならもしかしたら臭いとかで探せるかもしれないけど。そんな犬みたいなことさせられない。

「タロは出来る?」

「ワン」

 出来ないらしい。残念である。

 路地の出口。歩道との境界辺りで、両肩にタロときんつばを載せたまま、どうするか悩む。

 やはり此方からも探した方がいいだろうか。だがそれですれ違ってしまうと、ふれあさんに申し訳ない。

 とはいえ、ふれあさんも土地勘が無い可能性を鑑みれば、とりあえずきんつばの覚えのある場所を探して移動すれば見付けられる可能性はあるし、土地勘のある場所まで出ればきんつばの住んでいる場所も分かるだろうから、そこまで連れていくという手もある。

 留まるべきか進むべきか。

 悩んだ末、留まる方を選んだ。下手に動いて、何かに巻き込まれたら大変である。

「きんつば。ふれあさんのこと、一緒に待てる?」

 俺の言葉に、きんつばが頷く。それを確認して、俺は通りへ踏み出した。

 ライブの時間も迫っているのか、すっかり人通りの減った歩道を進みながら、きんつばから聞いたフレアさんの特徴を探す。

 金髪のロングヘアで、編み込みがある。褐色の肌。尖った耳。黒のセーラーワンピース。

 本当はポニーテールで民族衣装の様な服装らしいのだが、この世界だと流石に目立ってしまうからと、その服装に着替えているらしい。目立ってくれた方が、探しやすいのだが。

 やはりというか、きんつばもふれあさんも、異世界出身らしい。しかも、魔界とか幽世というこの世界の言葉で説明しやすい名前があるわけでもない、小説に出てくるようなファンタジー世界。

 人間だけでなく、エルフやドワーフ、獣人のような、俗に亜人と称される者がいる、剣と魔法の世界。フレアさんはハーフエルフだそうだ。

 そんな異世界から何を探しに来たのかと尋ねたが、それは教えられない決まりらしい。それに現地民に正体ばれするのも不味いようで、その時点でふれあさんとは顔を合わせないことに決めた。

 魔法があるなら、それで解決出来ないのかと聞くが、きんつばもふれあさんもそんな魔法は覚えていないらしい。それについては今後の課題にして貰うとして、とりあえずふれあさんである。

 場所を移して駅前。この辺りの中心地。全ての道はローマに通じているかもしれないが、この辺の道は例外的にこの駅へ通じている為、ふれあさんが探すのなら一番可能性が高いと踏んだのだが……見当たらない。はぐれてからどの程度の時間が経っているか分からないから、まだ来ていないのかもう来た後なのかの判別も難しい。

「反対の口か?」

 この駅には北口と南口がある。今居るのは北口で、もしかしたら南口の方に、ふれあさんはいるかもしれない。

 とはいえ、向こう側の出口に移動するには少々大回りが必要で、その間にふれあさんが北口に来たらいよいよ会えない可能性も出てくる。

「……なあ、タロ。一寸南口に行って、ふれあさんがいるか見てきてくれない?」

 暫し悩み、タロに行かせることにする。守護霊をパシらせるのは我ながらどうかとも思うが、背に腹は変えられない。俺の言葉に、タロは「ワン」と一鳴きすると、ぴょんと俺の肩を降り、駅の中に入っていく。

 そのまま改札を無断で走り抜け、階段に向かうのか右折して、その姿を見失った。

 タロが居なくなるやいなや、俺の近くには浮遊霊が近づいてくる。俺に興味を示す示さない問わず、続々と。ちょっかい出されない限りは無視が安定なので、半透明の彼らの体の向こう側にふれあさんの姿を探す。

「きんつば、居たか?」

 声をかけるが答えは否。やはり早々見つからない。

 駅前広場の時計を見上げれば、大空と別れて三十分が回った辺り。昼間の人混みが嘘のように駅前広場は広々している。

「……そういえば」

 もう一つ、人の集まりそうな場所に心当たりがある。今日限定だが。

「お前さんが流されたって考えるなら、そっちの方が可能性高いか?」

 きんつばの小柄な体を見れば、流され切ったと考えるのも不思議ではない。そして、流され切れば、多分ホールの方に着いていたはずだ。

 ホールの方に行ってみようと、決心する。暫くそっちを見て、居なければまた駅前に戻ってくればいい。

 まずはタロと合流しようと南口を目指そうとした所で、元気な一鳴きとともに、タロが帰還。肩に乗る。

「お帰り。どうだった?」

「ワン!」

 居なかったらしい。残念である。然らば、やはりホールを目指していいだろう。

 タロが戻り、諸々退いて視線の通りやすくなった周囲を最後にぐるりと見渡し、やはり目的の人物が居ない事を確認。

「きんつば。ホールの方に行こうと思うけどいい?」

 尋ねれば、頷きが返ってくる。それを確認して、俺はホールの方へ歩き始めた。

 

 ***

 

 ホールまでは、徒歩で一時間弱程度とそれなりの距離がある。

 それだけ歩くと流石に駅前という概念からは外れるのか、やや閑散として、民家なども少なく土地がそれなりに空いている。

 それを好都合とばかりに建てられたのが、本日絶賛ライブ中のホールである。以前吹奏楽部の大会の応援で一度来たことがあるが、それきり。見れば、周囲にはあの時無かったチェーン店のご飯処がぽつぽつあるし、ホール付近には出店もある。ちょっとは発展しているらしい。

 ホールへ近づくと、建物越しでも音楽と歓声が聞こえてくる。音楽に合わせて口ずさみながら周囲を見渡すが、目的の人は居ない。ホールの裏手の可能性はあるかもしれないが、流石にメインゲートではないそちらの方にいるとは考えづらいし、下手に行って不審者と思われるのは困る。

 しかし。それにしてもだ。

「お腹すいたな」

 朝昼共に食べたし、ポップコーンをLサイズの半分食べたけど。おやつを食べるからと全体的に軽めに食べたから、感覚的に一食抜いた気分。

 俺の言葉に反応したのか、きんつばからも腹の音。少し恥ずかしそうにしている。

「何か食べるか。きんつばって、俺と同じ物、食べられる?」

 肯定の返事。大丈夫らしい。

 きんつばの食事シーンがどうなるか不安だが、出店で買ったのを外で食べる分には、ライブ中で閑散としたホール前なら人の目は少ないし大丈夫だろう。座る場所さえ考えれば、人の目は一切気にしなくて良さそうだ。……いや、ふれあさんも探しているだろうから、人の目は気にしないとだめか。とはいえ、きんつばがそのままだと、料理が虚空に消えるようにしか見えないと思う。

 悩む俺の心中を察してか、大丈夫ときんつば。曰く、物を見えなくさせる魔法があるらしく、それで料理を隠してしまえばいいとのこと。普段から、外で食事の時はそうしているらしい。

 試しにスマホを渡し魔法を使ってもらうが、俺の目には消えたように見えない。まあ、肩口で飛ぶスマホくらいなら手品とかでごまかせるかなと思い、そのまま試しに出店の一つに近づいた。

「へい、らっしゃい!」

 威勢のいい声が届く。焼きそば等の鉄板焼きのお店。肩口に飛ぶスマホは見えないのか、反応は無い。

 一旦離れ、数店そんな感じに冷やかすが、全てのお店で反応は見られなかった。

「大丈夫そうだな」

 ドヤ顔をしているのだろうきんつば。なら次は合流用の魔法だなと返す。

「何が食べたい? 色々あるけど」

 流石に夏祭りの屋台群程ではないが、さっきの焼きそばを始め、たこ焼きとかケバブとか、思いつきそうな物はそれなりにある。

 暫し悩んだきんつばは、ソースの匂いにつられたのか焼きそばを選んだ。俺は久しぶりに食べたくなってケバブ。威勢のいい店主と愛想のよい店主からそれぞれの品を受け取り、適当なベンチへ腰を下ろした。

 一度周囲を確認。誰も見ていないことを確認してから、焼きそばの封を切り、ベンチへ置く。

 その傍にきんつばは降りる。そういえば、食事の道具が割りばししかないが大丈夫だろうかと思った矢先、きんつばは割りばしを手に焼きそばを食べ始めた。どう使っているのか最早器用という次元を超えて摩訶不思議。その手でどうやって割りばしを使っているのか。

 観察してみるが、皆目見当もつかない。持っているだけなら兎も角、きちんと挟んで、きちんと持ち上げているし、クロス箸等のマナー違反も見受けられない。寧ろ、人の食事をまじまじと見ている俺の方が、マナー違反を咎められそうだ。

 後で教えて貰おうと決めつつ、ケバブを食べる。久しぶりに食べたが美味しい。野菜は瑞々しいし、肉もソースも好みの味付け。

 もしゃもしゃ食べながら周りを見るが、探し人の姿は無い。

 探し人の姿は無いのだが、こちらを見る姿があった。

 ショートの銀髪。白のセーターとチェックのスカート。一番目を引くであろう、豊かな胸。ちょこ先といい勝負だ。斜め掛けのポーチが犯罪的であざとい。

 つい数分前にこちらに気が付いたその人は、なぜか俺の方を見て驚きを浮かべた。驚かれる要素は無いと思うのだが。恰好は病院と映画のために下ろしたちょっと小洒落た物だし、後はケバブを食べているだけ。良く分からず観察していると、驚いた表情がどんどん焦りの表情に変わっていくのが見える。何かあったのだろうか。とりあえず、俺に一目ぼれして見惚れているという線は、残念ながら無いらしい。

 何気なくきんつばの方へ視線を向ける。もぐもぐ食べ続けていた焼きそばは既に佳境。もう数口を残すのみになっている。あの小さな体の何処に入ったのか。

 視線を戻す。表情は終わったと言わんばかりの絶望顔。何故俺がきんつばを見てそんな顔をするのだろうかと思ったあたりで、漸く答えが出る。

「きんつば。迎えが来たみたいだぞ」

 きんつばを見ながらそう言うと、焼きそばを食べ終えたきんつばが顔を上げた。顎で指してやると、きんつばがそちらに視線を向け、パァッっと顔が明るくなった……気がする。飛び出し、一直線に彼女の元へ。

 それを見送る──なんて悠長な事はせず、ケバブの残りを口に詰め込み、即焼きそばのパックを回収し、逃亡する。

「あのー!」

 後ろから声。無視する。ふれあさんの関係者である事は間違いないだろう。

 任務は果たした。後は家に帰り、ほとぼりが冷めるまで籠城したい。

 進行方向先に、人影。曲がり角から出てきた。きんつばの言っていた特徴と酷似するその姿に、慌ててどこかの角に入ろうとするも、そんな角が無い。かくなる上は、幼少期の鬼ごっこで鍛えられた俺の身のこなしを見せるほかない。

「ノエルー! きんつば居たー?」

「あ、フレアー! その人捕まえて!」

「え?」

 ふれあさんの視線が、俺の背後から俺の方へ戻る。

 接触間近。なるべく顔を見られないようにしながら脇を走り抜けようとし。

「ほいっと」

「ぐえ」

 襟首をつかまれる。そういえば、鬼ごっこで逃げ切れた試しは無かった。相手三輪車だったけど。

「うーん……? ノエちゃんに何かやったの?」

「いいえ何も。近づいてすらいないです」

 こうなると流石に逃げられるとは思えない。きちんとシャツの襟を掴んでいるから、脱いで逃げるわけにもいかない。

「あの」

「何?」

「自分ほんと。ほんと何も見なかったことにするんで、許して貰えません?」

「……あ、そういうこと? 成程ね」

 あ、タロ。待ちなさい。呼んじゃいけません。まだ分からないから。

 遠吠えを上げようとするタロの口元を抑える。触れないので気分だが伝わっては居るらしく、ふれあさんを威嚇するも、吠えようとはしない。

「じゃあ、ちょっと付き合って?」

「……はい」

 ぱたぱた走ってきたのえるさんと思しき方が合流し、移動が始まる。校舎裏くらいで勘弁して貰えないだろうか。




いつもお読みいただき、ありがとうございます。
Pixivでの話ですが、数話前から男子に人気小説ランキングに最新話が載るようになってきました。
投稿頻度は基本このペースですが、また連続投稿など出来たらなーと思ってます。
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