ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

47 / 126
登場ライバー
大空スバル


閑話のような逢魔時

「お待たせしましたー。ごゆっくりどうぞー」

「「……」」

 テーブルの上に、パフェが鎮座していた。それを見て、 パフェ楽しみだなとか思っていた、数分前の自分をしばきたくなる。

 対面に座る大空も似たようなことを思っているのか、ゲンドウポーズをして、座った眼で届いたパフェを見ていた。

 総重量……何キロくらいなんだろうか。高さは俺や大空の顔よりも長い。チャレンジメニューの類なのではと思わざるを得ない様相。倒してしまったら大惨事間違いなしだ。

「……大空」

「……何?」

「どれくらい喰えそう?」

「3……4分の1かな」

「そっか」

 まあ、俺も同じくらいだろう。小食というわけでは無いが、大食いというわけでもない。

 頑張って、頑張って半分だろうか。それでも……普通のパフェの総量より多そうな気がする。

 ぱっと見の印象だが、このパフェ、5人前位ありそうだし。

「これでパーティー向けのパフェを一回り小さくしたって言ってたっすね」

「何人パーティーを想定してるんだろう」

 10人くらい? それとも、俺が知らないだけで普通の人はもっと沢山食べるのだろうか。

「……とりあえず、食べるか」

「そうだね」

 取り皿とか頼んだ方がいいだろうかと思ったが、立ち上がった大空がそのまま食べ始めたので、俺も同じように立ち上がり、食べ始める。行儀が良くないのだが、そうしないと届かない。

 コーンフレークやスポンジ、果物やクリームが交互に層になっている、サイズ以外は普通のパフェ。一番上に盛られたクリームを一匙。食べれば、口当たりが柔らかく、自家製であることが分かった。

 サイズがサイズだから、もっと大味なのかと思ったが、そんなこと無いらしい。クリームに刺さっている果物等と合わせながら、ちまちまと、食べ進める。時折珈琲を飲んでリセットし、更に進める。

「普通においしいね」

「ああ。食べに来た甲斐があるな」

「これなら意外と食べきれるかも」

「……それ、フラグなのでは」

 状況は、クリーム層をいったん抜けて、果物の層が見えてきた辺り。

 果物はしっかりと処理されている様子。多分この喫茶店は他の甘味類も美味しいんだろうなと思える味。上に残っているクリームも合わせながら、食べ進めていく。

 ただ、如何せん量が多い。この果物の層を抜けても、まだスポンジとフレークとクリームの層がある。

 最悪流し込めるだろうか。少し考えて否定する。クリームなら兎も角、固形物を流し込めるはずがない。

 少しずつでも食べ進めながら、大空の方を見る。

「大丈夫?」

「……ダメかもしれない」

「そっか」

 大空はスプーンこそ動いているが、さっきまでと比べて明らかに速度が遅い。

 オレンジ一切れ、食べるのがやっとの様な動きだ。

 せめて2段あるスポンジの上側半分だけでも食べてほしいのだが。とはいえ、無理をさせるのも申し訳ない。

 食べ進めるうちに、スポンジゾーンに到着した俺は、一先ず少し食べて、どんなもんか共有しようと思い、スポンジをスプーンで取って。そこで気づく。

「大空」

「何?」

「このスポンジ……ケーキだ」

「……え?」

 スポンジとスポンジの間にクリームと薄くスライスされたイチゴがあった。外側からだと一見して分からないようにコーティングされていたらしい。

 とりあえず食べる。スポンジは上のクリームや果物に潰されることなく、ふわふわを保っていて。中に入っているクリームやイチゴに負ける事無く、しっかりとしたものだった。正直箸休めにさせてほしいから、是非スポンジだけにして貰いたかったものである。

「……はい、大空」

 スポンジ……というかケーキを一掬いして、大空へと差し出す。

 逡巡したものの、大空はぱくりと、それを頬張る。

「…………美味しい」

「ならよかった」

 ただ、その言葉を最後に、大空はスプーンをテーブルに置いた。

「ちょっと休ませて」

「……なら大空。代わりに眼鏡取りに行ってくれないか?」

「眼鏡? ……そういえば、そうだったね。動けばまた食べられるかな」

 そう言うと大空はお腹のあたりをさすり、動けるかどうかを確認する。

「……大丈夫そう。行ってくる」

「頼んだー」

 引換券を渡すと、大空が席を立ち、店を出て行った。

 パフェを手元に引き寄せる。

 味わって食べたいのはやまやまなのだが、そんな余裕はないので、無心で食べ進める。せめて大空が戻ってくるまでに、二段目のスポンジ改めケーキゾーンまでは進めておきたい。

 大空側にまだ残っていた果物類と、ケーキを絡めながら食べていく。しかし、なぜケーキにしてしまったのか。重さが増すだろうに。やっぱりチャレンジメニューなのかもしれない。

 パフェを数口食べて、珈琲でリセットの流れを崩さないように食べていく。食べるのを辞めたら食べられなくなりそうだから、口は止めない。

 だが、そうしていると先に珈琲が無くなった。水でもいいのだが、珈琲の苦みは惜しい。

「すみません」

「はーい」

 諸悪の根源(ウェイトレス)さんがこちらに来る。

「珈琲のお替り。アイスで」

「畏まりました。それでなんですけど」

「はい?」

「女の子はどちらに? お店、出て行ったみたいですけど」

「眼鏡を取りに行ってもらいました。動けばまた食べられるだろうし」

「あー、成程」

 諸悪の根源(ウェイトレス)さんは歯切れの悪い反応を見せる。何なんだろうか。とりあえず、食べていないと食べられなくなりそうだから、食べさせてほしいのだけど。

「てっきり喧嘩でもしちゃったのかなって。そういう事なら良かった」

 良くは無いだろという言葉を辛うじて飲み込み、「珈琲お願いします」と再度言って、食事に戻る。

 ケーキのゾーンは6割がた食べ進め、下のフレークのゾーン。幸いここは、がっつりとチョコレートが塗してあるような甘過ぎる場所ではなく、コーンフレークと言われてぱっと思いつきそうな、ほんのりとした甘さ。

 感触もさくさくとしたそれで、ここまでの物とは違う。箸休めには丁度いい。

 上に残っていたクリームやケーキを、先んじて黙々と食べ切り、漸く一息。コーンフレークをもそもそと食べる。このコーンフレークは恐らく市販の物なのだろうが、これが一番おいしいと思うあたり、大分参っている気がする。

 フレークの下はクリームで、果物も入っている。そこまで食べきれれば、後のケーキとフレークは大空が多分、食べ切ってくれる。

「お待たせしましたー」

「どーも」

 珈琲を一口。覚悟を決めて、クリームに取り掛かる。

 クリームはおいしい。果物の酸味もいい感じ。ただ多い。当分甘いものはいらない。

 ……糖分だけに、当分いらない。

「……しまった」

 絶不調になった気がする。

 珈琲を啜り、気持ちを切り替える。中々飲み込みづらくなってきた果物を、強引に飲み込んだり、珈琲で流し込んだりしながら、格闘。

 しかしかなりずっしり来ているし、何より眠い。もぐもぐと口を動かしながら、途切れそうな意識を繋ぐ。

 この眠気は何だろうか。満腹のせいか、血糖値が上がったせいか。欠伸が漏れる。このままだと寝落ちしそうだ。

「お待たせ!」

 はよ、と、思った矢先、扉を開けて、待ち人が来る。その手に、眼鏡屋の紙袋……がない。

「ごめんね。試着して貰わないと、ダメだって言われちゃった。しかも戻ってくる時に、部員に捕まっちゃって、遅くなっちゃったし。大丈夫?」

「へーき、へーき」

「それで、どうする? 取りに行く?」

「あー……後ででいいよ」

「そっか」

 言いながら席へと座ると、スプーンを手に取った。

「後は任せるっすよ」

 スプーンを手に取り、スバルが意気込んだ。

「ちょっと休む。すまんが頼む、スバル」

「うん! ……うん? ねえ、今」

 額にテーブルの感触を味わいながら、意識を手放す。すやぁ。

 

 

 

「起きて。おーきーてー」

「──ん?」

 揺さぶられ、意識が戻る。

 体を上げると、いの一番に、大空が目に入った。

「あ、起きた」

「……おはよう」

「おはよ」

 大空の声を聴きながら、目をこすりながら、状況を思い出す。

 パフェを食べている最中に寝落ちしただけだが。

「どれくらい寝てた?」

「10分くらいかな」

「結構寝てたな」

 ちらりと視線を落とせば、もうほとんど残っていないパフェ。二口程度で、俺と大空で一口ずつ食べれば良さそうだった。

 大空が、ひょいとスプーンでパフェを掬った。はい、と、パフェを差し出され、同じく掬う。

「せーの」

 大空の音頭に合わせ、同時に食べる。もぐもぐ、ごくんと飲み込んで。

「終わったー」

 大空がスプーンをパフェの入っていた器へ入れた。同じくスプーンを器に入れて、すっかり冷めた珈琲を啜る。

「辛かった」

「まあ、途中運動したり寝たりしてるから、食事の仕方としてどうなのとは思うけどな」

「美味しく食べ切る為には、仕方が無いでしょ。残すよりいいと思うし」

「そうだな」

 時計を見れば、普段なら帰宅して、夕飯の準備をしている時間。

 今から帰ってご飯を作るのは正直億劫だ。どっかでお惣菜か何か、買っていってしまおうか。

 悩みながら、カップをテーブルに戻す。

「動ける?」

「大丈夫」

「じゃ、帰るか。眼鏡も受け取りにいかないといけないし」

「うん」

 立ち上がり、レジへ。会計は俺持ち。

「ありがとうございました。また来てね」

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした! また来るッス!」

 ウェイトレスさんに挨拶をして、大空と店を出る。

「いやぁ……美味かったな」

「美味しかったッスね。今度は普通のサイズがいいけど」

「本当に」

 美味しく食べられる量が一番だ。まああの喫茶店が、俗にいうデカ盛り店っていうやつで、全メニュー量が多い可能性は否めないけど。

 日も暮れかけ。薄暗くなった路地を、歩いて抜け、そのまま眼鏡屋へ向かう。

「……ところでさ」

「ん? 何、大空?」

「…………ん?」

「ん?」

 こちらを向いた大空と目が合う。何か驚いた顔をしていた。どうしたのか。

「あれ? 大空って呼んだ?」

「え? 大空の事、大空以外で呼んだか?」

「呼んだ! さっき、スバルって!」

 記憶に無いが。さっき寝ぼけてたから、その時だろうか。

「寝ぼけてたから、文字数で選んだのかも」

「どういう事⁉」

 どうもこうも。短い方を選んだ。

「ごめん、ごめん。気に障ったなら謝る」

「……いや、別に怒ってた訳じゃないけど。今、ふつふつと怒りは沸いてる」

 なんでや。

 大空は、唇を尖らせ、不満そうな様子を露にする。

「……別にいいけどさ。何か、距離感じる」

「……まあ、確かに」

 元々、対して接点が無いから名字で呼んでいたが、それなりに一緒に遊んだりしていることを考えると、大空呼びは、確かに距離があるように思う。それに、眼鏡を選んでくれたお礼も兼ねれば、気恥ずかしさとか抵抗も少ない。

「……分かった」

「何が?」

「呼び方。変え──」

 大空を突き飛ばす。

 何かが見えたわけでも、聞こえたわけでもなく。

 ただ、頭の中にタロの鳴き声が響いた気がして、反射的に大空を自分の傍から離さなければと思っただけ。

 だから、その後に首や体に何かが巻き付くような感覚は想定外で、踏ん張る隙も無く、体が引っ張られた。

 

 

 

「いったー……ちょっと、何を──あれ? どこ行ったの?」

 




遅刻してすみません。

その週の投稿予定などを、fanboxとかTwitterで報告しようかなと思うので、良ければ、作者マイページからどうぞ。

文章の構成はどちらがいいですか

  • 全部詰める(全話までのやり方)
  • 地文と会話文の間に改行を入れる(今回)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。