ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
大空スバル
百鬼あやめ
天音かなた


閑話のような放課後

「おはよう、大空」

「おはああああああああああああ⁉」

「……」

「ちょっと距離置くなよ!」

 朝の開幕一番に発狂されたら、誰でもこうすると思うのだが。周りの生徒も、何事かと、こっちを見ているし。

 目が合った知り合いに挨拶を返しながら、大空が落ち着くのを待つ。

 少しして。

「……おはよー」

「おはよう」

 落ち着いたらしい大空が、改めて挨拶を交わす。

「いやー、吃驚したー」

「俺の台詞なんだが。何だ、そんなに驚くことあったか?」

「本気で言ってる? そんな眼鏡かけてるのに」

 そう言う大空は、多分俺の事を呆れた視線で見ていると思う。

「ていうか、何処に売ってるの。その瓶底みたいな眼鏡」

「駅近スーパーに隣接してるジョークショップ」

「やっぱ偽物じゃねーか」

 返しながら、俺はかけていた眼鏡をはずした。外した眼鏡は胸ポケットに刺し、視力矯正効果がきちんとある眼鏡を掛けなおす。

 眼鏡を掛けたら、大空の顔がよく見えた。きょとんとした顔をして、俺を見ている。

「あれ? 眼鏡は本当に掛けるんだ。ていうか、よく見たら瞳の色、黒くなってるし。カラコン外したの?」

「切らしちゃって。暫く眼鏡」

「成程」

 かちゃりと眼鏡のブリッジを指で押し上げると、うーんと、大空は首を傾げた。

「どうした?」

「何か違和感ある」

「そう?」

 今掛けているのは、普通の四角いレンズの眼鏡なのだが。

「四角いレンズに太い黒フレームって、何かかっちりし過ぎてる感じ。君、そんな感じじゃないでしょ」

「失礼な。家の留守を任される身として、きっちりと家は守ってるぞ」

「本当に?」

「……」

 まあ、居候二人位居るし、その場の勢いとかで行動することは多々あるけど。

「君は多分細いフレームに丸いレンズの方がいいと思う。そっちの方が、優しい印象だし」

「ふむ……」

 自分では良く分からないが、大空がそう言うのならそうなのだろう。

 二代目である今の眼鏡を買って数年。買った頃よりも視力は悪化していて、度数が合わず、見えづらさを覚える事もあったし、いっそ眼鏡を買い替えてもいいかもしれない。

 いつまで常時眼鏡を掛けるのかは分からないが、魔力が無くなると見えなくなるのなら、眼鏡やコンタクトは持ち歩いた方が良さそうで。時々しかつけないなら、多少荷物になるが定期的に買うコンタクトより、買ったら基本終わりの眼鏡の方がいいかもしれない。安い買い物ではないが、何度も買い替える物でもないし。

「因みに、今掛けてる眼鏡はどうやって選んだの?」

「一人で眼鏡屋行って、特価品の中から決めた」

「何で、そんな風に決めちゃったかなぁ」

「何でも良かった」

「ああうん。そうっスよね」

 呆れ顔になる大空。そんな顔をされても困る。この眼鏡を買った頃はまだ両親と一緒に方々へ移動していた時期で、引っ越し先で人間関係を築くという事が殆ど無かったから、見てくれを気にしなかったのである。

 見てくれを気にして、コンタクトにしたのは今の生活になったからだ。眼鏡を掛けた自分の顔に、違和感を覚えたから、コンタクトにした。

「なんなら、私が選んであげようか?」

「選ぶって眼鏡を?」

「話の流れ的に眼鏡じゃなかったらやばすぎるだろ」

 まあ、確かに。

「選んでくれるなら、折角だし頼んでいいか?」

「勿論。スバルにお任せッス」

 とんと、胸を叩く大空。

「いつにする?」

「今日の放課後とかどうだ?」

「……いや、流石に早すぎじゃない? まあ、私は開いてるけど」

「今の俺じゃないぞ」

「へ?」

 視線を移せば、銀髪赤眼の生徒会長、百鬼。今の目だと、額に映えている筈の角は見えない。

「よっ。二人共。おはなきりー」

「おはよっす」

「はよー」

「なんだ、逢引の約束?」

「……七対三」

「いや、肉の話じゃないが」

「そうなのか?」

 じゃあ、あいびきってどういう意味だろう。大空に視線を向けたが、大空も良く分かっていないようだった。

「逢引って言うのは、デートって事」

「デート? 百鬼と大空が?」

「いやいや。何で余とスバルなんだよ」

「でも約束してたじゃんか」

 俺越しだったが。今日の放課後に。

「……確かに。しょうがない、スバル。余と逢引にいくぞー」

「いくぞー、じゃないですから」

 おーと腕を突き上げた百鬼の更に後ろから声。その声に、百鬼の動きがぴしゃりと止まる。

 百鬼の向こう側を覗き込めば、此方も手裏剣と羽の装着が無い、天音先輩の姿があった。

「おはよ。二人共」

「「おはよーございます」」

「ごめんね、邪魔しちゃって。今日の放課後は近隣の学校との生徒会の会議があるから、生徒会長はデートに行く暇は無いから、安心してね」

「はぁ」

「ほーら。朝から打ち合わせあるんですから行きますよ」

「い、嫌だ! せめて一緒に登校位させてくれ!」

「はいはい。今度にしてくださーい」

 文字通り、鬼の目に涙を浮かべながら、いやいやと駄々をこねる生徒会長を、天音先輩は引きずっていく。

 流石のパワー。未練がましくこちらに手を伸ばす百鬼を見て、スバルと共に視線を下げる。

 やがて、百鬼の声が聞こえなくなった。視線を上げれば、何事も無かったかのような、いつもの朝の風景である。

「生徒会長って大変なんだな」

「そうだね……でも、合同の話し合いってなんだろ?」

「確かに。何かあったっけ?」

 学校合同で行うような、催し物がある話は、聞いたことが無い。何かあるんだろうか。

 今度、手伝いの時にでも聞いてみようと、そんな事を思っていると。

「それで」と大空。

「どうなの? 今日の放課後でいい?」

「ああ。大丈夫」

 なんか、デートだと茶化された事を思い出し、こそばゆさを覚える。

「じゃあ、放課後、頼む」

「……うん、分かった」

 恥ずかしさで大空の方は見えないが。

 多分、似たような顔をしていると思う。

 

 時間は経ち、放課後。

「あ。おーい」

 先にHRが終わったらしい大空が、昇降口で待っていた。

 手を振って、駆け寄る。

「すまん、お待たせ」

「大丈夫ッスよ。それで、どうする?」

 聞かれて、俺は顎に手を当てる。

「実は俺、この街の眼鏡屋って全然知らないんだよな。大空は?」

 この街に来てから一度も眼鏡屋に用事が無かったから、全く場所を知らない。

「知らなかったかもしれないんだけど……スバルもなんだよね」

「だろーな」

 眼鏡どころかコンタクトも付けていない超健康な目をしている大空が、そこに用事があるとは思えない。

「適当に駅前で探す? 何となく見かけたことがある気がするし」

「そうするか」

 連れ立ち歩き出す。

 その最中、ふと視線を感じて振り返る。

 感じた方向は生徒会室があって、そこにいる人物と、多分、目が合った。

「怖っ」

「ん? 何が?」

「いや。百鬼が凄い目でこっち見てたから」

「そうなの?」

 大空が振り返る。俺と同じく生徒会室の方を見て。目を細め。

 すこしして、「あっ」と声を上げた。

「ホントだ。おーい!」

 手を振りだす大空。百鬼の方を見れば、ややぎくしゃくとした動きで、此方に手を振っているのが、何となく分かる。

 暫く手を振りあっていると、百鬼の背後に影。その正体が誰だか分かるよりも早く、百鬼は引きずられていった。

「あやめ……おつなきりー」

「おつなきりー」

 エールを込めて別れの挨拶を済ませ、俺と大空は駅前に向かって歩き出した。

 

 ***

 

 幸い、駅から程遠くない場所に目的の眼鏡屋はあり、そこに入る。

 全国チェーンで、対象年齢が若めの店だ。安いフレームなら、レンズ込みでも1万円を切るのがいい。

 とりあえずあまりお高いのは好まないので、その辺から選び始める。

「どんなのがいい?」

「どんなのかー……丈夫な奴?」

「まずそこ?」

 長く使うのなら、大事な事だと思うのだが。

「大空。頼むから選んでくれ」

「……まあ、スバルが選ぶって言ったけどさー」

 うーんと呟きながら、適当なフレームを持ち上げ、差し出してくる。

 掛けている眼鏡を外し、それを装着。自分では良く分からないので、大空の方を見る。

「似合う?」

「……なんか違う」

 ダメらしい。外して、元あった場所に戻す。

 その間に、大空は新しいフレームを手に取り、差し出してきた。

 掛ける。

「どうでしょう」

「……なんか違うんだよなー」

 これもダメらしい。外して戻す。

 まあ、眼鏡を掛けた俺自体、大空にとっては馴染みが無いから、眼鏡を掛けているというだけで違和感を覚えるのかもしれない。

 頼んだのは俺なので、いくらでも協力する覚悟である。

「はいこれ」

「うむ」

 太いフレームの四角レンズ。

「真面目過ぎてイメージと違う」

「俺の事を不真面目みたいに言うの辞めようか」

「これは?」

「ふむ」

 フォックスというらしく、キツネの目のように外側が吊り上がっているフレーム。

「似合うと思う?」

「いいからいいから」

「……はい」

「えっと次は」

「おい」

 近くの鏡で顔を確認する。正直、今付けている物より似合っていなくて、これを掛ける位なら何も見えない状態で過ごそうとすら思う。

 俺の眼鏡を選ぶ選択肢から、フォックスが消えた。

「これ」

「はーい」

 フォックスじゃなかったので掛ける。

 丸いレンズで、今付けている物よりもレンズサイズが大きい。

「悪くないっすね」

「そう?」

 レンズ大きすぎではと思ってしまったが。まあ、掛けている分には気にならないけど。

 一先ず大空の琴線には触れたらしい。決定したのかなと思えば、回収された眼鏡は元の位置に戻される。

「とりあえずキープって事で。次これ」

「おー」

 差し出された眼鏡を素直に受け取り、掛ける。

「次これね」

「りょーかい」

 まあ、とりあえず大空は楽しそうで、何よりだった。

 

 ***

 

「……ん? あれって、もしかして」

 




まるでラブコメみたいだー

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