ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
桐生ココ
白銀ノエル
不知火フレア



*ホロオルタPVに感化されて書きましたが、ホロ学本編の設定を使った、三次創作的作品となります。脳死でバトルが書きたかっただけです。


番外編
生きた災禍と誰かは言った


 広場の中心に、たたずむ人影。

 腕を組み、仁王立ちして。周囲を軽く見渡している。

 夜も更け、明かりも少ない空間にもかかわらず、人影の主である桐生ココは、周囲の藪や木の陰に潜む者達の気配を、しっかりと捉えていた。

 ──全く。人間というのは。

 放っておけば何もしないし起きないのに。なぜ態々藪をつつくのか、ココには理解できない。

 まして、つついて出るのが蛇なら兎も角、今回出てくるのは竜であり、その事を理解している筈だから、尚更だ。

 強者として生まれ、今日までそうあり続けたココではあるが、恐怖という感情は知っている。自分に対して大多数の者が向けるもの。そして今、周囲に潜む者達が発しているものが、まさにそれだ。

 しかもこの者達は、恐怖はあれど、自分へ怒りや憎しみの様な感情を、向けていない。

 なら、この者達は何故武器を取り、戦うのか。

 脳裏を過るのはかつて、利己の為にココにとって許されざる者へと手を出し、怒りに触れた国。

 よもや、それをまた繰り返そうとしているのか。

 ざわりと、ココの雰囲気が変わる。

 他者を圧倒する、存在感。闇夜にもかかわらず、我先にと、小動物達は地を駆け、空を飛ぶ。悲鳴のような動物達の鳴き声が、周囲に響く。

 それが、ココにとっての正しい反応。動物とは、恐れを抱けば、逃げ出すもの。

 だが、強者であるココは、故に恐怖を知っていても、正確に恐怖を抱くという事を知らない。

 恐怖を抱いた生物は、当然本能として逃げ出す者が多いが、逆にその恐怖を認めない者、恐怖の種を除いてしまおうと考える者も少なく。そういった者達の行いは──。

「テェ!」

 等しく、攻撃という形で、世に出る。

 誰かの合図を元に、複数の方向から、同時に矢が飛んできた。

 ココは危なげなく、1本目を躱し、2本目を掴み。人間なら当たっていたであろう3本目を、人間は持たない尻尾を使い落とした。そのまま、掴んでいた矢を、3本目の発射地点を目掛けて投げつける。投げた矢は藪へ消えたが、悲鳴は聞こえない。

 面倒なのが居るかもしれないと、ココは考えたが、その程度。気に留め過ぎる事は無く、意識を空へと移した。

 降りかかってくるのは、矢の雨。当たっても大した事は無いだろうが、当たってやる理由も無い。それに、今着ている服は、この世界で買ったお気に入りの服であるから、破かれるのも癪だった。

 故に、翼を広げる。調整された服には穴があけられていて、そこから翼を出せるようにしてあった。

 抵抗なく広がった翼に満足しながら、思い切り羽ばたく。その風圧だけで、矢の雨は薙ぎ払われる。

「この程度なら、楽なんですけどねー」

 意識は地上へ。藪の方から、武器を携え、出てくる者達の姿。アーマーによって守られる場所や、纏っている着衣に多少の差異はあったが、共通してココが滅ぼした国の、隣国の国章が付いている。

 ココの読み通り、暫く前に舎弟から、来ていると聞いていた者達だった。態々異世界まで追いかけてきたのかと、辟易するココに対し、周りの人間達は動く。

 いの一番に駆けてきたのは、一番軽装の男。手持ちの武器はショートダガー。こんな細い刃で何が出来るのかと思う、ココの鼻を突く異臭。毒の匂い。匂いの元は、男の持つショートダガーからだった。突き刺さんと振り下ろされたダガーを持つ手を弾く。それだけで、男の腕は、凡そ曲がりえない場所から、くの字に曲がる。

 男が悲鳴を上げるより早く、腹部を殴りつけた。腕だけでなく全身でくの字を作り、飛んでいく。

 次いで2人、背後から奇襲。合わせるように、正面から矢が飛んでくる。顔を逸らし、矢を躱しながら、後ろの2人は尻尾の一薙ぎによって、蹴散らす。

 4人目の女が横合いから斬りかかってきた。腕で受け止めようと動き、服の存在を思い出して止め、下がり躱す。

 ココとその女の目が合う。その目から感じる感情を読み解けば、やはり宿っているのは恐怖で間違いはない。

 やはりどういうつもりなのか、分からない。頭部を思い切り掴んで振り回し、タイミングよく来ていた5人目に当てて纏めて処理する。

 6人、7人、8人と、続けざまに来る者達も、躱し、掴み、投げる。四方からくる者達を、来た順に処理していき。9人目に8人目を投げつけながら、10人目に意識を向ける。

 10人目の男が最も厄介そうだった。纏う鎧や服装こそ普通だが、その手に持つ剣に独特の存在感がある。魔剣、聖剣等と称される、突然変異の特殊な武器。ココにも覚えがあった。近づかれるにつれ、その存在感に僅かに気を取られる。

 だからこそ、8人目を躱した9人目の攻撃に、反応が遅れた。

「はぁ!」

 気が付いた瞬間、真後ろからの強襲。

 攻撃が来るより早く反撃するのは、最早手遅れ。躱すのにも、10人目の攻撃を前に、体勢を崩すのは、聊か危険が伴う。

 仕方なく、攻撃を尻尾で受け止めながら、10人目に対応しようと考えた──その直後。

「ッ」

 尻尾に衝撃を受け、叩き落される。

 尻尾が地面に叩きつけられようと痛みは無いが、意図せぬ尻尾の動きに、体勢が崩れ、それ以上に思考が止まった。

 何をされたのかが分からない。よもや、竜である自分が、人間の姿を取っているとはいえ、人間に力負けしたとでもいうのか。理解出来ぬまま、しかし体を動かす。

 翼を広げ、羽ばたき後退。前方から迫る10人目から距離を取る。

 9人目と思しき誰かが背中に当たるのを感じ、その反動を利用して上空へ逃げ出そうとした矢先、僅かに上昇したところで、翼に痛みを覚え、止まってしまう。見れば、翼に等間隔で矢が刺さっていた。羽ばたきに合わせた、的確な射撃。

 だが、驚きは此処で終わらない。尻尾に感触。ココが見下ろせば、尻尾を掴んでいるのは女騎士──白銀ノエル。

「えーい!」

 戦場とは聊か不釣り合いな、独特な、少々間延びした声とともに、ノエルはココを引きずり落とす。

 背中に衝撃。肺から空気が吐き出される。

「もう1回!」

「この」

 引き上げられようとするより早く、尻尾に力を籠め、ノエルの拘束から抜ける。

 視線を動かせば、迫る10人目。素早く息を吸い──放ったそれは、竜の息吹と呼ばれる、竜種特有のエネルギー波。それを受けそうになった10人目とノエルは、その場を退く。

 2人が離れたのを見てから、ココは立ち上がった。放った竜の息吹の余波を受け、纏っていた服はボロボロだ。

 苛立ちを覚えながら、翼に刺さった矢を抜く。観察すれば、3本とも人間の使う矢とは違い、金属製の鏃ではなく、骨を削って作られた鏃が付けられていた。

 思い出すのはエルフと呼ばれる、耳長の狩猟民族。狩りの道具として弓矢を好んで使う彼らは、その鏃を狩った獲物の骨より作っていた。

 羽ばたく翼にピンポイントに同時に放ったのであろう3本の矢を命中させるその力量も合わせて考えれば、凡そその考えで間違えてはいないだろう。

 ──少し、面倒ですね。

 溜息をつきながら、翼を閉じつつ、動く。振り下ろされた、メイスを躱す。

 メイスが風を切る音が凄まじい。人間に此処までの力があるのかと、感心するレベル。

 回避した先目掛け、振り上げられるメイスを、更に下がって躱す。

 下がった先に、10人目による剣の一撃。分かっていた以上、ココのが早く、振り下ろされるよりも先に、ココの尻尾が、10人目を薙ぎ払った。

 それを見たノエルが動く。ノエルの顔の傍らを抜け、矢も飛来した。

 届くより早く、ため込んだ力をもって翼を広げる。

 暴風が、吹き荒れた。

 ノエルの足が止まる。エルフの技術をもってしても、対象を射抜けぬ程の驚異的な風。

 竜の息吹でもない。ココが少し本気で動いたその一動作は、瞬時に空間を掌握し。

 その間に、ココは高く、高く、矢も届かぬ空中へと飛び上がった。

 このまま立ち去る事も出来るが、それは竜としての誇りが許さない。立ち去るにしても、圧倒的力を見せ、二度と反抗しようと思わぬよう、心を叩き折るために。

 ココは、人間に化ける術を解いた。

 徐々に体が巨大化する。纏っていた服は破れ、その体を鱗が覆う。顔は爬虫類それへ。両手足には鋭い爪が。生えていた翼や尻尾、角も、巨大化に合わせて相応に伸びていき。やがて、その姿を完全に竜へと変えた。

 地上からこちらを見上げる姿が見える。

 一本だけ、矢も飛んできた。驚くべきことに、その矢はココの体に届き、しかし鱗に弾かれる。

 僅かに、ココの口が開く。隙間から、光の片鱗が見えた。

 そこから深く深く、息を吸い。

 放たれた物は、先程使った竜の息吹と同一とは思えないほどの、光の奔流。その光が、ココのいた広場を中心に、周囲へ広がる。

 離れていても、分かる衝撃。抑えたつもりだが、やり過ぎただろうかと思いながら、ココは徐々に光を治める。

 やがてその光が無くなった後の光景を見て、思わず感嘆の声を上げた。

「……ほー」

 直撃した広場は当然の事、その周囲も灰燼に帰され、クレーターと化していた。

 その中央部には、それでも動く者が居る。

 ノエルと、庇う様にノエルを抱くエルフ──不知火フレア。そして、その二人の前で、ココに向かって小さな体を広げていたのは、精霊──きんつば。

 成程、精霊が居たのかと、ココは納得する。感じていた射手の数に対し、最初の矢の雨は明らかに多かったし、自分のいる高さまで矢を届かせるのも無理だったはずだが、精霊が魔法によるサポートをしていたのなら、理解出来る。

 だが、それもここまで。

 竜の息吹を魔法によって防いだようだが、それによりきんつばは満身創痍。きんつばに守られた筈のノエルとフレアも、それは同じ。防御越しの余波を受けただけで、2人の域は絶え絶えであった。

 決着はついた。他の騎士達も、息こそあるようだが、戦える状態ではない。これでもう、手を出そうとは思わないだろう。

 戦いは終わったと、少し気を抜いた。

 だからこそ、ココは自分の顔の横に現れた、見慣れぬ物への反応が遅れた。

 幾何学模様によって構成された何か。紫色に発行するそれが、果たして何なのか。

 考えが及ぶよりも先に、何かが飛び出してくる。

 矢よりも早く飛来したそれは、稲妻の様な光を伴って、ココの顔へと突き刺さり、蹴り飛ばした。

 羽ばたき、姿勢を整える。

 ココが見れば、それは人間の少女であった。

 傾いたらしい三角帽子を直すと、腕を組み、あろうことかココと同じ高さに滞空したまま、トパーズの様な不思議な色の瞳を輝かせ、言う。

「煩い。近所迷惑」

 




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